織田信奈の刀 ―私の兄は虚刀流―   作:怠惰暴食

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美濃攻略の会議

 浅井長政を牢に入れて、七花が五右衛門を連れて小谷城に出発して数日。信奈は家臣達を集めた。

 

「本格的に美濃攻略を始める」

 

 信奈は家臣達の前で宣言する。

 

「いよいよ。天下取りの大戦が始まるんだな! あたしの腕がなる」

 

 筆頭家老、【柴田勝家】。桶狭間の戦いの時は七花と川並衆、赤兜が今川の本陣をかき回した後に、手柄を横取りにしてしまった形となり、しょんぼりしていたが、今回の大戦で『兄者』と慕う七花に自分の活躍を見せる事ができるとやる気をみせている。たまに長屋で昼寝をしている七花の体に布団のようにのしかかって寝ている姿を否定姫に目撃されている。

 

「稲葉山城は斉藤道三殿が設計した難攻不落の山城。攻略は容易ではありません。三十三点」

 

 信奈の小姓あがりの若い武将、【丹羽長秀】。七花と否定姫の二人とあまり接点はないが、二人の事を織田家で必要不可欠だと思っている。七花が今回どんな動きをするか注目している。

 

「この勘十郎信澄にお任せください」

 

 信奈の弟、名前を改めて【津田信澄】。姉と仲直りをさせてくれた【疑兄】、七花を本当に兄だと思って尊敬しており、勝家の与力として修行をしている。最近は体力の余裕がでてきたのか、好物である【ういろう】を職人のもとで作っており、日本一のういろうを作り、信奈や七花に振る舞いたいと思っている。

 

「……前田犬千代。姫様にご奉公つかまつる」

 

 現役小姓、【前田利家】。【尾張のかぶき者】と呼ばれている七花を真似て、かぶいている格好をしているらしい。今回の大戦を七花と一緒に出られると思って喜んでいる。七花が山に山菜等を採りに行く時、手伝っている。今では赤兜と仲良し。

 

「少し情報が足りないわね」

 

 信奈達に【不口】(ふく)という偽名を名乗り、【一】(いち)と呼ばせている【否定姫】。七花が小谷城に向かっている事を知っている者の一人。相手の情報が少ないのか今回は様子を見て、次から作戦を立てようと考えている。信奈達に本当の事を話す日がくるのだろうか。

 

「さてと、ワシが築き上げた稲葉山城はそうそう簡単に落とせぬぞえ」

 

 美濃の蝮、【斉藤道三】。七花が小谷城に向かっている事を知っている者の一人。七花と会話して勘違いしている助平。桶狭間のように腰痛で脱落するのか。清洲で留守だと思われる。

 

「甲斐の虎、日本最強の甲州騎馬軍団を率いる武田信玄の勢力が急激に膨張しているわ。何年も美濃の攻略に手間取っている時間はないのよ!」

 

 七花の【疑妹】であり、織田家当主、【織田信奈】。あだ名は吉で【尾張のうつけ者】と呼ばれてはいるが、桶狭間の戦いで駿河の大名・今川義元を破って以来、その威光は日本全国に轟き、今もっとも勢いのある戦国大名として注目されているが、本人は桶狭間の戦いで制する事ができたのは【疑兄】である七花の功績である事を理解しており、その功績に負けないように、美濃で起こるだろう戦いに真剣である。

 

 そして、織田家で注目されている七花はというと、都合により旅に出ております。

 

「ところで七花はどこにいるのよ」

 

 いつまで経っても現れない七花に不満の声を洩らす信奈。

 

「あやつなら小谷城に向かっておるわい」

「それ、本当かしら?」

「本当じゃ」

「ちょっと、席を外すわね」

 

 道三に確認すると否定姫はすぐに部屋から出て行った。

 

「小谷城に? 何でよ!?」

 

 否定姫が出て行った後に七花の自由気ままな行動に叫ぶ信奈。信奈だけではなく織田家家臣は動揺している。勝家は明らかにモチベーションが下がっていた。

 

「浅井家と義龍が同盟を組ませぬために出発した。今も牢に浅井長政がおるじゃろう。父親の浅井久政が義龍と組んで尾張に攻めてくるかもしれんからのう」

「それだと兄者は危ないんじゃないのか? 久政に討ち取られるかも……」

 

 勝家の不安な表情と発言が場の空気を重くする。

 

「ワシはそんなに心配はしとらんがのう」

「何でそう言いきれるんだよ!?」

「確かに近江兵は精強じゃし、家臣団の結束も固いじゃろうな。だが、将である浅井久政は別じゃよ。奴は勝負事には向いておらん」

「どういう事、蝮?」

「幕府があったころ、浅井久政は上司にも部下にも信頼されておった男じゃ。そのまま行けば、出世できるほどに有能じゃった。しかし、六角承禎によって浅井久政は変えられてしまう」

 

 道三は言葉をそこで区切り茶を啜ってから話を続ける。

 

「六角承禎は浅井久政を博打に誘ったのじゃ。六角承禎が裏を引いている店にな。そこから先は簡単じゃ。最初は浅井久政に勝たせながら、じょじょに金をむしりとっていった。直ぐにはやめさせないために時々、勝たせたりもした。最終的には六角承禎に借金をして、借金のかたとして、妻と嫡子である浅井長政を六角承禎に渡すはめになってしまった」

「でも、それは博打の話でしょ。戦とは関係ないわ」

 

 信奈は道三の話を否定する。

 

「それは違うわい。博打も、戦も、流れを読まなければ勝てん。一瞬でも流れを読み間違えると確実と言っていいほど負ける。そこからは負け続ける。それにこれは忠告でもあるんじゃ」

「忠告?」

「そう。桶狭間の戦の時、熱田神宮で尾張兵が一致団結した瞬間、どうじゃった? 勝利を確信したはずじゃ。違うか?」

 

 道三の問いに信奈はあの時の事を考えていた。確かにあの時は七花を必ず助けに行く事を考えていたと同時に勝利を得られると思った。だが――

 

 信奈はしばらく沈黙していた。道三はそんな信奈を見て言葉を続ける。

 

「じゃが、結果として、戦場についた時には相手はほぼ壊滅状態。手ごたえもなく降伏する兵士から得る勝利。相当、混乱したんじゃないかの?」

 

 確かにあの時の勝利は思った以上に呆気なかった。暖簾に馬に跨って全力で走らせて突っ込んだほど勝利への手ごたえがなく、完全に不完全燃焼だった。どこで勝利したのか、何故、勝ったのかもわからなかった。そして、終わって熱が冷めた時に何があったのか聞かされる、あの時の勝利の条件は信奈の経験にはならなかった。七花と連携がとれていないのだ。七花は信奈に何も伝えずに道三を助けに行き、赤兜に誘われるままに桶狭間に突っ込んでいった。

 

 信奈は少し考えてから

 

「美濃攻略の会議を少し遅らせるわ。そうね、一刻後にしましょう。私は一と話してくるわ。その間に美濃攻略に必要な情報を蝮に聞いて、これだと思う戦略を紙に書いて提出できるなら、書いた戦略を万千代に渡しなさい」

 

 信奈はそう言うと、否定姫を追って部屋から出た。

 

 一刻後、現代で言う三十分後に蝮から美濃攻略の必要な話を聞いてから、鉛筆やボールペンがなく習字に使われる筆で紙に美濃攻略の戦略を書くことは普通なら不可能に近い。つまり、信奈の目的はそこではない。信奈の目的の一つは家臣達に美濃攻略の熱を冷まさせない事にあり、二つ目に美濃の情報をここにいる兵士の頭に入れる事であった。それに否定姫と話している最中に一刻を過ぎる事もある。戦略を考える時間も出る可能性もあるのだ。提出された戦略は万千代が見るので、出世目的のために出鱈目に書いた戦略を書いた者や美濃の情報を用いて戦略をちゃんと書いた有能な者を見分けてくれるだろう。

 

 少し心配ではあるが、信奈は自分が今やるべきこと、美濃でちゃんとした勝利を掴むために、否定姫がいる場所へ向かった。

 




とりあえず、生存報告

現実の忙しさから一段落して、ようやく続きをキーボードで打つ事ができた

でも、また忙しくなるんだろうなー

亀更新よりも遅い更新ですが、少しずつでも進めていきます
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