偽書魔法少女サツキ☆マギカPSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI SATUKI MGICA 作:ジャックノルテ
あれから数日間、ウチはあすなろ市において《操る魔女達》の結界の中に取り込んだアンジェリカ・ベア―ズの研究室で《プレイアデス星団》の回収したソウルジェムを幾つか砕き更に因果を高めていた。
そうやってソウルジェムを砕いて行く内に分かった事があった。
飛鳥ユウリに似の少女の正体。それは飛鳥ユウリの親友である杏里あいりだった。
杏里あいりは飛鳥ユウリが《魔女》となり《プレイアデス星団》に倒された事を知り復讐の為にベータ―ことキュウべえと契約をして《魔法少女》となった。
その願いは飛鳥ユウリの命を引き継ぐ為に飛鳥ユウリとなる事だった。契約後、《プレイアデス星団》への復讐を画策していたあいりだったが同じ目的の聖カンナと偶然、遭遇し行動を共に行う様になった。
勿論、聖カンナと遭遇したのは偶然では無く聖カンナがベーターから同じ目的の《魔法少女》が存在する事を聞いていた為に2人は行動を共にしていた。
聖カンナ。神那ニコのIFであり《魔法少女》の奇跡によって生まれた合成人間。正確に言えば奇跡で生まれたとは言え彼女は完全な人間だった。
違いは人間の体を通して生まれたかどうか差だけだった。
聖カンナは当初、その事を知らなかったが飛鳥ユウリが《魔女化》する場面に遭遇し自分のオリジナルである神那ニコを目撃しベータ―に自分が合成人間だと告げられてしまう。
神那ニコへの怒りから聖カンナはベータ―と契約して《魔法少女》となり《プレイアデス星団》に対して復讐を行おうとしていた。
もっとも復讐を行う前にウチが殺してしまったが・・・。
そう言えば聖カンナが奇跡によって生み出された事を考えてみると朱奈に近い存在とも感じ取れた。と言う事は朱奈もある意味では合成人間とも言えるのかも知れなかった。
余談となるがウチが元々いた時間軸では聖カンナは《プレイアデス星団》への復讐を後、一歩の所まで行いながらも昴かずみに敗北した事をウチはベータ―から聞き出していた。
「彩月。お探しの奴がいたみたいだぜ」
魔法で作り出したソファーに寝そべっていたウチにジュウちゃんが声をかけて来た。
「そう。じゃあウチの、いや。アタシの出番だね!」
起き上がりながらウチの姿は佐倉杏子の姿に変わって行った。
「別に姿を変える必要なんか無いんじゃねえのか?」
ジュウちゃんにはどうもウチが戦いの度に一々、佐倉杏子の姿を使うのが理解出来なかったらしい。
「良いんだよ。これが面白いんだからな。最近、ようやくアタシもこう言う事の面白さが分かってきたんだからな」
「どういう事だ?彩月」
ウチの言葉にジュウちゃんは首を傾げていた。
「そうだな。そう言えばジュウちゃんにはまだ話してなかったな。アタシが、いいや。ウチの両親は舞台俳優なんや。主に変わった役を行う変人や。家でも台詞の朗読なんかをしてウチはその声を聞きながら育ったからこんな変な言葉使いになった。まあ標準語にも出来るけどな。ウチには芝居の才能が無かったようやけど姉さんにはあったから今でも両親と姉さんは舞台俳優を楽しそうに行っている筈や。けどな。最近、ウチも佐倉杏子の振りをして戦うのが好きなんや。相手は騙されているのにも気が付かずウチだけが騙したつもりになれる。虚構をさも現実である様に振舞うと言う事がとても楽しいんや。自分の経験では無い他人の人生をさも自分が経験したかの様に装いそれを見る者に錯覚させ感情を揺さ振る。それこそが演技とウチは思うんやけどね」
そう言いながらも両親がウチの捜索届を出しているのは確かだった。ウチが元の姿で街を歩いていると警察に声をかけられる事が多かったので佐倉杏子の姿を借りて街に出る事が多くなっていた。両親に関してはいずれ御崎海香の記憶操作を使い対処する事にしよう。
「まあおいらには良く分からねえな。まあ楽しめるんなら良いんじゃ無いか?」
呆れた様にジュウちゃんはそう答えた。
「それでええのよ。さあ、ウチの実験の始まりね」
そう告げると同時にウチの意思を感じ取った《操る魔女達》は直ぐに行動を引き起こした。ウチが探していたある《魔法少女》を結界に取り込む為である。エレガンテ・ファンタズマを応用してウチは目の前に結界内部の映像を映し出した。探していた《魔法少女》は結界内部に取り込めた様である。
「すぐに戦ってやる。双樹姉妹」
双樹姉妹。彼女達は姉妹と言われているが普通の姉妹では無かった。何故なら彼女達は1つの体に2つの心を持った《魔法少女》だったからだ。そんな2人はある物に執着を持っていた。それは他の《魔法少女》の持つソウルジェムだった。ソウルジェムをコレクションする双樹姉妹は獲物を求めて放浪する内に聖カンナと出会い手を組んだ。
ただし聖カンナが具体的な行動に出る前にウチが殺してしまった為に協力関係の約束だけが残っていた。映像ではウチの結界の内部で双樹姉妹はウチが放った《使い魔》と戦っていた。
ウチは結界を操作すると双樹姉妹のいる場所へと通路を作り上げそのまま進み結界の影から双樹姉妹を観察した。
「カーゾ・フレッド!」
今は双樹ルカの姿で使い魔を相手に戦っていた。赤い着物の様なドレスに刀を持った武家の様な少女が次々と《使い魔》を倒して行く。
最後の《使い魔》を倒した時、躊躇う事無く双樹ルカは持っていた刀をウチのいる方向へ向け呟いた。
「そこにいるのは誰でしょう?出て来なさい。いるのは分かっています」
どうやらウチは気配を消すと言うのが苦手らしい。巴マミの時と言い簡単に見つかる様では都合が悪い。もう少し隠れ方を勉強する必要がある様に感じながら双樹ルカの前に姿を現した。無論、佐倉杏子の姿のままで。
「あなたは・・・。確か佐倉杏子ですね。あなたが私をここに誘い込んだのですか?」
どうやら双樹ルカは佐倉杏子の事を見知っていたらしい。
「だとしたらどうなんだよ!」
佐倉杏子の口調を出来るだけ、真似てウチは答えてみる。相手がウチの正体に気付いていないと言う所が少し笑えた。
「まったく・・・。少し勉強不足ではありませんか?私達に1人で勝てると思っているのですか?」
そう叫び双樹ルカは手に持った刀で切り付けて来たのでウチは右手に槍を出現させると槍の柄で受け止め、同時に柄を開いて鎖で繋がる多節棍で双樹ルカの刀を絡め取り動きを封じた。
「これで動きを止めたつもりですか?」
双樹ルカの質問にウチは答えずに地面に右足を突き出すとそのまま蹴り上げ多節棍となった槍の端を右手で握ったまま上空に身を乗り出すと左手に魔力を溜めて叫んだ。
「ロッソ・ファンタズマ」
呟くと同時にウチの分身が双樹ルカの左右前後に4体ずつ現れて双樹ルカは少し驚いた顔をしていたが両の瞼を閉じて開きながら呟いた。
「カーゾ・フレッド セコンダ・スタンジオーネ!」
双樹ルカがそう叫ぶとの握っていた刀の刀身から氷の結晶が出現すると四方へと放たれウチの分身を簡単に倒しウチの方に刀を向け言った。
「こんな分身で私を倒せると思ったのかしら?」
けれど双樹ルカは見当違いの方角を向いていた。ウチは既に真正面に降り立っている。
「遅いのはアンタや」
上空にいるウチが分身を双樹ルカの左右前後に4体、出現させたのは囮の為だった。速度低下の魔法を確実に発動させる時間を稼ぐ為に分身を出現させたのだ。
「!?」
驚く双樹ルカは咄嗟に防御しようとしたがウチの動きは速く一挙に魔力を帯びた右手を双樹ルカの体に突き入れていれソウルジェムを抜き取り後ろに下がった。
普通の《魔法少女》ならばソウルジェムをトッコ・デル・マーレで抜かれた時点で動きが止まってしまう。けれどこの双樹姉妹は違っていた。彼女達は1つの体に2つの心を持っている。だから直ぐにもう1つの人格が体を動かし出す。
「よくもルカのジェムを!あなたスキくない!」
そう叫び双樹あやせは純白のドレスの様な《魔法少女》としての姿に変身しながら魔力で生成した洋風の剣に炎を纏わせウチに向けて来た。
「アヴィーソ・デルスティオーネ!」
多数の炎がウチに向かって来るがウチにはスローモーションの様に感じられた。実際、双樹あやせ自身も放つ魔法の速度も速度低下の効果によって落とされていた。
動きの遅い双樹あやせを見ながらウチはそろそろ実験を始める時だと感じ取っていた。
既に必要な物は手に入れている。右手に握り締めた双樹ルカのソウルジェムに魔力を注ぎ解析し操作する。そうしながらウチに向かって来る多数の炎をウチの魔力で起こした圧力で弾いた。
「何!?」
「変身」
驚き攻撃に転じる事が出来なかった双樹あやせの目の前に右手で握った双樹ルカのソウルジェムを掲げてウチは光へと包まれて行く。
光が収まった後に双樹あやせの目に写らせたのは双樹ルカの姿をしたウチの姿だった。
純白のドレスに刀を持った双樹ルカそのままの姿でウチは双樹あやせを視界に捉えた。
「あなたの片割れの魔法を使わせて貰うわよ」
「まさか・・・。ルカのジェムを使って!?返せ!それは私達のモノだ!」
激情に身を委ね双樹あやせはウチに剣を振り下ろした。ウチもそれに対して双樹ルカの刀で受け止め鍔迫り合いになる。鍔迫り合いする剣と刀から溢れる炎と氷の魔力が反発し合い回りに白い蒸気が広がって行く。
「返せ!ルカのジェムを返せ!」
その言葉を聞いてウチは少し呆れた思いを抱いた。
「何を言ってるんだ!手前らだってソウルジェムを奪っていただろう!奪われないとでも思っていたのですか?」
挑発の為に最後に言った言葉だけは双樹ルカを真似て言って見た。効果は直ぐに現れ、双樹あやせの表情は悪鬼の如き表情へと変化して行く。
「あなた!殺してやる!ジェムなんか取らない。あなただけは殺してやる!」
「そう。でも殺されるのは私じゃない。あなたよ」
「アヴィーソ・デルスティオーネ!」
「カーゾ・フレッド」
双樹あやせが詠唱系の炎の魔法を使ったのに合わせてウチも詠唱系の氷の魔法を放った。
2つの相反する魔力がぶつかり巨大な衝撃派を作り出す。
巴マミや《プレイアデス星団》、双樹姉妹の使う詠唱式の魔法は口に唱えてしまえば精神に攻撃を受けても余程、魔力が減っていなければ自動で発動する事が強みだった。逆に一度、発動した物を止める事が出来ないと言う欠点もあったが。
また想像系や願いによって作り出された固定魔法は意思次第で威力が上限すると言う利点と欠点を持ち合わせ発動は自由自在だった。
衝撃波に吹き飛ばされながらウチは同じ様に吹き飛ばされている双樹あやせから目を離さなかった。魔力によって飛んで来た双樹あやせは再びウチに向かって来ようとしていた。
僅かであるがウチが双樹あやせに押されていた。やはり魔力の使用頻度と使用経験の違いから来る差だとウチは感じ取っていた。
飛んで来る双樹あやせを見ながらウチは少し考えこの戦いにふさわしい結末を思い付きその為の行動を起こした。
魔力を持っていた刀に込め目の前に魔法陣を出現させる。
「何!?」
ウチに向かっていた双樹あやせは驚き空中で静止した。まるでそれに合わせるかの様な丁度良いタイミングで魔法陣から人影が現れ双樹あやせに向かって行った。
「があああああああ!」
人の形をしていながらも人の理性を持たないただ戦うだけの存在。暴走した合成魔法少女《かずみシリーズ》の一体が双樹あやせに爪の生えた腕を双樹あやせに振り下ろし双樹あやせの腕を傷付けていた。
「ぐっ。何だ!?こいつは!?」
驚く双樹あやせを見つめたウチはそのまま《操る魔女達》に結界内部の奥の階層への扉をウチの目の前に開かせるとウチは奥の階層へと降り立った。
エレガンテ・ファンタズマとコネクトを使い双樹あやせの様子を映し出して見ると双樹あやせは《かずみシリーズ》の一体を追い詰めていた。
「時間は余り無さそうやね。まあ、ええわ。やってみる価値はあるんやから」
言いながらウチは双樹ルカの姿を解き佐倉杏子の姿に戻ると双樹ルカのソウルジェムを左手に握り右手に御崎海香の魔法書を出現させ解析魔法、イクス・フィーレを放ち双樹ルカのソウルジェムを解析して見る。解析するとやはりソウルジェムにはウチの求める情報も存在していた。
ウチの求める情報をソウルジェムから引き抜き今度は神那ニコのプロドット・セコンダ―リオを発動させ血の通った肉体を作り出す。肉体のコピー。クローン。双樹ルカの肉体をウチは作り出していた。
ウチが見たそのままの姿と服装でコピーした双樹ルカの肉体が目の前で完成していた。コピーの肉体にコネクトの魔法で強制的に双樹ルカのソウルジェムを繋ぎ合わせ固定して見た。
見る見る内に始めは生命力に乏しかった瞳に光が宿り埋め込まれたソウルジェムから魔力が放出されて行った。
「ここは・・・?あなたは!」
始めは呆然としていた双樹ルカだったが目の前にいるウチを見て瞬時に《魔法少女》としての姿に変身すると手にした刀でウチに切りかかって来たのでウチも右手に槍を出現させ刃と刃をぶつけ合わせた。
「くっ。ならば私たちの本気を・・・!?」
ようやく双樹ルカは体の、いや。魂の異変に気付き後ろに下がった。その肉体には1つの意識しか存在していない。双樹ルカにとってそれはあり得ない事だった。双樹と言う苗字が示す通りに双樹ルカとあやせは1つの体に2つの心を持っていた。けれども今は2つの体に心は分かれてしまっている。普段から2つの心で一心同体である双樹ルカとあやせにとって今の事態は異常事態だった。
「あなた!私たちに何をしたです!あやせのジェムは!」
双樹ルカの台詞を聞いてウチは少し笑みを浮かべていた。慌てふためく双樹ルカの様子が可笑しかったからだ。
「ふーん。そんなに片割れの様子が気になるのか?ならアタシが見せてやるよ!」
ウチは幻惑の魔力、エレガンテ・ファンタズマで目の前に掲げた右手の中に幻惑で作られた双樹あやせのソウルジェムを出現させた。双樹ルカの記憶から双樹あやせのソウルジェムの形状は読み取っていた為、幻惑のソウルジェムを出現させる事は容易かった。
そのままウチの姿は光に包まれ双樹あやせの姿へと変身した。けれども双樹あやせのソウルジェムを使っていない為、双樹あやせの能力を再現する事は出来ずただ外見だけを真似ただけだったが双樹ルカへの効果は絶大だった。
「あなた・・・。あやせのソウルジェムに何を!?」
「簡単な事さ。アタシの魔法は幻惑。応用する事で他人のソウルジェムを操る事も可能なのさ」
明らかな嘘を告げながらウチの心は苦笑していた。まあ相手が嘘を見抜ける筈が無いと感じてはいたが・・・。
「あなた。死んでもらっても構わないでしょう?」
「死ぬのはアタシじゃなくてあんたかも知れないぜ!」
お互いの叫びがスタートの合図となってウチと双樹ルカは互いに魔力で出現させた剣と刀をぶつけ合った。
魔力で作られたとは言え刀と剣。鉱物と鉱物がぶつかり合う度に瞬間的に火花が飛ぶ。
ウチのソウルジェムを通して強化された視力を持つ両目にはその光景が夜空を彩る花火の様にも感じられた。しかし余り長くこの花火を楽しむ訳には行かない。ウチの定めた結末に双樹姉妹を誘導するには適度に切り上げる事が必要だったからだ。再び剣に魔力を集中すると目の前に空間移動の魔法陣を出現させ《かずみシリーズ》を一体、出現させると双樹ルカに襲い掛からせた。
「こいつは!?」
「ガアアアアアア」
驚き守りの体制に入った双樹ルカに対して意図的に暴走させられた《かずみシリーズの一体》は容赦無く魔力で生成した杖で叩き付けていた。防戦に転じた双樹ルカを見ながらウチは結界を操作すると別の階層へと移動した。
その場で双樹あやせの姿を解いて佐倉杏子の姿に戻るとエレガンテ・ファンタズマとコネクトと魔女を操る力を複合して結界内部の様子を映し出す。
別々の階層で双樹あやせと双樹ルカはウチが送り込んだ《かずみシリーズ》と戦っている様子だった。
双樹あやせの方は《かずみシリーズ》を倒して既に別の階層へと移動していた。一方で双樹ルカも丁度良く《かずみシリーズ》を倒していた。
2人の様子を見たウチは結界を操作して双樹あやせと双樹ルカのいる階層を繋ぎ合わせた。
結界の階層が突如として動き出した事に双樹姉妹が驚いているのが映像から見る事が出来た。
双樹あやせも、双樹ルカもウチを探して結界の中を歩き続けていた。距離が近い為にお互いのソウルジェムから発せられる魔力を頼りに互いを探している様子だった。
そして・・・。双樹あやせと双樹ルカは結界の中で顔を付き合わせた。
けれど2人の表情が変わる事は無かった。憎しみの表情のままに2人は剣と刀をぶつけ互いの魔法をぶつけ合っていた。
「ルカのジェムを返せ!」
「あやせのジェムを返して貰います!」
同時に叫び2人は互いに相手をウチが化けた物だと思い込んでぶつかっていた。その様子が余りにも可笑しくてついウチは笑っていた。
「傑作や。お互いを本物と見抜く事も出来ずに戦いあうなんて・・・。本当に笑えるで。あはははははは」
声に出して笑い愉快な気持ちを抱きながらもウチは目の前で映し出している双樹姉妹の戦いから目を離す事は無かった。双樹姉妹がある程度、魔力を使い切った時が勝負の時。
ウチが計った目安によればそろそろ双樹姉妹は魔力を使い切る筈やった。予想通りに双樹ルカと双樹あやせはお互いに必殺の魔法、アヴィーソ・デルスティオーネとカーゾ・フレッドを撃ち合って魔力を消耗していた。ウチは今だと感じていた。感覚から来る直感に従ってウチは双樹姉妹の戦う階層までコネクトの魔法を使い結界を繋げていたが、まだ双樹姉妹の様子は映し出しておりウチの目を引く場面が写っていた。
魔力を消耗し互いに肩ヒザを付く双樹姉妹。けれど双樹あやせは懐から取り出したグリーフシードを自身のソウルジェムに近付け穢れを取り除くとそのままアヴィーソ・デルスティオーネの炎を足に集中すると炎を推進力とする事でそのまま双樹ルカに突っ込んで行った。
「死ね!ルカのジェムを奪った、スキくないあなた!」
その言葉を聞いた途端、双樹ルカは呆然とした表情を見せ呟いた。
「あやせ!?」
「!?」
双樹ルカの呆然とした表情を見て双樹あやせもその表情から読み取れる意味を感じ取っていた。
「ルカ!?」
僅かに双樹あやせの握っていた剣の切っ先が緩む。
「つまらないやね。この方が悲劇やろ!」
そう呟きウチはコネクトの魔法を放った。双樹あやせの腕に取り付いたコネクトの効果によって双樹あやせの握っている剣の切っ先は真っ直ぐに戻った。同時に双樹あやせの突き立てた剣は双樹ルカの胸に深々と突き刺さっていた。剣を胸に刺され血反吐を吐き崩れ落ちる双樹ルカ。その様子を双樹あやせはただ呆然と見つめていた。
「そんな・・・。私がルカを殺したの!?」
「わ・・・た・・しが・あ・や・せを・・・殺そ・・・・とした・・」
双樹姉妹は目の前の出来事にただ呆然として回りを探る事も出来ない様だった。
既に双樹姉妹の背後まで回っていたウチは佐倉杏子の槍を双樹姉妹へと向けた。魔力で形を変化させる事が出来るこの槍は刃の部分を開く事で物を摘む事も可能だった。多節棍となり伸びて行く槍が双樹あやせの体を貫きソウルジェムを奪い取った。ついでウチの槍は双樹ルカの体をも貫いてソウルジェムを奪い取った。奪い取った時点でソウルジェムにはトッコ・デル・マーレの魔法が施されており直ぐに肉体とソウルジェムの繋がりが分断され双樹姉妹は互いに動く事は無かった。
「さあ。お前ら。餌の時間だぞ!」
ウチが呼び掛けると結界の置くから《操る魔女達》が現れて早速、双樹姉妹の遺体を貪り食い始めた。
ウチの手の中には双樹姉妹のソウルジェムがある。
少し濁ったソウルジェムだ。
「思ったよりは楽しめたぜ。双樹姉妹」
佐倉杏子の口調を真似てウチは踵を返すとアンジェリカ・ベア―ズへと足を進めた。
もうウチより強い《魔法少女》はいないとウチは感じ始めていた。
あすなろ編はこれでお終いです。
次回の更新からは各地を放浪する「放浪編」がスタートします。