偽書魔法少女サツキ☆マギカPSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI SATUKI MGICA   作:ジャックノルテ

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これでウチはより強くなれる

 曇り空のある日、ウチは今、見滝原市を訪れていた。

 ウチの目は既に目的の人物を見付けていた。

 魔法がギリギリ届く位置にその人物はいた。

 鹿目まどか。破格の因果律を持つ最も《魔法少女》として高い素質を持つ少女・・・。

 学校帰りなのか友人と思しき2人の少女と歩いている。

 ビルの上に立つウチが右手を鹿目まどかのいる方向へと向ける。

 同時に魔法を放つ!

 放たれた魔法は鹿目まどかへと命中した!

 けれど鹿目まどかは何も気が付く事無く立ち去って行った

「これで当面は大丈夫やね」

 そう言うとウチはビルを飛び降りるとビルの陰から歩道に向かって歩いた。

 勿論、ベータ―に見つからない様にする為に魔力を薄くして。

 ウチが鹿目まどかに放った魔法は実に単純な効果を持った魔法だった。

 それは《鹿目まどかがインキュベーターを認識出来ない》と言う効果を発揮していた。

 ウチがこんな行動を見滝原で起こしたのも先日、手に入れたグリーフシードが原因だった。

《マダラ模様の魔女》の落としたグリーフシード。それは元を正せば筒地綾女のソウルジェムが変化した物だった。

 だからこそウチは違和感を感じ取る事が出来た。

 何故ならウチの頭の中には筒地綾女の記憶が差し込まれているのやから。

 筒地綾女の記憶の中には筒地綾女の魔力の波長等も残されていた。その魔力の波長からウチは違和感を感じ取ったと推測する事が出来た。

《マダラ模様の魔女》の落としたグリーフシードにはウチに記憶を差し込んだ以降の筒地綾女の記憶が入っていた。つまりは筒地綾女が《マダラ模様の魔女》に変化するまでの詳細な記憶が残っていたのだ。

 朱奈やベータ―との語らい。それらを楽しんでいた筒地綾女の心情。

 そして苦渋の決断の末に朱奈の記憶から自分の存在を消去しベータ―との約束を守り《魔女》と化した筒地綾女の記憶を追体験した。

 ある意味ではウチは筒地綾女と朱奈の最も理解する者とも言えた。

 でも正直、筒地綾女や朱奈の事はどうでも良かった。2人の事を知った所でウチが強くなる事に繋がるとも思えなかったからだ。

 少し話が脱線したけれどもウチが《鹿目まどかがインキュベーターを認識出来ない》と言う魔法陣を鹿目まどか本人に施したのは筒地綾女の記憶が引き金だった。

 その記憶の中には筒地綾女とベータ―があすなろ市で戦うプレイアデス星団について意見を交わした記憶が残っていた。

 合成魔法少女やインキュベーターとグリーフシードを合成したジュウべえ、あすなろ市全体に施された《インキュベーターを認識出来ない》と言う魔法陣。

 その記憶がヒントとなってウチはインキュベーターを認識出来ないと言う魔法陣が作り出せるのならば《鹿目まどかがインキュベーターを認識出来ない》と言う魔法陣をも作り出せるのでは無いかと考えた。

 結果は恐らく成功と言える様だった。ウチの目には今の所、ベータ―が鹿目まどかと接触する行動を感じる事は出来なかった。

「これで見滝原市での行動は終わったんや。次はあすなろ市へ・・・」

 呟きながらいつしかウチは五郷(いつさと)地区を歩いていた。

 歩きながらウチは不意に同じ年代の少女の声を聞いた。視線を声のする方へと向けると学校と思しき場所が見えた。魔力で強化された聴力には少女たちの多数の声が聞こえて来た。

「因果律を上げるにはちょうど得えやね」

 ウチは幻惑の魔力を使いウチの姿を景色の中にカメレオンの様に溶け込ませた。

《魔法少女》で無い限りウチの存在に気が付く事は無い。

(これで余計な邪魔が入る事も無いやろ)

 佐倉杏子から奪ったこの幻惑の魔術はとても便利な物だった。佐倉杏子の記憶によればこの幻惑の魔術はロッソ・ファンタズマ(赤い幽霊)と言うらしかった。

 このロッソ・ファンタズマと言う命名は佐倉杏子の先輩に当たる魔法少女、巴マミが名付けた物だったが本人はこの命名を嫌がっている様だった。

 ウチが使うからにはロッソ・ファンタズマと言う名前では相応しく無い。命名するのであればエレガンテ・ファンタズマ(洗練された幽霊)と名付けるのが相応しいとウチは思う。本来であればウチの髪の色やソウルジェムの色に合わせてヴィオーラ・ファンタズマ(紫の幽霊)と名付けても良かったが今、《魔法少女》としてのウチの髪とソウルジェムの色は変化し赤が混じっていた。

 恐らくは佐倉杏子のソウルジェムを砕き記憶と魔力を取り込んだ事が影響しているのかも知れなかった。これから次々と他の《魔法少女》を殺して因果と魔法を奪い続ければさらに色が変化する事がウチにも予想する事が出来た。

 そうこう考えうる内に姿の見えていないウチは学校の校門から堂々と学校内へと入った。

(確か白女とか言う有名なお嬢様学校らしかった)

 部活動を行う生徒や教師等がそれぞれ活動に勤しんでいた。

 無意識の内に唇を吊り上げ笑みを浮かべたらしいウチは両手から鎖を伸ばし思いっきり無数の方向へと伸ばした!

 鎖は先端から次々と分裂して行き周囲の少女だけを貫いて因果を奪い殺害して行く。

 周囲では突然、多数の少女が倒れた事による混乱から生じる悲鳴が聞こえるがそれを無視してウチは《魔法少女》としての姿に変身すると校舎へと向かった。

 勿論、姿はエレガンテ・ファンタズマで隠したままで。

 この様子なら校舎にもまだ少女がいると思われたからだ。

 校舎の入り口へと入り込むとウチの眼前に《青く長い髪を生やした少女》が2人の少女と歩いて来るのが目に写った。

 躊躇う事無くウチは鎖を3人に放った。

 ところが《青く長い髪を生やした少女》は自分に向けられた鎖を手で払い除けた。しかし共に歩いていた2人の少女からは因果を奪う事に成功していた。

「誰!?」

 共に歩いていた2人の少女が倒れたのを見て《青く長い髪を生やした少女》は叫びながら光に包まれ《魔法少女》としての姿を取った。

 中世のドレスを思わせる姿に盾の付いた斧を構えた《青く長い髪を生やした少女》を見てウチはエレガンテ・ファンタズマを解除して姿を現した。

「あんた、魔法少女!?こんな時に何をしようっての!?」

 そう叫ぶなり《青く長い髪を生やした魔法少女》はウチに斧を振り下ろした。

 けれどそれはウチが少し手前に設置したウチの幻影を切り裂いただけだった。

「なっ!?」

「終わりや」

 《青く長い髪を生やした少女》が驚きの声を上げたその時、幻影の後ろに隠れていたウチは右手に出現させた赤い槍が伸びて《青く長い髪を生やした少女》の体を貫いた。

 同時に刃は両端へと開きそのままソウルジェムごと相手の体を切り裂いた。

 声も無く崩れる《青く長い髪を生やした少女》をウチは暫く見つめていたけれど直ぐに飽きて校舎を出た。勿論、エレガンテ・ファンタズマで姿を隠して。

 校庭ではウチが多くの少女を殺した為に教師たちは混乱していた。

 ふとウチの視線に混乱する人々の中で1人の《冷めた目をした少女》が写った。

 灰色の長い髪を左側に寄せたサイドポニーの髪型をしておりかなりスタイルも良い。

 同性のウチでも羨ましい位のスタイルだ。

 けれど寂しそうと言うよりも全てを冷めた瞳で見つめる《冷めた目をした少女》は目の前の出来事にすらあまり関心を払っていない様だった。つまりは自分の思考のみに集中する強い意志を証明している。

 まるで全てを諦めているかの様な寂しさを見せた瞳に強い意志が秘められているのをウチは直感していた。《冷めた目をした少女》と同じ強さを持った瞳を知っていた。

 ウチを威圧と言葉だけで敗北させたあの昴かずみと同じ強さを宿した瞳だった。

《冷めた目をした少女》にウチは恐怖を感じ取っていた。

(もしかしたらこの少女は《魔法少女》として強い因果を持ち合わせているのかも知れない・・・)

 将来最大の敵になるのやも知れなかった。

 だからウチはそれを防ぐ為の手段を躊躇無く実行した。

「それなら今ここでリタイアして貰うまでや!」

 躊躇無くウチは鎖を放った。鎖は拍子抜けする程、簡単に《冷めた目をした少女》から因果を引き抜いてしまった。《冷めた目をした少女》は倒れ込む。

 因果の具現化した白い鎖がウチの手の中に握られていた。ウチは躊躇う事無く鎖を握りつぶした。因果がウチの体を駆け巡ってウチはより強くなった事を感じ取っていた。

 今日だけでかなりの数の少女を殺して因果を奪っていた。

 安堵感と共にウチはより強くなっていた事を実感していた。

 そして自らの強さを試したいと言う気持ちも生まれていた。

 

 

 

 

「まだやろか。まだ・・・」

 深夜の見滝原にある高いビルの屋上でウチは《魔法少女》としての姿をとって見滝原市を見続けていた。

 佐倉杏子の知識によるとこの見滝原市には巴マミと言うベテランの《魔法少女》がいるらしい。筒地綾女の記憶からも裏付けが取れていた。

 巴マミと戦う為にウチはこの見滝原市に出現している《魔女》や《使い魔》の結界を監視していた。

 どうやら巴マミは《魔女》も《使い魔》も現れれば必ず退治すると言う性格らしかった。

 ならば見滝原市に現れた結界を監視して行けば必ず巴マミは現れると思われた。

「見つけたで!」

 その時、監視していた結界の1つが突如として揺れた。

 結界が揺れる理由はただ1つ。《魔法少女》が結界の中で戦っているのだ。

 ウチは揺れた結界の元へと向かうとそのまま結界の中に突っ込んだ。

 邪魔な《使い魔》を次々と槍で切り刻み結界の最深部へと向かった。

 そこには1人の《魔法少女》がこの凸凹した結界を作り出していたと思われる《使い魔》を倒していた。

 それは黒い衣装に右目に眼帯を付け両手から鉤爪を生やした《黒い魔法少女》だった。

 明らかに佐倉杏子の記憶にある巴マミの姿とは異なっている。

「巴マミや無いのね・・・。まあええわ」

 ウチは少し落胆していた。けれどもこの《黒い魔法少女》でもウチの強さの糧にはなるのやろう。そう思って背後から鎖を飛ばした。

「うん?」

《黒い魔法少女》は鎖をなんなく手から生やした鉤爪で鎖を払いウチの方を見た。

 これにはウチも驚いた。ウチの鎖はかなりのスピードと魔力を帯びて飛ばした筈だった。

 その鎖をいとも容易く払ったと言う事はこの《黒い魔法少女》は強いのかも知れなかった。ウチは姿を現した。

「誰?ああ。同じ魔法少女かぁ。ちょうど良いや。ちょっと付き合ってよ。今とても、もやもやしているんだ」

《黒い魔法少女》はそう言って鉤爪をウチに向けている。

「まあ、ただのやつあたりだよ」

 そう言って《黒い魔法少女》はウチに向かって来た。

 速い!

 その攻撃はウチが念の為にウチの正面に囮として設置していた幻覚をも切り裂いた。

「なんやと!?」

 驚いたウチだったけれども左手の鎖で防御しながら右手に構えた多節棍に変化させた両刃の槍を《黒い魔法少女》へと振り投げた。

 ところが《黒い魔法少女》はウチの想定よりも速いスピードを発揮し右手の槍を鉤爪で払いウチの防御を掻い潜ると腹に蹴りを加えて来た。

 蹴りの勢いに吹き飛ばされたウチは結界の壁に叩き付けられたけれども立ち上がった。

 予想以上に《黒い魔法少女》は強い。だからこそウチの強さを確かめられる!

「ここまでやるとは予想外やね。まあ、ええわ。ウチの魔法を見したるさかい!」

 ウチは自身の魔力を周りの放出していた。その魔力によって凸凹した結界の風景は形を変えて平らな地面へと変化して行く。

「何だ!?」

《黒い魔法少女》は少し狼狽していた。それを見てウチは更に魔力でエレガンテ・ファンタズマを応用して虚像を作り上げる。

 ただ作り上げるだけではつまらない。その虚像は佐倉杏子の姿をしていた。

「なっ!?魔法少女がもう1人!?」

 驚きの表情を見せる《黒い魔法少女》を見たウチはそのまま虚像の佐倉杏子と共に《黒い魔法少女》に向かった。

 虚像の佐倉杏子もウチに合わせて動き始める。

「今度はウチの。いや。ウチたちの番や!」

「どんくさいくせに生意気だよ!」

 エレガンテ・ファンタズマで作られた虚像の佐倉杏子はウチが手に入れた佐倉杏子の戦い方を元に動く人形と言えた。

 ウチと2人で《黒い魔法少女》に攻撃を加えて行く。

 虚像の佐倉杏子の攻撃は実体を持っていた。佐倉杏子の使っていた魔法、ロッソ・ファンタズマは攪乱目的の魔法であり攻撃能力を持ってはいなかった。

 けれどもウチの使うエレガンテ・ファンタズマはロッソ・ファンタズマの発展系とも言え攻撃能力を持っていた。その攻撃は実体となって相手を貫く。

 槍と鎖の波状攻撃。2対1と言う状況でも《黒い魔法少女》はウチと虚像の佐倉杏子の攻撃を凌いでいた。

 けれどもいずれウチの魔法、エレガンテ・ファンタズマが効果を見せる。

「うぁ!?」

 その時、《黒い魔法少女》は足元をふら付かせた。

(今や!)

 それを見たウチは躊躇無く鎖で《黒い魔法少女》を拘束する。今度は相手が困惑していた隙を付いて拘束に成功する。

「ぐっ何を!?」

《黒い魔法少女》の悲鳴と同時に虚像の佐倉杏子は手に持った槍で《黒い魔法少女》の体を数回に渡ってを刺し貫いた。少女の悲鳴が結界の中に轟いていた。

《黒い魔法少女》が突然、体制を崩したのは単純なトリックだった。

 それはエレガンテ・ファンタズマを使いこの凸凹した結界内の見かけを変えた事による物だった。

 ウチは自身が起こした魔法である為に影響を受ける事無く凸凹を旨く避けて動けたけれども《黒い魔法少女》は視覚的には凸凹が無くなったと思って動いていた為に足元をふら付かせる結果となったのだ。

 虚像の佐倉杏子に《黒い魔法少女》が動けなくなるまで槍で刺し貫かせたウチは《黒い魔法少女》のソウルジェムを見定めると奪い取り握り潰した。

 そのまま《黒い魔法少女》は死んでしまった。同時にウチの中に新しい因果が流れ込んで来た。

「ふふっ。これでウチはより強くなれる。ウチこそが最強の魔法少女なんや!」

 崩れる結界の中で自分の強さに酔ったウチはそう叫んでいた。

 そしてウチのソウルジェムに今日だけでも青と黒の色が加わっていた。

 その時、結界は崩壊しこの場所が元のトンネルへと戻った。それにしても奇妙な事だった。結界の崩壊がここまで遅いのは妙な事だった。

《黒い魔法少女》の遺体は結界と共に消え去って行く。

「もしかしたら彼女の魔法が原因だったのかしら?」

 そう呟いたウチだったけれどもまだ《黒い魔法少女》の魔法を完全に理解した訳では無かったのでそうとも言い切れなかった。

 ウチは視界を再び広げて見滝原市を監視しようとした。直ぐに新たな結界が揺れているのを感知した。

「今度こそ、当たりやとええんやけど・・・」

 そう呟きながらウチは新たな結界へと跳躍して行った。

 

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