偽書魔法少女サツキ☆マギカPSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI SATUKI MGICA 作:ジャックノルテ
暁美ほむら、志筑仁美、朱奈の3人と戦い、朱奈に残酷な事実を突き付けた翌日・・・。
ウチはコネクトの魔法とエレガンテ・ファンタズマを応用して暁美ほむらの自宅にいる朱奈の様子を観察していた。
頭から毛布を被った朱奈は少しも動こうとしない。
一方で暁美ほむらの方にもコネクトを引き伸ばして観察すると暁美ほむらは自宅を訪ねて来た志筑仁美と公園で言葉を交わしていた。
「それで暁美さん。朱奈さんの様子は・・・?」
「あの子は・・・。今、ずっと考え事をしているわ」
「そうですか・・・。暁美さんは朱奈さんの秘密を知っていたのですか?」
「どうしてそう思うの?」
「暁美さんは朱奈さんの出生の秘密を聞きながらも驚いた様子を見せませんでした。そこから推測してみただけの事です」
「そうよ。理由は話せないけれど私は朱奈の秘密を知っていたわ。けどれ私は本人に伝えるつもりは無かったわ」
「どうしてですか?」
「これは・・・。朱奈が自分で知ろうとしなければいけない問題よ。他人が簡単に教えて良い問題では無いわ。朱奈が自分の意思で知りたいと願うのならば教えるべきだと私は思うわ」
「暁美さん・・・」
「そうかも知れませんわね・・・。暁美さんの言う通りかも知れません・・・」
会話の内容から察すると志筑仁美は暁美ほむらが朱奈の秘密を知っていて黙っていた事を感付いていた様だった。
志筑仁美の観察力の高さにウチは驚きと同時に感嘆していた。
敵として戦うのに相応しい《魔法少女》だとウチは志筑仁美の事を見直していた。
すると暁美ほむらと志筑仁美の前にベーターことキュウべえが現れた。
ベーターは余程、ウチに対して危機意識を持っているのか、出来うる限りのウチの情報を暁美ほむらと志筑仁美に話していた。
しかし暁美ほむらはその表情から察するとベーターの事をまったく信用していない事が見えていた。
ベーターが立ち去った後に暁美ほむらと志筑仁美はウチを倒す事を互いに誓っていた。
その一方で朱奈の様子を見てみると朱奈はまだ沈んだままだった。
「まだ、戦う時では無いという訳やね」
ウチはもう少しだけ待つ事にした。
たとえ相手が朱奈でもリベンジの機会は与えるべきだとウチは思っていた。
○
二日経ったが朱奈は相変わらずアパートに引き篭もったままだった。
正直、ウチは待つ事に少し飽きていた。
「まったく。主体性の無い子供じゃあ何時まで経っても埒があかへんね!」
強い調子でウチは叫んでいた。幸いここは結界の中にある、アンジェリカ・ベアーズ内の研究室であり大声を出そうと文句を言われる事は無かった。
「だからと言って何か出来る訳でも無いんだろ?だったら待つしかねえじゃねえか」
そう言ってジュウちゃんは欠伸をしていた。
「そうでも無いんやで。ウチにはこれがあるさかい」
そう言ってウチはコネクトを朱奈に接続した。
幸いコネクトは相手に気付かれずに接続を行えると言う魔法である為に朱奈は接続された事に気が付く事は無かった。
「さて・・・。送り込むイメージは・・・。これや!」
ウチは頭の中に筒地綾女のイメージを浮かべた。次にキュウべえの事を思い浮かべた。
ウチの予想通りに頭の中に過ぎった筒地綾女とキュウべえのイメージを見た朱奈はアパートを出ると河川敷の工事現場にやって来ていた。
(キュウべえ!いるなら出て来て。わたし、聞きたい事があるの!)
(どうやら僕に質問があるみたいだね。朱奈)
朱奈のテレパシーに答えてキュウべえが姿を現していた。幸い、ベーターはコネクトの事は気が付いてないか、気が付いているが指摘する気が無いらしく話そうとはしなかった。「ねえ・・・。キュウべえ・・・。正直に答えて。わたしは本当に奇跡で生まれたの?」
「そうだよ。君は奇跡で生まれた。その事に間違いは無いよ。本当は朱奈と綾女が生きている間は誰にも伝えないつもりだったけどね」
ベーターと朱奈の会話は暫く続いていた。やがて朱奈は決定的な質問をベーターに口走っていた。
「キュウべえ。綾女ちゃんはもう死んじゃったの?」
「うん。綾女はもうこの世にはいないよ」
(綾女ちゃんがもういない・・・)
その言葉を聞いたと同時に朱奈が涙を流している事をウチは感じ取っていた。
「世話が焼ける子や」
このまま朱奈が悲しみに沈んでしまうのも困ると感じ取ったウチは朱奈に対して鹿目まどかのイメージを送り付けた。
三日前の戦いで囚われた鹿目まどかのイメージ。
ベーターと契約をして《魔法少女》となり《魔女化》してしまうイメージ。
幸い三日前の戦いでウチは朱奈の頭から朱奈の記憶を引き抜き鹿目まどかと朱奈の関係性を把握してより効果的にイメージを送る事が出来た。
それと戦いたいと言う欲求を朱奈に送り込んでいた。
朱奈の心に戦うと事への肯定が生まれ始めているのをウチは感じ取っていた。
「ねえキュウべえ。私、戦っても良いのかな?」
「君が《魔法少女》として戦う事に僕に異論は無いよ。もし戦いたいのなら戦えば良い。けれどそれが命懸けだと言う事は解っているんだろう?」
「わたし・・・。あの《魔法少女》。アイリス・アザレアと戦う!鹿目さんを守る為に戦ってみせる!」
ベーターの言葉に力強く頷いた朱奈はその場にベーターを置いて行くと街へ繰り出しいた。どうやらウチが送り込んだ戦いたいと言う欲求に従って行動しているらしい。
「少し試してみるか」
そう呟いてウチは《操る魔女達》の《使い魔》を一匹、朱奈の近くに派遣して結界を張らせ、意図的に朱奈に感知しやすい様に魔力を放出させた。
感知と同時に結界に飛び込んだ朱奈は手に持ったボーガンを接近戦用の形態に変えると衝動のままに《使い魔》を切り刻んで倒していた。
この結果にウチは少し驚いていた。主体性の無い朱奈ですらウチの魔法の影響でここまで好戦的にする事が出来たのだ。
「朱奈!?」
「朱奈さん!?」
そこへ暁美ほむらと志筑仁美が結界のあった裏通りに現れた。学校帰りなのか2人とも制服姿のままである。
「暁美さん。志筑さん。ごめんなさい。わたし、決めたの。鹿目さんを守る為にわたしは戦うの!」
朱奈の力強い宣言を暁美ほむらと志筑仁美は驚きの表情を見せていた。
ここまで朱奈の様子を覗いて見てウチは機が熟したと感じていた。
ウチはコネクトのコードを一本だけ結界の外へと出して目の代わりにして鹿目まどかを探してみた。
直ぐに1人で歩いている鹿目まどかを見つけウチの結界に引き込んで面倒の起きない様に気を失わせた。
「さて・・・。それじゃあ、宣言させて貰うで」
ウチは朱奈、暁美ほむら、志筑仁美の3人にテレパシーを送った。
(どうやら決意は固まったようやね)
「アイリス・アザレア!」
ウチのテレパシーに驚いた暁美ほむらと志筑仁美は《魔法少女》としての姿に変わると朱奈と共に周囲を警戒した。
(朱奈も立ち直った様やし、ウチとの決着を付けようやないの?もう既に鹿目まどかはウチが捕らえさせて貰ったわ)
「なっ」
「まどかさんを!」
「鹿目さん・・・」
三人の驚く反応はウチの満足する物だった。
(ここから少し離れた跨道橋でウチは待っているわ。3人との決着が着くまでは鹿目まどかに危害を加えるつもりは無いから安心し)
ウチは一方的にテレパシーを切った。
「いよいよ総力戦と言う事か」
ウチの横に座り込んでいたジュウちゃんが語りかけて来る。
「そうやな。そうだ。ジュウちゃんに頼みがあるんやけど良い?」
「なんだい?彩月」
「ここからはウチの事をアイリスと呼んで欲しいんや。彩月とは呼ばずに」
「どうしてだ?」
「ここからウチは菖蒲彩月としてではなくて《究極の魔女》を目指す、アイリス・アザレアと言う《魔法少女》として戦いたいんや!演じたいとも言えるんやけどね」
それがウチの衝動とも言えた。もうウチは以前の菖蒲彩月とは異なる存在と言えた。
無数の《魔法少女》の記憶を持ち命すら弄んだ最低の《魔法少女》。
ウチはもうとっくに菖蒲彩月では無くてアイリス・アザレアとなっていた。
「分かったよ。アイリス。他に頼みはあるのか?」
ジュウちゃんは早速、ウチの頼みを聞き入れてくれた。
そこだけはベーターの兄弟と言える性質だった。
「そうやな。じゃああの3人の道案内を頼むで。結界の階層は今から組替えて置くから闘技場にあの3人を連れて来て欲しいんや」
「闘技場へ連れて行ってどうするんだ?」
「ウチは万全の状態の3人と戦って倒したいんや!闘技場にはウチが2体の《魔女》を用意しておく。どうせ瞬殺やろうから、その時に生じたグリーフシードで三人のソウルジェムから穢れを取り除いて万全な状態でアンジェリカ・ベアーズに案内して欲しいんや」
ジュウちゃんは結界の中を散歩しており構造を良く知っている為、この役目はジュウちゃん以外は出来なかった。
「あいよ。任せておきな」
「じゃあ跨道橋までの入り口を開くで」
ウチの言葉と同時にジュウちゃんの目の前に跨道橋までの入り口が開いた。
「じゃあな。アイリス。3人を連れて直ぐに戻るぜ」
「頼むで。ジュウちゃん」
ジュウちゃんを見送りウチは研究室を出てアンジェリカ・ベアーズの入り口に持って来たパイプ椅子と折りたたみ式のテーブルを置くと頬杖を付いて座った。
魔力を温存する為にまだ《魔法少女》としての姿では無くこの間、購入したお気に入りなボーイッシュな服姿に着替えてウチは待っていた。
獲物がウチの目の前に現れるのを。
獲物が現れるまでの間にウチは鹿目まどかを結界の最深部へと閉じ込めていた。
そこには《魔女》も《使い魔》も存在しない、孤立した階層だった。
ウチが負けたら《操る魔女達》は見滝原市から一時的に離れる様に魔法で指示し鹿目まどかは安全に開放される様にしていた。
ウチが負ける事は無いだろうが、もしウチが負けた時に鹿目まどかが開放されないのは暁美ほむら、志筑仁美、朱奈のリベンジに対して失礼な気がした。
「まだやろか・・・。まだ・・・」
ペットボトルのジュースを飲みながらウチは待ち続けた。待ち人が現れるのを・・・。
やがて離れた場所で起こった振動を感じ取ったウチは待ち人が来た事を悟った。
時は近い。逸る気持ちを押さえてウチはパイプ椅子に座り頬杖を付き続けていた。
3人分の足音とジュウちゃんの足音がウチの耳に響き暫くするとウチの脇に《魔法少女》の気配が現れた。
「アイリス。3人を連れて来てやったぜ」
ジュウちゃんがウチに対してそう報告して来た。
「思ったよりは速かったやね。ご苦労さん。ジュウちゃん」
ペットボトルのジュースを片手にウチが振り向くとジュウちゃんの背後に暁美ほむらと志筑仁美、朱奈の3人が《魔法少女》としての姿を取りウチの前に揃っていた。
3人の目にはウチに対する敵意が見えていた。あの朱奈にすらウチに対する敵意があった。もっともその敵意はウチが増幅させたモノだが・・・。
「まどかは何処?」
そう言って暁美ほむらが一歩踏み出そうとした瞬間にウチは右手を軽く振って菱形の鎖がウチの前に張り巡らされ暁美ほむらは足を止めた。
「まあ、待ちやしゃい。鹿目まどかなら無事や。ほい」
ウチが右手を上げてコネクトとエレガンテ・ファンタズマを組み合わせて魔法陣を作り出すとそこに鹿目まどかの姿を映し出した。
「今はまだウチに危害を加えたら待機している《魔女》が鹿目まどかを襲う魔方陣を敷いとるからウチに何かしない方が得えと思うけど?」
ウチの言葉を聞いて暁美ほむらはウチを睨みながら押し黙った。
志筑仁美も朱奈も険しい顔をしてウチを見つめる事しか出来なかった。
「そう。それで得えんや。じゃあまずは・・・。話したい事があるから話させて貰うで。戦うのはその後でも得えやろ。暁美ほむらさん、志筑仁美さん、朱奈。ウチの名前、アイリス・アザレアと言う名前を聞いて何か引っかかる事は無いんか?朱奈」
「え?」
ウチに名指しで指名されて朱奈はビクッとしてウチを見つめていた。
「そうやな。難しかったかも知れないやな。じゃあウチから教えたるわ」
立ち上がりウチはソウルジェムを右手に出現させ魔力を高めるとソウルジェムと髪の色が紫色から虹色へと変化し直ぐに戻した。
堂々と仁王立ちするウチを見る朱奈にウチは言葉を続けた。
「ウチの名乗った、アイリスはギリシャ語で虹を意味する。これは私のソウルジェムに由来させたんや。まあそれは置いといて、ウチが言いたいのはアイリスがアヤメ科の植物。アザレアはツツジ科の植物だと言う事や。もう解ったやろ?」
ウチの言葉に朱奈の顔色が見る見る内に変わった。
「アヤメとツツジ!?どうして綾女ちゃんと同じになるの!?あなたは誰なの!?」
朱奈は驚きウチに向かって叫んでいた。
「そうやね。一言で言うならウチは朱奈を作り出した筒地綾女の記憶を持ち合わせていると言う事やね」
「綾女ちゃんの記憶を!?」
「そうや。筒地綾女の魔法を使った実験によってウチは筒地綾女の記憶を引き継いでいる。アイリス・アザレアは朱奈に向けた暗号ゲームだったけれど朱奈が分からなかったのは残念やな。本当の名前は別にあるけれどそれはまあどうでも良い事やな」
椅子から立ち上がりとウチは《魔法少女》としての姿に変身した。
紫の髪に黒い衣装を身に纏い右目にはソウルジェムを眼帯の様に掛けた誇り高い姿。
魔力の高まりに呼応して紫色の髪とソウルジェムは輝きを増して虹色に変わって行く。
「さて。ここからが本番や。けれどその前にウチの目的を話させて貰う」
笑みを浮かべたウチに対して暁美ほむらも志筑仁美と朱奈もウチに対して恐れを感じているのがウチにも感じ取る事が出来た。
既にウチの魔力は目の前にいる3人の《魔法少女》よりも高いレベルに至っていたのだ。
「ウチは3人の目的は察しも付くし予想も出来る。けれどそっちは何も解らないじゃあ不利やろ?だから話したる。まずは・・・」
ウチは右手を目の前にいる3人の《魔法少女》に翳した。
ウチの様子に身構えた暁美ほむらと志筑仁美、朱奈だったが突如として志筑仁美と朱奈のソウルジェムが光を増してウチの魔力に反応していた。
「何!?」
「朱奈さんも!?」
自分のソウルジェムがウチの魔力に反応した事を志筑仁美と朱奈は狼狽していた。
その様子を見て暁美ほむらも驚きを見せていた。
「どう?驚いたみたいやね。ウチの魔力に反応するのは当然や。朱奈。志筑さん。あなたたち2人はウチが《魔法少女》としての資格を与えたんだから!」
「!!」
ウチの言葉に志筑仁美と朱奈は顔色を変えていた。
無理も無い。自分達の願いを叶える因果律を与えたのが敵であるウチだったのやから。
「まあタネを明かせば簡単な話や。ウチの願いは《他人の因果律や魔法を奪う事》やから。奪った因果率や魔法はウチが取り込む事も出来るけど逆に他人へ入れ込む事だって出来るんや。この能力のお陰でウチは朱奈を利用してあの未来から脱出する事が出来たんや。おかげで多くの《魔法少女》や《魔法少女としての素質を持った少女》を殺して因果律を奪えたから感謝しなきゃいけないやね」
愉快な気持ちで種明かしをしたウチを志筑仁美と朱奈は不快感を示していた。
「やはりあなたが朱奈と一緒に未来から来た少女だったのね。因果律を取り込む・・・。まさか!?あなたの狙いは!」
言いながら暁美ほむらはウチの目的に感付いた様子だった。
「どうやら気がついたたみたいやね。そや。ウチの目的は破格の因果律を持つ鹿目まどかの因果律を奪う事や」
「そんな事の為にまどかさんを拉致するなんて・・・。許せませんわ」
純粋な怒りを抱いた志筑仁美はウチを睨んでいた。
「おお、怖い。まあ怒るのも無理はないやね。因果律をウチに取られた相手は大抵の場合、死んでしまうやね。良くても意識不明や。志筑さんも見た筈や。見滝原病院の前で」
種明かしを聞いた志筑仁美は驚愕した様子を見せた。この場にいる3人の表情が次々と変化して退屈しないとウチは感じていた。
「まさか・・・。あなたがさやかさんをあんな目に!?」
「そうや。と言ってもウチが気まぐれに他人の因果律を志筑さんに投げ付けなかったらさやかと言う人は助からなかったやろね」
「けれどそれはあなたがさやかさんから因果律を抜いたからでしょうに!」
般若の様な顔で睨む志筑仁美にウチは恐れを抱かなかった。
既にウチの魔力は志筑仁美を超えている。まだ喋る余裕もあった。
「まるで般若やね。まあさやかと言う人の因果律はウチにも取り込めたけれど鹿目まどかの因果律は取り込めるかどうかはウチにも分からない。因果律にも相性があるさかい。けれど取り込める可能性がある以上、ウチはやらして貰うで」
「あなたは一体、何になろうとしているの?因果律を奪って最強の《魔法少女》にでもなりたいの?」
的外れな暁美ほむらの質問にウチは笑いを抑える事が出来なかった。
「あはははははははは。まさかそんな事を目的にしている訳が無いやろ。ウチの目的はその先や。《魔法少女》の先は一つしか無いやろ?」
そう叫びながらウチは手の平から巴マミのソウルジェムを出現させた。既に取り返しの付かない程の穢れが溜まり、羽化が始まろうとしていた。
「まさかそのソウルジェムは!?」
「あれは!?」
朱奈と暁美ほむらは巴マミのソウルジェムを見て狼狽していた。そう言えば朱奈は前の時間軸では巴マミに助けられていた。
「ふーん。どうやら知っているみたいやね。そう。これは巴マミのソウルジェム。そろそろ羽化する時や無いかしら?」
言いながらウチは真上に巴マミのソウルジェムを投げ付け、右手に先端がCを書く様に曲がった魔法の杖、優木沙々の魔法の杖を出現させると魔女をコントロールする力を応用する事で魔力を送り巴マミのソウルジェムの羽化を速めさせた。
「さあ。ウチが操る《魔女》の誕生を喜びなさい」
目の前で巴マミのソウルジェムが砕け、魔力を放出しながらグリーフシードを生み出し急速に人型の形を成していく。あっという間に巴マミの面影を持つ《魔女》が誕生した。
「《おめかしの魔女》の誕生だな」
ジュウべえは誰に言う事も無く呟いていた。
「どういう事ですの?どうしてソウルジェムからグリーフシードが?まさか・・・。今まで倒した《魔女》と言うのは全て《魔法少女》だったと言うのですか?」
狼狽した志筑仁美を見てウチは志筑仁美が《魔女》の正体を知らなかったと感じ取る事が出来たので説明をする事にした。先程から面白い表情の変化を見せた礼とも言える。。
「どうやら志筑さんは知らない様やね。今ウチが見せた通りや。《魔法少女》はいずれ《魔女》となる存在。ソウルジェムの穢れがグリーフシードで落とせない程、溜まり切った時、ウチたちは《魔女》と化す。世界に対する恨み妬みから呪いを増幅させて《魔女》と化すケースもあるけれど・・・」
「そんな・・・。私(わたくし)達は《魔女》となる為に《魔法少女》となったのですか!?」
驚き叫ぶ志筑仁美を見てウチは言葉を返し続けた。
「そうとも言えるやな。1つだけ付け加えるのなら《魔女》の一部は《使い魔》が人間を捕食して成長したモノや。だから全ての《魔女》が元々《魔法少女》と言う訳や無い。最も《魔女》から分裂した《使い魔》が成長して《魔女》となるのだから元は《魔法少女》の一部だったと言う事やな」
「一体、どうしてそんな!?」
狼狽する志筑仁美の様子に可笑しさを感じながらウチは話を続けた。
「全てはこの宇宙の為やさかい。キュウべえ、本当の名前はインキュベーターと言う地球外生命体のやけど。インキュベーターが私たちに奇跡と引き換えに《魔法少女》にして最終的に《魔女》となって貰うのは訳があるんや。全てはこの宇宙の為や」
「宇宙!?」
朱奈も志筑仁美も唐突に出て来た宇宙と言う言葉に驚きを見せていた。
けれども暁美ほむらは相変わらずのポーカーフェイスであった。
全てを知っている為に出て来る余裕だとウチは感じた。
「インキュベーターの話によればこの宇宙のエネルギーは目減りしていく一方らしいや。だからこそ宇宙の寿命を延ばす為に私たちを《魔法少女》にする。第二次性長期やったか?その年齢の少女が持つ感情の希望と絶望の相転移がソウルジェムをグリーフシードに帰る瞬間に莫大なエネルギーが発生するらしいや。それを回収するのがインキュベーターの仕事やさかい」
志筑仁美も朱奈も驚きの余り言葉を挟む事は無かったのでウチは話を続けた。
「まどかの因果律を奪いたいと言うのは分かったわ。あなたはそれで何がしたいの?《魔法少女》が最後には魔女になると言う事を知りながら何故、まどかの因果律を狙うの?」
この言葉を聞いてウチは確信した。やはり暁美ほむらは何も分かっていない。笑いが込み上げて止める事が出来なかった。
「ふふ。あははははははははははは」
突然笑い出したウチを見て暁美ほむらは憮然とした表情を見せ、志筑仁美と朱奈は驚き何も言えない様子だった。笑いが収まりウチは話を続けた。
「鹿目まどかの因果律を奪おうとしている理由は簡単や。ウチは見たんや。あの破壊された見滝原で鹿目まどかが地球を滅ぼす《最悪の魔女》へと変化するのを!だからこそウチは鹿目まどかの因果律を奪いたいんや。そしてウチこそが《最強、最悪の魔女》となってこの宇宙に貢献したいんや!」
ウチの目的を聞いて暁美ほむらと志筑仁美は驚きを見せていた。けれど朱奈だけは違った。はっきりとウチに対する怒りを見せていた。
「そんな事、絶対にさせない!」
そう言いながら朱奈はボーガンをウチに向けて来た。
しかしウチの前には菱形の鎖の防御壁が今だ健在であり脅威とはならなかった。
「そうよ。私は・・・。まどかを守ってみせる」
朱奈が戦おうとするのを見て暁美ほむらも左手の盾から取り出したマシンガンをウチに向けて来た。
けれど志筑仁美は拳を構えなかった。
「志筑さん?」
怪訝な表情で志筑仁美の方を見た暁美ほむらに合わせる様に志筑仁美は顔を上げた。
その表情には絶望が表れていた。
「私(わたくし)達《魔法少女》が《魔女》を生み出すのなら、戦っても意味は無いじゃありませんか!?それどころか私(わたくし)達もいずれ《魔女》となってしまう・・・。何の為に戦えと言うのですの!?」
「それは・・・」
暁美ほむらは直ぐに答える事が出来ない様子だった。朱奈も同じく答えられない様だった。迷う事無くウチは志筑仁美に発破を掛ける事にした。
「何を言っているや?志筑さん。まだアンタは《魔女》にならないんや。だとすればやる事は1つやろ。ウチと戦う。違うんかい?」
思いがけないウチの言葉に暁美ほむらも朱奈も志筑仁美を驚いていた。
「ここでもしウチと戦わずに鹿目まどかや暁美ほむら、朱奈の3人を見捨てたらアンタはその事を後悔してしまうで。仲間を見捨てて勝手に《魔女化》なんてウチは最低と思うんや。どの道、ウチが勝利すればあなたも殺される運命なんやで。だったら可能性は低くてもウチと戦って勝利を探るのが正しい事やろ」
まだ志筑仁美は気持ちを決めかねている。もう一押し必要やな。そう思いウチは言葉を続ける事にした。
「志筑さん。ウチがどうしてこんな事を説明するのかと言うとウチが負けず嫌いやからや。この間、戦った時も正直、負けたと思った。舐めてかかったから受ける筈の無い傷を受けた。ウチはその傷を受けた自分が許せないんや。だからあの時、ウチは撤退した。アンタ達3人と本気で真っ向勝負を行う為に。だからウチと戦いなさい。ウチと戦って鹿目まどかを助けた後に《魔女化》の事は考えなさい。でないとウチがあなたを殺しちゃうで」
ウチの発破が聞いたのか、志筑仁美は顔をしかめていたが、一度目を閉じて深呼吸し呼吸を整えると拳を構えてウチに向けて来た。
「確かにアイリスさんの言う通りですわ。私(わたくし)ははまどかさんを見捨てる事は出来ません。だからこそアイリスさん。あなたの誘いに乗って戦って差し上げますわ!」
開眼した志筑仁美の目には決意の色が浮かんでいた。
「暁美さん。朱奈さん。まどかさんを助ける為に・・・。戦いましょう!」
「ええ。」
「はい」
志筑仁美の言葉に暁美ほむらも朱奈も頷く。
ようやく戦いが始められそうだった。
「その意気や!それでこそウチも戦いがいがある!ジュウべえ!例の通りに!」
「あいよ」
ウチに答えたジュウちゃんがアンジェリカ・ベアーズのドアを潜り走り去って行く。
「ジュウべえが鹿目まどかの元へ辿り着いたら魔法による防御壁は解けるわ。それが戦いの合図や。それとウチが負けたら鹿目まどかは無事に結界から出る様に魔法をかけたから安心しい」
ウチの言葉に3人の《魔法少女》は答えない。
暫くするとウチの目の前にある菱形の鎖の防御壁は消滅した。
「行くわよ!」
「ええ。行きましょう!」
「うん。鹿目さんを助けなきゃ!」
叫びながら3人の《魔法少女》がウチに襲い掛かって来た。
ウチの望む戦いが今、始まろうとしていた。