偽書魔法少女サツキ☆マギカPSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI SATUKI MGICA   作:ジャックノルテ

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馬鹿な事をしたものやね

「なーるほど。これがレイトウコと言う事やね」

 結界に取り込まれた、若葉みらいのテディベア博物館、アンジェリカ・ベア―ズにおいてウチは調査を行っていた。

 アンジェリカ・ベア―ズは若葉みらいのテディベア博物館と言う一面以外にももう1つの一面があった。

《プレイアデス星団》の本拠地兼、研究所と言う一面が。

 実際、地下には神那ニコが使う研究室が作られ神那ニコや御崎海香、浅海サキはそこで魔法の研究と改良を行っていた。

(ウチの記憶によれば研究室の設置は若葉みらいも認めていた)

 そしてこの地下にはウチが最も調査を望んでいる設備、レイトウコがあった。

 レイトウコ。それは文字通り冷凍庫の意味を持っている。それもただの冷凍庫ではない。

 ここには20人以上もの《魔法少女》がソウルジェムを取り上げられ特殊な魔法陣によって肉体とソウルジェムを休止状態にして封印されていた。

《プレイアデス星団》を全員、倒してしまった事でアンジェリカ・ベア―ズに施された全ての魔法陣は崩壊しかけていたがウチがイクス・フィーレで魔法陣を解析して魔力を注ぎ込んだ事でアンジェリカ・ベアーズ内部にある全ての魔法陣は再び機能を取り戻していた。

 レイトウコの真ん中にある噴水にはソウルジェムが安置されているがその殆どが濁って《魔女》が羽化する寸前だった。

 これらを全て取り込む事が出来れば大幅に因果律を上昇させる事が可能だとウチは確信していた。ただここにあるソウルジェムは殆どが濁り切っておりこのまま取り込んだのではウチのソウルジェムが穢れを取り込む恐れもあった。

 実際、魔法少女のソウルジェムを砕き因果と記憶、魔法を取り込む過程で僅かながらもウチのソウルジェムには穢れが発生していた。

 ウチの目的は《最強の魔女》となる事。鹿目まどかの因果を取り込むまでは《魔女》になる訳には行かなかった。

「そしてもう1つ、あるんやね」

 そう言ってウチはレイトウコを出た。

 レイトウコにある噴水と繋がっている水路の真横にある通路に沿って歩くとある部分で足を止めた。そこは真上から壁に沿って水が流れており目の前の壁には水が流れていた。

「普通の《魔法少女》はちょっと見ただけじゃあ分からないやね。けれどウチには分かる」

 呟きながらウチが右手を翳すと魔法陣と隠し扉が出現した。隠し扉の施錠は魔力によって簡単に行う事が出来た。

 扉を開くとそこには十二個の棺があった。

 中に何が入っているのかを承知していたウチは躊躇無く棺の蓋を開いた。

 そこにはウチの頭に入っている、浅海サキと宇佐木里美、神那ニコの持つ記憶と寸分違わぬ姿で和紗ミチルのクローンが入っていた。

 もう1つの棺を開くとやはり和紗ミチルのクローンがもう一人、棺に入っていた。

 その背後にある小さなテーブルには合成ソウルジェムを納めた魔法陣が敷かれていた。

「12体のクローン。いや。《合成魔法少女》か。馬鹿な事をしたものやね・・・」

 口では避難する言葉を発したウチだったが特にそこまで《プレイアデス星団》を非難する気持ちは殆ど無かった。ウチはそれよりも酷い事をしている。

 それよりもウチの心に浮かんだのは《合成魔法少女》を作り出したその先にはウチを言葉と威圧だけで敗北させた昴かずみの存在だ。

 最もこの時間軸ではもう昴かずみが誕生する余地が無く再戦する事は無い。

(代わりに《合成魔法少女》の和紗ミチルを殺して能力を奪って憂さを晴らすか。まずはイクス・フィーレで合成ソウルジェムの調査を・・・)

 思考を更に続けようとした時、結界が揺れたのをウチは感じ取った。

「この揺れは・・・。侵入者ね。それも《魔法少女》や・・・」

 ウチの《操る魔女達》が施した結界に《魔法少女》が侵入すればそれはウチも感じ取る事が出来た。アンジェリカ・ベア―ズの調査を打ち切り建物の外へ出た。

 その間にウチは《操る魔女達》に指示を出して《操る魔女達》を結界の奥へ引っ込めると結界の中にある侵入して来た《魔法少女》のいる通路をウチの方へと向けた。

 これで侵入して来た《魔法少女》はウチの元へ現れる。既に臨戦態勢を整えたウチの目の前で結界の扉が開くとそこから現れたのはウチと同じく既に臨戦態勢を取った2人の《魔法少女》だった。

 2人の《魔法少女》の憎悪に満ちた顔を見てウチは驚いていた。

「何者なんや!?」

 そう叫びながらウチは驚いてしまった理由を考察していた。何故なら2人の《魔法少女》の顔はウチが倒した神那ニコと《プレイアデス星団》の記憶によれば《魔女化》して《プレイアデス星団》に倒された飛鳥ユウリに酷似していた。

 ウチは気が付いていた。酷似なんて生易しいモノでは無い。まるで同じ顔をしていた。

「死ね!」

 飛鳥ユウリと同じ顔をした少女は躊躇無く手に拳銃の様な武器を魔法で作り出すとウチに向けて続け様に撃って来た。

 銃撃程度は簡単に交わす事は出来た。交わしながらもウチは思考する事を休めなかった。

 暫くしてウチは神那ニコと同じ顔をした少女の正体は感付いていた。

「なるほど。アンタ、聖カンナやな?神那ニコが奇跡で作り出した自分の『if』の」

 ウチの言葉に黒く丸いマークの施された《魔法少女》としての姿をした聖カンナは少し驚いた様子を見せた。

「そこまで私の事を知っているなんてね・・・。そうよ。私は聖カンナ。《プレイアデス星団》への復讐を邪魔したおまえを殺す者よ!」

 叫び聖カンナは右手をウチへと向けて来た。

「レンデレ・オ・ロンペルロ!」

 神那ニコの技を放って来た事にウチは驚き回避が遅れた。

 咄嗟に浅古小巻の盾付きポールアックスを取り出すとポールアックスの盾をウチに向けて展開した。この盾は敵を閉じ込めるのにも使えるが緊急時の防御にも使う事が出来る。

 攻撃を凌いだウチは一旦、距離を取ろうとした。もしかしたら聖カンナはウチと同じタイプの《魔法少女》かも知れない。ウチと同じ様に他人から魔法を奪ったり、御崎海香の様にコピー出来るのであればかなり手強い。

「コルノ・フォルテ!」

 飛鳥ユウリ似の少女の叫びと共に魔力で出来た闘牛が現れウチに突進をして来るのが見えた。ウチは地面に魔法陣を敷くと速度低下の魔法を発動させた。

 聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女の動きが緩慢となったのを見計らいウチはエレガンテ・ファンタズマを発動させた。

 直ぐにウチは閃光と共に15人程に分身した。

「分身!?ロッソ・ファンタズマか!」

「しゃらくさいんだよ!」

 その様子を見て本物のウチは2人が分身に気を取られている間にアンジェリカ・ベア―ズの入り口へと戻った。

 どうやら事情は解らないが(解るつもりは無いが)聖カンナは《プレイアデス星団》に復讐をしたいらしい。けれど《プレイアデス星団》は全てウチが殺してしまった。

 聖カンナから復讐の機会を奪った事はどうでも良かったがお陰でウチはまた新しい魔法の活用法を閃いていた。

 ウチの好みから外れていた為、今まで使わなかった魔法を使う事にする。猫の顔をした魔法の杖を呼び出し、魔法陣を敷くとウチは小さく呟いた。

「ファンタズマ・ビスビーリオ」

 直ぐにウチは魔力の手応えを感じ取っていた。

 そしてウチの分身が聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女に全滅させられると同時に彼女達はアンジェリカ・ベア―ズの地下から天井を破壊してウチの前に飛び上がって来た。

「何だあれは!?」

 飛鳥ユウリ似の少女は驚きの表情を見せた。

 そこには同じ顔と服装をした少女が10人、ウチの回りに集まっていた。ただし額には石が埋め込まれていたり手足が人間の物では無かったり羽が生えていたりしていた。

「《合成魔法少女》の失敗作!私の仲間を何に使うつもり!」

 既に姿を現していたウチに聖カンナは憤りを隠さなかった。

「《プレイアデス星団》に復讐をしたいんやろ?ならウチがチャンスをやるで」

 同時にウチは魔法陣を張った。自分の奪った全ての魔法を組み合わせれば可能な筈だった。保障も何も無い。けれど今、ウチはこの閃きを試したかった。

 余りの魔力の余波に聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女も様子を見ている事しか出来なかった。ウチはエレガンテ・ファンタズマで閃光を放つ。一瞬でも視界が見え難くなれば驚きは倍増する筈。確信があった。

 閃光が収まり視界の戻った聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女は驚愕の表情を浮かべていた。

 何故ならウチの周りに《合成魔法少女》の失敗作がいた位置には御崎海香、牧カオル、宇佐木里美、神那ニコ、浅海サキ、若葉みらいの《プレイアデス星団》と佐倉杏子、呉キリカ、浅古小巻、優木沙々の10人が並んでいた。

 全て《合成魔法少女》の失敗作の姿形を魔法で作り変えたのである。

 ただし精神は再現されておらずファンタズマ・ビスビーリオでウチが行動を制御する必要があった。

「ウチが倒した《プレイアデス星団》と佐倉杏子、呉キリカ。あちらにいるのは浅古小巻と優木沙々にございます。さあ復讐を始めさせてあげるで!」

「何を言っているんだ!そんな人形を殺して私の復讐心が満足される訳が無いだろう!」

 怒りに顔を歪ませた聖カンナは手から円を繋げた鞭の様な物を出してウチに向けようとする。その隣に立つ飛鳥ユウリ似の少女も2丁拳銃をウチに向けた。

「さあ。ウチの記憶にある技を見せて貰おうか。やれ!」

 ウチの号令と共に《プレイアデス星団》と佐倉杏子、呉キリカ、浅古小巻、優木沙々は

感情の伴わない能面のまま聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女に攻撃を行った。

 佐倉杏子はロッソ・ファンタズマを使い分身して突っ込んで行く。その横では呉キリカが速度低下の魔法を使い聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女の速度を低下させ優木沙々と浅古小巻が武器を手に聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女に飛び掛って行く。

 ウチの目には聖カンナも飛鳥ユウリ似の少女も佐倉杏子達4人の攻撃に対処するだけで手一杯の様子に見え瞬時に判断を下し控えている《プレイアデス星団》に指示を出した。

 指示に従い《プレイアデス星団》は6人全員の足元に魔法陣を生成した。

 聖カンナが魔法陣に気が付いたのがウチの目に入った。けれどもう手遅れだった。魔法陣の準備は終え魔法が発動する。

「合体魔法!メテオーラ・フィナーレ!」

 ウチの叫びに合わせて《プレイアデス星団》6人は魔力を帯びて聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女に向かってミサイルの様に突撃する。

《プレイアデス星団》全員が魔力を帯び牧カオルのカピターノ・ポテンザで身体を硬質化し神那ニコの再構築の魔力、レンデレ・オ・ロンペルロと浅海サキのピエトラディ・トゥオーノ、和紗ミチルのリーミティー・エステールニと言う三つの魔力を組み合わせ御崎海香のイクス・フィーレで照準を合わせる。宇佐木里美のファンタズマ・ビスビーリオで全員の感覚を共有し若葉みらいのラ・べスティア=群体操作魔法で完全に同一のタイミングで魔法を発動する。

 もっとも和紗ミチルの魔力だけは御崎海香が再現した物だったが、威力は《プレイアデス星団7人》揃った時と変わらなかった。

 優木沙々が魔杖から光弾を放ち呉キリカが聖カンナを追い込んで行く。追い込まれた聖カンナの足に佐倉杏子が槍を多節棍にして絡め取り、浅古小巻はポールアックスに取り付けられた盾を展開し飛鳥ユウリ似の少女を閉じ込める。

 イメージ通りの展開にウチは笑みを浮かべると聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女に向けて《プレイアデス星団6人》をミサイルの様に次々とタイミングをずらして突っ込ませた。

「SHOOT!コネクト!」

 聖カンナの指先から放たれた魔力が自らに突っ込んで来た牧カオルに繋がり牧カオルの動きを止めたが、そんな事は意味を成さなかった。

 動きを止めた牧カオルごとメテオーラ・フィナーレの魔力を帯びた御崎海香が突っ込んだ。御崎海香は聖カンナが咄嗟に盾にした牧カオルに触れたと同時に大爆発を起こした。

「グハアァァァ」

 体中から血を流して聖カンナが吹き飛ばされて行く。魔法を解除せず魔力を帯びたまま突っ込めば魔力の暴走により爆発する。ウチの計算通りに《合成魔法少女》を元に作った《プレイアデス星団》は良いミサイルとなった。

 脇に視線を移すとウチの盾に閉じ込められた飛鳥ユウリ似の少女に向けて魔力を帯びた若葉みらいと浅海サキが飛び込み大爆発を起こした。

「ぐあぁぁあああ」

 飛鳥ユウリ似の少女は全身を焼け爛れさせて動く事も出来なかった。

「さあ。仕上げや!残る全員でトッコ・デル・マーレや!」

 ウチの号令に合わせて佐倉杏子、呉キリカ、浅古小巻、優木沙々、宇佐木里美、神那ニコの6人は手に魔力を集中させると次々と聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女の体に手を突っ込んで体の中を探った。

「やめろー!こんな事で私の復讐は!?」

「殺してやる!殺してやる!」

 聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女の断末魔をウチは聞き流していた。同時に神那ニコが聖カンナから、呉キリカが飛鳥ユウリ似の少女の体からその魂であるソウルジェムを引き抜いた。

 同時に聖カンナも飛鳥ユウリ似の少女の体は動きを止めた。

「後始末は頼んだで」

 神那ニコと呉キリカからソウルジェムを受け取りながらウチは《操る魔女達》を呼び出し聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女の体を食べさせた。

 ふとウチの視界で何かが動いたのが目に入った。動きに苦しげな様子があり好奇心を刺激されたウチが見てみるとそこにはキュウべえに似た生物が苦しげな様子で蠢いていた。

「ぐうぅぅ」

「ジュウべえ!アンタこんな所にいたんやね・・・」

《プレイアデス星団》がキュウべえの死体とグリーフシードを掛け合わせて作り出した不完全なジェム浄化装置・・・。

 ふと思い至ったウチはイクス・フィーレを使いジュウべえの体を解析し魔力を注ぎジュウべえの体を再構成しウチに敵意を抱かない様に意識を抑制した。

「お前・・・。どうしておいらを助けた?」

 ジュウべえの第一声にウチは少し首を傾げた。実際の所、自分でも理由は良く分からなかった。

「そうやね・・・。話し相手が欲しかったと言う所やね・・・。アンタなら裏切る事も無いやろ?ジュウちゃん」

「ジュウちゃん?俺の名前はジュウべえだぜ?」

「そうじゃないで。あだ名や。これからはウチの話し相手になって貰うんやからな」

 肩を竦めて語るウチに対してジュウべえは少し考えていたが直ぐに返事を返して来た。

「そうだな。どうせおいらはアンタ無しじゃ生きられない体なんだしな。良いぜ。アンタに付いてくよ。えーと?」

「ウチは・・・。菖蒲彩月や。行くで。ジュウちゃん」

「あいよ。彩月」

 アンジェリカ・ベア―ズに入るウチとジュウちゃんに続いて佐倉杏子、呉キリカ、浅古小巻、優木沙々、宇佐木里美、神那ニコも付いて来ながらその姿は元の《合成魔法少女》へと戻って行った。

 ウチが命じると6人の《合成魔法少女》は元の、いわば霊安室へと戻って行った。

 レイトウコに入ったウチは再構成の魔力で椅子を構成するとそれに腰かけ封印されたソウルジェムと魔法少女の体を見つめた。

 魔法少女の体は《操る魔女達》の餌にしてしまえば良い。ソウルジェムはゆっくりと1つずつ砕いて自分の力にしてしまえば良い・・・。

「まずはこの2つからやね」

「何をするんだ?」

 ジュウちゃんの質問にウチは笑顔で答える事にした。

「ウチはね相手の《魔法少女》のソウルジェムを砕く事で相手の魔力や因果を吸収出来るんや。まあ百聞は一見にしかずやな。見てみい」

 呟きウチは握り締めていた聖カンナと飛鳥ユウリ似の少女のソウルジェムを同時に握り潰した。

 ウチの体と魂=ソウルジェムに因果と記憶が流れ込んで来る。流れ込む記憶の中には魔法少女の感情も混じっている。ウチの心に他人の激情が流れ込む。

(ついさっき殺されたのだから激情が流れても仕方ない)

「ウガアアアアアアアアアアアア!」

 ウチは流れ込む《魔法少女》の激情に身を委ねながら叫び続けた。

 叫び心に走る痛みに耐えながらウチは自分が強くなって行く事を実感していた。

「ウチが・・・。ウチはより強くなっていくんや!」

 そんなウチの様子をジュウちゃんは興味深げに見つめていた。

 

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