翌日、再度のシ水関攻撃において、全主将が集まる天幕に最初にもたらされた報告は。
「たった五人・・・?」
「はっ!シ水関には五人の将以外猫の子一匹見当たりません!」
「流石に展開が速すぎへんか!?原作もかなりぶっ壊され取るし、何が何やらよう分からんくなっとる・・・」
佑は頭を抱える。無理も無いだろう。天の御使いの増加に加え、黄巾の乱から反董卓連合までに大部分の原作が崩壊している上に、翼の性格改変、狼鬼までが参加している。気にするなと言う方が無理だ。
「・・・なあ佑、お前達『天の御使い』がよく言う原作って何なんだ?」
白蓮が佑に言葉をかける。佑は白蓮に説明を返そうとするが、直前で言葉を喉の奥に押し込み、代わりの言葉を吐いた。
「今ここで話してもええんやけど、この話、御使い組を傘下に入れとる人らにしか聞いて欲しくあらへんっちゅうのがワイの勝手な願望なんや。やから、曹操はん、孫策はん、劉備はん、白蓮、あと厳顔はんにしか話されへんねん」
「ちょっと!私には話して下さらなくて!?」
「今佑が言っただろうが。御使い連中を『所有』してる奴らにしか話せねえって。」
袁紹が入れた横槍を、祐司がすんなり弾き返す。
「悪いが、今佑が名前挙げた奴、ウチの空き天幕に来てくれるか?拒否権はねえ。全員来い」
「申し訳有りませんが、天統『様』にはご辞退しては頂けませんか。そもそも、我ら下々の会合など、『陛下』にとっては苦痛でしか無いでしょう?」
祐司が会合を拒否しそうな曹操に牽制をかけ、道昭が慇懃無礼に、そりゃもう慇懃無礼に、い・ん・ぎ・ん・ぶ・れ・い・に天統を拒絶する。
天統は最大級の皮肉が込められた「様付け」、「陛下」に気を良くしたのか快諾した。名前を呼ばれた全員と御使い+α組の心境は「良くやった道昭(大河)!!」で一致していたなんて、言わずとも分かるだろう。
で、空き天幕で。
「で、ワイらがゆう『原作知識』やねんけど、ワイらが『未来から来た御使い』ちゅうんが前提条件や」
「未来から・・・?」
「そうや。ワイ、かずピー、ミッチー、ゆうピー、たつぴー、んでから、安里ちゃんでええやんな?」
「ちょっと!何気安く安里の真名を呼んでるのよ!!直ぐに訂正を――――」
「良いんです雪蓮様。友達ですから。お久しぶりです佑さん」
佑の言動に文句を言う雪蓮に、安里がやんわりと事実を言う。
「うん、久しぶりやな。えー、ゆうピーとの関係、ご馳走様――――ちゃうちゃう、おめでとうございます」
「オイマテコラ佑ちょっと表出ろ」
『『『事実じゃん(やん)』』』
「ぬがあああああ!!」
そして無駄な事を口走った佑に祐司がケンカを売るも、一刀、道昭、竜、佑の一斉射撃にあえなく返り討ち。
「ゴホン!で、話の続きは?」
曹操が流れを戻し、佑が話を再開する。
「そやったそやった。えー、さっき言った六人は、今から1800年後の未来から来てんねん」
「1800年後!?」
「そや。たつピーと安里ちゃんに至っては『輪廻転生』――――、言ってもうたら、一遍死んでもっかい生れ直したってトコや。で、安里ちゃんとゆうピーは幼馴染で両想いやったと」
「無駄な事言ってねえでさっさと進めろ」
照れ隠しに祐司が怒鳴る。佑はニヤニヤしながら話を戻した。
「それで、その未来に何の関係が有るの?」
「たった数百年前の漢楚の戦いが今に伝わってるんや。1800年もの未来やったら、この時代の話が伝わっててもおかしくないやろ?」
「成程ね、貴方達は言わば、項羽と劉邦の戦いに巻き込まれた私達のスケールを大きくした感じ――――って理解で良いのかしら?」
「ミッチー、もう曹操はんに横文字教えとんのかい」
「別に良いじゃないか。あ、スケールって言うのは規模って意味で覚えていて下さい」
脱線が多いと今まで空気だった一刀が言う。
「俺にはマトモな括弧もくれないのか!?」
「やかましいでかずピー」
一刀両断。一刀、哀れ。
「で、ワイらの時代にはこの時代が『三国志』っちゅう題名で基本小説で出回っとる。それを基にした小説で『恋姫無双』っちゅうのが有んねんけど、三国志の英雄の大方を女性化した世界がこの世界や」
「ぬ、ならわしらは竜達の世界では男だったのか?」
「ああ、性転換の例外は孫尚香、華陀のみで、女から男になったのが二人。名前は黙秘権を行使するから聞くな」
「で、この反董卓連合に関して、シ水関の舌戦は、『猪武者』の華雄が関羽の挑発に乗って打って出て戦死、張遼は兵を率いて虎牢関まで下がるっちゅうんが流れやねんけど・・・」
「華雄は猪じゃ無かったしな」
「狼鬼まで出て来たし・・・」
「ねえ、その『ろうき』って何なの?」
劉備が佑に問う。確かにあれは疑問に思うだろう。佑に代わり一刀が答えた。
「狼鬼は俺らの時代にあった特撮・・・簡単に言えば作り話の中に出て来る敵役で、実在しないんだよ」
「え、でも私ちゃんと見たよ!?」
「『外史』って知っとる?」
「『外史』って、本来の歴史から分岐した歴史っていうあれかしら?」
「正解や曹操はん。外史はつまり可能性の世界や。例えばワイがここで右手を上げたとする。若しかしたら左手を上げたり、両手を上げたり、そもそも手を上げへんかったかも知れへん。可能性の数だけ正史――――正しい歴史から外れた世界、それが『外史』や。その理屈で行って、若しかしたら狼鬼が実在する可能性の世界も有るかも知れへんやろ?」
「ぶっちゃけ、この世界も俺らの間じゃ作り話の世界なんだけどな」
「え!?」
一刀の言葉に桃香が驚愕する。
「さっきも言っただろ。この世界は『恋姫無双』っていう小説の世界だって。本家の三国志を基にした作り話の世界なんだよ、ここって。まあ俺達が居る時点で現実なんだけどな」
「危険なのは『転生者』だ」
祐司の言葉に雪蓮が疑問の声を上げる。
「え、何で?転生者って言えば、楽蛟や安里のことでしょ?別に危険じゃないけど」
「天統ですよ。奴も転生者です。転生者の中には竜や安里ちゃんのような人も居る中、天統のような自分が主人公だと疑わないバカも居るんです。俗に『踏み台転生者』と呼ばれていますが。」
「踏み台の典型的な特性として、この世界を唯の物語としてしか見ていない事、転生特典――――転生の際に手に入れる力の事だが――――が反則に強い奴を持ってる事が多いのが挙げられる。あのクソ野郎はその典型的な例だ」
道昭の説明に竜が補足を入れる。天統に暴言を吐く事も勿論忘れない。祐司が後に続く。
「アイツの特典はギルガメッシュ――――僕達の知る作り話の中の登場人物の容姿と能力、ニコポ・ナデポ、EX級魔力――――矢鱈多い気って考えてくれ――――の三つだ」
「能力って?」
雪蓮が問いかける。
「『
祐司は口を噤む。余りにも馬鹿馬鹿しい能力に辟易したのだ。佑がそれに助け舟を出す。
「笑いかけた奴、撫でた奴を惚れさせるっちゅう能力や。大抵の踏み台はそれを持っとる。基本、原作キャラて呼ばれとるんには利かんし、同じ転生者にも利けへんから殆ど意味無いけどな」
「それは良いけど、その矢鱈多い気、かしら?それは危険じゃないの?」
「良い質問だが、曹操、アイツからそれっぽいモンは感じ取れるか?」
「・・・無理ね。全く普通の一般人よ」
「だから大丈夫だ、問題ない」
「たつピー死亡フラグ立ててどうすんねん・・・」
原作知識プラスαの説明が終わり、そんなこんなでシ水関前。
董卓軍の五人+狼鬼がまったりお茶を飲んでいた。
約二名、酔っ払いが鼾を掻いている。
狼鬼、正座で抹茶を飲んでいる。
「いやまったりし過ぎだろ!?」
「お前達が遅いのが悪い」
「全くです」
翼が返し、黒髪の少女――――周泰が同意する。
「やっぱり周泰はそっちにおったんか・・・」
「情報が間違ってたな。隠密の訓練厳しくすっか?」
「うう、やっぱり狼鬼さんもそっちに居るんだね・・・」
「勝てるかしらこの戦・・・(ボソッ)」
桃香の弱音と雪蓮がボソッと呟いた言葉に、ものすごーく狼鬼が反応した。
「・・・諦めんなよ」
『『『ゑ?』』』
董卓軍勢も目が点になる。
「諦めんなよ、お前!どうしてそこでやめるんだそこで!? もう少し頑張ってみてみろよ!ダメダメダメダメ諦めたら。周りのこと思えよ!応援してる人たちのこと思ってみろって!!あともうちょっとの所なんだから。俺だってこの不利な状況の中、一生懸命勝とうと頑張ってんだよ!ずっとやってみろ!必ず目標を達成できる!だからこそ、Never Give Up!!」
『『『はあ!?』』』
何か狼鬼がおかしい。おかしい。どこかで聞いた事有るような・・・
「何と無く生きてんじゃないですか?迷ってんじゃないですか?イキイキしたい!簡単ですよ。過去のことを思っちゃダメだよ。何であんなことしたんだろ・・・って怒りに変わってくるから。未来のことも思っちゃダメ。大丈夫かな、あはぁ~ん。不安になってくるでしょ?ならば、一所懸命、一つの所に命を懸ける!そうだ!今ここを生きていけば、みんなイキイキするぞ!!」
何か、熱い。
「あれ~、何だっけ?コレ」
一刀も首を傾げる。そして狼鬼は何故か切なそうな雰囲気を出す。
「世間はさぁ、冷てぇよなぁ。皆、君の思いが感じてくれねぇんだよ。どんなに頑張ってもさ、何で分かってくれねえんだって思うときが有るのよね。俺だってそうよ。熱く気持ちを伝えようと思ったってさ、お前熱過ぎるって言われんだ。でも大丈夫!分かってくれる人はいる!そう!俺について来い!!!」
『『『何で!?』』』
そして更にヒートアップする。
「頑張れ頑張れ出来る出来る絶対出来る頑張れもっとやれるって!!やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだそこだ!諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張れ頑張れ!!北京だって頑張ってるんだから!」
何故か応援された。
「いや今北京は関係無いだろ!!」
そして暑苦しさは最高潮に達する。
「もっと熱くなれよ・・・熱い血燃やしてけよ・・・人間熱くなったときがホントの自分に出会えるんだ!だからこそ、もっと!熱くなれよおおおおおおおおおおお!!!」
狼鬼が萌え――――じゃなかった、燃えている幻影が見える。
『『『・・・』』』
そして戦場に沈黙の女神が舞い降りる。
気まずい。ヒジョーに気まずい。
「静かだぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」
「・・・ああ、思い出した」
『『『しゅ○ぞうだ、コレ』』』
御使い組は自己完結&達観し、その他大勢は余りのキャラ崩壊に唖然とする。
「・・・ハッ!!俺は・・・一体・・・何をしているんだ!!ヌガアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
狼鬼は元に戻り、自分のやった事を思い出して悶えている。
何だろう、このシリアルな雰囲気は。
何か気まずい雰囲気を変える為、慌てて一刀が口を開いた。
「と、兎に角董卓軍の皆さん、自己紹介をお願いします!」
「あ、ああ、董卓様が配下、華雄だ」
「同じく張遼や」
「傭兵団『月影』が一、周泰です」
「・・・」
「・・・」
水色のサイドテールの女と金髪のツインテールの女は互いに顔を見合わせた後、意を決したように口を開く。
「元黄巾賊、現月影所属、鄧茂です」
「同じく波才だよ~」
「・・・マジかよ元黄巾賊!?」
「月影が居る事にも驚いたけど、黄巾賊まで引き入れてたとはね・・・」
祐司が驚き、道昭は嘆息する。
「うおあああああああああああああああああああああああ!!」
狼鬼は未だ悶えていた。
((((クールな面影全くねえ(ない)・・・))))
そう思うのも無理ない。華雄が狼鬼に呆れたような顔をしながら口を開く。
「兎に角!私達は言わば顔合わせの為にここに残ったのだ。別に敵対しようとは思っていない。そもそもたった六人で十万の大軍を相手に出来るなど自惚れてはいない」
「すっげえ・・・あれが元猪か?」
「猪言うな!!」
一刀は地雷を踏んだようだ。
「ゴホン!!兎に角、私達はこれで引く。ああ、勿論シ水関は壊していくぞ。敵に居所を与えるなどバカのやる事だ。ほら狼鬼、いつまで悶えている。撤退するぞ」
「ハハハ・・・どうせ俺ァ・・・俺なんか・・・」
((((アイツ本当に狼鬼か!?))))
「・・・はあ、明命、来夏、瀬蓮、狼鬼を叩き起こしてくれ。霞、行こう」
「・・・逃がすと思って?」
曹操がドスの利いた声で言う。華雄はどこ吹く風で、御使い組に話しかけた。
「伝言だ。『待ち草臥れた。さっさと来やがれバカ親友共。いい加減にしねえと姉貴の飯改悪版食わせるぞ』だそうだ。確かに伝えたぞ」
『『『最悪だああああああああああああああああああああ!!』』』
突然御使い組(天統除く)が頭を抱えて叫んだ。安里も顔を真っ青にして震えている。
董卓軍組は御使い組に唖然とする連合軍を無視してさっさとシ水関を通り抜け、門を閉じた。
そして十数分後、シ水関は爆散した。
基準「長い連休より平日の方が書きやすいと思う今日この頃」
零「どうしたよ変な事言って」
基準「久しぶり。いや今ね、兄貴が帰って来ていてね、夜更かし執筆出来んのだよ」
零「へえ」
基準「お陰で昨日投稿する筈だったのにずれたよ。友達に宣言したのに」
零「この駄作作者の友達が読んでくれてるんだ!」
基準「ユーザーネーム、廻廻廻廻!!さん。こいつも小説投稿しようと頑張ってるけどタイピングが遅いらしい。後一人ネームが決まらない奴が居て、そいつも登録したら投稿しようと思ってるらしい」
零「三人で頑張ろう!!的な?」
基準「そゆこと。仲間内じゃ私が一番進んでる。おっと、時間だね。それじゃ『戦士と悪魔の外史旅行』!!次回も宜しくお願いします!!」
零「またね~!!」