偽書魔法少女サツキ☆マギカPSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI SATUKI MGICA 作:ジャックノルテ
幸福な魔法少女なんやから
風見野市内・・・。
今、この街にはウチが《操る魔女達》の作り出した結界がありその中にはアンジェリカ・ベア―ズと言うテディベア博物館がある。
ここは《プレイアデス星団》と言われる《魔法少女》達が研究所兼、拠点として使っていた場所でウチは暫くの間、ここで過ごしていた。
《プレイアデス星団》が回収した《魔法少女》のソウルジェムを砕き魔法と因果を吸収するのは骨が折れた。既に濁り始めているソウルジェムを砕くのは穢れをも取り込む事になるのでウチが《操る魔女達》には何匹か犠牲になって貰ってグリーフシードになって貰うと穢れを落としてから魔法と因果を取り込んでいた。
最もグリーフシードに大量の穢れを吸わせれば、また新しい《魔女》が生まれるので、新しい《魔女》を優木沙々の魔法でコントロールすれば良いだけだったが。
ソウルジェムを砕いて、因果と魔法を取り込むのは記憶ごと取り込んでいた為に2つ取り込むと8時間ほど精神的な負担から行動する事は出来なかった。
行動出来ない間は割と暇なので大抵は眠って過ごしていたがたまにウチはアンジェリカ・ベア―ズ内にある研究室にあるパソコンでインターネットを見たりしていた。
しかしインターネットを見る為には一々ウチが魔法で回線を繋がなければならない為にインターネットは徐々に使わなくなった。
その代わりに風見野市内にある書店の内部にある本を丸ごと結界内に取り込んで本を読み漁っていた。
読み漁る中で花言葉の本をウチは気に入って読み漁っていた。
今日もジュウちゃんと一緒に本を読み漁っていた。
「ねえジュウちゃん。ウチは菖蒲彩月。ウチの苗字も名前も花言葉に変換出来るんよ」
「へー。どう言う意味になるんだよ?」
「菖蒲は情熱。彩月は幸福。まさにウチを現しているやない。ウチは情熱を持って《最強の魔女》となろうとする幸福な《魔法少女》なんやから」
「こじ付けだな。オイラにはとても理解出来そうも無いな」
「まあそれで良いのよ」
ウチはベータ―がウチの気持ちを理解出来ないと言っても見逃す事にした。
「花言葉は理解出来ないが彩月にはこの花こそが相応しいんじゃないか?」
そう言ってジュウちゃんが起用に長耳でページをめくると1つの花を指し示した。
「アイリス。これはギリシャ語で虹と言う意味に由来した名前の花だ。《魔法少女》姿の彩月の髪とソウルジェムは虹色をしている。虹色の《魔法少女》にはピッタリな花だろう?」
ジュウちゃんの言葉にウチは納得していた。そう。ウチの髪とソウルジェムはウチが《魔法少女》に変身すると同時に紫色から虹色へと変化していた。
それは様々な《魔法少女》や少女から因果を奪い去った罪人の証とウチは捉えていたが・・・。
「そうやね・・・。アイリスか。覚えておく事にするわ」
そう答えながらウチは再び花言葉の本に視線を戻した。そのページにはアザレアの花が写っている。そのツツジ科の植物の写真を見た時にウチは筒地綾女が奇跡で作り出した少女、朱奈を思い出した。
やがて鹿目まどかの因果を奪おうとすれば鹿目まどかを守ろうとしている暁美ほむらと朱奈と戦わなければならない事をウチは感じ取っていた。
そしてもう1人相手はいる。志筑仁美。彼女は驚いた事にウチが気紛れで《魔法少女》としての因果を与えた少女だった。観察してみると志筑仁美は暁美ほむらと同じクラスの生徒であり、《魔法少女》となった事で自然と暁美ほむらと手を組む事になったらしい。
けれど関係は無い。ウチの前に立ち塞がるのなら倒して行くまでや。
ウチは近い将来の戦いに向けて思いを馳せながらも今はジュウちゃんとの読書を続ける事にした。
○
あれから数日・・・。時は来た。
ウチの因果は既に以前と比べ物にならない程の量となっていた。今のウチならば《ワルプルギスの夜》でさえも倒す事は十分に可能だろう。
最早、暁美ほむらや志筑仁美、朱奈とは比べ物にならない程、巨大な因果をウチは手に入れていた。
見滝原市を訪れたウチの目には鹿目まどかが志筑仁美と歩いている姿が目に写っていた。
今日は休日であり2人とも私服を着て散歩をしている様だった。
ウチの目には見える。暁美ほむらは離れた場所を歩いている。朱奈は近くの河川敷で魔法の練習をしている・・・。
ビルの上から4人を見張る事などウチにとっては容易い事だった。
「さて・・・。始めやすか」
そう呟くとウチは《操る魔女達》のいる結界の中へと入り込んだ。
「とうとう始めるのか。彩月」
結界の中にいたジュウちゃんがウチの側で語りかけて来る。
「ええ。と言っても直ぐに鹿目まどかの因果を奪う訳では無いわ」
「じゃあ何をするんだ?」
ウチはここで初めてジュウちゃんの方を向き答えた。
「暁美ほむらや朱奈、志筑仁美にもリベンジを行うチャンスは与えるべきなんよ。今日は前哨戦と言った所ね。それともう1つ、試したい事があるんよ」
「また何か実験か?」
ジュウちゃんは少し呆れ気味な顔をウチに向けていた。
「そうやね。今試したいのは・・・。出生の秘密を知ったら少女はどうなるか、や」
「どう言う事だよ?」
そうか。ジュウちゃんは知らない。朱奈が誕生した本当の秘密を・・・。
「まあ見てのお楽しみよ。ジュウちゃん。もしかしたらとても面白いモノが見られるかも知れへんで」
「そうかい」
ウチの言葉にジュウちゃんは困惑した様子を見せながらも頷いていた。
「さて・・・。まずはここからや!」
ウチは《魔法少女》としての姿に変身するとコネクトの魔法をしようして結界と接続をした。これでウチの思う通りに直接、結界を操作する事が出来る。
ウチの操作通りに結界は蠢き、志筑仁美と鹿目まどかを結界内に取り込み別々の階層に閉じ込める事が出来た。志筑仁美のいる階層には外との入り口を設けて暁美ほむらと朱奈が現れた時の備えを施し、志筑仁美には数匹の《使い魔》を放っておき、時間稼ぎの準備も出来ていた。
結界内部の様子もウチの目に写っている。驚く鹿目まどかに対してウチはコネクトで接続するとエレガンテ・ファンタズマを使い眠らせ、結界を操作して作り出した檻に閉じ込めておいた。檻の前には最近、ウチが操った《鎧の魔女》を配置して万一の場合に備えていた。
志筑仁美は既に《魔法少女》としての姿に変身すると《使い魔》を相手に戦っていた。
風の魔法を持ち自らの拳を武器とする《魔法少女》。志筑仁美の戦い方を見てウチは笑みを浮かべていた。
どうやら収穫の時が来たらしい。ウチが蒔いた種は見事な芽を伸ばし花々を開いたのだ。
(暁美さん!朱奈さん!聞こえますか!?)
不意に志筑仁美が暁美ほむらと朱奈にテレパシーを送っているのがウチにも聞こえて来た。
この結界の中でテレパシーを使えば全てウチに筒抜けになってしまう。
ウチは少しだけ結界の入り口を広げると暁美ほむらと朱奈に志筑仁美のテレパシーが届き易い様にした。
(暁美さん!朱奈さん!聞こえますか!?)
(志筑さん。どうしたの?)
朱奈の答える声が聞こえて来た。どうやら上手く行っているらしい。
(朱奈さん。私(わたくし)は今、突然、出現した結界の中におりますの。ただ私の友達も巻き込まれてしまって・・・)
(話は聞かせて貰ったわ。直ぐに行くわ)
暁美ほむらも志筑仁美のテレパシーに答えて来た。これで2人ともウチの結界にくる事が確実となった。
(判りました。お二方をお待ちしております・・・)
そう答えて志筑仁美は《使い魔》との戦いを続けていた。
「さて・・・。じゃあ次の準備やな」
そう言いながらウチはエレガンテ・ファンタズマを使うと自らの姿を佐倉杏子へと変化させた。
「どうして佐倉杏子の姿になるんだ?」
再度のジュウちゃんの質問に佐倉杏子の姿をしたウチがなるべく佐倉杏子の口調を真似て答えてみた。
「そうだな。暁美ほむらと朱奈。この2人はアタシ、佐倉杏子と面識があるからな。この姿ならもしかしたら油断を誘えるかも知れないからな」
ウチが前にいた時間軸では暁美ほむらと朱奈は佐倉杏子と行動を共にしていた。
ならば佐倉杏子の姿を取れば少しは戦いを優位に進められるかも知れなかった。
「そんなに上手く行くものかねえ?最初から全力で潰しちゃえば良いだけだろ?」
ジュウちゃんは呆れている様子だった。
「分かってねえな。これが楽しいんだよ。待ってな。面白いモノが見られるからな」
ウチは言い切りジュウちゃんをその場に残して鹿目まどかのいる階層を目指して歩き出した。
既にウチの目には志筑仁美と合流した暁美ほむらと朱奈の姿が目に写っていた。
必死に戦う朱奈の姿を見てウチは佐倉杏子の姿のままで笑みを浮かべた。
「朱奈。アンタは筒地綾女の事を忘れたまま戦い続けているけれどアタシが思い出させてやるよ。それと・・・。筒地綾女が隠した出生の秘密も教えてやる・・・」
ウチはこれから起こる戦いと本当の事を知った朱奈がどうなるのかを楽しみとしながら戦いの場に向かった。
○
ウチの手の中にエレガンテ・ファンタズマを応用した映像が映し出され暁美ほむらと志筑仁美、朱奈の様子が写っていた。
3人が《鎧の魔女、バージニア》のいる、鹿目まどかの囚われた空間に辿り着いたのを見たウチは出番が来た事を知った。
結界を操作して目の前に暁美ほむら達3人と鹿目まどかのいる階層に繋ぐドアを出現させ走り抜けると佐倉杏子の赤い槍を槍投げの要領で暁美ほむら達、3人の目の前に投げ付けた。
突然、投げ付けられたウチの赤い槍に驚いた暁美ほむら達、3人は足を止めドアから降り立ったウチの顔を凝視して驚いた顔を見せていた。
「あなたは佐倉杏子!?」
驚愕の表情を浮かべた暁美ほむらはウチを見てそう叫び武器を持ち直していた。
笑みを浮かべたウチは瞬時に距離を詰めると朱奈に向かって左手を翳し菱形の鎖を朱奈に向かって出現させ壁際に朱奈を拘束した。
「朱奈!」
「朱奈さん!」
朱奈が拘束されたのを見て武器を向けた暁美ほむらと志筑仁美を視界に捉えたウチは、投げ付け、地面に刺さった赤い槍を引き抜くと幻惑魔法、エレガンテ・ファンタズマを使うと2人に分身し暁美ほむらと志筑仁美に同時に襲い掛かった!
「え!?」
「何ですの!?」
ウチの容赦無い突きや多節棍となった槍の攻撃に暁美ほむらと志筑仁美は防戦一方となっていた。
「くっ」
暁美ほむらは左手の盾から取り出したナイフでウチの攻撃を受け、志筑仁美はその素早さを生かしてウチの攻撃を交わしていたと思った瞬間。
「初対面の方に申し訳ありませんが・・・。これ以上は私も許容できませんわ!」
叫ぶと同時に志筑仁美の右手のグローブに取り付けられたソウルジェムの輝くと分身体のウチと距離を詰めるとそのまま右手で正拳突きを行って来た。
余りの威力にウチの分身体を構成していた菱形の鎖ごと分解して消え去ったが、志筑仁美は暁美ほむらと戦っていた本物のウチをも突き、吹き飛ばした。
ウチが結界の壁に吹き飛ばされ、倒れたのを見て《鎧の魔女、バージニア》が動き出そうとしたのをウチは起き上がり右手を上げて制した。
「あなた・・・。誰なの?」
突然、暁美ほむらはウチに武器を向けながらそう呟いた。
「私の知っている佐倉杏子は分身もしなかったし《魔女》を操るなんて魔法は使えなかったわ。姿は佐倉杏子だけれど・・・。あなたは佐倉杏子じゃ無いわね」
もう気付かれた?けれどウチは暁美ほむらがウチを本物の佐倉杏子で無いと気が付いた事に悔しさ半分、嬉しさ半分を感じ関心もしていた。
自然と口頭に笑みを浮かべ宣言する事にした。
「へえ。案外、簡単にばれちゃう物やね。そうよ。ウチは佐倉杏子じゃ無い。ウチは・・・」
エレガンテ・ファンタズマを解除してウチの本当の姿を暁美ほむら、志筑仁美、朱奈に見せ付けた。虹色の髪。虹色のソウルジェムが取り付けられた眼帯。誇り高き黒い衣装。
ウチの真の姿を見せ付けながら視界に入った朱奈を見て、ウチに悪戯心が湧き上がった。
朱奈に対して少し言葉遊びをするのも悪くない。
閃きがウチの頭を走っていた。ウチは筒地綾女の記憶を受け継ぎし筒地綾女とは似て非なる者。
その思いを膨らませ偽名を口走る。
「始めまして。ウチは・・・。そうや。アイリス・アザレアと名乗る事にするわ」
ウチの偽名を聞いても拘束されたままの朱奈や暁美ほむら、志筑仁美の表情に余り変化は無い。
この偽名の意味は直ぐに分かるモノでも無いやろ。そう思い言葉を続けた。
「どうやらあなた達はあの子を助けようとしている様やけど、それはウチに勝てなきゃ無理な相談やね!」
ウチの叫びを合図に《鎧の魔女》が暁美さんと志筑さんに向かって動かすと同時にエレガンテ・ファンタズマを使うと浅海サキの姿に変わった。
「今度は・・・。確か浅海サキだったかしら?これはどう!ピエトラディトゥオーノ?」
ウチが構えた乗馬鞭の先から電撃が放たれ暁美ほむら、志筑仁美を襲った。
「くっ!」
「痺れますわ・・・」
苦痛に顔を歪ませる暁美ほむらと志筑仁美に容赦無く《鎧の魔女、バージニア》にその豪腕を振り下ろさせたが、寸前に苦痛に顔を歪ませながら駆け出した志筑仁美が暁美ほむらを引っ張り交わしていた。
「ふーん。ウチじゃやっぱり同じ精度じゃ使えないや・・・。じゃあやっぱりこっちかな?」
魔法の精度を確認したウチはまた別の魔法を使おうと別の《魔法少女》の姿を取る事にした。結局の所は遊びであり結果はどうでも良い。
そう思いながらウチはその姿を呉キリカへと変化させた。
「あれは!?呉キリカ!?」
ウチの姿を見た暁美ほむらは驚きを素直に現していた。
どうやら呉キリカと暁美ほむらは顔見知りらしい。
「へえ。この人の事は知っているんやね。まあウチの魔法の練習にはなるわね!」
言いながらウチは両手に魔力で構成された鉤爪を精製すると同時に速度低下の魔法を暁美ほむらと志筑仁美に仕掛けた。
ウチを迎撃しようとする暁美ほむらの動きが緩慢なのを見てウチは速度低下の魔法が成功した事を感じ取った。
「暁美さん!」
暁美ほむらの様子を見かねた志筑仁美が脇から飛び出すと腰に挿していた扇子をウチに向かって、大きく振って来た!
巻き起こる風の刃がウチと《鎧の魔女、バージニア》に次々と切り傷を負わせた。
傷を負いながらもウチは速度低下の魔法が志筑仁美に効果を及ぼしていない事を感じ取っていた。
魔力の流れを見るウチの瞳は志筑仁美から流れる魔力がウチの速度低下の魔法を相殺している事を見抜いた。
「そっか。速度を上げる魔法を使っているから速度低下が聞かない訳やね」
傷付き膝を付いていたウチが呟いたと同時に目の前から暁美ほむらが消え、瞬間的に離れた場所に姿を現したのだ。
頭の中に疑問が浮かんだがそれを考える暇も無くウチの足元から連鎖的な爆発が起きた。
咄嗟に痛覚遮断を行うと同時に皮膚が焼ける匂いが鼻に漂ったが無視して硬質化魔法、カピターノ・ポテンザで身を守ると同時に魔力で強引に身体を再生させた。
ウチの脇にいた《鎧の魔女、バージニア》は崩れ落ちてグリーフシードを落としたのを感じ取るとウチ、本来の姿に戻ると朱奈の前に駆け寄り菱形の鎖を使った防御壁を張り巡らした。
ウチの事を朱奈は恐怖と不安の入り混じった瞳で見ている。
「危ない所だったやね。体を硬質化する、カピターノ・ポテンザだったかしら?が間に合わなきゃウチも死んでいる所やわ」
少し傷を負いながらもウチは暁美ほむらと志筑仁美に対する憎まれ口は忘れなかった。
「朱奈さんを離して!」
志筑仁美は躊躇う事無くウチの作った菱形の防御壁に魔力の帯びた拳を叩き付けたが途端に弾かれてしまった。
暁美ほむらも武器をこちらに向けていたがウチは手を上げて暁美ほむらを制止した。
「安心し。これ以上、ウチは戦うつもりは無いで。その証拠に」
ウチはそう言いながら囚われていた鹿目まどかを開放した。
「まどかさん!」
それを見て志筑仁美と暁美ほむらが鹿目まどかに駆け寄り様子を確かめていた。
「良かった・・・」
思わずそう呟いた朱奈の顔をウチは覗き込んだ。
驚いた朱奈の瞳をウチは楽しんで見ながら語りかけた。
「けどまだウチの用は済んでいないのよ。ウチは出来る事を行う主義やから今、朱奈に出来る事をして上げるわ」
ウチにそう言われた朱奈は怯えた表情を見せていた。そうした朱奈の様子がウチの被虐心を刺激した。
「ウチが朱奈の無くした記憶を戻してあげるわ!」
ウチは右手に御崎海香の魔法書を出現させると右目のソウルジェムに魔力を集中し朱奈に対して施された記憶の封印をイクス・フィーレで解析すると記憶の封印を解除した。
見る見る内に朱奈の表情が変化して行く。
「そうだ・・・。わたしは・・・。思い出した・・・。わたし、どうして忘れていたの?わたしの大切な人の事を・・・。綾女ちゃんの事をどうして!?」
力一杯に叫んだ朱奈を見てウチの被虐心を満足させると同時にもっと、心の満足を求めるウチも存在していた。
急激に記憶が戻った事で朱奈は困惑していた。その様子を見て暁美ほむらと志筑仁美は心配そうに朱奈を見つめていたけれどそれはウチには関係無かった。
ウチは菱形の鎖の拘束から朱奈を開放した。座り込んだ朱奈を見てウチは更に残酷な言葉を投げ掛ける事にした。
正直、朱奈がどんな顔を見せるのかウチは知りたかった。
「どうやら思い出せた様やね。筒地綾女の事を。だからウチは筒地綾女が朱奈に隠していた事も教えてあげるわ」
ウチの言葉を聞いた朱奈はビクッとすると幼い子供の様に地面に額を擦りつけて耳を手で覆い目を瞑った。
ある意味では正しい行動とも言えた。
朱奈はこの世に生まれてから三年間しか経っていないのだ。
「聞きたくない!わたしは思い出せただけで良いの!聞きたくないの!」
朱奈はウチに叫んだが、無駄な事だった。
《魔法少女》にはテレパシーがある。
ウチはテレパシーをこの場にいる《魔法少女》全員が聞こえる様にして言葉を思い描いた。
(無駄よ。テレパシーがあるのだから朱奈はウチの話を聞くしか無いのよ)
朱奈は嫌々する様に頭を振った。
そうした行動でもウチの被虐心は高ぶったけれどそれだけじゃあ満足とは程遠かった。
ウチは最大の痛みを伴う言葉を思考した。
(だって朱奈。あなたは筒地綾女が奇跡で作り出さした存在なのよ)
ウチの言葉に朱奈は呆然としていた。暁美ほむらも志筑仁美も驚愕の事実に言葉を失っている様子だった。
朱奈の思考は次々と変化して行く。
(わたしが綾女ちゃんの奇跡で生まれた存在!?じゃあわたしには元々、記憶も家族も無いの!?)
(そうよ。朱奈には記憶も家族も無いわ。奇跡から生まれたのだから何も無いわ)
朱奈の思考は自分には記憶も家族も無いと言う事をウチに付き付けられて混乱していた。
ウチは駄目押しをする事にした。
「信じられないのなら証拠を見せてやるわ」
ウチは再びイクス・フィーレを行うと朱奈にある記憶を見せた。
それは筒地綾女がベーターことキュウべえと契約を結んだ記憶だった。
夜の森の中で筒地綾女とベーターが契約を結び、契約の対価として朱奈を誕生させた記憶・・・。
「朱奈。これが真実なのよ。あなたは筒地綾女の願った奇跡によって生まれたの」
記憶の中で朱奈は自分が奇跡によって誕生させられたと言う紛れも無い事実を付き付けられていた。
ただ呆然と地面に蹲っている朱奈を見てウチは満足を感じていた。
視線を暁美ほむらと志筑仁美に向けると2人は朱奈の様子を見て驚きを見せていた。
(追撃されても困るんやな。あの魔法を使うか)
そう考えるとウチは今まで使わなかった《魔法少女》の魔法を使う事にした。
右腕に黒と緑色の巨大なグローブを出現させ正面に向ける。
「これでウチの用は済まして貰ったわ。それじゃあまた会いやしょう」
黒と緑のグローブから閃光が走り朱奈達、3人は思わず目を瞑っていた。
その隙にウチは結界を操作すると目の前にアンジェリカ・ベアーズに繋がるドアを設けるとその場を立ち去ると同時に結界を離れた場所に移した。
すべき事は全て済ませた。
○
「ふう。やっぱり3対1は、いくらウチでもキツイやね・・・」
そう言いながらウチはアンジェリカ・ベアーズ内部の研究室の椅子に腰を降ろした。
つい先程までウチは暁美ほむら、志筑仁美、朱奈の三人と鹿目まどかの安否を巡って戦って来たばかりだった。
もっとも今日の戦いはあくまでもウチの顔見せ程度と最初から考えており、少し手合わせをして、朱奈にサプライズを施すと撤退した。
「彩月。一体、何をして来たんだ?」
ジュウちゃんはウチが一体、何をして来たのか、気になっている様子だった。
「そうやな。ウチが戦った3人の中で、朱奈だけは特別な存在なんよ」
「どう言う事なんだ?」
「朱奈はな・・・。ウチに記憶を植え付ける実験を行った《魔法少女》、筒地綾女が奇跡によって生み出した少女なんや」
「奇跡によって生み出された少女!?」
ウチの回答にジュウちゃんは驚いた表情を見せていた。
「説明するとやな・・・」
ウチはジュウちゃんに向かって筒地綾女と朱奈の知る限りの記憶を話した。
筒地綾女は既に《魔女化》しウチが倒した事。朱奈は筒地綾女に関する記憶を失っている事を・・・。
「だからウチは朱奈の記憶を戻してやったんや。そのついでに朱奈の出生の秘密も無理やり教えて上げたんやけどね」
そう。ウチは先程、行われた、暁美ほむら、志筑仁美、朱奈との戦いの中で朱奈に対して解析魔法、イクス・フィーレを応用して封印されていた記憶を復活させた。
同時にウチは筒地綾女が朱奈を奇跡によって生み出した記憶を朱奈に植え付けていた。
朱奈は自分がどの様にして生まれたのかを知らなかった。
記憶喪失だと筒地綾女に思い込まされていたのだ。
だからこそ本当の出生を知ってしまえばショックを受ける事は簡単に予想する事が出来た。
「本当の事を知った朱奈がこれからどんな顔をするのか、これから見物やで」
ウチの言葉にジュウちゃんは表情を変える事は無かったが返答はした。
「随分と残酷だな」
「それがウチなのよ」
そう。それがウチ、菖蒲彩月ことアイリス・アザレアの本質・・・。
章のタイトル通りにここから《さつき☆マギカ》は最終章に入ります!
菖蒲彩月の最後の戦いを目撃せよ!
待て!次回!