「……あ、聖晶石置いてある」
『探し回っていたのが馬鹿に見えるぐらいサクサク手に入るな』
武の話ではあったが、シェルターには交換所が備え付けられている。これはコミュニティ内で物々交換を行う為、そして外からやって来た生存者が交換を行う為に利用する場所だ。そこには近辺で見つけた、様々な道具や食品が揃えられており、一種の市場の様な姿を構築している。そこをゆっくりと巡っていると、聖晶石を見つける事が出来た。それも今までの様に一個や二個ではなく、全部で五個程見つける事が出来た。珍しいものではあるが、どうやらこの聖晶石、落とし子やサーヴァントを撃破した際に稀に生成されるものらしく、自然消滅でも生み出される事があり、そういう理由で保有している事は一種のステータスに繋がるのだとか。ともあれ、おかげで聖晶石が全部で六個も集まってしまった。サーヴァントの召喚の安定化、及び高品質化の為の触媒として利用するこの聖晶石、これを纏めて使う様な事があれば、かなり上位のサーヴァントを召喚できるのではないかと思わなくもない。まぁ、流石に勿体ないから一個か二個、残した状態で使うのだろうけど。
「ほんと、探してたあの時間は何だったんだろうね。アンリを召喚してから一気に増えた感じがするわ。……運?」
『やめろマスター。幸運の話をするな』
『わ、私達の幸運そ、そこまで悪くありませんから……』
『でも幸運Aの僕と比べると二人の運ってクソみたいなものですよね。ドルオタを相手に運で負けていた恥ずかしくないんですか? 聖女と騎士王のクセに、一介の処刑人に負けちゃって』
「煽るのはそこまでだ……!」
声に出して今の言葉を吐いてしまった為、周りから軽く視線を集めるので、布を軽く口元へと引っ張り、口元を隠す様にして駆け足で交換所から去って行く。荷物は大分増えた。今迄は持っていなかったヤカン等もなんとか手に入れたのだ。その為に放出したのが狩りで手に入れた鹿肉等なので、割と安い交換だったと思っている。何より聖晶石がたくさん手に入ったのが一番の収穫だ。どこか時間が出来たら、さっそくサーヴァントを召喚しよう。こればかりは後回しにしない方が全然いいのだから。
というわけで、交換所を見終わってからシェルターの端へとやってくる。周りには誰にもいない事を確認してから、霊体化しているアンリ・サンソンとアルトリアを確認する。この旅は俺がマスターではあるが、同行者であるサーヴァント達とは、積極的にコミュニケーションを取りたいと思っている。まぁ、つまりはだ、今は英霊として召喚されている人物達をきっちり人間として会うかって、意見を交換しよう、と言う事だ。そう言う事で周りに視線も気配もない事を再度確認し、四人で確認を取る。ここから、どういう行動を取るべきなのだろうか? と言う事を。
『僕はもう一度言いますが、あの女だけは絶対に殺さなくてはならない。何人も処刑を繰り返してくるうちに人間という生き物が良く解ってくる。そしてああいう類の人間も処刑してきたから知っている、あれはどうにもならない生物ですよ。生きている限りは毒を振りまいて周りを破滅させる、そういう生き物です。だから即座に始末した方が周りと己の為になります。というわけで、殺しましょう』
『まぁ、私もおおむね
アンリ・サンソンとアルトリアの言葉を聞き、そしてそれからジャンヌの言葉を聞く。
『私は―――少しだけ、少しだけここの様子を見た方が良いと思います。さっきの方が怪しいのは目に見えているんです。起きうるかもしれない事から目をそらすのは、人間として間違っているんじゃないかと、そう思います。ですから彼女に関して調べ、そして何か問題がある様であればそれを解決しましょう。そうやって手伝った事は何よりも己の力になるでしょうから』
普段はふざけていても、ちゃんとした所では聖人としての顔を見せている。いや、それはジャンヌだけじゃない。アンリ・サンソンも、アルトリアも本気でそうすべきだと思い、そして進言しているのだ。それぞれが違う時代の英霊であり、そして戦い、死をもってその物語を閉じた英霊達だ。その声をしっかりと聴き、今、貴重な経験をしているんだよな、と自覚する。とりあえず三人のスタンスを確認する。
アンリ・サンソンはキアラを真っ先に殺せと主張している。殺生院キアラは危ない女であり、今すぐ殺すのが一番良い結果に繋がると、経験から確信している。それに対しアルトリアは、その災厄が降りかからない限りは此方には興味もないのだから、そのまま放置して出ていけ、という話だ。関わらないのであれば勝手にしろという事だ。ジャンヌはこのままキアラを放置する事に不安を覚えており、ここを出るにしたって最低限キアラの事を調べ、そしてどうにかしてから、という案だ。まぁ、この中で選べるのはアルトリアかジャンヌの案になるだろう。流石に問答無用で殺すのはあまりにも剣呑すぎると思う。だからどうするかを決める。
「……こうしよう。まずはキアラに関して調べよう。最低限これが尾を引かない件かどうかを調べる為に。俺個人としちゃあこのまま出ていく事に賛成だけど―――アンリが殺せって言うのが気になる。だからキアラに関する情報収集はアンリが気配消してある程度追って収集、俺もそれとなく他の人から話を聞いてキアラについての話を集める」
それで、
「もし、キアラがただのエロテロリストだったら放置、魔術師だとしてもあまり関わりたくないタイプだってのが目に見えているからそのままここを離れる。だけどマジもんのテロリストだったりしたら容赦なく殺すって事で……はい、不満な人」
『マスター、僕、あの年増追いたくない』
「はーい! マスターは個人の趣味に関してはノータッチなのでお仕事をさせようかと思いまーす! 働けドルオタ!」
渋々、といった様子でアンリ・サンソンが歩き出して行くのが見える。霊体化と【気配遮断】のコンビネーションであれば、間違いなくバレる事無く監視する事が出来るだろう。それにアンリ・サンソンの嫌い方からおそらく、あの誘惑、魅了と言っても良いキアラの気配を振り払っているような様子さえある―――もしくは、誘惑されてしまったからこそ激怒を抱いているのかもしれない。まぁ、ここはいい。アンリ・サンソンはアサシンとしては三流だが、人間を見る目に関しては一流のものがある様な気がする。医者、そして処刑人としての目だろう。
「んじゃ、俺も情報収集と行くか」
「待て、マスター。流石に普通に情報収集するのもつまらないだろう。付き合おう」
霊体化を解いたアルトリアがローライズの黒いダメージジーンズに、白いドレスシャツを着た状態で出現する。胸元は緩く開けられており、黒いネクタイが緩く結ばれている。何時もとは違う感じにスタイリッシュだが、女を感じさせる恰好だ。間違いなく見た目は外国人だが、英霊という所までは解らない。そうやって現代風の衣装に身を変えたアルトリアの姿を見て、
「ありなの……?」
「我々サーヴァントは基本的に魔力で出来ているからな、肉体は。だから霊体化すれば服装の状態も、体の汚れとかもリセットできる。服装を変える事もそう難しくはない。そもそも、宝具でもない限り、防具というものはあんまり意味がないからな、我らには。だから肉体同様、服装なども普通に魔力を使って切り替える事が出来る、便利な存在だ」
『一応言っておきますけど、私もできますよマスター。変身している間限定の話になりますが。それでも私の私服姿とかを堪能できますよ―――マスターが』
「見れないんじゃあとっと意味ないんじゃないかなぁ……まあ、いいや。アンリくんが必死に仕事している間にこっちもこっちで動くか」
「了解した。エスコートは任せたぞマスター」
そんなこと言われても、彼女とか作れたこともないので言われても困る。そんな事を思いながらもアルトリアを横に置き、一緒にこのそう広くはない、シェルター内を歩き始める。ジャンヌが美少女であれば、アルトリアの方は美女になる。大人の美しさとかっこよさのある、そういう姿の持ち主だ。滅多にできる経験ではない為、内心割と浮かれつつあることは素直に認める。男なら誰だって美女を横にはべらせて歩き回りたいものなのだ―――つまりドリーム・ハズ・カム・トゥルー。
くだらない事を考えつつも、しっかりとやるべき事をやって行く。
殺生院キアラという女性に関する情報の収集はそう難しくはなかった。誰かに話しければすぐに彼女に関する話は聞けるのだから。
―――曰く、”善人”。
―――曰く、”聖女”。
なんでもシェルターからシェルターへと渡る様に旅をしている様で、あてもない旅をしているらしく、そして立ち寄ったシェルターではお世話になる代わりに、カウンセリングなどを行っているとも言う。見た目の通り、尼らしく、真言立川流等という宗派に存在するらしい。彼女のカウンセリングを受けた結果、閉鎖的だったこの新宿シェルターも大分活気が出てきた、との事であった。口々に人は彼女を称賛し、そして感謝している。その様子や言葉にはある種の信仰を感じる事さえできた。
◆
「―――あぁ、俺もキアラさんのカウンセリングには助けられたんだ! 落ち込んでいた時を少しね……。俺みたいに助けられた人は多いよ。君ももし落ち込んでいたりしたら―――あぁ、いや、君には必要ないかもしれないね。あぁ、うん。それじゃ。いや、君ももし、カウンセリングが必要だったら直ぐに頼って欲しいんだ。じゃあね」
手を振りながらシェルターの住民からアルトリアを連れながら離れる。アルトリアの表情には明らかに嫌悪感と解る表情が浮かんでおり、珍しいものを見たと、ちょっと首を傾げる。他の住民から離れたところで、
「あの男、情欲に濡れた目で私とお前を見ていたな、大方”そういう関係”として見たのだろうな」
「あー……」
まぁ、こんな時代、男と女が一緒にいたら大体どういう関係かは狭まれて行くだろうし、主と従卒の関係なんて思いつきもしないだろう。仕方がない、と言ってしまえば仕方がない話でもある。謝ろうと思ったが、それをアルトリアが頭を横に振って否定する。
「別に頭ごなしに否定する程マスターの事を嫌ってはいない。それよりも私としては本当に女として見られている事に驚いたな」
そこまで話した所で一旦アルトリアは腕を組み、動きを止める。その姿へと視線を向ける。
「別に、話したくないならいいんだけど?」
「いや、もう一度言うが、私はそこまでマスターを嫌っていない。寧ろ愉快な機会を与えてくれている事に感謝しているぐらいだ。こんな状況で、そしてこんなマスターではなければ私もこのように陽気な姿を見せる事も出来ないし、他のサーヴァントと冗談を言い合う様な事さえ出来ないだろう。自分の子を認める事さえできなかった程に愚かだったからな、……私は。一々理由がなくては動く事さえできなかった程には女々しい女だったからな」
だというのに、
「小娘には不釣り合いな野望を抱いてしまった。何故だろうな……姿が大きくなったことに心まで引っ張られているのだろうか、今ではもう少しだけ冷静に当時の事が考えれる。ギネヴィアの相手をせずにランスロットに警護を任せればそれは心が離れるのは当たり前だし、ホムンクルスとはいえ、自分の子を認める事さえできない者に国王など勤まるものか……」
自虐する様なアルトリアの言葉に対して、自分は一切声をかける事が出来ない。実際、共感する事も理解する事も出来ない事なのだから。そればかりはアルトリアの”終わってしまった歴史”であって、どう足掻いても変える事の出来ない真実なのだから。だから今のアルトリアにできるのは過去を想い、そしてそれを次へと繋げる事なのだろう。本来のアルトリア、【約束された勝利の剣】を持つ、若い少女の彼女がどう思うかは知らないが、
「お前がそう思うならそれがで良い、それが真実……って奴なんじゃないか? 当時のモードレッドやランスロットに会えるわけじゃないし、召喚した所で100%の本人って訳でもない。だけどアルトリアは成長したって感じるんだろ? だったらそれでいいじゃねぇか。その考えで納得しろ―――とは言わないけど、少なくとも答えだって思える事があるなら、それは”カムランの丘”を経験してアルトリアが得た成果なんじゃないか?」
そう言われ、アルトリアは目を閉じそうか、と短く言葉を吐き、
「とんだ聖杯戦争ではあるが……悪くはないな、こういうのも偶には。あぁ、悪くはないな。……ふ、時間を喰ってしまったな。そろそろ活動再開と行こうか」
「だな」
そう答えると横にアルトリアが並び、前よりも近い様な距離で、歩き出す。その姿を見たのか、今まで空気を呼んでいたのか、黙っていたジャンヌが口を挟んでくる。
『いいなー……こういう時は私も体が欲しいですねー……まぁ、マスターをからかって遊んでいる方が楽しいんですけど』
「お前、今までの会話の余韻が台無しだよ!」
先程までの少しだけしんみりとした空気が一瞬で霧散し、何時もの空気が返ってくる。まぁ実際、この空気が一番馴染む、というか慣れてしまった事実はあるのだが。そんな事を思っていると、アンリ・サンソンが霊体化した状態のまま帰って来た。どうやら成果があったらしい。片手を上げながらアンリ・サンソンの帰還を祝福し、
「どうだった?」
その成果を聞きだす。それに対してあぁ、とアンリ・サンソンが答えた。
『カウンセリングという名目で男女関係なく20人ぐらいと大乱交パーティー開催し始めた』
「今の情報を精査した結果、今すぐ新宿シェルターから出て行こうかと思います」
『異議なし』
『はい、マスターに同意します』
『さ、撤収しましょうか』
シリアスを返してくれ、そんな気持ちになりながらもう二度と関わらない、そう誓って出口へと向かう。
アンリさんは1d20で正気度喪失判定で。
そして槍トリアさんは絆レベルを3か4辺りまで上げてください。
ジャンヌさんは最初からずっと5です。
シリアスなんてものはなかった……エロ尼には通じなかったんや……