colors! -a school idol another story-   作:瀬戸蒼志

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【注意】
ほんとに軽い流血表現が最後にあります。
大丈夫な方はレッツゴー。
遂に一人目の女神様、あの方の登場です!!


#02-2    〃

 

 

 

 前回のからーず。

 

 

 国立音ノ木坂学院へ転入することになり、その挨拶にお昼から訪れていた俺こと、鳴海陽葵(なるみはるき)

 そこで理事長をしている南ひなこさんは昔馴染みの知り合いで、久しぶりに会ったせいか話は思った以上に長引いた。空もあっという間に暗くなり、そろそろ帰ろうと学院を後にした。

 

 学院を出た時から、とにかくお腹が空いて飲食店を探す俺。

 

 しかし、一軒も飲食店が見つからず途方にくれていた。

 

 家の近くでカップラーメンを買おうと諦めたそのとき、ようやく見つけた。

 

 そこで見つけたのが……。

 ―――――和菓子屋【()むら】だった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 (よーかん、だーいふく。団子に、餡蜜(あんみつ)、うーん悩むなぁ。どうすっかな……。あ、もし美味しかったら柚子に教えてやろ。日本来た時にでも、食べさせてやりたいな。)

 

 

 これまでお店が見つからなかったことも、野良猫に威嚇されたことも、全てを忘れるぐらいテンションの高くなった俺は躊躇(ちゅうちょ)なく目の前にある扉へと手を掛けた。

 いや……、正しくは掛けようとした。

 しかしその前に扉は勝手に開いていき、店内を照らしている中の照明が外へと漏れ出した。

 

 はて、自動ドアなのか……。

 そう一瞬にして考え付いたが、明らかに目の前のそれはそんなハイテクな(つく)りではない。所謂(いわゆる)昔ながらの扉である。

 じゃあ、何故なんだと考え始めた時に開く扉の向こう側に、平仮名で"ほ"とプリントされたインパクト抜群のオレンジ色Tシャツと肩よりも少しだけ長い茶色の髪が見えた。どうやら、向かい側には女の子が立っているようだった。

 

 その彼女との距離は、既に殆ど無いに等しかった。

 

「はぁ……。なーんで、わたしが行かなきゃなのかなぁ……。うぅー、やだなぁめんどくさい。……わかったってばーーー! 行ってくるから店番頼んだよ~!!」

 

 彼女は靴がなかなか履けないのか、とんとんと不定期に地面を打っていた。それにより、右サイドで結んでいた髪が視界の端で揺れている。

 中にいる家族と会話しているのか、彼女はこちらは見ておらず、俺にも全く気付いていない様子だ。

 そして、会話が終わったと同時にそのまま前も見ずに外へと飛び出してきた。

 

 (あ、これやばいやつ。……つか、手になんか持ってるし。)

 

 直感的にそう感じたのだが、脳内で思うだけで体は一切動くことなく、華麗に彼女を避けたり受け止めたりなんてことは出来るはずもなかった。

 嗚呼――神様、せめて痛みは少なく、そして彼女に怪我は無いようにお願いします。そう願うしかなかった。

 そして次の瞬間には大きな音をたて彼女と俺は見事にぶつかり、彼女の手にあった何か分からない四角い"物体X"が容赦無く俺の額に直撃したのだった。

 

「っい、いったーーーーーい!!!」

 

 どすん。

 そんな音を立てて、ふたりして同時に尻もちをつくことなった。

 自らのお尻を両手で抑えて痛いと大声で訴える女の子。

 

「〜~〜~〜~っ」

 

 お尻よりも得体の知れない物体Xが直撃した額を右手で抑え、あまりの痛みに声にならない声をあげる俺。

 反応は両極端である。

 しかしながらダメージ的に見るならば、どちらにより被害が大きいのかは一目瞭然であろう。

 

 うん。明らかに、俺。

 

 ぶつかった時の痛みと尻もちにプラスして物体X、硬いものの角が額の真ん中を直撃したのだから。二次災害のそれのほうがダメージが大きいとはどういうことだろうか。痛みの軽減なんてこれっぽっちもされやしなかった。

 

 下手してたら気絶していたかもしれないし、はたまた目にぶつかって失明……みたいなこともあったかもしれないと思うと恐ろしいことだが、今の俺にはそんなことを考える余裕なんてこれっぽっちもなかった。

 そして後々思うことだが、この痛みの度合いを考えるともしかしたら気絶していた方がある意味幸せだったかもしれない。

 

「……ぐぅぅぅ。」

 

 (いってええええええええええええ、え、なんっすか!? ……ぅうっ、〜~〜~〜~っ!)

 

 だがしかし、そんなことを頭からすっ飛ばして、ただ…ただ…必死に痛みと戦っていたのだった。

 

 それから程なくして店の奥のほうから足音がこちらに向かってきた。恐らく、中でくつろいでいた彼女の家族であろう。

 

「ちょっとーー、おねえちゃんまたなんか……し、たの………。」

 

 目の前にいる彼女よりもほんの少しだけ小柄な女の子がやってきて、目の前の光景を見た瞬間に目を丸くして絶句した。

 その反応は至極当然の反応と言える。だって、家族と店前に知らない男の人が尻もちついて二人して痛がってるって誰だって驚くであろう。

 

 お姉ちゃん。

 その女の子は確かに目の前にいる彼女に向かって、そう言った。ということは、この絶句した女の子はそこに転がっている彼女の妹ということになる。

 

「……はっ。ってお姉ちゃん!? ほんとにさ、なにしちゃってくれてんの!? 馬鹿じゃないの! そんなところで痛がってないで早く起き上がってよ!!」

 

 直ぐに我に返った妹さんは姉の元へと駆け寄り、ばしばし容赦無く叩くとこちらを指差した。

 姉は起き上がり、指差した方向を首を傾げつつもこちらを見た。

 

「あたたた、た、……んん?」

 

 シーン。

 いきなり静寂した室内。しかし、それはほんの一瞬だった。

 

「……えっ、……え、ええ、えええ、ご、ごめんなさーーーーーいぃっ!!!」

 

 妹同様に言葉を失った姉だったが、この状況を理解すると一変して尻もちから土下座へと切り替わった。その速さと言ったら、それはまあ素晴らしいものだった。

 地に頭を押し付けて謝る姉に今度はこちらが言葉を無くしかけたのは言うまでもない。

 

「〜~〜っ、その、大丈夫っすよ。」

 

 まだ額を含めあちこちが痛いながらも、これ以上このままでいたら目の前のふたりに余計な心配を掛けてしまうと思い、立ち上がり大丈夫だと告げる。

 

「あ、あの、うちのお姉ちゃんがすみませんでした!!」

 

 妹さんも姉の隣に並ぶと土下座はしないながらも深々と頭を下げた。

 礼儀正しい妹さんだなぁ……と少し感心してしまう程だった。

 

 はっと我に返りふたりから頭を下げられている現実に直面すると、どうしたらいいのかが分からなくなった。あたふたと交互にふたりを見つめることしか出来ない自分がどうしようもなく情けない。

 兎にも角にも、今すぐにでも頭をあげて欲しかった。

 

「あっと……、そのさ、俺は平気だから。その、そんなに気にしなくても大丈夫だよ。それに俺も避けらんなくて悪か「そんなことないよっ!! わたしがよそ見してたのがいけないんだから! ごめんなさい……。」」

 

 こちらが話してる途中でいきなり土下座をやめたかと思えば、食い気味に迫ってきて否定してきた。かと思えば今度は、しょぼんという顔文字が似合いそうな程に表情を変化させ頭を下げる姉。

 妹さんも顔をあげ、そんな姉とこちらの会話を心配そうに見守っていた。

 

「とりあえず、顔あげて? 俺は頑丈だからさ、この通り大丈夫だよ。っていうか、君に怪我なくてほんと良かった。」

 

 あまりに頭を下げ続けるものだから、堪らず彼女の肩に触れ優しい口調で再度大丈夫だと告げた。

 そうすれば、それに安心したのか顔をあげ笑顔を見せてくれた。

 かと思ったら今度は、目をウルウルと潤ませ今にも泣きそうな表情になる。

 

 (え、え、今度はなに?)

 

 また何かをしてしまったのかと内心慌てたが、それは直ぐに杞憂に終わることとなった。

 

「……うううううぁ、優しい人で良かったよおー!! ゆきほ~!!!」

 

「良かったね、お姉ちゃん。」

 

 なんの前触れもなしに妹さんにいきなり抱き着いた姉。

 妹さんの名前をそこで初めて知った。どうやら漢字は分からないが、"ゆきほ"というらしい。

 ゆきほちゃんはそんな姉の突発的行動に慣れているのか、抱き着いてきた姉をバランスを崩すことなく器用に受け止めて頭を撫でていた。

 

 微笑ましいなぁ……とそんなふたりを眺めていたら、不意にゆきほちゃんがこちらに視線を向けた。数秒後、何かに気付いたようで俺がいた左下を指差して口を開いた。

 

「あ、あの、そこ擦りむいてます。」

 

「えええええええ!?」

 

「……げっ。」

 

 その言葉に自らの左手を見てみれば、掌と手首の間ぐらいに掛けて皮膚が軽く剥けてしまっていてそこから真っ赤な血が垂れていた。周りには砂利が沢山くっついていて、なんとも痛々しい。

 どうやら、尻もちをついて手を地面についたときに擦ってしまったようだ。

 額の痛みの方が強くてこちらには全く気付かなかったのだが、不思議な事にそれを自覚した途端にズキンと痛んだ。

 

 

 (あはは、は……。帰ってれば、良かったなぁ……。俺、今日ついてないじゃん。)

 

 

 

 ―――どうやら、未だ俺は家に帰ることは出来ないらしい。

 

 

 

 

 

「お姉ちゃんって馬鹿なんですよねぇ。」

 

「なんか、想像つくよ。」

 

「ごめんなさいっ!!!」

 

 

 

 

 続

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