織田信奈の刀 ―私の兄は虚刀流―   作:怠惰暴食

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七花、長政と会話する

「よう」

 

 牢に入れられている長政に、七花は牢の外から声をかけた。長政は七花を警戒していた。長政の部下は長政とは別の牢に入れられていた。

 

「何をしにきたのかな?」

 

 口調では冷静を装っているが、長政はこの後、何をされるか想像がついていた。目の前の七花は長政の事を女だと認識している。そして、七花は男だ。長政の中では、男は全て六角承禎のような、女好きな好色漢だと断定していた。

 

「話を聞きにきただけだ」

 

 そんな長政の内情を知らない七花は能天気に声をかける。

 

「そんな話、信じられないね。僕が女かどうか確かめに来たんじゃないかい? 例えば、服を剥ぐとか……」

 

 そう言いながら、襲いかかってきた七花に少しでも抵抗するために脱げないように服を掴む長政、しかし七花は首を傾げる。そして、頓珍漢な事を言って長政を混乱させた。

 

「あんたの服を剥いでも、俺は別に着るものには困ってないし、金にも困ってないからなぁ」

「何を言っているんだい、君は!? そう言いながら僕を手籠めにする気だろ!!」

 

 長政の叫びに七花は更に首を傾げる。

 

「なあ、信奈にも聞いたんだが、その手籠めっていうのは何なんだ? 他の奴に聞いても教えてくれなくてよ」

 

 信奈に尋ねた時には、うやむやにされて、次に他の人達に聞いてもはぐらかされるばかり、ノリの良い足軽達も七花の前で実践しても、やった事は犯罪であり、その後に待っているのは極刑だ。ノリが良くても教えられない。最終的に七花が手籠めについて知る事は無かった。

 

 さて、七花に尋ねられた長政は信奈のように絶句するしか無かった。そして、信奈と違って、この場所には長政と七花の二人だけであり助ける者は誰もいない。

 

「さては貴様、男色だな!?」

 

 長政の切り返しの一言は自分が女だと断言した大きな墓穴だった。手籠めの時点で墓穴はすでに掘っていた。

 

「失礼な奴だな。俺が惚れていた奴は女だぞ」

「なら、やった事はあるんじゃないのか!?」

「やった事? 口吸いの事か?」

「他には?」

「長い髪を体に巻きつけていた」

「変態か!?」

「惚れた相手が?」

「自主的にしたんじゃないのか!?」

「ああ」

「なら、お前の惚れた奴は変態だ!! 断言してやる」

 

 実際には七花が島を出るまで人間識別能力の無さの解決策として、とがめの長い白髪を七花の上半身に巻きつけて、七花にとがめの事を認識させようとしていたのだが、長政にそれがわかるわけもなく。とがめは変態にされた。

 

「そうか、俺が惚れた女は変体か……」

 

 七花は頭の中で『そう言えば、とがめって策士ではなく奇策士って名乗っていたな』と懐かしんでいた。ニュアンスが違うのは、七花は変態性欲の事を知らない為に刀集めの完成形変体刀と完了形変体刀の二つから変体だと思い込んでいた。

 

 閑話休題。

 

 髪の話で鬼の首をもぎ取ったと思っていた長政は七花と話していく内に違うと判断した。むしろ七花は母性や女性に酷く疎い。それこそ初心な生娘だと思うくらいに、そして、七花が性に関してあまり知識を持っていない事を知り、長政が自分の心がどれだけ汚れて穢れているのかを自覚した。

 

 長政は野望のために女達をたらしこんできた。女などは野望のための道具にすぎぬと思いながら、抱けぬ女をたらしこんできた。

 

「なあ」

「何だい?」

 

 七花に声をかけられて、長政は返事をする。

 

「何で、信奈に結婚を申し込んだんだ?」

「私としては老大国の朝倉家は盛りが過ぎていて、新興勢力に滅ぼされる運命だと思った。だが、わが父は織田家は越前の劔神社の神官であり、朝倉と格が違いすぎると言った。だから織田家との同盟にはどうしても【婚姻】が必要だった」

「人質としてか?」

「そうだね。そうでなければ、わが父は納得しなかった。しかし失敗に終わってしまった」

 

 長政は七花を見つめる。その目にどんな思いが込められているか七花にはわからない。

 

「次は、そうだな。あんたは信奈に会って、何を思った?」

「まずは……野心家だね。しかし、どこかお人よしで、人に対して甘いところがある。冷徹峻厳な戦国大名を演じているけど、根はお姫様だね。人質になったことがないためかもしれない」

「そういう見方もあるのか」

 

 七花は感心していた。

 

「次はこっちから質問するよ。君は何で織田信奈に仕えている?」

「別に仕えてない。手伝いはしてるけど」

 

 七花の答えに長政は少し考えてから、言葉を選んで次の質問をする。

 

「なら、君は織田信奈よりも良い条件を出した人物に仕えようと考えているのか?」

「それはないな」

「どうしてだい?」

「俺の連れが信奈を気にいっている」

 

 信奈が自分の妹かもしれない事を七花は伏せている。信勝のように七花を担ぎ上げようとする輩がいるかもしれない、他にも信奈に不利になるかもしれない状況が起こるかもしれないからだ。

 

「君は天下に興味がないのかい?」

「そんなもんいるか」

「そんなもの!?」

 

 今は戦国時代、尾張幕府から零れ落ちた天下を取るために、ほとんどの人が必死になっている。それなのに七花は天下はいらないと言った。その事に長政は衝撃を受ける。

 

「それに百年後は外国から一斉に攻撃を受けて、この国は滅びるんだ。誰が欲しがる」

 

 七花の次の爆弾発言に長政は絶句する。しかし、直ぐに持ち直して七花に反論する。

 

「それは法螺なんじゃないのかい?」

「もともと四季崎記紀の刀は百年後の攻撃に対して作られたもんだ。全て失った時点で何がこの国を守る」

 

 七花は嘘をついた。関係ない長政に最初から説明してやる義理なんて無かった。長政は信じたわけではないが、七花に尋ねる。

 

「なら、君は織田信奈が天下をとるにふさわしいと思っているのかい?」

「信奈は天下をとった先を見ている。少なくとも今、天下をとる為に頑張っている奴じゃ、ダメなんだよ。天下をとってから何をするのかを考えられる奴じゃないとダメなんだ」

「天下をとった先?」

「ちなみに信奈はこの国の古い制度を廃止して、南蛮に対抗できる新しい国へと生まれ変わらそうとしている。天下をとって欲望に忠実な行動をする奴や、天下をとってから何も考えていない奴よりはだいぶ増しだ」

 

 七花の言葉を聞いて長政は溜息をつく。

 

「負けだよ。完敗だ」

「そいつは良かった」

「ここで野望を捨てなければ、最終的に殺すつもりだったのだろう?」

「さあな」

 

 長政は七花を見て、自分に仕えさせることができるか知りたかった。しかし、質問をしていく内に、長政は七花が自分に仕えることはないと悟った。そして、七花がここにきた理由も理解した。七花は長政が信奈の障害になるかどうか見定めにきたのだ。障害になると感じたら、長政が牢から出てから、何か行動を起こそうとした時に七花は仕留めるつもりだったのだろう。

 

「他に聞きたいことはあるのかい?」

「ああ」

 

 七花は長政が知っている情報を普通に全て聞き出した。

 




遅くなりました。ごめんなさい。

忙しかったり、他のを書いたり、少しだけ空いた時間をアプリしたり、ラノベを買って読んだりと回り道のしすぎですね。申し訳ない。

原作沿いにするつもりですけど、ショートカットは仕方ないよね。怠惰なので
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