偽書魔法少女サツキ☆マギカPSEUDEPIGRAPH PUELLA MAGI SATUKI MGICA   作:ジャックノルテ

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アンタを殺しても構わないんやろ

 意図せずに巴マミを殺害してから一週間、ウチは見滝原市内にあるホテルの一室に閉じ篭っていた。

 巴マミを殺害した事はウチの心に予想外の棘となって引っかかっていた。

 ベッドの脇にあるテーブルには巴マミの黄色いソウルジェムが鈍い光を放っていた。

 それを見つめる度にウチの心には鋭い痛みが走った。ウチはその度にベッドの中で布団を被って何も見ない様にしていた。

 けれどもずっとそうしている訳には行かんかった。ウチは《最強の魔女》となる事を誓ったのだ。己の誓いを裏切らない為にもウチは戦いをやめる訳には行かんかった。

 とにかくウチはホテルを出る事にした。

 この時間軸に来てからウチは少女から因果律を奪ったり《魔法少女》や《魔女》や《使い魔》との戦いをする以外に筒地綾女や佐倉杏子の記憶を元にお金を得る為にATMを襲ったりガラの悪い人々を襲ったりしてお金をある程度、稼いでいた為にホテルに宿泊する事は簡単だった。

 それにこの一週間もただ閉じ篭っていただけでは無かった。閉じ篭っている間にウチは呉キリカや《青く長い髪を生やした少女=浅古小巻》の記憶を解析して完全に頭に馴染ませる事が出来ていた。

 だからこそ彼女たち、《2人の魔法少女》の力をウチの物にする事が出来ていた。

「さてこれからどうすべきやろか・・・」

 ウチは道を歩きながらこれからの事を考えていた。既に見滝原市で行うべき事は終えていた。それならば前々から考えていたあすなろ市において《プレイアデス星団》に所属している昴かずみへのリベンジを行う事も頭を過ぎった。

 しかし・・・。

「けど・・・。今のこの時間には昴かずみは存在しないんやね・・・」

 ウチは自分を納得させる為に言葉を発した。

 昴かずみ。《プレイアデス星団》に所属する《魔法少女》。彼女の誕生の経緯をウチは前の時間軸において昴かずみと戦った後にベータ―から聞き出していた。

 死亡した魔法少女を生き返らせると言う禁忌の実験を行う魔法少女とそれを利用しようとする魔法少女同士の抗争を終わらせる為に昴かずみは誕生した。

 けれどもそれはこれから約二ヶ月程先の未来に起こるべき出来事やった。

 更に突き詰めて言うなれば既にウチが過去に来てしまった影響で未来は変わりつつあると言える。

 この時間軸において昴かずみが誕生すると言う保障は何処にも存在しなかった。

 それならばあすなろ市へと赴き今の《プレイアデス星団》と戦う事に意味があるのやろか?

 それについてウチは既に答えを出していた。元の時間軸においてウチが遭遇した《プレイアデス星団》のメンバーは昴かずみ、牧カオル、御崎海香の3人だった。

 けれど佐倉杏子の記憶によればこの時間軸の《プレイアデス》星団を構成するメンバーは、和紗ミチル、御崎海香、牧カオル、宇佐木里美、神那ニコ、浅海サキ、若葉みらいの7人だった。

 ウチが元いた時間軸の記憶と佐倉杏子の記憶を統合して整理してみると恐らく和紗ミチルは死亡している筈。残された《プレイアデス星団》が和紗ミチルを生き返らせる為の合成魔法少女を作り出し始めていると考えられた。

《プレイアデス星団》を全員、倒して後に昴かずみとなる合成魔法少女をも殺せばウチは昴かずみを乗り越えたんだと思える気がしていた。

「あすなろ市へ行くか・・・」

 そう呟いてウチは自分の決心を確認していた。決意を確信へと変えるとウチはあすなろ市の方角へと足を向けた。

 見滝原市からあすなろ市へ行くには隣の風見野市を抜けて行くのが一番の近道だった。

 ウチは魔力を足に集中するとビル街や裏道を跳躍してあすなろ市を目指した。徒歩を選択したのはあすなろ市全体に張り巡らされている《インキュベーターを認識出来ない》と言う魔法陣がどれだけの影響力を持つのかを危惧した為であった。

 夕方の裏道を駆けているとウチは《魔女》の結界の気配を感じ取った。

 感知と同時にウチは結界に向かった。躊躇いは無かった。脳裏に巴マミの事が過ぎらなかったと言えば嘘となるがそれでも構わなかった。

 ウチは今、戦いを望んでいた。

 結界内でウチは次々と現れる《使い魔》を浅古小巻の斧で次々と切り刻み最深部へと進んで行く。

 使ってみると先日、手に入れた浅古小巻の使う魔力で具現化された斧は便利な装備だった。ただ切るだけでなく非常時には魔力を帯びた盾を出現させる事も出来るのだ。

 今のウチの実力では結界の最深部へと到達するのは簡単な事だった。

 最深部にいた《魔女》は人を捕食していた。その大きな手で掴み周りにいる捕獲したと思われる人々を次々と捕食していた。

「人間なんて、そんなに旨い物とも思えへんけどね・・・」

 ウチはそう呟きながら《魔女》に向かって駆け出す。同時に浅古小巻の持つ盾の魔法を発動する。

 同時に《魔女》はウチの作り出した魔力による防護壁に閉じ込められた。それを見るとウチは上空へと跳躍すると斧に魔力を集中させ防護壁ごと《魔女》を倒そうと斧を最大の力で振り下ろした。

「これで終わりや!」

 勝利を確信していたウチだったが突如として結界の内部に新たな《魔女》と《使い魔》が数匹、表れてウチに攻撃を仕掛けて来た。

 慌てたウチは攻撃を中止して左手から鎖を伸ばすと背後の地面に引っ掛けて鎖を縮めると《魔女》から一旦、距離を取った。

 そこには《魔女》が群れをなしてウチを見つめていた。姿の異なる《魔女》と《使い魔》が群れを作ってウチと対峙していたのだ。

「おかしい・・・。違う種類の魔女が群れを作るなんて・・・」

 ウチはそう呟いて自分に生じた疑問を確固たる物にしていた。

 今までウチはそんな現象を見た事が無かった。

「困るんですよねー」

 突如として少女の声がその場に響いた。

《魔女》の群れが二つに割れてそこへ1人の少女が歩いて来た。結界の中でも平然とし妖しい笑みを浮かべている少女を見てウチはこの少女が《魔法少女》だと直感した。

「わたしの下僕を勝手に殺されたら、わたしが困るんですよー」

 そう言って少女は《魔法少女》としての姿に変身した。オレンジと茶色に彩られた衣装を身に纏い先がCの文字の様に曲がった杖を持った姿に。

「あなた・・・。新人さんですか?ここがわたしの縄張りだと知らないんですか?」

 歪んだ笑みを見せて少女はウチを見下していた。

 少女が手を上げるとそれに呼応する様に《魔女》や《使い魔》も咆哮を上げた。

「今なら泣いて謝ってくれれば許してあげますよ。でないと死んじゃうかも知れませんよ!」

 目の前の少女を見てもウチは別段、慌てる事は無かった。魔力を感知する能力の高いウチは既に目の前の少女とウチを比べてウチの方が高い魔力を持っている事を感じ取っていた。更に目の前にいる少女が魔女を操る能力を持っている事を推測する事が出来た。でなければ《魔女》や《使い魔》が少女に従う訳が無い。

「ならウチがアンタを殺しても構わないんやろ!」

 そう言ってウチは浅古小巻の斧を敵である少女に向け魔法を発動させた。

「良いんですか?わたしもそこまで気が長い訳じゃないんですよ!」

 そう言って少女は持っていた杖を上に掲げた。同時に《魔女》や《使い魔》はウチに敵意を向けてウチに殺到しようとした・・・。が、途中で何かにぶつかりウチに向かって行くのを遮られていた。

「どうしたんですか?」

 訝しげな表情を見せる少女は自分の目の前にも何か壁の様な物がある事に気が付いた。

「これは!?」

 少女はようやく気が付いた様だった。何と少女と《魔女》、《使い魔》は魔法による防護壁に分断されて閉じ込められていたのだ。浅古小巻はこの防護壁を1つしか展開出来なかったがウチは膨大な魔力を持っている事から複数の防護壁を一度に発動する事が可能だった。

 ウチは躊躇う事無く少女の閉じ込められた防護壁に入り込んだ。この魔法の防護壁はウチだけは出入りする事が自由だった。驚愕の表情を見せた少女は杖を向けて光弾をウチに向けて発射した。

 速度低下を発動させたウチは少女の攻撃を容易く回避し少女の胸にポールアックスを振り下ろして躊躇無く切り裂いた。

「ギャアア」

 少女は胸を切られ、そのまま倒れ込んだ。ウチは躊躇無く倒れ込んだ少女の喉に斧を突き付けた。怯えた少女の瞳を見てウチはこれからどうするのか思案した。

 そう言えばウチは巴マミを殺害した時に意図せずに首を切り落としてしまい予期せぬ精神的な痛みで1週間程、ホテルに閉じ篭っていた。

(ならば同じ事をしてみよう。あの時と同じ事が出来るのならばウチはそれを乗り越えられたと言う事なんや!)

 斧を振り上げたウチと少女の視線があった。少女の瞳は何か懇願するかの様な色が浮かんでいた。けれどウチはそれを無視して斧を少女の喉に向かって真っ直ぐに躊躇わずに力一杯、振り下ろした。

 過去と決別する為に・・・。

 何かとても不快感のある悲鳴がウチの耳に響いたけれどウチはそれを無視した。意図しない形で巴マミを殺した時と違って・・・。心の痛みは余り感じなかった。

 動かなくなった少女を無視してウチは少女のソウルジェムを探した。僅かながら感じ取れる魔力からウチはソウルジェムを見出すとウチは握り締めた。

 いつもの様にソウルジェムをウチは握り潰した。

 同時に少女に操られていた《魔女》や《使い魔》がウチの作り出した防護壁の中で暴れ始めた。慌てる事無くウチは右手を掲げた。右手の中に先程の少女が使っていた先がCを書く様に曲がっている杖が現れた。

 杖の先が光ると暴れていた《魔女》や《使い魔》は大人しくなった。先程までの敵意を消滅させウチに対して従順な瞳をウチに向けていた。

「なるほど。これがアンタの力なのね・・・。優木沙々」

 ウチは先程までウチと戦っていた少女の名を呟いた。

 それがウチなりの戦った《魔法少女》に対する黙祷とも言えた。

 

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