現在時刻は辰の正刻、つまりは午前8時頃。タイミングとしては休日の朝に、若しくは目覚まし時計の努力も空しく遅刻という不名誉を引き起こす、勉強が好きとは言い難い学生達が漸く目覚めた時間帯。
大広間の扉の前、松葉杖を突いた恋と、車椅子に座った明命、そして、車椅子を押す零の3人の姿が有った。頭の上には何故か麦わら帽。服装も白のワンピースと、夏を意識したかのような女の子らしい清楚なものに変わっている(現在季節は夏)。
「ねえ・・・ホントに大丈夫かな・・・?」
零は顔を若干青くし、爪を噛んでいる。それもそうだろう。つい先日(4、5日前)、己が力で恐怖を振り撒いたばかりである零としては、自身が恐怖の対象として迫害されても可笑しくは無いと考えている。
「大丈夫だよ。皆零を怖がるような人じゃないって、分かってるでしょ?」
「・・・もし零姉を拒絶したなら・・・!!」
そんな零を明命が優しく諭す。横に居る恋は、ゴゴゴという擬音語でも見えそうな不穏なオーラを振り撒いている。下手をすればコンマ1秒で千切りにされそうなふいんき、じゃなかった雰囲気である。
「恋、アタシを心配してくれるのはいいんだけどちょっと落ち着いて? 若干怖いよ?」
「・・・ごめんなさい」
瞬時にオーラを収め、シュンと項垂れる恋。心なしか頭の触覚も萎えているように見える。
「あっ、いや、別に起こってる訳じゃ・・・(汗)」
すぐさま零がフォローに回る。幾分か気が楽になったようだ。顔色も最初に比べ良くなっている。
零は深呼吸をすると、扉のノブに手をかけた。そのまま勢い良く扉を開く。
零は、扉が外開きである事を忘れていた。勢い良く開かれた扉は明命の座る車椅子へカーブを描きながら一直線である(どっちだ)。
「ちょ、危なっ!?」
「うわっとと!!」
慌てて扉を止める。扉はギリギリの距離で止まった。
「・・・何してんだお前」
扉の向こうから右腕を吊るした竜が呆れたような言葉を投げかける。
「あ、あは、あはは・・・」
「とりあえず中入れ。そんなトコに突っ立ってられると邪魔だから」
「はーい、すいませーん・・・」
苦笑いで広間に入る。顔は苦笑いだが、零は内心嫌われないか心配で心臓バクバクである。
「あ、零に明命に恋ちゃん、おっはよー! って零その服は!? 滅茶苦茶似合ってるじゃない!!」
「あら、中々早いお目覚めね。もう少し寝てると思ったんだけど。零、服似合ってるわよ」
「天っちに呂布っち、泰っちおっはー!! 天っち、あんまそーいった服って見た事なかったから新鮮やわー」
「おはようございます零さん。服、似合ってますよ。恋さん、明命さんもおはようございます」
上から雪蓮、鳳蓮、霞、月の順で3人に声を掛ける。零の心配とは裏腹に明るい雰囲気だ。
「あ・・・」
「ね? 大丈夫でしょ?」
「・・・もし零姉を裏切ったら・・・刺殺? 惨殺? 銃殺? 圧殺? 撲殺? 絞殺? 斬殺? 焼殺? 毒殺? フフフフフフフフフフフフフフフフフフフ・・・(ブツブツ)」
呆然とする零に明命が声を掛ける。そして恋はかなり物騒である。というかキャラ崩壊も甚だしい。それに銃殺はこの時代に無い。
「ちょ、恋、何か黒いの漏れてる! 何か出てるー!」
慌てて蓮華が恋を止めようとする。
「殴殺? 射殺? 絞殺? 暗殺? 薬殺? 挟殺? 轢殺? 屠殺? 爆殺? 封殺? 焚殺? クククククククククククククククククククク・・・」
怖い。正直、怖い。つかもう、アンタ誰?
そんな恋をスルーして、竜が零に話しかける。
「所で零、その服は一体・・・?」
「ああ、明命に目を煌かせながら言われて無理矢理・・・アタシ的にはボーイ系の方が良いんだけどね・・・」
「あー、まあ元男だもんなー・・・で、麦わら帽は?」
「これは・・・その・・・」
麦わら帽について指摘されると、真っ赤な顔を俯かせて黙り込んでしまう。
頭の上にクエスチョンマークを掲げながら竜が頸を傾げていると、窓から強い風が吹き込んで、零の麦わら帽を飛ばした。
「あ・・・!!」
麦わら帽の下に有ったのは、人に有る筈の無い物。
学名、Canis lupus familiaris、食肉目イヌ科イヌ属に分類される哺乳類が持つ、猫よりは少ないものの従順系キャラなどに比較的多く見られる三角形の云々――――
「・・・なんでさ」
早い話、犬耳である。
「正確には狗耳、それか狼耳ね?」
「テメエは某運命さんの使い魔か若しくは夜天の主の守護獣か」
「長いよ」
ペタンと床に座り込む零。頭の犬「狗、それか狼」狗耳を恥ずかしげに両手で隠している。
赤い頬+涙目+上目使い+αケモ耳=無敵!!
そんな文が野郎共の頭の中でリピートされたとか。
「可愛いーーーー!!」
そして暴走した奴が約1名(明命)。
「あいたたたたたたたた!!」
抱きつく前にそのまま撃沈。大怪我している状態で暴走するからである。
「・・・で、その耳は?」
「朝起きたら尻尾付きでこうなってた。人の耳は無くなってる。狗耳引っ込めようとすると代わりに猫又仕様になる」
「・・・なんでさ」
「知らないよそんな事」
頭を抱える2人に、偶々居た北一が自分の予想を話す。
「その獣耳なんじゃが、無銘一族は元々人ならざる者の一族なんじゃろう? 更にはお主らは本家の子で血が濃いから、以前の暴走によってストッパーのような物が外れ、一族の根幹とも言うべき力が解放されたんではないかのう?」
「・・・先祖返りってか? なら俺も?」
「ちょ、竜、助けッ・・・!!」
「やーもーかわいーーーー!!」
竜の横で、零が雪蓮に揉みくちゃにされていたのはご愛嬌だろう。
零が漸く脱出して、北一が声を掛ける。
「所でなんじゃが、零、これを渡しておこうと思う」
そう言って差し出されたのは、両端にニードルと三つの鉤爪、紫の宝石が付いた鎖、が数本。
「これ・・・
「天統とかいう輩の宝物庫から
「ああ、天統の宝物庫のモノホンね・・・」
少々ガッカリと言うか何と言うか、な雰囲気を醸し出している零ははたと気付く。そう言えば乖離剣エアも本物じゃなかったっけ?
「ねえ、エアは? あれも本物の宝具でしょ?」
「エアは俺が貰った」
竜が右手に逆手持ちで持って見せてくる。ああ、と納得しながら、どこか不思議そうな顔をする零。
「・・・竜が持つ意味有る?」
「・・・言うな」
魔力を未だ持たない竜では、宝の持ち腐れである。その事が分かっているのか、項垂れる竜の後に黒い線が何本も見える。
それを尻目に零は天の鎖の名前(正確にはルビ)を考え込んでいる。
「名前か・・・エルキドゥはギルガメと被るし、ギルガメッシュだったらご本人が『勝手に我の名を使うとは!!』とか言って怒りそうだしそうでなくても呼び捨てにしたとか何とか言って怒りそうだし・・・明命とかにしたら恋が怒るし逆も然りだし・・・悩むなー」
頭をワシャワシャ(ガシガシでないのは耳が有るから)と掻きながら悩む零。
「『カテナ』なんてどうだよ」
「アタシはステンドグラスの王様じゃねえ」
竜の意見を一刀両断する余裕は有るようだ。
そんな中、祐司がポツリと言う。
「・・・でぃあーな」
「え?」
「『ディアーナ』、なんてどうだ?」
「「ほほう・・・」」
零と竜の2人が感心したような声を出す。
「闇から夜、夜から月、月の女神でディアーナか、良いんじゃないか? 零の守護星、月だったよな?」
「狩の女神だし、自称『
((((自分で自称と認めるんだ・・・))))
零の言葉に、全員が全く同じ感想を抱く。が声には出さない。
「よしっ!!
と零が宣言した瞬間。
―ジャララララララララララララ!!―
騒がしく本体を鳴らしながら、零の部屋から長い鎖が2本、空中を飛んで来るという異常事態。
「へぶうっ!? の゛っ!? どふぁっ!!」
1本目の鎖は竜の顔面と正面衝突した後、2本目は竜の脛に激突して転倒させた後に、唖然とする周囲を気にした風も無く(そもそも無機物だから意思が無いのだが)、
「ぬごあっ!?」
そして鎖――――
結果、何が何やら分からぬまま鎖に巻き付かれた零と、唖然とする周囲、ついでに頭を押さえて膝を抱えた姿勢で床に転がる竜という情景が出来上がるのだ。
「ふ、不幸だ・・・!!」
「あー、りゅ、竜? 大丈夫――――じゃ、ないよ、ね?」
「何故に疑問系なんだ・・・!!」
激痛(5割が脛の痛み、4割が顔の痛み、残りが怪我の痛み)に苛まれながら竜は身体を起こす。そして叫ぶ。
「
可哀想な事に、オンドゥル語のせいで何を喋っているか分からない。哀れだ。哀れ過ぎる。
「兄様、落ち着いて下さい。オンドゥル語になって何言ってるか分かりません」
「はーっ、はーっ、はーっ・・・おk、落ち着いた。鎖の件は置いておこう。で、零、胸の鎖をドウニカしろ。目の毒だ」
「因みに、スリーサイズどの位有るんですか?」
「あー、これ? さっきからやってんだけど離れないんだよねー。そしてスリーサイズは上から93、57、88。アンダーは65」
「93-65=28だから・・・ハッ!! H・・・だと・・・!!」
ブツブツと何かを呟いていた安里がショックを受ける。序に後に雷が落ちている幻覚が見える。
「えっと・・・兄様、『えいち』ってどういう意味なんですか」
おずおずと凪が竜に問う。竜は嘆息しながら。
「・・・まあ、デカイって事だ。しかも着痩せするタイプらしいから見かけよりは。桃香よりは、だろうな」
その瞬間、
「「「「ふふふふうっふっふうっふふふふフッふうううふふふふふ」」」」
「な、何か笑い方が変な気がするんで――――ひにゃあああああああ!?」
後は、お察し下さい。
「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・///」
零は息を荒くしながら頬を赤く染めている。私は何も見ていない。野郎共も何も見ていない。神に誓って何も見て無い。
聞いてはいたが。
「で、鎖は斬るか」
「止めろ」
落ち着いて早々どこからとも無く刀を取り出そうとする竜を焔耶が止める。
「たつピー、宝具やからそもそも斬れへんって斬れても零が(性的に&肉体的に)危ないって」
「俺の辞書に不可能という文字は無い!!」
「どこの仏軍人だテメエ」
不味い。竜が壊れた。プログラムを強制終了――――
「俺はパソコンじゃねえしそもそも壊れてねえし」
デスヨネー。
「それは兎も角、零の服が斬れたらどうするんだい? もしそうなったら怪我人2人が
道昭が何とか竜の危機感を煽ろうと恋と明命の狂化を指摘する。当の2人は道昭の言葉を聞き、後で竜に向かって殺気を大量に放出している。
「・・・そいつァ不味い。俺精神的にも物理的にも社会的にも抹消されるかも」
「大宇宙的にも抹消されそうだね」
「世界からも拒絶一辺倒か!?」
「大丈夫ですよ兄様。そうなったら私と焔耶で引導を渡しますから」
「具体的にはだな・・・」
「聞きたくねえッ!! 全ッ然聞きたくねえから止めてくれッ!! つか死者に鞭打つ行為は止めてッ!!」
やはり最後は竜を弄って終わるのだ。そして蚊帳の外にほっぽり出された零は――――
「・・・こんどは、あまてらすコンビですか」
「「むふふ~♪」」
天と照に揉みくちゃにされていた。
なんだかんだで、零の周りは平和である。
・・・白、白、白。部屋の壁も天井も道具も全て真っ白に染められた、窓も、照明も無い部屋の、2つのベッドの上。
ナエムとトリューグは、両腕を白い包帯で巻かれ、真っ白の治療着を着て横たわっていた。
「・・・やはり、神経まで障害がありましたか」
ナエムは包帯に巻かれた腕を眺めながら悔しそうに言う。それに返したのは、黒の膝下までのスカートに黒のシャツ、黒のコートと黒尽くしの服装、髪と瞳はくすんだ銀色という女性である。足を組んで座っており、玉のような肌を持つ美脚は同性さえも魅了しそうだ。
トリューグは鼾を掻きながら爆睡している
「ああ。幸い障壁のお陰で傷は浅い。暫く休んでいれば直ぐに治るだろう。が、身体にかかった呪力の負担は重い。最低3日は絶対安静だ」
「分かっていますよ・・・所で『エヴィ』」
「『エヴィラ』だ」
エヴィと呼ばれたその女性はすぐさま名前を訂正する。
「ああ・・・何で私が愛称で呼ぶと誰も彼もが即訂正するんでしょうか・・・」
「貴様が気持ち悪いからだ。それよりさっさと本題に入れ
かっくりと落ち込むナエムに辛辣な言葉を浴びせるエヴィラ。ナエムはふざけたような雰囲気を消して真面目に――――とは言い難い楽な雰囲気で問いかける。
「・・・私達を助け出したのは、『
「ああ」
「・・・後でホワイトチョコでも渡しに行こうかな(ボソッ)」
「止めておけというか何故ホワイトチョコなんだ。別に普通のチョコでもいいだろう」
「それは勿論――――」
「ああもういい聞かせるな嫌な予感しかしないからというか貴様今すぐ
「・・・冗談ですよ、別にそこまで言わなくてもいいでしょうに」
「言われたく無いなら貴様の
彼女の毒舌は止まらない。句読点を一切挟まず言い切った事は賞賛に値する。
「・・・他にも聞きたい事が有ります」
「逃げたなならそのまま野垂れ死ね禿鷹に啄ばまれて吐き出されろ」
「・・・『佐久間零』についてです」
打って変わって真面目な雰囲気を出すナエム。エヴィラは目を細めた。
「・・・『QE』の御面々が仰った事と違っていた事か? 別に疑問点は有るまい。単に『今度の』佐久間零は闇をベースとした力だっただけだろう」
「にしては異常過ぎるのですよ。幾ら『幻獣帝』の末裔だとしても、幾ら先祖返りの力が強くても、現在は気が使える身体能力が常人よりも高いだけの、殆ど人間と言っても構わない存在の筈です。しかし、あれは異質過ぎる」
「・・・確かにな。殆ど人の身で、あのような闇を抱えていれば普通は直ぐに自壊する」
「至急『アカシックレコード』への調査が必要です。それに、佐久間零があれでも佐久間竜が通常である、という確立は低いでしょう。そちらの調査も必要だと思います」
「・・・分かった。エリセドに伝えておこう」
立ち上がったエヴィラは、下手をすると見失ってしまいそうな程白い扉を開けて、振り返って一言。
「・・・まあ、3日限りの有給だと思って休んでおけ、『№6』」
「よろしくお願いしますよ、『№3』」
基準「疲れた・・・!!」
零「お疲れー、何してたの?」
基準「ストックを作ってました。今一応2個有ります」
竜「夏休みに作らなかったのか? 時間は幾らでも有っただろ?」
基準「宿題が終わったのは31日」
零&竜「あー・・・」
基準「後ふと思いついた参章の1話目を書いてたりもしました」
零「・・・弐章も書いてないのに?」
基準「頭の中で六章分の流れは出来てるんです」
竜「それを乏しい文才で書けるかどうかだな」
基準「・・・言わないで下さい。ゴホンッ!! それでは、前回予告していたゲストをお招きしたいと思います。『バカとテストと召喚獣~新たなる出会いはましろ色~』から、瓜生明久君です!!」
明久「えーと、どうも、瓜生明久です」
零「久しぶり! 元気にしてた?」
明久「零さん、竜さん、こんばんは。この前はありがとうございました。送って頂いた物はちゃんと活用させて貰いました」
基準「明久君の出演は霊光さんからちゃんと許可を頂いていますので、賛否両論有ると思いますがご了承下さい」
零「で・・・アタシの狗耳何?」
竜「狗というと青い槍兵を思い出すな」
明久「んー、紗凪に猫耳似合いそうだな・・・」
基準「これも前々から思ってた設定です。猫耳と狗耳なら明命と恋に絡めやすいでしょ?」
零「確かに」
明久「それで、敵の幹部が新しく出ましたね」
竜「エヴィラとかいう奴か。番号だけ出てきた奴も居るな」
零「一体何者!?」
基準「幹部連中も全員決まってます。さて、誰なんでしょう?」
零「うわー、すげーイラつきます」
明久「・・・あ、そろそろ帰らないと、桜乃達が心配しそうだな」
竜「じゃあお土産にこれ持ってけ」
明久「・・・
零「表紙はアタシの写真だけど、中身は貂蝉と卑弥呼の写真集だから。FFF団に使って」
明久「ありがとうございます(苦笑)」
基準「では、『戦士と悪魔の外史旅行』!!」
零「また次回もヨロシクね!」
竜「次は出来るだけ早めに更新出来るよう頑張らせる」
明久「ではまた次回に!! 『バカとテストと召喚獣~新たなる出会いはましろ色~』の方も、よろしくお願いします」