ここは巴郡の城の中。竜は――――
「さあ、構えろ!この魏延が、どちらが最強か教えてやる!!」
――――魏延に
「・・・どうしてこうなった、どうしてこうなったどうしてこうなった!?ふこーだーーーーーーーーーー!!」
「大事だから三回言ったんですね。分かります」
話は、二時間前に遡る――――
竜と凪は曹操の下から旅立った後、巴郡へと向かっていた。黄巾の乱の決戦前に交わしていた、「この戦が終わったら部下にしてくれ」という約束を果たす為だ。
「・・・さて、そろそろ蜀領だな。もうすぐ巴郡だな」
「・・・本当に巴郡に行くのですか?あちらには、自分を最強だと勘違いしている魏延とかいうのが居た筈ですが・・・」
「じゃあどこ行けっつんだよ。曹操は百合女王、劉備んトコには我らが種馬北郷一刀、孫堅一家は興奮すると性欲が強くなるって聞くし、袁紹は論外。公孫賛はパッとしないし、黄忠は貞操が怖い。董卓は・・・まあ、アレだし。必然的に巴郡しかねえんだよ」
「聞いた感じでは公孫賛殿の所でも良いのでは・・・?」
「いや、あっちには佑が居やがるし、それにだな・・・」
大きく深呼吸し、キリッとした顔で尤もらしく言い放つ。
「思い上がった天狗を叩き落すのって楽しいだろ?(キリッ)」
「結局それが一番の理由ですよね!?」
「・・・で」
「・・・」
「「何が有った(んですか)!?」」
と叫んだのには理由が有る。
「どおおおおおおおおおおりゃああああああああああ!!」
目の前に賊相手に一騎当千する魏延が居るからだ。兵は、居る事には居るが、全く動いていない。そんな中でも魏延は気にせず突き進んでいた。
「・・・なあ凪?」
「・・・何ですか」
「・・・人ってあんなにポンポン飛ぶモンなんだな」
「・・・ですね」
賊を弾き飛ばしながら。
「跳ぶ」のではない。「飛ぶ」のだ。魏延が持つ鈍砕骨で、賊を叩き潰して、十メートル(!)はかち上げ、或いは纏めて二十メートル(!!)位吹っ飛ばして。凪に聞けば、「私は出来ませんが、怪力・・・いえ、神力?な兄様なら出来るでしょう」と言うだろう。
「・・・何か変な事言われた気がする。俺でも流石に出来んぞ」
気のせいです。そして、出来るでしょ?
「・・・まあいいや」
「魏延将軍!危険です!お戻り下さい!!」
「何言ってる!ここで完膚なきまでに叩き潰さなければ、無辜の民が傷付くんだぞ!!」
「いえ、そういう意味では・・・!」
「大丈夫だ!何たってワタシは『最強』だからな!!」
「しかし・・・将軍後です!!」
「なっ!」
部下の言う事を一切聞かずに突き進む魏延の後から、賊が切りかかる。油断した所に完璧な不意打ち。万事休すか――――そう思われたが、そうは問屋が卸さない。
「
賊の刀を叩き折り、二剛力斬で周囲の賊を切り飛ばした。
飛距離、約八十メートル。
出来てるじゃあないか!
「・・・飛んだな」
「飛びましたねえ」
「貴様、何者だ!?」
魏延を助けたのは良いが、助けられた人に敵意を向けられるという某正義の味方見習いの様な状況に陥っている竜。
「不幸だ・・・味方だよ。ミ・カ・タ。つか前顔合わせたろ?楽蛟だよ」
最近すっかり口癖になってしまった某ウニ頭の少年の台詞を使いながら、呆れた口調で言葉を吐く。魏延は竜の事を思い出したのか、納得の表情を浮かべた後に嫌疑の表情を浮かべた。
「・・・何で貴様がここに居る」
「今そんな事言ってる場合か?」
と、魏延の後から切りかかって来た賊を再度切り飛ばす。
「ほら、先に賊の殲滅だ。凪、行くぞ」
「はい!それでは、また後に」
「あ、おい!」
竜と凪はさっさと突き進んで行く。負けじと魏延も突き進む。竜への質問内容を考えながら。
(それにしても、アイツ口に剣銜えてどうやって喋っているんだ?)
どうでも良い事も考えていた。
そんなこんなで賊を倒し、陣の天幕で――――
「ワタシと、最強を掛けて勝負だ!!」
と、冒頭に戻る(質問は無かった事になったらしい)。
二人が居るのは陣の中の広めの空き地部分。睨み合う(魏延が一方的に)両者は、臨戦態勢を整えていた。
「いいか!この勝負に勝った方が最強なんだ!」
「へーへー」
「何だその腑抜けた返事は!!」
「・・・ハァ・・・」
「・・・厳顔さん」
「・・・何じゃ」
凪が話しかけたのは厳顔。巴郡の太守だ。
「この勝負、どちらが勝つと思います?」
「・・・武器の相性で考えれば、焔耶(魏延の真名)じゃな。お主は?」
「・・・兄様が勝つと思います」
「・・・理由は?」
下らない理由なら許さない、とその目が語っている。凪は目を逸らさずに言い放った。
「兄様ですから」
「はあああっ!!」
「・・・」
鈍砕骨を振り下ろす。破壊力の有る一撃を、竜は身体を捻って避わした。
鈍砕骨の連撃。悉く竜は避わしていく。
因みに竜が使っているのは「七赤金星」、「八白土星」、「九紫火星」の三本。模造刀では無いのは、魏延の意向だ。
「どうっ、したっ!そんなんじゃっ、ワタシにはっ、勝てんぞッ!!」
幾ら「約束された勝利の剣」が直撃しても折れないとは言え、梃子の原理という物が有る。下手に受ければ、折れるのは必至だろう。故に避ける。
「・・・なあ、お前、何で最強になりたいんだ?」
「何で・・・だと?」
魏延が動きを止めた。怪訝な顔をする魏延に構わず、竜は話し続ける。
「何で最強に固執するんだ?別に最強にならなくたって、武の道には関係ねえだろ」
「最強を求めて何が悪い!」
「悪いとは言ってねえ。気になったんだよ。大抵、最強を求める奴ってえのは、三流の悪党か――――」
「――――約束」
魏延が完全に動きを止めた。
「図星か・・・そう躍起になってる所を見ると、死んじまった家族の為ってトコか?」
ピクリと、体が反応する。次の瞬間には、竜の居た場所を鈍砕骨が抉っていた。
「なら尚の事、最強を求めるのは止めるんだな。そんなんじゃ、『最強』にh「貴様に何が分かる!!」」
「ワタシは姉上と約束したんだ!いつの日か大陸最強になって、故郷に錦を飾ると!!最強になって、故郷の皆が自慢出来る様な武人になると!!」
感情に任せて振り続ける。単調な攻撃は見切られ続ける。
「だがたった一人の家族である姉上も三年前に死んだ!だからワタシは、天国に居る姉上まで届く、『最強』という名声を手に入れなければならないんだ!!」
大振りされた鈍砕骨が竜を襲う。直撃すれば骨折、最悪死に至るだろう。
しかし竜は、避けなかった。真正面から、
「三刀流・・・刀狼流し」
直撃するかと思われた鈍砕骨は、刀の峰に沿って流れ、刀の先が魏延の服
「ッッ・・・!!」
魏延は眼を見開いた。自身の渾身の一撃が、こうまで容易く受け流され、更には自分を一切傷付けず、服だけを切り裂いただと――――!!
「見せてやるよ、魏延。『最高』の剣技ってやつを」
「『最高』・・・」
「ああ。『最高』だ。『最強』じゃねえ」
竜は、九紫火星のみを残して二本を鞘に収める。九紫を両手で持ち、刃が上になる様地面と平行にして顔の右横に構えた。
「お前が最強になれない理由が有る」
「何だとっ・・・!!」
「お前は、最強になりたいが為に、他の奴らの助言まで無視してる。助言ってえのは、そいつがより強くなれる様に改善点を教えてくれる事だ。お前は助言を無視し、自分がより強くなれる道を勝手に閉ざしちまってるんだ」
魏延は驚いた。確かに私は人の言葉を流す事が多い。しかし、助言まで流していたとは・・・
「それに慢心。自分が最強だっつう妄執に囚われ、周りが見えないのも最強になれない理由だ」
「慢心なd「して無いと言い切れるか?」むう・・・」
言い切れない。言い切れる筈が無い。今回の戦とて、部下の陳言を、「私は最強だ」といって聞かなかった。だから後ろを取られたんだ。
「最後に――――」
「『最強』を求めるから、『最強』になれないんだよ」
「な、に・・・?」
「お前が最強を目指す限り、最強にはなれん。『最強』っつうのは一種の到達点だ。最強になれば、それ以上強くなる事は無い」
「『最強』って位置に胡坐かいて陣取って、努力をしなくなれば、そいつは最強の座から直ぐに
その言葉を聴いて、魏延は考え込む。私は努力をしているか?「最強」だからといって怠けてはいないか?
答えは否。最近、努力をせず、怠ける事が多くなっている。
「『最強たるな、最高たれ』」
「ッ!!」
「親父の教えだよ。『最強』という到達点を目指すんじゃなく、『最高』という、誰も届いた事の無い場所。『最高』を目指せば、『最強』なんざ勝手に付いて来る」
最強たるな、最高たれ――――よく姉上に言われていた。過去の記憶が掘り起こされ、魏延の脳裏にその事がフラッシュバックされる。
「魏延」
「っ・・・!な、何だ」
「受けてみろ。この俺の、現時点での『最高の一撃』を」
竜の眼光が鋭くなり、濃い殺気が漂い始める。魏延も静かに構えた。
「一刀流奥義――――
振り下ろされた刀は地面に激突し、衝撃が発生する。その衝撃は地面を抉りながら魏延へと突進した。
魏延は抗うも、強すぎる衝撃に吹き飛ばされた。
何故だか、とても清々しかった。そんな思いを抱きながら、気を失った。
「――――う、こ、ここは・・・?」
目を覚ました魏延は起き上がろうとして、痛みに顔を顰めた。鈍い痛みで、身体に傷は無い。打撲の痛みに近いだろう。
「お、起きたか」
「楽蛟・・・」
最初に会ったのは竜。その姿を見て、竜との対決に負けた事を思い出した。
「――――ああ、そうか。ワタシは、負けたんだな・・・」
負けたというのに、清々しく、胸の支えが取れた様な気分だ。
「ああ。――――なあ、お前ってさ、誰の為に武を奮ってるんだ?」
「突然何を・・・誰の為にと言われても・・・」
寝起きの頭をフル回転させて考える。師匠?違う。姉上?そちらも違う。民?違う。なら、誰の為?
「・・・誰、何だろうな。ワタシの中には、約束と、最強だけで、後には何も無かった様だ・・・」
「何も無いって。悲しくないか?ならさ、こっから、作ってけば良い」
「どうやって作れと・・・」
そう悲しそうな顔をした魏延に、竜は手を伸ばす。
「じゃあさ、最初は、『俺の為に』って事にしといてくれよ」
「お前の為・・・?」
「ああ。俺ってさ、弱いんだよ」
「弱い?お前が?」
魏延は竜の言葉に目を丸くする。
「ああ。
アハハー、と笑う竜に苦笑しながら、出された手を掴んで、魏延は言った。
「ああ。このワタシの武、楽蛟、貴方の為に奮おう。それと、『焔耶』だ。真名で呼べ」
「俺の真名は『竜』だ。よろしくな、焔耶(ニコリ)」
「ッッ・・・!!///あ、ああ、よろしく頼むぞ、竜///」
「ん?どうした?熱でも有るのか?」
「な、何でもない!!///」
この焔耶の様子を見た凪は、「あ、堕ちた」と思ったらしい。
基準「よっし十五話投稿!!」
竜「お疲れ。もう十二時半だぜ?」
基準「眠い!!」
竜「テンション高いな・・・当たり前だ。所で零は?」
基準「寝た!」
竜「寝たのか。まあ居ても居なくても変わらんから別に良いだろ」
基準「まあどうでも良いがね!天然フラグメーカーに比べれば!」
竜「何の事だ?」
基準「何でもございません。さて、今回竜のオリ技が出て来ました」
一刀流・
Fateのアサシンの『燕返し』に似た構えを取り、振り下ろして地面を抉りながら突き進む衝撃波を発生させる技。一対一向きの技だが、気を込める事で十人程度まで衝撃の範囲が広がる。
元ネタは「お稲荷」。
竜「ネーミングが・・・(笑)」
基準「煩い!今回ので使えそうな候補がコレしか無かったんだよ!」
竜「あ、色々考えてるんだ」
基準「これでも考えてらい!」
竜「あーはいはい。それでは『戦士と悪魔の外史旅行』ー」
基準「次回もよろしくお願いします!ではでは!!」
竜「所でさ、何で題名が『戦士と悪魔の外史旅行』なんだ?」
基準「大昔の設定の名残。今となっては『戦士』も『悪魔も』ただカッコいいからって理由になってるっぽい」
竜「オイ」