偽書魔法少女サツキ☆マギカPSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI SATUKI MGICA   作:ジャックノルテ

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風見野、見滝原編
どうして君は魔法少女に?


 瞼を開いたウチの視界には懐かしい光景が見えていた。

 それは長く帰る事の無かった自分の部屋のベッドから見る天井の光景だった。

 起き上がるとウチはカレンダーを見た。

 ウチが本来いた時間から約三ヶ月前・・・。

 そしてウチの左腕にはソウルジェムが変化した銀色の指輪が嵌められている。

 つまり成功したのだ。朱奈の奇跡を利用する事に成功し時間を超え過去に戻る事に成功したのだ。

 ウチはまずこの三ヶ月前に何をしていたのかを思い出していた。

 特にどうと言う事は行っていない。ただ筒地綾女の記憶と《魔法少女》のルールをノートに書き連ねていただけだ。

 この三ヶ月前、ウチはまだ普通の中学一年生として日常を過ごしていただけだった。

 だからウチは自宅におる訳か。

 まずは日付と時間を確認しウチは直ぐに自宅を出る事にした。

 風見野中学校のセーラー服を着ると夕方の街へウチは歩み出した。幸い家に両親と姉はいなかったので揉める事は無かった。

 ウチはまず人の少ないウチが初めてベータ―と出会った公園に赴くと念の為、ウチの魔法を試す事にした。

 まずは《魔法少女》に変身を行ってみる。特に異常無く変身を行う事が出来た。

 次に両手から鎖を伸ばして見る。特に異常無く伸ばす事が出来た。鎖の先に伸びている宝石を地面に叩き付けて見る。そこから何本もの鎖が伸びて来るのが確認出来た。

 ウチは更に以前の未来で出会った《サリーを着た魔法少女》から奪った蔦の様な植物が伸びて行く魔法を試して見た。

 植物は伸びて来なかった。どうやら未来で《サリーを着た魔法少女》から奪った魔法は使用不可能になっている様だった。

 けれどもウチが持っている魔力の量は未来よりも減ってはいない。つまり因果だけは持ち越しする事が可能な様だった。

 その時、ウチはウチの事を見つめる視線を感じ取った。側の木陰からベータ―がウチを見つめていた。

「ベータ―・・・」

「君は菖蒲彩月だね・・・。どうして君は《魔法少女》に?僕は君と契約をした覚えが無いのだけれど?」

 その瞬間、ウチは魔力を足に集中するとそのまま立ち去った。ベータ―の顔は見たくなかった。ベータ―は感情を持たない分、結局は自分たちの利益を追求していただけなのだ。

 ウチの目的が《最強の魔女》となる事である以上、ベータ―にウチの目的を悟られる訳には行かなかった。特にウチが未来から来たという事だけは知られる訳には行かなかった。

 路地裏に隠れたウチは筒地綾女の記憶を元に自身から放出されている魔力を極限まで押さえた。筒地綾女の記憶によればベータ―ことインキュベーターは《魔法少女》を管理する為にソウルジェムから放出される魔力を元に感知しているらしかった。だからウチは自身の魔力を極限まで押さえて気配を薄くした。

 魔力を薄くした影響で《魔法少女》としての姿は解けてしまった。

 そのままウチは1人で風見野の街を当ても無くぶらついた。

 特に目的がある訳でも無かった。ただベータ―からウチは逃げたかったのだ。

 その時、ウチは近くで《魔女》の気配を感じ取った。それと同時に結界が揺れているのも感じ取った。

 つまりこの近くの結界の中で誰か《魔法少女》が《魔女》と戦っていると言うのがウチにも分かった。

 ウチは結界のある方向へと足を向けた。同時に魔力を足に集中して跳躍してビルの屋上に立つと同時に《魔法少女》としての姿に変身した。

 ウチのソウルジェムを通した広い視界で結界のある方向を見つめてみた。

 その方向には工事現場がありウチの魔力を通した視力は結界の外側から内部を除く事も可能だった。

 赤いポニーテールに赤い衣装を身に纏い赤い槍を構えた魔法少女が《使い魔》と戦っているのが見える。

「あれは・・・。佐倉杏子!」

 それは以前いた時間軸でウチが敗北した相手だった。

 よく考えれば過去であるこの時間軸では確かに佐倉杏子は生き残っている筈だった。

 そう思い至ったと同時にウチの中に熱い感情が沸き起こりウチは衝動的に佐倉杏子の元へ魔力を足へと集中させて跳躍した。

 数個のビルを跳躍したウチはそのまま両手から鎖を伸ばすとそのままの勢いで結界に入り込み佐倉杏子にぶつかろうとした。

 寸前で気が付いた佐倉杏子は真横に跳躍するとなんなくウチに当たるのを避けた。

「お前・・・。《魔法少女》か!アタシの縄張りを狙っているのか!?」

 叫んだと同時に佐倉杏子は槍を多節棍にするとそのままウチに振るって来た。

 右の鎖を回転させて多節棍を防ぐと左の鎖を佐倉杏子に向けた。左の鎖の先にある宝石が寸前で地面を叩くと同時にそこから5本の鎖が佐倉杏子に伸びて行く。

 当たる!と思ったが佐倉杏子の足は素早い動きを見せると鎖を避けウチから一旦、離れて距離を取った。

 お互いに動かなかった。疲れや疲労ではない。ただ相手の次の動きを予想しようと動かなかっただけだ。

「っおおおおおおおお」

 痺れを切らせたのか佐倉杏子がウチに向かって走って来る。ウチはそれに乗る事にした。

 ウチも走り出し両手から伸ばした鎖を回して盾とした。ウチと佐倉杏子の距離が縮まった時、槍を構えていた佐倉杏子は不意に槍を握っていた右手の人差し指と中指を動かした。

 同時に地面から生えて来た菱形の魔力の塊がウチの両手から伸ばした鎖を弾き飛ばした。

「なっ!?」

 驚いたウチが歩を止めると佐倉杏子はその隙を逃さずにウチの体を槍で叩き付けた。

 その勢いで壁に叩き付けられ倒れたウチに佐倉杏子は槍を突き付けて来た。

「どうやら喧嘩を売る相手を間違えた様だね」

 睨みながら前と同じ様な台詞を語る佐倉杏子にウチは内心、苦笑していた。けれどウチは思い出していた。

ウチはキュウべえからウチと初めて戦った時点の佐倉杏子がソウルジェムの秘密にまだ気がついていない事を聞いていた。

(つまり今の佐倉杏子もソウルジェムの秘密には気が付いていない筈や!)

 同時にウチは足に力を込め手から鎖を消すとそのまま佐倉杏子が握っていた槍の刃に向かって起き上がり意図的に自分のお腹を貫かせた!

「なっ!?お前、一体!?」

 ウチの計算通りに佐倉杏子は意図せずにウチを槍で貫いて驚いていた。

 この驚きぶりでは佐倉杏子は殺人を行った事が無いのかも知れない。

 槍の刃が完全にウチのお腹を貫いて貫通していた。ウチの足元に多くの血が流れた。けれど痛みは感じなかった。

 痛覚遮断をしているから槍を刺されても平気だった。

「なっ何なんだ!?一体!?」

 驚きの余り佐倉杏子がそう呟いたと同時にウチは指を動かした。

 魔力によって身体は動く。ウチは渾身の力を込めて身体を槍で貫かせたまま佐倉杏子に向かって動き出した。

「なっ!?」

 放心していた佐倉杏子だったけれどウチが動き出したのを見て正気を若干取り戻した様子だった。けれども抵抗される前に頭とお腹から血を流したウチの右手がソウルジェムと思しき宝石に触れそのまま奪い取った。同時にウチの体を貫いていた槍は消滅して佐倉杏子も普段、着ていると思われる服装に戻った。

「お前!アタシのソウルジェムを!返せ!」

 そう言って佐倉杏子はウチに向かって来ようとした。けれどウチは黙って握っていた佐倉杏子のソウルジェムを握り砕いた。

「あっ・・・」

 同時に佐倉杏子、否。かつて佐倉杏子の肉体だった物は糸が切れた人形の様にその場に倒れ込んだ。死んだのだ。今度こそ完璧に亡くなったのだ。

 ウチは佐倉杏子に勝利したのだ。リベンジを果たしたのだ。

「やった。ウチは勝つ事が出来た!ウチはリベンジを果たしたんや!」

 今、ウチは昂揚感に包まれていた。

 こんなに嬉しい事は無い。

 だから次も殺そう。次は言葉と威圧だけでウチに敗北感を叩き込んだ昴かずみだ。

 けれどその前にこの結界の《魔女》を倒さなければならない。

 ウチはそう思い直すと魔力で胸の傷を治した。同時に何かイメージがウチの頭の中に入って来た。

 両親と妹と教会に住む少女のイメージ。父親の為にベータ―と契約をした赤い《魔法少女》のイメージ。

 それが先程、倒した佐倉杏子の記憶だと感じ取るまで少し時間が懸かった。

 しかし今は結界の中で戦いを行おうとしていた。佐倉杏子の記憶を頭から締め出すとウチは結界の奥へと進んだ。

 同時に手に魔力を集中させて見る。赤い多節棍の槍が魔力によって精製された。

 試しに目の前にいた《使い魔》を切り刻んでみた。《使い魔》は悲鳴を上げてその体を崩していった。

「なーる。この槍は魔力を注ぐ事で具現化し切れ味も良くなる訳やね」

 ウチは佐倉杏子の槍を振りながら新たに手に入れた力を試す事に夢中になっていた。

 幻惑の魔力によってその形を維持しているこの槍は伸縮自在であり多節棍に変化する等、便利な装備でもあった。イメージ次第では更なる変化も期待出来た。

 ついついウチは槍で戦うのが楽しくなってしまい現れる《使い魔》を次々と突き、切り、柄で殴ったりしていると一瞬、赤い何かがウチの目に入った。

 ウチが良く見るとウチの衣装の色である黒に赤が混ざっていた。

 念の為にソウルジェムを通して空気中にある水分の反射を利用して全身を見てみる。

 するとウチのソウルジェムや衣装に血の様な赤が混ざっていた。

 どうやら佐倉杏子のソウルジェムを破壊して因果と魔力を取り込んだ事による影響だとウチにも推測する事が出来た。けれどもそれ程、重要な事では無いのでウチはそれを気にする事無く結界の奥地へと歩んで行く。

 不意に結界が揺らいだ。他の《魔法少女》でもいるのかとウチは少し歩みを速めると結界の最深部へと辿り着いた。

 そこには2体の《魔女》がいた。しかしウチの予想を外れていた。

《魔女》は共食いしていたのだ。比較的人型をしている《マダラ模様の魔女》がもう1体の《魔女》(もはや何の魔女かは分からない)を捕食していた。

「魔女が魔女を捕食しているやと!?不気味やね・・・。それに・・・。どうも不快や」

 そう叫ぶとウチは《マダラ模様の魔女》を切り付けた。

 けれども《マダラ模様の魔女》はウチの攻撃を意に介していない様だった。

 その時、結界が崩れ初め《マダラ模様の魔女》はそのまま足に力を込めている様子を見せた。

「逃がさないで!」

 そう叫ぶと同時にウチは左手を伸ばした。

 そこから赤い菱形の鎖が伸びて次々と先端が分かれて行くとそのままドーム状にウチと《マダラ模様の魔女》を包み込んだ。

 これが佐倉杏子の使っていた魔法だと気が付いたウチだったけれども《マダラ模様の魔女》はそんな事を気にする事無く菱形の鎖に体ごとぶつかって行った。

 壁となった菱形の鎖に阻まれて《マダラ模様の魔女》は倒れ込んだ。

 ウチはそれを逃さず赤い槍を構えた。多節棍とした赤い槍は両端を刃として構成されした。ウチのイメージ通りの変化をした槍を構えウチは《マダラ模様の魔女》に多節棍の刃を叩き付けた。

 顔から胸にかけて大きな切り傷を負った《マダラ模様の魔女》は叫び声を上げるとそのまま倒れ込んだ。しかし目と爪をウチへと向け今度こそ本当に敵意をウチへと向けていた。

 それを見てウチは槍を構え直し《マダラ模様の魔女》と向き直った。

 ウチはイメージする。体にダメージを負った《マダラ模様の魔女》はウチが近付いたら両手の爪で引き裂こうとする筈。注意しなければならないのは《マダラ模様の魔女》の両手、両足は一本ずつ長さが異なると言う事。つまりは動きを人間の範疇で考えるのは危険だと感じ取れた。

 まずは牽制として右手から鎖を放つべきか?それよりも一気に走って距離を詰めると赤い菱形の鎖で《マダラ模様の魔女》の動きを止めて切り刻むべきだろうか?

 少し迷ったけれどウチは後者を選択する事にした。強い意志を持って行動を行う為に足に力を込めた。

(イメージは完璧に行えている!)

 ウチはそう思いながら《マダラ模様の魔女》に向かって走り出した。

《マダラ模様の魔女》に切り掛かるイメージは出来上がっている。

 その時、突如として《マダラ模様の魔女》の脇に人影が現れたと思うと《マダラ模様の魔女》の背中を大きく切り裂いた!

 突然の出来事にウチは驚いたけれどもウチは目の前で弱っている《マダラ模様の魔女》に対して一気に槍の刃を突き刺した。突き刺された刃はそのまま開くと《マダラ模様の魔女》の体を両断した!

 体を両断された《マダラ模様の魔女》は悲鳴を上げながらグリーフシードを残して崩れ去って行った。

(今のが佐倉杏子の魔法やとすると・・・。佐倉杏子の魔法は幻惑と言う事なんやろか?)

 工事現場へと戻ったこの場所でウチはグリーフシードを拾い上げた。

 そこでウチは違和感を覚えた。何故かこのグリーフシードには他とは明らかに違う何かをウチの意思が感じ取ったのだ。

(何やろう?)

 ウチは自分の持つ魔力を注いで反応を窺ってみた。

 特に反応は無い。ならばと、佐倉杏子から奪った幻惑の魔力を注いで見る。

 幻惑の魔力によってウチが感じる違和感を直接、形にしてみようと思った。

(ただし幻惑の魔力がそんな使い方が出来るのかは分からない)

 すると何か像の様なモノが浮かんだ。

 浮かんだのは人影だった。その人影の形が鮮明になって行くと人影が少女だと分かった。

 華奢な体つきの少女の影は明確な姿へと変わって行く。それはウチが良く知る少女の姿だった。

「朱奈!?」

 それは筒地綾女が愛した少女、朱奈だった。

 けれども朱奈は泣いていた。ただただ泣いていた。

 何故、朱奈が現れたのか驚いたけれどもウチは工事現場の適当な場所に腰を下ろすともう一度、《マダラ模様の魔女》のグリーフシードに幻惑の魔力を注いだ。

 注ぎながらも波長や密度を変えて見たりして色々と試した。

 そしてウチは理解した。このグリーフシードを落とした《マダラ模様の魔女》が一体、何者なのかを。何故、朱奈の像が映し出されたのかを。

「そういう事やったんやね」

 ウチは1人、そう呟いた。誰も答える者のいない静寂の中でウチは物思いに耽った。

 様々な因果の果てにウチの手に渡ったこのグリーフシード。

 ウチの想像を越えて世界は回っている事の証明とも言えるんや・・・。

 




これより風見野、見滝原編がスタート。
物凄く惨い話となるので読む覚悟を決めて下さい。
まあでも下手だからそれ程、残酷では無いかも知れませんが・・・。
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