「ちょっと!0時からは『妹だらけの謝肉祭』の時間なんだから、邪魔しないでよ!」
「うるせえ!0時からは『鬼畜兄貴』を見る予定なんだよ!」
ギャルゲー好き妹と乙女ゲー好き兄貴の日常コメディ。
原作改変部分有り。
pixivにも投稿しています。

1 / 1
あたしの兄貴がこんなに可愛いわけがない

私立電撃高校には知らない人はいないほどの有名な双子の兄妹がいた。妹の名は高坂桐

 

乃。明るい茶髪ロングで垢抜けた外見をしており、そのルックスの良さから人気ファッ

 

ション誌でモデルをしている。また、所属している陸上部では全国大会に出場するほど

 

の才能の持ち主だ。一方、兄の名は高坂桐斗。妹と同様に髪を明るく染めており、ヘア

 

ピンで前髪を留めている。モデルこそしていないもののアイドル顔負けの顔つきで、学

 

内ではファンクラブまで出来るほどの人気振りだ。そんな完璧超人な二人は普段どんな

 

私生活をしているのか、周囲の生徒は常に興味津々だった。

 

 

 

―高坂家―

 

 「ちょっと!0時からは『妹だらけの謝肉祭』の時間なんだから、邪魔しないでよ!」(桐乃)

 

 「うるせえ!0時からは『鬼畜兄貴』を見る予定なんだよ!」(桐斗)

 

 

 

高坂家のリビングで、そんな噂の二人は取っ組み合いのケンカをしていた。

 

学校でこそオープンにしていないが、二人は、アニメやゲームを愛して止まない、いわ

 

ゆる「オタク」である。加えて、妹の桐乃は美少女アニメ、エロゲー好き、兄の桐斗は

 

女性向けアニメ、乙女ゲーム好きなため、同志も少なく外では誰にも話せないでいた。

 

そんな二人が互いの趣味を知ったのはつい先月のことだった。

 

「人生相談があるの。」

 

夜の11時。桐斗がリビングで勉強をしていると、桐乃が横に来て言った。

 

オタク趣味を友人にも話せずセンチメンタルになっていた桐乃は、思いつめた様子で自

 

分の部屋に兄を招き入れた。

 

「どう?兄貴。やっぱ引いちゃう?」

 

そこには美少女フィギィア、ポスター、エロゲーの山が高く積み上げられていた。

 

「、、、。いや。引かねえよ。びっくりはしたけどな。そんだったら、俺の部屋に来る

 

か?」

 

不安そうに顔を覗き込む桐乃を見て、今度は桐斗が自分の部屋に誘った。

 

そこにはイケメンフィギィア、ポスター、乙女ゲーの山が高く詰み上げられていた。

 

「まあ。同じ遺伝子ってことだな。」

 

 

 

その日以来、二人は唯一互いの趣味を気兼ねなくぶつけ合える仲となっていた。

 

 

 

AM0:05分

 

「○○ちゃんかわいいよ~。でへへ。」

 

「っこの。クソ妹。」

 

取っ組み合いの末、桐乃に腹を蹴られ、チャンネルの主導権を握られた桐斗は悪態をつ

 

いた。

 

「本当に、いつもお前は、、、。昼間も俺の机の上に変なもの置きやがって!」

 

「だって、あたしの部屋、もう一杯なんだもん。」

 

 テレビから目を離して桐乃は言う。

 

「だからといって、俺の部屋にその、、、エッチなやつを置くのは、、。」

 

「エッチなやつって?(ニヤニヤ)」

 

「/// だから、おっ、、マウスパットとか、、、。」

 

「おっマウスパットって?間に何が入るのかなあ?」

 

桐乃はそう言ってからかうと、桐斗は大きく息を吸い込んで言った。

 

「/// とにかく、俺の机の上に置いてあるそれを片付けてくれ!俺は触れないんだよ!

 

そういうの!」

 

「正式名称を言わなきゃどけないよ?おっ、、何?ニヤニヤ」

 

「くっ、、、。おっ、、。」

 

その時、ガチャリという音と共に父親が家に帰って来た。

 

「ただいまー。なんだ。お前たち。まだ起きてたのか。」

 

終電で仕事から帰ってきた父は怪訝そうな表情で二人の様子を見た。

 

「やばっ。チャンネル、、、!」

 

桐乃は慌ててテレビの前に立ち、チャンネルを変えた。

 

「仲が良いのはいいが、もっと静かにしなさい。もう遅いんだ。」

 

「ごめんなさーい。」

 

「じゃあ、俺は寝るからお前たちも早く寝ること。いいね。」

 

「はーい。」

 

ガラガラ。バタン。

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

急な出来事にあたりが静寂に包まれた。

 

そして、その空気を破るように突如、桐乃は口を開いた。

 

「あ、そうだ。明日、秋葉原に付き合ってよ?」

 

「突然だな。おい。」

 

「あんた、どうせ暇でしょ?」

 

「暇じゃねえよ。明日は池袋で『ウホッ!男だらけの壁ドンフェア』があるんだよ!」

 

「うわー。引くわ―。」

 

「うるせえ!『らめえ!妹だらけの謝肉祭』に参加したお前に言われたくねえよ!」

 

「まあ。その話は置いといて。」

 

「置いておくのかよ。まあいいけどな。」

 

桐乃のこのような勝手さには慣れっこだ。

 

「明日、エロゲの新作を買いに行きたいんだけど、今回のは少し過激で買うのに勇気が

 

いるの。だから代わりに買ってきてくれない?」

 

「俺を殺す気か、、、。」

 

「もし断ったら、桐斗の部屋を全部、私の部屋と同じにしてあげる。」

 

そう言ってニヤリと悪魔の笑みを浮かべた。

 

「くっ、、殺せ。」

 

煮るなり焼くなり好きにしろ。

 

「ようし。決まり!じゃあ、明日よろしくね!」

 

 

 

―翌日―

 

 

 

「、、眠、、。おはよう。母さん。」(桐斗)

 

「おはよー。お母さん。あれ?お父さんは?」(桐乃)

 

「お父さんは今日も仕事よ?何か、重大事件の糸口が見つからず、忙しいみたい。」

 

「ふーん。そうなんだ。」

 

二人の父である高坂大介は泣く子も黙る強面な顔に似合わず、警察官として国民の暮ら

 

しを守っている。そのため、大きな事件が起きると残業や休日出勤で忙しくなることも

 

多い。

 

 

 

桐乃と桐斗は朝食を終え、玄関に向かった。

 

「じゃあお母さん。ファッションセンターに行ってくるねー。」

 

オタク趣味を隠している桐乃は、そう嘘を付いて玄関の戸を開けた。

 

「行ってらっしゃい。桐乃。桐斗。」

 

「ああ。行ってきます。」

 

 

 

―秋葉原―

 

「やっと着いたー!秋葉原―!」

 

「はあ。結局付いてきてしまった。で、どこにいけばいいんだ?」

 

「ふふん。聞いちゃう?えーとねえ。駅から徒歩10分のところに美少女ゲーム専門店があるから、そこで買ってきてもらえる?」

 

「、、、美少女ゲーム、、、。俺の人生もここまでか、、、。」

 

 

 

―美少女ゲーム専門店『ハアハア///』―

 

 

 

「じゃあここで待ってるから買ってきなさいよね。」

 

「何で俺が、、、。」

 

ため息をつきながら桐斗は目当てのゲームソフトを探し出す。

 

「あいつ。実は自分で買えるのに、俺をからかって楽しんでんじゃねえか?」

 

開店から時間が経つに連れ、店はどんどん混んできた。

 

「何だ?あいつ。リア充か?チャライ格好しやがって、、。」

 

ところどころで自分のことであろう声を聞きながら、一歩ずつ思い足を進めていった。

 

「あったあった。これか、、、うっ!」

 

一瞬、手に取ったパッケージには、文章にするのも難しい『ピー』なアレが映り込んでいた。

 

途端、体中に細かい発疹が現れた。

 

「駄目だ。買ってこなきゃ、俺の部屋が大変なことになってしまう。」

 

薄目で再びパッケージを手に取り、震える足でレジへと向かった。

 

「はい。お買い上げの商品は4800円になります!」

 

 

 

―店外―

 

 

 

「疲れた、、。桐乃のやつ絶対後で仕返ししている、、、。」

 

混雑した街中で、店外で待っているであろう桐乃を探した。

 

「あのやろう。どこに行った、、、。」

 

5分ほど辺りを見回すと、オレンジのTシャツとホットパンツ姿が目立つ桐乃の姿を見かけた。

 

「おいっ桐乃!」

 

そう言って、桐乃に近づき肩を掴むと

 

「うるさい。バカ兄貴。」

 

桐乃は泣いていた。

 

よく見るとTシャツの所々が泥で汚れていることに気が付いた。

 

「どうしたんだよ。桐乃。」

 

急な反応にどうしたらいいか分からないまま、話しかけた。

 

「あんたには関係ない!中学の頃、ちっとも気付いてくれなかったくせに今更、、、!」

 

「中学の頃?」

 

「・・・何でもない!」

 

そう言うと、桐乃は逃げるように人ごみの中を走って行った。

 

 

 

「クスクス・・・。」

 

道路を挟んだ反対側に、二人の様子を見て笑っている派手めな女子3人がいた。年は桐乃

 

と同じくらいだろうか。ただ、彼女らが笑っているところを見ると、何か不愉快で、腹

 

の奥から熱いものが湧き出す感じがした。

 

「行こっ!」

 

そんな目線に気付いたのか、3人組は裏路地の方に逃げるように入っていった。

 

 

 

―裏路地―

 

 

 

「あいつのオタク趣味、マジ、ウケるんですけど。」

 

「ちょっとからかったら、泣いてやがんのwww」

 

3人は周囲に誰もいないのを見計らって、大きく笑いながら話していた。

 

「まあ、ついでに秋葉に来てよかったわwww面白いもんが見れた。」

 

「言えてる。中学時代もあいつのおかげで退屈しなかったもんね。」

 

しばらく歩いていると、グループの一人がピタリと足を止めた。

 

「誰?こいつ。」

 

そこには、壁に寄りかかり、行く手を塞いでいる少年がいた。

 

「お前らか。桐乃を泣かせたのは。」

 

少年はそう言って、三人組の方に近づいた。

 

「誰?こいつ。知り合い?」

 

「いや。全然。ていうか、地味にイケメンじゃね?」

 

「ねえ。あんた。私達とちょっと遊ばない?」

 

3人のうち、一番化粧の濃い女子がそう言って少年の肩に触れようとすると、

 

「黙れ。」

 

思い切り睨みつけられ、反射的にその手を引っ込めた。

 

その拍子で、彼女が持っていたバッグから、ドサドサと本のようなものが零れ落ちた。

 

引きつった表情を浮かべる3人に対して、少年は言った。

 

「俺は。高坂桐斗。桐乃の兄だ!」

 

 

 

走って、走って、走り続けて、気が付くといつの間にか公園にたどり着いた。ここは

 

いったいどこだろう。しばらく立ちすくんでいるとポツポツと雨まで降ってきた。

 

「兄貴にあたって、ホント、最悪、、、。」

 

瞳から流れる大粒の涙は頬を伝い、雨とともに流れていった。

 

「やっぱ、あたし、駄目なのかな?」

 

か細く、それでいて振り絞るような声で桐乃はつぶやいた。

 

「桐乃!」

 

桐乃を呼ぶ声がした。

 

明るい茶髪、ヘアピン、子供のころから何をするにも一緒にいたそいつがいた。

 

「桐斗!」

 

赤い目をこすりながら、桐斗のもとに駆け寄った。

 

「ごめん、、、あたし、、、。兄貴のせいにして、、、!」

 

かすれ声で、それでも、伝えたい想いを口にした。

 

「悪いのは、俺だ。ごめん。一緒にいたのに気付いてやれなくて、、、!」

 

 

 

中学時代、あたし達は仲が悪かった。その頃は互いの趣味についても知らず、今思えば

 

くだらないケンカをよくしていた。そんな中、学校であった出来事を話し合う余裕なん

 

てあるわけがなかった。

 

 

 

「どうしたんだ。桐乃。」

 

「うるさい。何でもない。」

 

クラスメイトに目を付けられ、頬に痣をつけられた時も、結局兄貴に打ち明けることが

 

出来なかった。あの時、全て話していれば良くなっていたのだろうか。

 

 

 

「あたしが中学の頃のクラスが本当に最悪でね、いじめやカツアゲが日常茶飯事だったの。」

 

話す声と共に雨がポツポツと音を立てる。

 

「ある時、一人の女の子がカツアゲをされている現場を見ちゃって、思わず注意したの。そうしたら、それがきっかけで、あたしの方に矛先が向いちゃって、、、。そのうち、あたしの趣味もあいつらにばれて、ホント、散々だった、、、。」

 

桐斗の腕を強く握りしめながら、中学時代に話せなかった思いを吐き捨てるように言っ

 

た。

 

「、、、、そんなことがあったのか、、。本当にごめんな。」

 

「いいよ。もう、大丈夫。」

 

これは本心だ。先ほどはつい怒ってしまったけど、兄貴には責任がない。

 

しかしその後、兄貴は思わぬことを口にした。

 

「後、弱みを握った。」

 

「弱み?」

 

弱みってなんだろう、、、。

 

「ああ。あいつら、見た目に反して腐女子だったんだ。」

 

「腐女子、、、。」

 

「やっぱ、ああいう外見をしている以上、自分達が腐女子だって知らされたくないんだろうな。ほら。スマホ見ろよ。」

 

促されるままにスマホ上の画面を見ると、そこには、道路に散らばった同人誌とそれを

 

急いで拾う3人の姿があった。

 

「もし、今度手を出したらこの写真をばらまくと言ったら、『もう二度と桐乃と関わらないから』と泣いて懇願してきたよ。」

 

「ありがとう・・・。兄貴。」

 

自分を思わぬ形で助けてくれたことに照れくささと嬉しさを感じ、思わずうつむいた。

 

「兄貴は妹を守るのが仕事だからな!」

 

そう言って、桐斗はあたしの頭に優しく手を置いた。

 

 

 

帰り道、雨上りの心地よい風を感じながら思い切り息を吸い込む。

 

美味しい空気と共に、心の中に暖かい何かが満たされていくのを感じた。

 

「あ、そうだ。桐乃にまだ渡してなかった。」

 

桐斗はバッグからあたしが頼んだ例のエロゲーを手渡した。

 

「ん。ありがと。」

 

そう言ってあたしはポーチの中にブツをしまい、ふと気になる点を思い出して言った。

 

「あれっ?兄貴ってそういうの触れないんじゃなかったっけ?」

 

固まる桐斗に重ねて訊くと、桐斗の体にポツポツと発疹が浮かんでくるのを見た。

 

「えっ!あ、そ、、そうだ、、。忘れてた、、、。ず、、ずっと持っ、、たままだっ、、た。」

 

そういって、桐斗は前から直立不動で倒れこんだ。

 

「ちょっと!こんな所で倒れないでよ!ちょっと!ねえ!」

 

 

 

あれから一か月が経った。中学時代のクラスメイトとはあれきり出会わなくなった。

 

おそらく秋葉原の件で堪えたのだろう。そして、嬉しいことに高校のクラスで一人、友

 

達が出来た。その子は私と同じアニメ好きで、周りからは「黒猫」という名で呼ばれて

 

いる。時々、アニメのジャンルでケンカしたりするけど、兄貴以外に自分をさらけ出す

 

ことが出来る友達だ。

 

 

 

「ねえ。兄貴。渡したいものがあるの。」

 

「何だ?」

 

「はい。兄貴へのプレゼント。」

 

「これは、、うっ!」

 

桐斗が受け取ったブツは、パンツがチラリと覗いている表紙のライトノベルだった。

 

「さすがに高校生なんだから。こういう耐性もないとまずいよー?兄貴のために軽めなのを選んだんだから、ちゃんと読みなさいよね!」

 

「くっ!こんなものには俺は屈しない・・・!」

 

そういいながら、桐斗は少しずつページをめくっていった。

 

 

 

「鬼畜眼鏡」や「壁ドン」といった言葉に反応を示す乙女チックな兄貴。

 

反対に女の子のエッチなものには耐性がない兄貴。

 

そして、いざとなったら、誰よりも男らしく守ってくれる兄貴。

 

 

 

「おい、桐乃!俺いらねえよ!」

 

「駄目!全部読まなきゃ許さないんだから。」

 

 

 

兄貴に対する想いはいろいろあるけど今の顔を赤らめた兄貴に言えることはただ一つ。

 

あたしの兄貴がこんなに可愛いわけがない。         完

 

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。