偽書魔法少女サツキ☆マギカPSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI SATUKI MGICA 作:ジャックノルテ
ウチは結界に入るとすぐに《魔法少女》を探した。魔力の揺れを感知する事でこの結界に入り込んだ《魔法少女》をすぐに見つける事は出来た。
壁際から様子を窺うウチの目の前で《使い魔》を倒していたのはウチが探していた《魔法少女、巴マミ》だった。
「そこにいるのは誰!?」
そう言いながら結界内の壁に隠れて様子を窺っていたウチの事を巴マミは直ぐに見抜きこちらに武器を向けていた。幸いまだウチは姿を現していないがウチのいる方向は見抜かれている様やった。ベテランの《魔法少女》として巴マミの感度の良さにウチは驚嘆していた。
(流石は佐倉杏子の師匠と言うだけの事はあるみたいやね。ならここは・・・)
ウチは悪戯半分にエレガンテ・ファンタズマを発動させた。行うべき行動は1つ。ウチの姿を佐倉杏子へと変えて巴マミの前に姿を現す。
佐倉杏子の記憶によれば巴マミとは喧嘩別れした事が明白だったが佐倉杏子の姿を取る事で巴マミの油断、もしくは不意を付いてウチの魔法で隙を作れるかも知れなかった。
「出て来なさい!隠れているのは分かっているわ!」
巴マミの語気は先程より強まっている。これ以上、引き伸ばすのは得策で無いと判断したウチは姿を現す事にした。ただし本当の姿ではなく佐倉杏子の姿で。
「っ!あなたは・・・。佐倉さん!?」
巴マミは驚きの表情を見せていた。どうやらエレガンテ・ファンタズマの効果は順調の様だった。《魔法少女》としての佐倉杏子の姿を取り赤い槍を持ったウチを巴マミは佐倉杏子と認識している様やった。
「どうしてこんな所に?もしかして・・・。私から縄張りを奪いに来たと言うの?もしそうなら容赦しないわ。あの時の様には行かないわよ!」
巴マミはそう言いながら被っていた帽子を手に持って振ると前方に多数のマスケット銃を出現させた。マスケット銃を一丁、ウチに向けて完全な臨戦態勢である。
あの時と言うのは恐らく佐倉杏子と巴マミが決別した時の事を言っているのだろう。
決別の時にも巴マミと佐倉杏子の戦闘は行われたが巴マミの優しさに付け込んだ佐倉杏子が勝利して風見野市へと去って行った。
けれども佐倉杏子の記憶よりも目の前にいる巴マミは強い意志を宿していた。生半可なやり方では勝利するのは難しいだろう。けれどウチには全てのルールを知っていると言う強みと佐倉杏子の振りをしていると言う勝因がある。
「アタシはあたしの好きにやらせて貰うよ!この縄張りはアタシが貰った!」
なるべく佐倉杏子の口調を真似たウチは槍を構え巴マミへと向けた。
「そう・・・。残念ね。もうあなたに手加減をするつもりは無いわ!」
そう言って巴マミは躊躇無くウチに向かいマスケット銃を発射した。
弾丸は正確にウチの膝を狙って来たが回避するとウチは多節棍へと変化させた槍を目の前で回転させ始めた。
同時に巴マミは次々と帽子の中からマスケット銃を出現させ多数の銃撃がウチを襲った。ウチは多節棍に変化させた槍を回転させ続ける事で銃撃から身を守っていた。
不意に槍の回転が強引に止められた。見ると多節棍に変化させていた槍が地面に沿って伸びて来た黄色いリボンによって縛られ回転を止められていたのだ。
と同時にウチはお腹に衝撃を感じた。視界に誰かの足がお腹に食い込んでいるのを見て蹴られたと言うのが理解出来た。後方へと飛ばされるウチはそれが巴マミの足だと理解した。巴マミは多節棍の槍の動きを銃撃と同時に放ったリボンで拘束して停めると同時に飛び蹴りをウチに放っていたのだ。
蹴られたウチは多節棍にしていた槍の柄を戻すと元の槍に戻し刃先を地面に突き刺して減速して体制を直そうとした。ところがウチの視界にはウチを追って飛んで来る巴マミが見えていた。良く見るとウチの武器にはまだ黄色いリボンが付いたままだった。巴マミはリボンを握ったままウチを追いかけて来たのだ。
そのままの体制で巴マミが左手を突き出した。同時に無数のリボンがウチの方へ飛んで来てウチの体を引き裂いた。痛覚を遮断していたウチだったけれどもそのまま壁に激突してしまった。
壁が壊れた瓦礫の中から起き上がったウチに対して巴マミは躊躇無く額にマスケット銃の銃口を突き付けた。
「お互いの事は良く知っているでしょう?これに懲りたらもうここには来ないで・・・」
やはり巴マミは命を奪おうとはしない様だった。けれどもウチはそう言う訳にはいかない。だからエレガンテ・ファンタズマを発動させる事にした。
突如として巴マミの背後に影の様な物が起き上がり人の形を成して行った。
それは少女の形をなして行き佐倉杏子の姿を成して行った。
《虚像の佐倉杏子》はウチの意図通りに躊躇無しに背後から巴マミの背中を切り付けようとした。けれども巴マミはウチに視界を向けたまま左手から出したリボンで《虚像の佐倉杏子》を縛り上げてしまった。
「こんなごまかしが私に通用する訳、無いでしょう?」
ウチは素直に驚いていた。まさか背後で発動したエレガンテ・ファンタズマを見抜くとは思わなかったからだ。更に視界を向ける事無くリボンの拘束で動きを封じてしまっていた。
ウチの使うエレガンテ・ファンタズマは実体性の高過ぎる分、リボンによる拘束で簡単に動きを取れなくなっていた。
巴マミは強い。恐らくはまともな方法で戦ったとしても勝利するのは難しいだろう。
だからこそウチはマトモじゃない手段を取る事にした。
ウチが地面に付けていた右手の指を僅かに動かしたと同時に赤い菱形の鎖がウチに向けられたマスケット銃の銃口を逸らすと同時にウチと巴マミの間に壁を作った。
銃口を逸らされたと同時に巴マミは直ぐに後ろへと下がり再びマスケット銃を構えた。
エレガンテ・ファンタズマで形成した《虚像の佐倉杏子》を消し去ると同時にウチは新たにエレガンテ・ファンタズマを発動させた。
今度は10人程、実体を持ち攻撃能力を持った《佐倉杏子の分身体》を出現させ同時に巴マミへと当たらせた。
多数の《佐倉杏子の分身体》が迫っても巴マミは動じる事は無かった。ただ冷静に迫って来た《分身体》をリボンで拘束しリボンから逃れた《分身体》を帽子の中から出した無数のマスケット銃を発射しては持ち替えて続け様に撃ち続ける事で《分身体》を撃ち倒して行った。エレガンテ・ファンタズマによって作られた分身体は実体と同じ攻撃力を持つが一度、攻撃が当たれば簡単に消えてしまう。
けれどウチにはそれで十分やった。これで僅かだが時間は稼げる。
「こんな分身で私を倒せると思ったの!?」
巴マミがそう叫んだ時にはウチはエレガンテ・ファンタズマを応用して姿を隠したと同時に移動していた。先程から隣の部屋からはウチと巴マミ以外の人間がいる事をウチは感じ取っていた。マトモに戦っても勝ち目が無いのなら人質を使い勝利するまで。
結界内の扉を開いて見るとそこには数人の人々が倒れていたが《魔女》はいないようだった。瞬時にウチは佐倉杏子の魔法である赤い菱形の鎖を発動させると数人の人たちとウチ自身を拘束して結界内の天井に吊るした。拘束する際にウチは自分の姿を元のセーラー服を身に纏った菖蒲彩月としての姿に戻した。
そしてウチと拘束された数人の人々の真下にはエレガンテ・ファンタズマで《虚像の佐倉杏子》を出現させると同時に拘束された人々やウチの虚像も多数、用意した。
これを見た巴マミは驚くだろう。佐倉杏子が人質を取って勝利しようとしていると言う状況に。更には幻惑の魔法を使う事で人質を分身させて簡単には助けられない様にまでしている。
ウチは内心でだが・・・。巴マミがこのピンチをどう乗り切るのかを少し期待していた。
その時、結界内の扉を開いて両手にマスケット銃を構えた巴マミが姿を現した。
「この人たちは・・・。佐倉さん!」
巴マミは結界内の天井にぶら下がり拘束されている多数の人たちを見て驚いていた。
その真下にはウチが用意した《虚像の佐倉杏子》が不敵な笑みを浮かべている。
なおウチは菱形の鎖や《虚像の佐倉杏子》を利用する事で多方向からこの結界内を見つめていた。
「佐倉さん。あなた・・・。そうまでして私に勝ちたいの?こんなやり方で縄張りを広げてあなたはそれで満足なの?」
《虚像の佐倉杏子》は何も答えない。でもウチはそうまでしてでも巴マミに勝ちたかった。ウチはこれ以上の問答は無用とばかりに《虚像の佐倉杏子》を巴マミへと走り出させた!
一瞬の躊躇の表情を見せた巴マミだったけれども直ぐに表情を引き締めると続け様に2発、マスケット銃を発射した。発射された弾丸は正確に《虚像の佐倉杏子》の両足の膝を狙っている。《虚像の佐倉杏子》はウチから魔力で送られた指示通りに両足の膝を狙う弾丸を持っていた槍で2発を続け様に叩き落した。
後僅かな距離で《虚像の佐倉杏子》が構える槍の間合いに到達する。けれども巴マミは少しも慌てる事無く両手に持ったマスケット銃を《虚像の佐倉杏子》に向けていた。
(あの銃は1発ずつしか撃てない筈?)
ウチがそう思っていると巴マミが握っていた両手のマスケット銃が形を崩して黄色い布状に変化すると同時に2本のリボンとなって《虚像の佐倉杏子》を一瞬で拘束してしまった。拘束されたと同時に《虚像の佐倉杏子》は消え去ってしまったが。
「これは?幻惑の魔法!でもそんな!?」
狼狽する巴マミを見てウチは自分とこの場にいる全ての人々を拘束している菱形の鎖を解除した。
ウチと数人の人々、それに《虚像の人々》も混ざって落下して行く。
「いけない!間に合って!」
巴マミからもウチを含めた数人の人々が落下しているのが見えている筈。けれど落下する人々の中には同じ顔の人も含まれているのだ。
つまり幻惑の魔法を応用した虚像も混じっておりこれが魔力の消耗を狙った作戦であるのは明白だった。
もし巴マミが縄張りを守る為にたとえ相手が昔の弟子だとしても非常に徹する事が出来るのであれば落下する人々は無視する筈。
だが巴マミは躊躇する事無く両手を天井に向かって伸ばして多数のリボンを出現させてウチを含めた落下する人々次々とを受け止めた。
虚像の人々は受け止められたと同時に消えて行き巴マミのリボンによって床に降ろされたウチは少し焦りを覚えた。
(このままではウチが巴マミに反撃する事が難しい。今しか反撃のチャンスは無い!)
そう思ったと同時にウチは《魔法少女》としての姿に変身すると手に佐倉杏子の伸縮自在な赤い槍を出現させると同時に巴マミへと伸ばして行く。
狙いは巴マミが髪飾りとして付けているソウルジェム!
ウチに背を向けていた巴マミは不意に振り返った。
まるでスローモーションの様に驚く巴マミの顔がウチの目に写った。
(まずい!?)
このままでは意図せずにウチが嫌いな顔を切り裂いてしまうと言う行為に至ってしまう。
ウチは反射的に赤い槍を構成する魔力を強引に停めようとしてしまった。
だが急激に魔力を停めるという事は急に流れを塞き止めると同じ事。
停めようとしたが、停めようとしたが、魔力は溢れ意図せずにウチが握り締める赤い槍へと流れてしまう。流れ込んだ魔力で暴走した赤い槍はその刃に魔力を帯びて刃を大きくするとそのまま避け様とした巴マミの首を切り裂いてしまった。
首を失った体が倒れ、飛ばされた首がボールの様に転がって行くのがウチの目に焼き付いた。
こんな筈では無かった。こんな惨い殺し方をするつもりは無かった。
ウチは意図しなかったとは言え相手の首を落とすと言う惨いやり方で人を、否。《魔法少女》を殺してしまった。
因果律を奪って殺した事はあった。けれどウチはなるべく血の出ない様な殺し方を選んでいた。
けれどウチ自身がそのやり方を否定してしまった。
呆然とするウチの目の前に巴マミのソウルジェムが転がって来た。
巴マミの首が落とされた時点でソウルジェムは卵型の宝石となって転がって来たのだ。
恐る恐るウチはソウルジェムを拾い上げようとした。手が震えて直ぐには拾えなかった。
けれど拾わない訳には行かなかった。ウチはこの為に巴マミと戦ったのだから。
何度か失敗してようやく拾う事に成功した時、ウチの目の前で信じられない出来事が起こった。
「!」
その時、ウチの目の前で巴マミの死体の腕が僅かに動いた様な気がした。
(確かソウルジェムは100メートル圏内であれば離れていても肉体のコントロールは可能な筈や・・・)
ウチの脳裏に首を失いなお戦おうとする巴マミの姿がありありと浮かんでいた。
しかもそれは現実に起こり得る事なのだ。
もしかしたら巴マミは自分の首と胴体が両断された事に気が付いていないのかも知れない・・・。とても恐ろしくなったウチは踵を返すとこの結界を出ようと足を速めた。
今だけは逃げ出したかった。
たとえどんな侮辱や攻撃を受けてもウチは逃げ出したかった。
結界内にいる《魔女》や《使い魔》を放置してウチは巴マミのソウルジェムを強く握り締めるとただ走った。
ただ逃げ出したかった。
目の前の現実を拒否してウチは逃げ出したかった。
この話は納得が行かなかったので3回も書き直しました。
自分の中では新記録。