偽書魔法少女サツキ☆マギカPSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI SATUKI MGICA 作:ジャックノルテ
後はあなた次第よ
「なっ!?これは一体!?まさか!?」
そう叫んだ時、ウチの体はまるで砂上の楼閣であったかの様に、手足の先から粒子となってこの時空を越える移動空間に痛み無く散って行った。
幾ら魔力を使っても防ぐ事は出来なかった。
ウチの体は次々と崩れて行く。
「ウチは!ウチは!ここで終わりたくないんや!」
そう叫びながらもウチは自身の肉体の死が最早、避けられない出来事だと認識していた。
「終わりが避けられないなら・・・。こうするまでや!」
か細くそう呟いてウチはウチの中にある因果の1つを鎖状にして具現化して見た。
そのまま手を離すと消滅する事無く時空の中に落ちて行った。
どうやら因果だけならば時空間の中を落ちて行っても消滅はしないらしい。
ならばウチの持っている全ての因果を時空間にばら撒いたらどうなるのか?
それはウチにも分からなかったがとてつもない混乱を巻き起こす事だけは感じ取る事が出来た。
だからこそウチはそれを実行に移した。
ウチの体から抜け落ちた因果が次々と鎖となって時空間に流れ落ちて行く。
痛み無く体が崩れ薄れていく意識の中でウチは走馬灯の様に始まりを思い出していた。
アイリスと名乗る前の事を。
ウチが《魔法少女》となった出来事を。ウチが他者の記憶を手に入れた時の事を・・・。
〇
ウチは歩き続ける。
見知らぬ街を。
ウチは探し続ける。
自分のやりたいと思う事を・・・。
それこそがウチが常日頃から抱いている疑問でもあった。
ウチにはやりたいと思う事が見つからない。
大抵の事は少し練習をすれば簡単にこなす事が出来た。
友人関係、家事の手伝い、勉強、運動、ゲームなどエクストラ、エクストラや。
だからこそウチは自分が本当にやりたいと思う、一種の夢とも野望と言える目標を持つ事が出来ずに怠惰な日々を送り続けていた。
(怠惰と言ってもただ無為に過ごすのではなく宿題や家事は行っている)
今日もウチはその日に行う家事や宿題を終えて街を歩いていた。
けれどもただ歩くだけではつまらないので知らない道を歩き何時しか知らない夕方の街を一人で歩いていた。
「退屈や・・・」
思わずウチはそう呟く程、ウチは退屈をしていた。
「退屈なら死んじゃっても良いよね?」
「そうやな。死んでもええか・・・」
頭の中に感じた声に答えながらウチは足元の感覚に違和感を覚えた。
何か柔らかい何かを踏み潰した様である。
下を見るとそこには血溜りと無数の人間の死体がありウチはその内の一人の腕を踏んでいた。
「!」
ウチは思わず口を押さえた。
そして周りを窺うとそこは先程まで歩いていた、知らない街の道ではなく何かおぞましい場所に立っていた事に気が付いた。
「何がどうなってるんや!?」
ウチは口に手を当てながらともかく駆け出した。
一刻も早くここから離れたかった。
その時、周囲にあった複数の岩が突如として動き出し醜悪で人型をした数体の化け物と化し簡単にウチを取り囲んでしまった。
《岩の化け物》の一体がウチに向かってその手を振り下ろして来た。
その瞬間にウチの意識は一瞬飛んだ。気が付いた時には地面に横たわっていた。
全身に強い痛みを感じた。立ち上がる事も出来ない程だった。
そんなウチに対して近づいて来た《岩の化け物》はその巨大な指で今度はウチの右腕を潰した。
声にならない悲鳴を上げたウチの様子を《岩の化け物》達は嬉しそうに見ていた様にウチには見えた。
ウチは生まれて初めて諦めていた。
こんな訳の分からない事でウチは死ぬ。
やりたいと思う夢や野望を手にする事無くウチは死ぬ・・・。
それまでウチはやりたいと思う事が見つからない事にも諦めを覚えた事は無かった。
けれどこのどうにもならない状況だけは諦めるしか無かった様である。
「ウチはここで終わりなんやね・・・」
そうウチが呟いて死を覚悟した時だった。
ラーリーラー。ラッリー。ラララッラッラララ。ラーリーラ
不思議な旋律が私の耳に届いた。
思わず音の生じた方向を見る私の視界に動く物が見えた。
それは1人の背の高い少女だった。
Tシャツにジーンズにスニーカーと言うラフな服装で極端に左右非対称な髪型をしたウチより年上な女性だと一瞥出来た。
女性の唇から不思議な旋律が流れるのを聞いたウチはそれが背の高い女性の口笛だと横たわりながら感じ取った。
背の高い女性が笑みを浮かべながら一体の《岩の化け物》の前を横切ろうとした時、《岩の化け物》は容赦無く右の豪腕を振り下ろした。
ウチは背の高い女性が潰されるのを想像して思わず目を閉じた。
予想していた悲鳴と何かが潰される様な音は聞こえてこなかった。
ウチが目を開くと眼前では《岩の化け物》の豪腕を背の高い女性が左の掌だけで押さえていた。
その背中からは余裕の様な雰囲気を感じられた。
「ふーん。中々、強い力を持った《使い魔》ね。けれど私の敵じゃあ無いわ」
背の高い女性がそう呟いたと同時に背の高い女性の左半身が光り輝き半身だけが赤く染まり別の服を身にしていた。
その姿になった背の高い女性は軽く左腕を振った。同時に《岩の化け物》は残りの仲間の中に投げ込まれていた。
その様子を見た《岩の化け物》達は怒りを感じたかの様に次々と背の高い女性へと殺到して行く。
「じゃあ、今から本気で相手をしてあげるわ」
背の高い女性がそう宣言したと同時に今度は右半身が青く輝き残る半身を青く染めた衣装に身を包んでいた。
さらに左手には輝きと共に現れた箒が握られていた。
「さあ、お仕事。お仕事と」
そう言って背の高い女性はその場で飛び上がると左手に持った箒を《岩の化け物》に向けた。
同時に箒の穂先が飛び次々と《岩の化け物》へと撃ち込まれたが《岩の化け物》の硬い表皮に阻まれてはびくともしなかった。
「硬いわね・・・。ならこれはどう?」
そう言って背の高い女性は箒の穂先を取り外すとその場に投げ捨て右手に新たな穂先を出現させた。
その穂先は銀色に輝いていた。するとその穂先の輝きが瞬き初め回転し始めたのだとウチには見えた。
背の高い女性は落下しながら―直後に落下スピードを急激に増すと一体の《岩の化け物》の懐に降り立つと間髪入れずに箒の穂先を突き出した。
突き出された穂先は何の抵抗も見せる事無く《岩の化け物》の体を突き破った。
そのまま《岩の化け物》は崩れて土塊へと変わった。
背の高い女性は笑みを浮かべながら箒を持って縦横無尽にこの場を駆け巡ると次々に《岩の化け物》に穂先を突き刺して土塊へと変えて行った。
最後の《岩の化け物》を倒した時、突如として大地が揺れた。
笑みを崩さない背の高い少女の目の前に今までの物よりも更に大きな《岩の巨人》が現れたのだ。
「とうとうお出ましね。《魔女》!」
背の高い女性はそう言うと《岩の巨人》に向かって行く。
《岩の巨人》が背の高い女性に向かって複数生えている腕を次々と振り下ろす。
背の高い女性は腕を避けて行き避けられない物は箒で払って《岩の巨人》の懐へと飛び込んだ。
そのまま《岩の巨人》の胸を穂先で突き刺そうとするが突如として胸から新たな腕が生えて来て穂先を押さえつけた。
動きの止まった背の高い女性に対して《岩の巨人》は次々と複数の腕を向けて来た。
躊躇う事無く上空へとジャンプする背の高い女性。
その手には穂先の無い箒が握られていた。
どうやら穂先を《岩の巨人》の体に残して飛び上がった様である。
背の高い女性が右手を握っていた箒の柄の先へと滑らせると今度は内側に赤、外側に青を色付けた炎が灯された。
同時に背の高い女性が急激に立ったままの姿勢で斜めに移動したと思うと《岩の巨人》の複数生えていた腕を一度に全て炎を灯した箒で切り裂いた。
背の高い女性は地面に降りると同時に地面を蹴って跳躍しすれ違い様に炎の箒で《岩の巨人》を両断した。
「グギャアアアアアアアアア」
ウチの目の前で悲鳴を上げて《岩の巨人》は土塊へと帰って行く。同時にこの場所を作っていた何かが崩れてこの場所は元の道端へと戻って行く。
倒れたウチの目の前で背の高い女性は箒を投げ捨てて(同時に消滅した)、《岩の巨人》の体から落ちた何かを広い上げていた。
それを見ながらウチは自分の体を動かそうとしたが直後に激しい痛みが体を襲い動く事もままならなかった。
「あら?どうやら生き残ったみたいね」
気が付くと背の高い女性は笑みを浮かべながらウチを見下ろしていた。
その時、ウチは自分がどんな表情で相手を見ているのかチラッと頭を掠めたけれどそれはどうでも良い事だった。
どうせ助からないのならどんな顔をしていても問題は無い。
「ふーん。良い目をしているわね。けれど、この傷じゃあもう直ぐ死ぬでしょうね・・・。でもね・・・。どうせ死ぬのなら私の実験に付き合って貰おうかしら」
そう語る背の高い女性はとても怪しい笑みを浮かべていた。
そのままウチの体を抱えるとそのまま跳躍した。
近くにある公園へと降り立った背の高い少女は人気の無いベンチにウチを寝かせるとウチを見下ろしていた。
やがて握り締めていた左の手の平から赤と青に染まった小さなボールの様な物を私の額に向けた。小さなボールの先は尖っている。
「これは記憶の種(メモリーシード)。今からこれをあなたに埋め込む実験を行うわ。旨く行くかどうかは分からない。けれど旨く行く様なら怪我も治してあげるわ。ねえ。あなたの名前を教えて?」
背の高い女性の問い掛けにウチは悩む事無くか細い声で答えた。
「ウチは・・・。彩月。菖蒲彩月・・・」
「ふーん。じゃあ彩月さん。後はあなた次第よ」
背の高い女性はそう言うとウチの額に赤と青に染まった記憶の種と言う物を突き刺した。
その瞬間にウチの頭の中に電気的な衝撃が走ったかと思うとウチの目の前は真っ暗になった。ウチは自分が死んだのだと思ったがそうでは無かった。
これは始まりだった。
別の人の記憶を辿って行く、記憶の旅が始まったのだ。
偽書シリーズの第三弾がスタートしました!
今回の作品は本当に批判が集中しそうな作品となりそうなので覚悟を決めて執筆したいと思います。