らくえんぐらし!   作:カレーのぐざい。

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日常 朝食

コンコン

 

「めぐねえ、朝ごはんの時間だよ。」

「はーい、ちょっと待っててね。」

 

何秒かゴソゴソと何かを仕舞うような音がした後、鍵の空いた音が聞こえて扉が開いた。

出てきたのは、一度見たら忘れないであろうピンク寄りの紫色のウェーブのかかった髪に、濃紫ロングワンピースを着た女性だった。彼女こそがめぐねえこと、佐倉(さくら) (めぐみ)だ。

 

「お待ちどうさま。今日は鯖缶?」

「んや、悠里が何か作ってたみたいだよ。」

「へえ、そうなんだ?楽しみね〜」

「多分麺類だよ。」

「俺もそう思う。」

「どうして?」

「炊飯器使ってなかったからな。」

「それに、お湯を使って何かを混ぜてた。」

「何かしら・・・・麺類なら、やっぱりラーメン?」

「いや、悠里は朝からラーメンなんて重いもの作らないだろ。」

「そうだよめぐねえ、ふざけてないでちゃんと考えて。」

「しくしく、ちゃんと考えたのに・・・・・」

「あまりめぐねえを虐めるなよ、可哀想だろ。」

「・・・・ごめんなさい、お兄ちゃん・・・」

「よし、許す!」

「この場合、謝るのは私に対してで、許すのは私の方だよね、ね!?」

「それよりも(なぎ)、本当に何の料理だと思う?」

「パスタ。」

「ねえ、私は無視なの、無視なの!?」

「ふ、(なぎ)がこんなミスをするとは珍しいな。俺の予想は蕎麦(ソバ)だ!」

「理由を聞いてもいい?」

「ああいいぜMy sister.

まず、パスタ説の否定だ。パスタは今日の食事では有り得ない。何故なら、最近パスタを食べた記憶があるからだ。悠里は同じ物を続けて作る事をしない、よってパスタは最初から選択肢に入っていない!

そして他の麺類の仮説。俺たちが保有している麺類はラーメンを除くと4種類。まずパスタ、次に素麺、そして蕎麦、最後にうどんだ。

パスタは除外されたため外すから残りは3つ。だが、ここでヒントになるのはそう、つゆだ。

素麺に使う麺つゆは、渚も知る通り空っぽだ。ここまで来たら答えは見えるはず・・・そう、蕎麦。麺つゆはないが、蕎麦つゆはある。悠里も、蕎麦があるのにあえて蕎麦つゆで素麺にはしないだろう。うどんの可能性もあるが、どちらかと言うとうどんは朝向きじゃない。という訳で、蕎麦が正解だ。残念だったな妹よ。」

「残念なのは、お兄ちゃん。」

「何・・・?」

「私、見ちゃったんだ・・・・悠里さんが、料理に大和煮を使ってる所を・・・・」

「何だと!?」

「確かに、悠里さんは続けて同じ料理をしない。でも、大和煮が料理に入っているのであれば話は別。」

「と言うことは、まさか、大和煮を使ったあの贅沢なパスタが、また食べられるのか・・・!?」

「その可能性、極めて高し。」

「ほら、いじけてないでいくぞめぐねえ。ゆきに大和煮パスタ食われちまうぞ。」

「え、えぇ・・・・・誰のせいだと思って・・・・」

「細かいことは気にするなって、ほら行くぞ。」

 

座って床に「の」の字を永遠と書き続けていためぐねえの腕を掴み、学園生活部部室まで引っ張る。

 

「こ、こら、風鈴くん、引っ張らなくても歩けるから・・・・・」

 

頬を桜色に染めて連行されるめぐねえ。

 

「めぐねえの腕、細くてすべすべしてるな。」

「それはセクハラだよ、お兄ちゃん。」

「いや、ギリギリセーフだろ?」

「うーん、そうだね。」

「アウトですーっ!!」

 

 

 

「あ、めぐねえに、なっちゃんとふーりくんだ!」

「よう、ゆき。またねぼすけか?」

 

やって来たのは、学園生活部最後のメンバー、丈槍(たけや) 由紀(ゆき)だ。事件のショックにより幼児退行は避けられなかったものの、めぐねえの生存により幻覚は見ずにすんでいる。ただ、ゾンビに対しては普通の人間だと思っている模様。

 

「ねぼすけじゃないもん、二度寝だもん!」

「なお悪くないか、それ?」

「ゆき先輩。どれだけ起こしても起きる気配が無かったんですよ。」

 

ゆきの背後にいた、みーくんがぼやく。その隣にいる圭も、庇ってあげられないのか口出しはしないものの苦笑している。

 

「ダメですよ、ゆきさん。ちゃんと時間通りに起きないと。」

「はーい!ごめんなさい、めぐねえ。」

「こら、急に抱きつくと危ないでしょ。」

 

ぎゅっ、と、正面から彼女に抱きつくゆき。それを(たしな)めながらも優しく撫でるめぐねえ。

 

「おーい、部室の前でイチャコラするのはいいけど、朝ごはん覚めちゃうぞ?」

「そうだった!大和煮の匂いがしたから、つい飛び起きちゃったんだー。」

「どうしても起きないから、悠里先輩に貰ってきたんです、缶詰の空。」

 

そう言って、みーくんがポケットから出したのは大和煮の缶詰の空だった。

これは確定かな?

 

「総員、配置に付け!朝食の時間だぜ!」

「「おー!」」

「準備は出来たかしら?それじゃ、配るわよ。」

 

 

 

「へ?」

「そ、素麺・・・!?」

「今日は、麺つゆが無かったから素麺と大和煮を一緒に使ってみたわ。味見はしたから大丈夫だとは思うけど、皆のお口に合うかしら?」

 

 

ぱくり。

 

 

「・・・・・・渚、これをどう思う?」

「・・・・・・多分、お兄ちゃんと同じ気持ち。」

 

「「とても美味しいです。」」

 

 

 

結局、朝食の予想なんてどうでも良くなった俺達だった。悠里、料理上手だな。

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