月夜の悪戯   作:M崎

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 どうもM崎です!!

 一応、休載宣言したのですが、こちらはしっかり(予約)投稿いたします。
 月イチなら大丈夫かなーと思い。

 あ、今回から2話連続で西高屋編です。
 うーん、ただの大規模チェイスの話なんで読まなくても全然結構なんですが…。

 それでは、7話、どうぞ!

 言ったとおり、話は全く進んでません!!

 追記

 後半登場する「野獣化」という言葉、あれは比喩です。
 海斗くんには別に異能とか超能力とかそういうものはありませんので、あしからず。





7転びしたのなら、起きるのも7回だ。

 8月15日。

 広島県東広島(ひがしひろしま)高屋(たかや)町、西高屋駅。

 

 

 電車のドアが開いた瞬間、俺と香倶夜(かぐや)は転げ落ちるように電車を降りた。

 そのままの勢いで、改札めがけて一直線に走る。

 手を、どちらともなく握り合って。

 

 「―――大丈夫ですか!?」

 「ああ、わらわは大丈夫じゃ!そっちこそ大丈夫か、海斗(かいと)!!」

 「俺は全然大丈夫です!!それでは、早く行きましょう!!」

 

 人々を押しのけ、掻き分け、一目散に、駆ける。

 俺が出来る限りの、精一杯のスピードで。

 まるで飛ぶように、文字通り「駆ける」。

 

 だが、それほどまでのスピードを出しても、人とぶつかるなんて事は無い。

 

 なんせ、あの糸崎(いとざき)駅5番ホームとは人の量がそもそも違う。

 向こうはすし詰め状態だったが、こちらはスッカスカだ。多分10人もいない。

 間に空気が入るスペースがある。

 

 いくらか涼しさを感じながら、俺は香倶夜と一緒にひた走る。

 

 「―――あ、いたぞ!!!」

 「あれが十二単の女の子、か!!」

 「追え、追えーーーっ!!!」

 

 だが、涼しいということは人が少ないということ。

 つまり、俺たちが見つかる確率もグンと上昇するのだ。

 そりゃそうだろう。人ごみ、という視線を遮るものさえなければ、お盆でも制服姿の俺と、十二単という奇天烈な姿をした超美少女の香倶夜は容易く見つけられる。

 

 そして案の定、駅員さんは走る俺に気づき、全力ダッシュで追いかけてきた。

 鬼気迫る、といった表情だ。つかまったら、まず今日は開放されないだろう。

 

 俺は走るペースを少しだけ上げながら、香倶夜に向けて1つ、問う。

 

 「―――ええと、月夜見(つくよみ)さん、ですよね!?」

 「…ああ!わらわは確かに月夜見香倶夜じゃが、…それがどうかしたか?」

 「月夜見さんって、どうやって電車に乗ったんですか!?」

 

 声を張り上げて、眼前の少女に、問いかける。

 そう、俺はこれが聞きたかったのだ。

 

 電車に乗るとき、彼女はどうやって乗ってきたのか。

 彼女はどこから、この電車に現れたのか。

 

 乗ってきた電車が発車するのを横目で見ながら、俺は香倶夜からの答えを待つ。

 

 その香倶夜はというと、思いつめたような表情で、こう、告げてきた。

 

 

 

 「―――分からん。気がついたら、この、電車の中におった」

 

 

 

 (最悪の答えをどうもありがとう!!!!!)

 

 俺は予測していた中でもトップクラスで最悪の答えに頭を抱える。

 

 何故か。

 「電車に何故か乗っていた」とは、すなわち「電車に乗る際に、改札を通っていない」ということだ。

 香倶夜の言うことが正しければ、の話だが。

 

 そして、もしそれが的中してしまったとき、俺に残された選択肢は2つしかない。

 

 (―――なんでこうなったよ神様ぁぁぁぁぁ!!!)

 

 

 ―――1つ、犯罪者になる。

 ―――1つ、大人しくつかまる。

 

 

 この2つしかないのだ。

 

 後者に関しては言わずもがな、前者に至っては俺の人生すらも棒に振りかねない。

 例え改札を「お姫様だっこ」で通りぬけようが、改札を通らずに外に出ようが、駅員専用スペースを通って外に出ようが、

 それらはすべて、犯罪なのである。

 

 そしてそれは、俺の社会的人生が終わろうとしていることも、あわせて宣告していた。

 

 (どどどどどどうすんだよこれ!俺の理解範囲を大幅に超えてるぞ!!?)

 

 俺は予想以上の難事に、無い頭を必死に振り絞って考える。

 これは最悪だ。予想外だ。

 

 ―――あと3つくらいしか、方法を思いつけないことも、予想外だ。

 そして、それらがすべて、大きなリスクを伴うのも、想定外だ。

 

 当然、香倶夜が悪くないのは分かっている。

 彼女は被害者だ。俺以上に、酷い歴史に揉まれてきた、れっきとした被害者だ。

 

 だが、俺は神様じゃない。

 すべてを「悪戯」で済ませるほどの、寛大な心など持ち合わせていない。

 自分の身くらい、惜しむ時だってある。

 

 

 ―――ただ、それでも。

 

 

 「―――海斗、大丈夫か…?」

 

 

 ここで、俺のことを心配そうに見上げている、この儚げな美少女を、みすみす見捨てることなど、俺には出来ない。

 美少女を捨てることなど出来ない、という哀しき男の(さが)という可能性を除外してみても、だ。

 

 もし、可能ならば捨ててしまいたい。

 ここに置いて帰って、楽になりたい。

 

 でも、どうしても、それを躊躇わせる、何かがある。

 

 もし捨てていったら、この子はどうなる?

 連れ出されておいて、1日もたたずに月へと戻されるのか?

 

 

 

 ―――そんなの、俺が許すと思うか?

 

 

 

 俺は前よりも力強く、地面を蹴る。

 

 俺は確かにこんな性格だが、罪咎(つみとが)を背負い、刑務所(ムショ)で罪悪感に塗れて生きるなんて選択肢を、許せるほど自虐的でもない。

 

 俺は、一筋の光明にだって全力で(すが)る、くすんだ男だ。

 そして、その「一縷の望み」が、ハイリスク・ハイリターンであったとしたら。

 

 俺は賭けに乗るしか、ない。

 

 (―――いちか八かだけど、やってやらあ)

 

 悲壮な覚悟を、俺は決める。

 これをやり遂げなければ、俺も、香倶夜も、助からない。

 

 俺たちの我儘(わがまま)に、ちゃんとした形で決着をつけられない。

 

 (―――ああもう!!あとは成すがままだ、なんとかなるだろ、こんなもん!!)

 

 俺は半ばやけくそな気持ちで、走るペースを上げる。

 もう賽は投げられた。引き返すことなど出来やしない。

 

 ―――作戦実行のためには、まずすべきことは。

 

 俺は諦めて、作戦の最初の手順を頭で吟味する。

 一応、1つは発見した。

 

 相手の虚を、つかねばならない。

 

 そう決めた俺は、走るスピードをさらに上げる。

 もうこれ以上は速く走れない。俺の正真正銘、全速力のスピードだ。

 

 「…うおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 口から無意識に雄叫びが漏れる。

 周りの人間は引き気味だ。だが、そのくらいがちょうどいい。

 

 俺はひた走る。

 

 そして、俺そんなの目の前には、俺らを捕まえんと腕を広げた、駅員が数名。

 

 俺はその集団に、あえて突っ込み―――、

 

 

 

 

 

 「―――ターン!!!」

 

 

 

 

 

 ―――ぶつかる寸前で、くるりと180度、体を回転させた。

 

 

 

 

 

 「「「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」」

 

 駅員さんが後ろで驚いているのが聞こえる。

 そしてつんのめって、コケかけている音も聞こえる。

 

 だが、その振動すらも彼方に置き去って、俺は逆走を開始する。

 

 「―――いったいどうしたんじゃ、海斗!!…よもや血迷ったか!?」

 「血迷えるわけがないでしょうに!!」

 

 だが、驚いているのは何も駅員だけではない。

 今この場にいる客もだし、それに香倶夜も、俺の腕の中で驚きの声をあげている。

 

 なんかよく分からない言葉まで使われた。

 

 俺はそれを適当に返事しながら、作戦遂行のための、次の指示を香倶夜に出した。

 

 「―――次だ」

 「は?」

 「月夜見さん、俺が手を離した瞬間に、女子トイレに駆け込んでください!!」

 「…え、どういうことじゃ!?」

 

 その指示に、香倶夜は慌てたような、そんな声を返してくる。

 

 当然の反応だ。我ながら、すごい無茶振りだと思う。

 それに、説明がほとんど抽象的で、なんともいえないだろう。

 

 だが、理解してもらえなければ、話はそもそも進まない。

 

 (―――すまん月夜見さん…わかんないとは思うが、我慢してくれ…)

 

 俺は心の中で香倶夜に謝りつつ、その理由を告げた。

 

 「―――駅員を撒きます。女子トイレの個室の中なら、多分向こうも追って来れないでしょう」

 「え?え?」

 「いいですか、誰から何を言われても、絶対に出てこないで下さいね!?」

 「わ、分かった!!!それは分かったのじゃ!―――で、でも…海斗は、どうやってわらわを呼ぶのじゃ?個室の中に閉じこもっているわらわには、海斗と他人の区別がつかんぞ?」

 「―――大丈夫です。俺は、月夜見さんを呼ぶとき、こうやって呼びますから。…1度しか言いませんから、よーく聞いといてくださいね」

 「…うむ…」

 

 俺は香倶夜が頷いたのを確認すると、その可愛らしい耳にゆっくりと口を近づけて、その暗号を囁いた。

 

 「ふひょえあぁっ!!?」

 

 香倶夜が何故か驚いて赤面しているが、おそらく息が耳にかかってくすぐったいのだろう。

 今はそんなことに構っている余裕は無い。

 

 俺はどこまでもクリアな脳で、ゆっくりと頭を元の位置に戻す。

 

 暗号なら、暗号でなくては意味が無い。

 俺以外の人間が、今この雰囲気で、絶対に言いそうに無い言葉を、言うべきでない言葉を、言ったところで頭がおかしいと思われる言葉を、言わなければならない。

 だから俺は、今この状況を打開するために、度肝を抜くような言葉をチョイスした。

 

 「―――海斗よ、本当にそれでよいのか…?」

 「全然大丈夫。むしろこのくらいがちょうどいいですよ」

 

 香倶夜も心配するような頭のおかしい言葉だが、今回ばかりは致し方ない。

 こうしなければ、俺も香倶夜も、表の世界に、出られないのだから。

 

 俺は確認の意味も含めて、香倶夜に作戦遂行の許可をとる。

 

 「…用意はいいですか?」

 「―――大丈夫じゃ。いつでもよいぞ」

 

 その香倶夜は、俺の問いかけた短い言葉に、力強い頷きを返してくれた。

 

 どうやら許可は得られたらしい。

 俺はニヤリと獰猛に微笑む。

 

 これで、思う存分、暴れられる。

 俺の心に潜む「ストレス」という名の野獣を、野に解き放つことが出来る。

 

 俺は、何故か高揚してきた気持ちを抑えるように、

 

 

 ―――作戦第2フェイズの開始合図を、高らかに宣言した。

 

 

 「それでは、行きますよ!!3…2……1………はい!!」

 

 

 その掛け声と同時に、互いに繋いでいた手を離す。

 俺は急ターンを決めて、香倶夜は2番ホームのトイレへと駆け込む。

 

 香倶夜がトイレの個室に飛び込むのを、一抹の名残惜しさを感じながらも、俺は見届けた。

 

 そして、俺は正面へと向き直る。

 

 

 

 ―――そこに構えるは駅員という明確な「敵」。

 

 

 

 手薬煉(てぐすね)を引いて、俺を待ち構える。

 俺というちっぽけな存在を、数量で押しつぶそうとかかってくる。

 余りある大人の体力を全力活用して全力疾走してくる。

 

 俺を檻に閉じ込め、捕縛するかのような、あからさまな敵意を浴びる。

 

 

 すさまじい圧力。

 

 何も、数の有利というだけではないだろう。

 1人1人の放つプレッシャーが、いつもと桁違いなのか。

 はたまた、彼らの中にある怒りという感情を、制御(コントロール)出来ていないのか。

 

 俺は走馬灯のような光景を錯覚して、加速した時の中、考える。

 

 

 

 

 ―――だが、それでも。

 

 

 

 

 ―――野獣化した、俺の「障害」ではない。

 

 

 

 

 俺は焼け付くようなプレッシャーの中、確かに、笑った。

 

 

 

 

 その悪役のような笑みに、敵は少しひるむ。

 野次馬は凍りつく。

 

 このような場にあっても、俺の顔は笑っていた。

 

 何故か。

 

 ストレス、という野獣を解き放った今、俺にとってこのような空気は障害ですらなかった。

 俺の心が、脳が、体が、(かみ)が、(うごき)が、障害(じゃま)と感じていなかった。

 

 

 俺を否定したっていい。

 俺を軽蔑したっていい。

 俺を傷つけたっていい。

 

 

 ―――だけど、俺を受け入れるな。

 

 

 否定され、(そし)られ、削られ、(たた)かれるのなんて、まだマシだ。

 俺の理解者を名乗って、勝手な同情を貰う方が、何十倍も嫌だ。

 

 俺を、他人の物差しで、計られているみたいで。

 

 

 だから、俺は俺の行きたいように、生きたいように、この世で生活す(いき)る。

 

 

 その俺が、香倶夜を助けるって、決めたんだ。

 

 

 

 

 ――――――邪魔は、徹底的に、()()

 

 

 

 

 俺は野獣を本格的に解き放つと、獰猛な気性そのままに、一気にトップスピードへと加速した。

 

 

 

 

 

 




 ただの説教話だったような…。

 感想、評価など心よりお待ちしています。
 返信は出来ませんが。

 本当に一方的で、すいません…。


 追伸

 唐桃さん、オワリさん、ケチャップの伝道師さん、評価ありがとうございます!!
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