ここは、呉領、建業の川の辺の土手。彼、南浦祐司は一人大の字で仰向けに寝っ転がっていた。
その瞳には何も移っていない。ただただボーっとしている。時折、何かを懐かしむ様に電池の切れないスマホの画面を眺めている。
「最近のアイツ、ずっとああよね・・・」
「黄巾の乱の戦が終わってから、ずっとですね・・・」
離れた場所から祐司を見ているのは、ピンクの髪に中々露出度の高い服を着た女性と、紺色の髪を持つ褌がほぼ見え掛けている何とも挑発的な服装をした女性。
ピンクの髪の女性を孫権、紺色の髪の女性を甘寧という。孫権は鳳蓮――――孫堅の次女で、甘寧は孫権の直属の部下だ。
「一体何が有ったのかしら・・・」
「分かりません。ただ、あの目を見るに、何か思い悩んでいるようですね・・・」
「・・・相談してくれたら良いのに。私達は『家族』でしょう?」
「私に言われましても」
祐司はふと立ち上がり、ふらふらと町の方へ歩いて行った。
「・・・ホント、何が有ったのかしら」
孫権と甘寧も町へと戻って行った。その為、祐司が呟いた言葉は全く聞こえなかった。
「『安里』・・・」
時は流れ、玉座の間。呉の代表的な将が集まり、何かを話し合っていた。
議題は、建業近くに巣食っている賊の討伐についてだ。
「・・・現在襲われたという報告が一件、建業に程近い村から入って来てます~」
少し間延びした言葉で報告したのは、呉の軍師見習い、陸遜。
そこに、孫堅に良く似た女性、孫策が口を出す。
「じゃあ討伐隊を編成するわね。総大将は勿論私!」
「言うと思った・・・」
孫策の言葉に、周喩が呆れた様に溜息を吐く。
「策殿が行くなら儂も行こう。引き止め役が必要じゃろう?」
立候補したのは黄蓋。呉で孫堅に並ぶ古参の宿将だ。
「私そんなに暴走しないわよ!!」
「どーだか・・・亞莎、軍師として付いて行ってくれ」
「は、はい!頑張ります!」
答えたのは呂蒙。軍師見習いだが、実力は確かだ。目を凝らす時に目付きが悪くなるのが欠点だが。
「・・・」
「シャオも行くー!!」
「はいはい。じゃあシャオも行きましょうか」
元気良く立候補したのは孫尚香。チャクラム「月下美人」を扱う一端の武将だ。
「・・・」
「・・・祐司、お前も行け」
「・・・ん?」
「討伐隊だ。お前も行って来い」
「・・・いや、俺h「そうね。呉王としてこの孫堅からも命じるわ。討伐隊に加わりなさい」・・・チッ」
「ちょ、ちょっと母様!?」
「何?」
「いや、
「
「
「
「
「じゃあ、討伐隊の将は、雪蓮、祭殿、小蓮様、亜莎、祐司の五人で良いな」
そう締め括られて、会議は終了した。
日時計を二日程戻し、建業近くの村。
「おじさーん!お団子一つー!」
「あいよ!」
茶屋に居たのは、茶髪を背中まで伸ばし、剣を腰に下げた少女。
「で、徐庶ちゃんだっけ?これからどこ行くんだい?」
「建業に行って、仕官しようかなって思ってます。こう見えて、頭には自身が有るんで」
「へえ。じゃあ、道中気を付けなよ。最近この辺りで賊が暴れてんだ」
「ありがとうございます。でも、行かない訳には行きませんから。腕の方にも自身が有るんで、心配しないで下さい」
「まあそう言うn「東から賊が攻めて来たぞー!!」んなっ!?マジかよ!?」
「早く逃げないと!おじさんも!!」
「徐庶ちゃんは先逃げな!!俺は村の自警団として、守らねえと!!」
「・・・分かりました。なら、私m「へえ、中々の上玉じゃねえか」・・・えっ!?」
「孫策様!伝令より、村がもう一度襲われていると!!」
「本当!?皆、急ぐわよ!!」
情報を受けた討伐隊は、急いで村へと向かう。しかし一足遅く、村は火に包まれていた。
「くっ・・・黄蓋隊は生き残りを探せ!!尚香隊、呂蒙隊は黄蓋隊の補佐及び村に居る賊の殲滅を!!孫策隊、南浦隊は賊を追う!!」
『『『はっ!!』』』
「行くわよ祐司」
「ああ・・・」
(・・・ホントに大丈夫かしら。)
孫策、祐司達はすぐさま賊の隠れ家へと向かおうとする。だがそれを引き止める者が居た。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
「ん?あなたは?」
「俺はこの村の自警団に所属してる――――じゃなくて!俺の事なんてどうでも良い!!賊共に、旅の女の子が連れてかれちまってるんだ!!村の女子供に幸い死者や捕虜はいねぇ。俺の力が足りねえばかりに、助けられなかった・・・」
「・・・分かったわ。必ず助け出すから。おじさんはゆっくりその怪我を治して。それと、その
「ええと、身長が大体五尺(約百五十センチ)、背中まで有る茶髪にスラリとした身体だった」
「・・・!?」
「分かったわ。祐司行くわ――――祐司?」
「っ!あ、ああ、何でもねえ。大丈夫だ・・・」
「なら良いけど・・・」
改めて、二人が率いる隊は駆け出した。駆けながら、祐司は情報を反芻していた。
(身長百五十センチ、背中まで有る茶髪にスラリとした身体・・・まさか・・・)
賊の隠れ家に着いたのは夕暮れ。見張りが居る所を見ると、どうやら未だ居るらしい。
「それじゃ作戦を説明するわよ。賊達が使ってる隠れ家は、表門と裏門が有る砦の廃墟。南浦隊はここで陽動、孫策隊の半分は南浦隊と陽動で、半分は裏から突っ込むわよ」
「・・・雪蓮、突入に、俺も連れて行ってくれないか」
「ダメよ。あなたが今するべき事は陽動。それに、はっきり言うけどあなた今、全く使い物にならないわ。そんな不安定な状態で突入を任せられると思う?」
「・・・思わん。だが、今ここで行かなかったら、後悔する様な気がするんだ。頼む」
祐司は勢い良く頭を下げる。ここで断られても、勝手に突っ込みそうで、無理して止めたら自殺しそうな勢いだった。
「・・・はあ。分かったわよ。但し、絶対私から離れない事。良いわね」
「分かっている。無理を通しているんだ。雪蓮の言う事に従うのは道理だからな」
孫策は頷くと、全員に作戦開始を宣言した。
外から叫び声が聞こえる。一刻の猶予も無い。自分達が今するべき事は、捕らえられた女の子の救出と、内側からの撹乱だ。孫策隊の兵達の心はそれに統一されていたが、祐司だけは、不安を募らせていた。
(・・・嫌な予感がする)
祐司はある扉の前で立ち止まった。注意しないと、見逃してしまいそうな扉。
(この部屋・・・ここを無視したら、俺は自分を許せなくなる様な気がする・・・)
「祐司!何してるの!!」
孫策が小声で叫んで、走り寄ってくる。その声をBGMに、祐司は扉を開け放った。
有ったのは鉄格子。その中に、攫われたと思われる女の子が鎖に繋がれていた。
「ここが・・・!?兎に角、早く助けないと!祐司、手伝って!!・・・祐司?」
祐司は反応しない。彼の目は、ただ一点のみ、その女の子を見詰めていた。茶色い髪に、スラリとした身体。
彼は、彼女を知っている。
彼の脳裏を過ぎるのは、あの日の記憶。中学二年の春。春休みを過ぎれば、中三へと進級する、その前の三学期の終業式の日の屋上。
――――ずっと好きだった、幼馴染に告白した、あの日。
『私、「
長年抱き続けてきた想いが、漸く叶った記憶。翌日、交通事故で帰らぬ人となってしまった、あの娘の記憶――――
「――――安里!!」
鉄格子を掴み、必死に声を掛ける。ただ、自分を覚えてくれている事を信じて、ただ声を上げ続ける。賊に気付かれる、何て事は頭に無い。ただ、この想いは、彼女の為に――――
「う、あ・・・」
「ちょ、ちょっと祐司!ばれるから、声を――――」
「安里!?安里!!俺だ!!祐司だ!!分かるか!?」
孫策の声など聞こえない。ただ、彼女の言葉に耳を傾ける。
「う、うあ・・・」
そして、目が合った。
「――――ゆう、く、ん・・・?」
覚えていてくれた。彼は安堵し、慌てて気を引き締める。
「大丈夫か!?待ってろ、今、この檻から出してやるから!!」
檻の扉に掛かった南京錠に手甲を付けた拳を何度も振り下ろす。何度も、何度も。爪が食い込んだ手から血が出ようと、食いしばった歯茎から血が出ようと、振り下ろす。
孫策は魅入られた様に動かない。祐司のこのような姿は、初めてだ。必死の形相で、ただただ、殴り続ける。
そして、南京錠が外れた。
「安里!!」
「祐司下がって!」
共に飛び込んだ孫策が、安里に繋がっている鎖を切る。祐司は安里を抱き抱えた。
「安里・・・良かった・・・会えて良かった・・・!!」
「ゆうくん・・・ないてるの・・・?」
「当たり前だ・・・!勝手に死んじまって、どれだけ悲しかったか・・・!!」
「ゆうくん・・・ごめん、ね・・・?」
「良い、良いさそんな事!安里が生きててくれたなら、そんな些細な事なんて・・・!!」
力強く、そして限りなく優しく、抱き締める。安里も、弱った体で祐司を抱き締める。
長い時、長い道程を経て、二人の恋人が、再会した。
その後、賊は
弱った安里は馬車に乗せられ、建業の華陀の所に運ばれた。勿論、祐司は付添いだ。
「我が身、我が鍼と一つになり!一鍼同体!全力全快!病魔覆滅!げ・ん・き・に・なれええええええええええ!!」
暑苦しい。
「・・・ふう。体力を回復させる為に鍼を媒介にして気を送った。今はぐっすり寝ている。後は、栄養の有る食事で療養すれば完全回復だ」
「ああ、ありがとな華陀。助かった」
「どういたしまして。所で祐司、あの娘、お前のコレか?」
「ニヤニヤしながら小指を立てるなそして答えは
「そーかそーか。ならコレをあげよう」
「だからニヤニヤするなと・・・んだコレ」
「どうせヤるんだろ?精力剤と避妊薬だ」
「・・・礼は言わんぞ///」
「顔が赤いぞ?んん?」
「煩い!!///」
「それで祐司、彼女の事を教えてくれる?」
二日後。完全回復した安里と登城すると、甘寧に安里諸共連行され、鳳蓮の前で正座させられる祐司が居た。
「あの~、その前に一つだけ聞いても宜しいでしょうか鳳r(ギロッ)孫堅様?」
「何?」
「・・・何をそんなに怒ってi「全く怒ってないわよそうですとも祐司がすっぽかした分の仕事を押し付けられたからってちっとも怒っていませんの事ですよ?」真にっっっ申し訳有りませんでしたあああああああああああ!!」
正座から土下座までの形態移行時間、0.03秒。安里は横で「アワワワワ・・・」と真っ青になって震えている。
「私が良いって言うまで土下座を止めちゃダメよ。それで、その娘は?」
「故郷での恋人で御座いますですハイ」
誤魔化せばコロス――――そんな声が聞こえる様な気迫の前で誤魔化す事が出来る筈も無く。あっさりと喋らされてしまう祐司。安里は責めない。だって、目の前に修羅が居るから。
『『『恋人?』』』
「ハイ」
「・・・そこの貴女、それは本当の話なの?」
「ハッハイ!ゆうくんとは恋人同士です・・・///」
やはり恥ずかしいのか、声が尻すぼみになって顔が赤くなっていく。
「へえ・・・」
「して、貴女の名は?」
「そういえば俺も未だ聞いて無いな」
未だ土下座状態の祐司。
「三日間何してたの!?」
「看病したり看病したり以下省略」
「あはは・・・コホン。改めまして、私の名前は徐庶、字を元直と申します」
『『『徐元直!?』』』
全員が驚いて声を上げる。祐司も土下座を解いてしまった。
「徐元直とは、まさか君があの、『幼麟』なのか!?」
「私、そんな二つ名が付いてたんですか・・・」
※幼麟:伏竜・諸葛亮、鳳雛・鳳統に並ぶ名軍師の一人。
「・・・なあ徐庶殿、呉に使えr「お受けします」即答か!?」
「元々仕える為に来たんですから」
「なら、これから宜しく頼む。所属は祐司の副将、部屋は祐司と同じで良いな?」
「分かってますね周喩さん。私の事は安里で良いですよ」
「では私も冥琳で構わん」
「「フフフフフフ・・・」」
黒い。軍師二人が黒い。
「なあ、当事者スルー!?」
未だにやり直させられた土下座を続けている祐司だった。
その後、安里は正式に軍師に就任、孫呉を支えていく事になる。
そしてその晩、祐司の部屋では、幸せそうに抱き合って眠る二人の姿が有ったそうな。
祐司「予言の『愛する者』って安里の事か」
基準「うむ。頑張って書いたけど駄文になっちった。てへっ☆」
祐司「・・・男でそれはねぇよ」
基準「自分で書いてて無いと思った。うっ、気持ち悪・・・」
祐司「自分でやったんだろ!!」
安里「あの~、失礼しま~す・・・」
祐司「あああ安里!?何でこんな所に・・・」
基準「俺が呼んだ」
祐司「お前か!」
基準「何か悪いかバカップル。あ、安里さん、後書終わったらこの部屋好きに使って良いから」
安里「あ、ありがとう・・・」
基準「さて、祐司と出会えて、今のお気持ちは?」
安里「今、すっごく幸せです・・・///」
祐司「・・・///」
基準「で、祐司とのこれからの新婚生活プランは?」
祐司「マテ。質問がおかしい」
安里「その、イチャイチャして、一緒に寝て、念願の『あ~ん』と、『ご飯にします?お風呂にします?それとも・・・』をして、三番目の選択肢を選んで貰って・・・キャーーーー!!♡♡♡」
祐司「具体的だなオイ!!」
基準「モゲロ!!」
祐司「お前が作ったキャラだろうが!!」
基準「(∩ ゚д゚)アーアーキコエナーイ。では、『戦士と悪魔の外史旅行』ー」
安里「夫共々、宜しくお願い致します」
祐司「マテ!!未だ結婚して無いぞ!?」
基準「ではまた次回~。さて安里さん、祐司、私は出て行くから、後はごゆっくり~」
祐司「マテコラ!逃がさねえ・・・って安里?」
安里「さ、ゆうくん、あっちにイこ?」
祐司「マテ、その言い方はあああああ!?」