偽書魔法少女サツキ☆マギカPSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI SATUKI MGICA 作:ジャックノルテ
ウチに向かって暁美ほむらを先頭に志筑仁美と朱奈の3人が駆け出そうとして来る。
それを合図にウチは《おめかしの魔女》に銃撃をする様に魔力で命令した。
命令通りに《おめかしの魔女》はリボンの様な腕を大型のマスケット銃状に変化させると、そこから巨大な魔力の光線を発射した。
「散って!」
咄嗟に叫んだ暁美ほむらは側にいた朱奈を突き飛ばし、光線に飲まれるかと思われた。
そこへ志筑仁美がその素早さを生かして暁美ほむらを抱えて光線を交わした。驚き起き上がった朱奈の目の前に暁美ほむらを抱えた志筑仁美が現れた。
「危ない所でした」
ウチと並んだ《おめかしの魔女》を睨みながら志筑仁美はそう呟いた。
「ふーん。このままじゃあつまらないか。ウチが少し盛り上げるか」
右手に魔力を集中させコネクトを通じて憑依操作魔法、ファンタズマ・ビスビーリオを発動させたウチはアンジェリカ・ベアーズの中から《2体のかずみシリーズ》呼び出した。
アンジェリカ・ベアーズの壁を破壊して現れた同じ顔を持ち黒い先の尖った帽子に黒いマントと長い黒髪をなびかせた《2体のかずみシリーズ》に暁美ほむら達、3人は驚きの表情を見せていた。
「さて。ウチの実験を試させて貰うよ。コネクト!」
叫びウチはコネクトを《2体のかずみシリーズ》に繋げると魔力を送り込んだ。
同時に《2体のかずみシリーズ》の肉体が魔力によって強制的に変化して行く。
ウチの想像通りに《2体のかずみシリーズ》は呉キリカと飛鳥ユウリへと変化させた。
「あれは一体!?」
志筑仁美が見せた驚きの表情はウチを楽しませてくれる。礼も兼ねてウチは説明をした。
「うまく行ったやね。ウチの記憶を元に《合成魔法少女》をウチに忠実な私が倒した《魔法少女》の姿へと作り変える。呉キリカ、飛鳥ユウリ。いえ。杏里あいりだったわね。この2人にも相手をして貰うわ。更に」
言いながら飛鳥ユウリでは無く杏里あいりだったやね。
と思いながらウチは右手を下ろすとそれを合図に次々とウチが《操る魔女達》が10体、集まりウチの前に壁となった。
ウチの前に《操る魔女達》を壁の様に設置したのは、暁美ほむらの魔法を警戒したからである。
前回の戦いにおいて暁美ほむらの魔法が時間を停止させるらしいと言う事はウチにも推測する事が出来た。
時間を停止しての不意を付いた攻撃に備える為に《操る魔女達》を集めて盾にしたのだ。
「さあ!鹿目まどかを助けたいのなら本気で戦いなさい!出ないと・・・。ウチに負けてしまうで!」
「負けるつもりは無いわ」
ウチが声に暁美ほむらが言葉を返したと同時に一瞬の違和感と同時に10体いた《操る魔女達》が爆発に飲み込まれ、倒されてしまった。
ガランガランと大きな音を立てて暁美ほむらの周りには無数のロケットランチャーの本体が落ちて来た。
けれど暁美ほむらの表情はウチの予想通りに翳っていた
「しまった」
ウチの指示通りに《おめかしの魔女》のリボンの様に伸ばした腕が暁美ほむらの右足に絡まっていた。リボンの腕はウチがエレガンテ・ファンタズマで見えない様にしていたから暁美ほむらも対応し切れなかった様や。
「くっ」
「暁美さん!」
「朱奈さん!前を見て!」
苦悶の声を上げる暁美ほむらに気を取られた朱奈に志筑仁美は敵に集中する事を促していた。
その様子を見たウチが魔力で合図すると同時にウチが魔力で作り出した呉キリカと杏里あいりが朱奈と志筑仁美に向かって走り出した。
一方で《おめかしの魔女》と暁美ほむらはリボンで繋がったまま銃撃戦を行っていた。
暁美ほむらが左手の盾から出したマシンガンと《おめかしの魔女》が全身のリボンを変化させて銃撃を返していた。
それを見るとウチは魔力の放出を押さえ込むと同時にエレガンテ・ファンタズマを発動させ姿を隠すとアンジェリカ・ベアーズの屋根に登って戦いの様子を観察して見た。
幸い、暁美ほむら達、3人は目の前の戦いに夢中で姿を隠したウチにまで気を回す事は出来ない様子だった。
眼下では朱奈が杏里あいりと戦い、志筑仁美が呉キリカと戦っていた。
ウチの予想では朱奈は杏里あいりに勝てるとは思えなかった。
朱奈の人を傷付ける事を肯定する事が出来ない性格では《魔法少女》同士の戦いでは生き残れるとはとても思えなかった。
予想を裏切る事無く朱奈は杏里あいりに壁際に追い詰められていた。
「コルノ・フォルテ!」
止めを刺すべく杏里あいりがそう叫ぶと同時に杏里あいりの目の前に魔力で出来た牛が現れた。
ウチが作り出した杏里あいりにはウチが敵と指定した暁美ほむらや志筑仁美、朱奈を倒す為だけに動くロボットだと言えた。
だから目の前にいる敵を倒す事に手を抜く事はまずありえない。
コルノ・フォルテが朱奈に突進したが朱奈は怯えながらも目を閉じる事無く、逸らす事も無かった。
朱奈も少しは成長している様にウチは感じ取っていた。
「朱奈さん!」
追い詰められた朱奈の様子を見た志筑仁美は瞬時に腰に刺していた2本の扇子を引き抜くと、両の手に握り魔力を集中すると突風を巻き起こして飛び上がり、そのままの勢いで朱奈に迫るコルノ・フォルテを体当たりし押し飛ばした。
魔力を帯びた状態で体当たりを敢行した志筑仁美の思い切りの良さにウチは心の中で舌を巻いていた。
その時、朱奈が腰のポーチからパイプ上の物を杏里あいりへと投げ付け、パイプ上の物は爆発を引き起こした。爆煙であたりが見えなくなったが
「志筑さん!煙を払って!」
と言う朱奈の声に合わせる様に志筑仁美の引き起こした風が煙を払い朱奈の姿が見えた。
朱奈はボーガンを剣状にして全身を焼かれて苦痛に倒れ込んだ杏里あいりに対して躊躇う事無くボーガンを振り下ろした。
「ああああああああ!」
鋭利な刃物と化した朱奈のボーガンは朱奈の叫びに合わせる様に杏里あいりの体は両断されてしまった。
「ふーん。朱奈が勝つとは思わんかったわ」
ウチは正直な感想を口にしていた。最も志筑仁美の力を借りてようやく相手を殺せたのだから朱奈1人ではどうなるとも言えなかったが・・・。
直後に杏里あいりを倒して呆然とする朱奈に対して呉キリカが迫り両手の手に伸びる爪を振り下ろそうとするが、志筑仁美が握り締めた扇子から突風を発生させて呉キリカを吹き飛ばした。
「朱奈さん。しっかりしてください!まだ戦いは終わっていません!」
言いながら志筑仁美は呉キリカの真横に瞬間的に移動する。実際には単に地面を蹴って跳躍しただけなのだが余りの素早さに瞬間的な移動と呉キリカは錯覚させられていた。
両の手に握り締めた扇子に魔力を集中させ志筑仁美は扇子を斜めに振った。同時に突風が発生して呉キリカを上空に吹き飛ばし、志筑仁美自身も呉キリカの真横に飛び上がると右手に魔力を集中して突きを放った
「ハア!」
志筑仁美の風の魔力が呉キリカの肉体を歪ませ、その身体は黒い肉体となって消滅した。
「勝負あったか・・・」
ウチは《2体のかずみシリーズ》をベースに再現した杏里あいりと呉キリカの敗北でこの実験は失敗したと感じていた。
杏里あいりの肉体が黒い肉体となって消滅して行った時、朱奈と志筑仁美の脇を銃撃が掠め、2人が視線を銃撃の方へと向けたのを見てウチも銃撃の方向を見てみる。
そこでは暁美ほむらが《おめかしの魔女》とリボンで繋がった状態のまま一進一退の銃撃戦を行っていた。
「朱奈さん!暁美さんをお助けしなければ!」
「うん!」
朱奈と志筑仁美が暁美ほむらの方に駆け出そうとした時、暁美ほむらは右足の絡まったリボンをマシンガンの銃撃で断ち切ったが、それが次の行動の引き金となった。
ウチの指示通りに《おめかしの魔女》は左腕を地面に垂らすと暁美ほむら、志筑仁美、朱奈の3人を巻き込んでリボンの檻に閉じ込めてしまった。
「さてどうするんや?」
ウチにはリボンの檻内部の様子が見えている。3人がこれをどう切り抜けるのか見物だと感じていたが正直、どうでも良かった。
暁美ほむら、志筑仁美、朱奈の3人が相手では《おめかしの魔女》が勝利する事は無いだろう。ウチはコネクトの魔法を伸ばすと《使い魔》と戦う暁美ほむらへと接続をした。
暁美ほむらの持つ時間に関する魔法に対処する為には暁美ほむら本人にコネクトを繋ぐのが一番、手っ取り早い。
正直に言って前回の様な不意打ちに対して次もカピターノ・ポテンザを使った防御がウチに出来るとも思えなかった。
「志筑さん。頼みがあるのだけれど・・・。私と朱奈が《魔女》と《使い魔》の注意を分散するからその間にこのリボンの檻を破ってくれない?一瞬で良いの。一瞬でも破れれば私の魔法が効果を発揮するわ」
「そうなのですか?それなら暁美さんにお任せします。魔力を溜めるのに時間が掛かるのでその間はお願い致します」
やがて《おめかしの魔女》との戦いの中で暁美ほむらが志筑仁美に語りかけたのがウチにも感じ取る事が出来た。
ウチは暁美ほむらの全身を流れる魔力の動きに集中する。ソウルジェムから発生した魔力が左手の盾からマシンガンを取り出すのに反応しているのが感じられる。
それだけでは無く暁美ほむらの視界もウチの頭に写り込み、暁美ほむらが《使い魔》を銃撃しているのを見る事が出来た。
「行きます!」
その時、志筑仁美が両の手に溜めた膨大な魔力を振りながら開放すると竜巻が発生して次々とリボンの檻を構成するリボンを引き裂いて行った。
右足に繋がれていたリボンをも竜巻に切らせた暁美ほむらは迷う事無くリボンの檻が無くなり露出した地面に駆け出すとその場で左手の盾を回転させた。
瞬間、暁美ほむらの魔力がこの空間に弾けるのを感じると同時にウチの目の前で全ての物が停止していた。
滞る時の中で動いているのは隠れているウチと繋がる暁美ほむらのみ。
動きを止めた《おめかしの魔女》の回りに暁美ほむらは躊躇無く手榴弾を次々と投げ付けて行く。
多数の手榴弾が投げ付け、暁美ほむらが左手の盾を構え直したと同時に弾けた魔力が元通りになるのをウチは感じた。
大きな爆発が起きて《おめかしの魔女》と《使い魔》は爆発に飲み込まれ、存在を消滅させて行く。
傍らでは魔力を消耗し過ぎた志筑仁美がその場に崩れ落ち暁美ほむらと朱奈が駆け寄ろうとしているのが見えたのでウチは姿を現した。
「生憎、まだ戦いは終わって無いで!」
そう叫びながらウチはアンジェリカ・ベアーズの屋根の上から飛び降りた。
ウチの姿に気が付いた暁美ほむらは右手のマシンガンの撃って来たが、ウチは全身の痛覚を遮断している為に気にする事無く飛び降りる事が出来た。
ただし痛覚を遮断していると言っても目とソウルジェムだけはガードしていた。
ソウルジェムは急所であり目は再生するまでに視界が遮られるのを防ぐ為である。
地面に降りると同時にウチは魔力を両の手に集中する。出し惜しみは無しや!
「ウチの武器を見したるわ!」
相手である暁美ほむら、志筑仁美、朱奈の3人を睨みつけながらウチの両手から鎖が出現した。
ウチの高揚感に魔力が呼応して鎖の先端に付いている宝石が虹色の輝きを増して行く。
アイリスが両の手に魔力を集中させると鎖が現れた。
その鎖の先には丸い宝石の様な物が付いている。同時にウチは暁美ほむらとのコネクトの繋がりを断った。全ての魔力を戦いで使用する為である。ただし暁美ほむらの魔力にはオマケを施しておいた。
朱奈がボーガンを私に向け志筑仁美は膝を付いて立ち上がろうとしていた。
戦うと言う意思は失われていない。
2人の様子を見ながら暁美ほむらは左手の盾を回転させた。
しかし何も起きなかった。再度回転させても魔法が発動しなかったのだ。
「発動しない!?一体何故!?」
暁美ほむらが狼狽した姿はウチを楽しませてくれた。だから説明をしてあげた。
「生憎やけど《おめかしの魔女》との戦いで暁美さんの魔法はコネクトで解析させてもろたわ。解析ついでにウチが少しばかりいじらせてもろた。ウチを倒さない限り盾を使った魔法は使えないで」
暁美ほむらの時間停止魔法の正体は知ってはいたが敢えて説明をしなかった。もしも志筑仁美と朱奈が暁美ほむらの持つ時間停止魔法を知らないのであれば対処法を編み出す様な情報の漏洩は避けるべきやと一瞬でウチは思考していた。
ウチの言葉を聞いて暁美ほむらは直ぐに表情を正すと、完全なポーカーフェイスとなり左手の盾から黙って新しいマシンガンを取り出した。どうやら左手の盾から武器を取り出す事は何の支障も無いらしい。
「たとえ魔法が使えなくても・・・。あなたに負ける訳には行かない」
躊躇無く正確に暁美ほむらはウチに向かってマシンガンを発射して来た。
両手の鎖を回転させ銃撃を防ぎながらウチは言葉を返す。
「その意気や!それでこそウチもリベンジの遣り甲斐がある!」
両手の鎖を銃撃から身を守る為に回転させたままウチは走り右手の鎖を回転させたままの勢いで暁美ほむらへと投げ付けた!流星の様に飛んだ鎖の先にある虹色に輝く宝石が暁美ほむらの身体に叩き付けられそのまま跳ね飛ばした。
「暁美さん!」
続けて志筑仁美が叫んでいるのを視界に入ったと同時に魔力を右手の鎖に集中して飛翔させると今度は志筑仁美へと鎖を向けた!
「志筑さん!避けて!」
朱奈は大声を上げたが、志筑仁美は冷静さを崩す事無く両腕を交差させウチの鎖の衝撃に備えていた。大きな音を立てて鎖が志筑仁美に衝突したが手応えから言っても対してダメージは与えられなかった。
「志筑さん!」
吹き飛ばされた志筑仁美に朱奈が駆け寄ろうとしたのが見えたからウチはそのまま朱奈の真横に跳躍すると力を込めて朱奈に叩き付けた。悲鳴を上げて倒れ込む朱奈を見てウチはもう少し挑発する事にした。
「どうや?このままじゃあ鹿目まどかはウチに殺されてしまうで!」
挑発の効果は直ぐに現れた。暁美ほむらも志筑仁美もゆっくりと力強く立ち上がった。
ふと足元を見ると朱奈も立ち上がろうとしているのが目に入ったので更なる挑発の意味も込めて朱奈の背中に思いっきり鎖を叩き付けた。
悲鳴を上げて倒れ込む朱奈の背中からは血が流れていた。
同時に強い魔力が発するのを感じたウチはその方向に視線を向ける。
それは怒気を含んだ魔力だった。魔力を発していたのは志筑仁美だった。誰が見てもはっきりと分かる程、強い怒りをウチに向けていた。
「志筑さん!これを!」
その時、咄嗟に暁美ほむらがウチに銃撃を加えながらグリーフシードを志筑仁美に投げるのが見えた。銃撃への対処と同時にグリーフシードを鎖で弾く事も出来たが敢えてそうせずに反撃のチャンスを3人に与える事にした。
ソウルジェムの浄化を終えた志筑仁美は瞬時にウチとの距離を詰めようと一歩を踏み出そうとした。
「ウチは嫌いじゃないで。諦めないのは!」
叫びウチは右手で回転させた鎖を地面に叩き付けると同時に魔力を放出した。ウチの魔力に呼応して鎖の先端にある宝石が虹色に輝き地面から無数の鎖を出現させ志筑仁美に襲い掛かった。必死に動いて志筑仁美は無数の鎖を避けていたが脛を擦られ転倒した。
そのチャンスを逃すウチでは無く無数の鎖を起き上がろうとする志筑仁美へと向けようとした。
「やらせないわ!」
叫び暁美ほむらが左手の盾から取り出したと思われるロケットランチャーをウチに向かって撃ち込んで来た。慌てる事無くウチは右手に御崎海香の防御魔法を発動させ、攻撃を防いだが回りは煙で見え辛くなっている。ウチが目に魔力を集中しようとした瞬間、
「はあ!」
気合の声と共に志筑仁美がウチとの間合いを詰めるとウチの顎を右手で殴った。殴られて後退しながらもウチは踏ん張り立ったままの姿勢を取り続けた。口から血が流れたが気にする程では無い。
「カハッ。中々、やりおるね。これならどうや?」
ウチは足元に魔法陣を出現させ、志筑仁美はその事に驚きを見せるながら動こうとして再び驚きの表情を見せていた。
傍らでは暁美ほむらが自分の腕の動きをいぶかしんでいた。
「速度低下の魔法や。今、この空間全体の速度を私と同じ速度に抑え込んだ。ここからはウチとガチの殴り合いと行こうや!」
「望む所ですわ!」
ウチの説明を聞いて迷う事無く志筑仁美はウチに言葉を返し右手で殴って来た。
一進一退の攻防が続く。
志筑仁美の右手の突きを身体で受けるとウチは両の手に出現させた鎖を解くと思い切りの力を込めてモーションを見せた志筑仁美の左手を右の拳で叩き落とした。
同時に足に力を込めてウチは右足で蹴りを放ったが志筑仁美は右手で防御すると同時にそのままウチに対して体当たりをして来てウチは吹き飛ばされたが、右手から出現させた鎖を地面に引っ掛けて体制を立て直し、足に力を込めて地面を蹴り魔力を右手に集中し志筑仁美の頬に渾身の右ストレートを放った。
「くぅ・・・!」
ウチの右拳を頬に受けて志筑仁美は片膝を追って倒れ掛けていた。
「!」
それを見た暁美ほむらが拳銃でウチを狙おうとしたのが見えたがウチは躊躇う事無く志筑仁美の首を左手で掴み志筑仁美の身体を盾にした。暁美ほむらは躊躇の表情を見せたが拳銃をウチに向けたままだった。
「これでもウチを撃てるんかい?」
これで撃ってくるかどうかで暁美ほむらとの戦いの形が定まるとウチは感じていた。
暁美ほむら目には覚悟を決めたと言う色がウチにも感じ取る事が出来た。
その時、背中の方に衝撃を感じ取り身体が揺れたのをウチは感じ取っていた。
身体の揺れを感じ取ったのは全身から放出した魔力の感覚だった。
驚いて背中の方を見るとウチの背中に切りかかって来たのは朱奈だった。
ボーガンを鋭利な刃物の携帯に変形させてウチの背中を切ったのだ。
ついで左腕に衝撃を感じて視線を戻すと志筑仁美の右足がウチの左足を蹴り飛ばし、衝撃でウチは志筑仁美の首から手を離してしまった。
それを自覚する間も無く暁美ほむらの拳銃から次々と弾丸が放たれてウチの身体の数箇所に穴を開けて血が吹き出てウチはよろけた。
「中々、やるやね・・・。痛みを感じていたら死んでいたわ・・・」
言い終わるか終わらないかの内にウチの足に急に何かが挟み込んで来た。足元を見ると何と朱奈が自分の左腕でウチの足を挟み込んでいた。
「何をする気や?ウチの脚から離れな!」
そう言いながらウチは朱奈に鎖を叩き付けようと右手から鎖を出現させようと魔力を集中したが鎖は出現しなかった。
「どういう事や?ん!?」
呟き周囲を見てみると朱奈のボーガンの弓が宝玉の輝きと共に右回りに高速で回転し多量の魔力を放出して朱奈とウチを取り囲む様に魔法陣が敷かれていた。
ウチはこの魔法陣は見覚えがある。時間移動をする時に現れた魔法陣!?
「まさか朱奈。ウチを連れて時間を移動するつもりやの!?」
ウチの広い視界の中で暁美ほむらがハッとした表情を見せたのが見え、志筑仁美が困惑している様子も見えていたが今の戦いには関係が無かった。
「そうだよ。わたしもアイリスもここにいちゃいけないの!わたしとあなたがこの時間に来てしまったからわたしの大切な人は死んでしまった。だから・・・。もうこれ以上、誰も死んで欲しくない!わたしとアイリスはここからいなくならなきゃいけないの!」
「何を勝手な事を!ウチはまだやりたい事があるんやから朱奈だけが何処かに行けば良い!」
ウチは再び鎖を出現させようと魔力を集中してみたが鎖は出現しなかった。
「何でや!?何でウチの鎖が出ない!?そうや・・・。そう言う事や!この魔方陣の下では朱奈の魔法以外は使えないんや!なら、拳で叩きのめすまでや!」
そう言ってウチが右腕を振り上げた直後、右肩に暁美ほむらの拳銃が撃たれ、更に志筑仁美が腰から引き抜いた扇子をウチの右手に投げ付け朱奈を助けようとしていた。けれど痛覚を遮断しているウチには無意味な事だった。
「こんなんでウチは止まらないんや!」
叫びウチは朱奈の背中を殴り付けた。朱奈は悲鳴を上げたけどウチの足から手を離さなかった。
「もう遅いよ。わたしとあなたは元いた場所に帰らなきゃ駄目なの!」
朱奈の言葉に呼応する様に魔方陣と私のボーガンは輝きを増して行く。
「朱奈!ウチは筒地綾女の記憶を持っているんやで。ある意味では綾女に最も近い存在や。なのにどうしてウチの邪魔をする!」
本当ならエレガンテ・ファンタズマを使って筒地綾女の姿を装って語り掛けたかったが朱奈の魔法陣が存在する状態ではエレガンテ・ファンタズマを使用する事は出来なかった。
「ちがう!あなたは綾女ちゃんの記憶を持っていても綾女ちゃんじゃない!本物の綾女ちゃんはわたしが悲しむ様な真似を絶対にしない!あなたはただ自分の欲望の為に綾女ちゃんの記憶を利用しているだけ!」
朱奈は各個たる意志を持ってウチに反論をして来た。少し生意気やね。
「そうや。だからこそや。だからこそ記憶を利用しているウチを離して貰わないと困るんや!」
ウチが再度、力を込めて右の拳を振り上げた時、朱奈の魔法陣が輝きを増していた。
(暁美さん。志筑さん。お願い。鹿目さんを助けて上げて!)
朱奈が暁美ほむらと志筑仁美に送ったテレパシーがウチにも聞こえて来る。
直後にウチと朱奈は魔法陣に中に飲み込まれて落花しているのか上昇しているのか分からない状態で何処かに向かっていた。
このままでは朱奈が契約をした未来へと向かってしまう。
「こんな事でウチは諦めたりしないで!」
そう言いながらウチは足にしがみ付く朱奈に再度、右の拳を振り上げようとした。
朱奈はウチをじっと見ていた。けれど拳を動かそうとした時、魔力が動いた事をウチは感じ取っていた。掌の中から鎖が勢いを持って伸びて行く。
「どうやら移動空間ではウチの魔法も使えるんやね!」
叫びウチはありったけの力を込めて朱奈の顔面に鎖を叩き付けた。
ところが鎖は移動空間において予想外の挙動を示し勢い余って朱奈のソウルジェムを傷付けてしまった。
「うっ」
完全に砕けはしなかったが朱奈のソウルジェムはひび割れ、全身の魔力が徐々に抜けてきている様だった。力の抜けた朱奈はウチを離してしまいウチと朱奈は離れて流されて行く。けれどウチは全身から放出する魔力で自身の体勢を整えていた。
ここから脱出する為には朱奈の魔法が必要なのはウチでも理解出来た。
「今度は朱奈の魔法をウチは頂く事にするや!」
ウチは朱奈の魔法を奪う為に魔力で朱奈の元へ迫ろうとした。その時、小さな砂粒の様な物が流れるのがウチの視界に入った。
それはウチの手から流れて来たのだ。痛み無くウチの手は見る見る内に分解され崩れて行く。
「なっ!?これは一体!?まさか!?」
そう叫んだ時、ウチの体はまるで砂上の楼閣であったかの様に、手足の先から粒子となってこの時空を越える移動空間に痛み無く散って行った。いくら魔力を使っても防ぐ事は出来なかった。ウチの体は次々と崩れて行く。
その時、朱奈が移動空間内から消えたのがウチの視界に写った。魔力を失った事で移動空間からはじき出されたらしい。もうウチはここから出る事も出来ない。
「ウチは!ウチは!ここで終わりたくないんや!」
そう叫びながらもウチは自身の肉体の死が最早、避けられない出来事だと認識していた。
「終わりが避けられないなら・・・。こうするまでや!」
か細くそう呟いてウチはウチの中にある因果の1つを鎖状にして具現化してまだ残っている左手に具現化して見た。そのまま左手を離すと消滅する事無く時空の中に落ちて行った。
どうやら因果だけならば時空間の中を落ちて行っても消滅はしないらしい。ならばウチの持っている全ての因果を時空間にばら撒いたらどうなるのか?それはウチにも分からなかったがとてつもない混乱を巻き起こす事だけは感じ取る事が出来た。
「これが最後の実験や・・・」
だからこそウチはそれを実行に移した。ウチの体から抜け落ちた因果が次々と鎖となって時空間に流れ落ちて行く。
痛み無く体が崩れ薄れていく意識の中でウチは走馬灯の様に始まりを思い出していた。
アイリスと名乗る前の事を。
ウチが《魔法少女》となった出来事を。ウチが他者の記憶を手に入れた時の事を・・・。
走馬灯の様にこれまでの人生を振り返りながらウチの身体は次々と分解されて行った。
痛みは無い。
あるのは無力感だけ。
最早、どうする事も出来なかった。
やがて視界が暗くなって行きウチの身体が完全に消滅した事をウチは感じ取っていた。
何も感じる事も考える事も出来なくなりウチは・・・。