桜の織り成すキセキ   作:天枷美春

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挿入投稿☆
本編更新なんと3か月ぶり?
仕方ないね、忙しいし。
後、納得いかないストーリー構成になったし。

とか言ってたら間違えたわ畜生。
21話の前に入れちまった。


22話

「――――――――良いですか七瀬君、この商店街開催の子供の日イベントですが、例年を鑑みれば子供連れ家族を対象とした3人程度のチーム一組が基本となって居ます」

 

「成程、俺、美春、音夢、朝倉の4人なら、取りあえず条件は満たしていると言う訳か」

 

 

商店街の祭が開催される30分前に、何と純一までも遅れることなく集合している。

そして音夢より手渡された地図を見て、どのルートを巡るのが効率が良いかの話し合いが始まるのであった。

 

 

「しかし、甘く見ていたな。随分と混雑しているじゃないか、島外から本当に大勢の人が集まってるんだな」

 

「い、いえ、美春の記憶では普段はもう少し少ない筈なのですが」

 

『さー今年も始まろうとしています初音島商店街祭! 運営本部の発表によれば、今年は例年より参加人数が多いとの事です。一番の目玉としては、魔法界と言う新たな世界からの転校生さんにも注目が多いようで――――――』

 

「………………ああ、うん。俺らが原因ですか」

 

 

マルチタレント風の女性がカメラマンと一緒に行動している。

珍しいもの見たさに此処に集まったんだなと、和也は小さく溜息を吐くのであった。

 

 

『海鳴横断ハイパークイズの時もそうだったけど、この島外からも多くの人が集まっていますねー!』

 

「海鳴…………横断……? 恭也たちの住んでる町名だな」

 

「去年行われたクイズの大会ですよ。時々開催場所が初音島商店街から外れたりするんです」

 

「昨年は、高町先輩の妹さんと那美さんで決勝を行っていましたよ」

 

「おおう。美由希ちゃん決勝出たのか……その那美って娘は知らんが」

 

「クラスメイトです、八束神社の巫女さんで、神咲那美さんって言う方です」

 

「八束神社? 恭也達が良く鍛錬やってる神社の?」

 

 

時々朝早く……と言っても深夜レベルの朝だが、そんな時間にルシアンが押し掛けて行ったりしているため、和也も軽い朝食を作って差し入れに行っては居たりする。

余りにも時間が早すぎるために神主や、バイトをしている人物には会ったりしたことが無い為に、新鮮な発見の様である。

 

 

「屋上で高町先輩達と一緒にご飯食べていますよ?」

 

「いや、あそこ人数多すぎてな……まあ、大体分かった。あの中には2年生は一人しかいないから、その娘だろうな」

 

 

人数に関しては朝倉や稟も言えた義理ではないのだが、同級生が多い少ないの違いは、結構覚える事に影響を及ぼしているのであった。

 

 

「まあ、そう言ったクイズの大会があったのですが、あの司会の人、どうやら風見学園のOGの方らしくて、大体この辺りのイベントではテレビ局の方を連れて司会等をやっているんです」

 

「地元出身のアイドルみたいなものか。まあ、勝手知ったる何とやらなら、愛着も湧くだろうしな」

 

『さて実は、実況を行うに当たり、運営委員会からルール等の説明を行う様にと頼まれています、良いですかみなさん、ちゃんと聞いておいてくださいねー?』

 

 

その言葉と共に、参加者たちの目の色が変わる。

臨戦態勢にも似た雰囲気を醸し出す参加者たちに、俺が知って居る祭とは違うと、和也も気を引き締めるのであった。

 

 

『おー。皆さん目がギラついてますね! これを見ると初音島のお祭り騒ぎって感じがするんですよねー! ではルール発表! 今年のテーマは【絆】と言う事で、商店街でのイベントに参加する場合には6人以上のチームを作って下さい。勿論、初めから6人以上でも、その場で6人以上にしても構いません!』

 

「……………………それだけ?」

 

「七瀬、何を言ってるんだ。十分奥が深いルールだろ……」

 

「そうですよ、たかが6人、されど6人です。このお祭りの肝は、最後に行われる大クジ引き大会なんです。参加するごとに貰えるクジは固定です、あまり多くの人と組むと最後にクジ引き券を賭けての戦いが始まるんですよ!」

 

「そ、そうか。絆も糞もあったもんじゃねえな」

 

 

もう何言ってるのこの娘状態である。

が、取りあえずは音夢達のこのイベントに対する気概が伝わってくるのであった。

 

 

「まあ、取りあえず後2人を適当に――――――」

 

「ハッハッハ! よう晶ぼうず、ちょっくら挑戦していきやがれ!」

 

「無理ですって! 絶対見知った顔には本気で来るでしょ館長!」

 

「2人がかりでも構わねえって言ってるだろう? ほれ、そっちの嬢ちゃんも!」

 

「い、いえいえー……うちはちょっと…………」

 

「ってか館長、そもそも六人一組だから俺達だけじゃ無理なんですって!」

 

「………………適当な2人、発見だな」

 

 

胴着を着たオッサンに捕まっている後輩二人を引き入れれば丁度6人になると考え、和也は動き出す。

 

 

「待ってください七瀬君、お2人とは知り合いなんですか?」

 

「美春が言っておいてアレだが、恭也の周りに居るだろ、附属校生じゃない2人」

 

「え……ああ、あの二人ですか。片方、男の子かと…………」

 

「…………美春もそう見えました。晶さんは委員会関係で何度か顔を合わせては居るのですが、解らないものですね」

 

「……………………まあ、うん。晶は私服は解り難いな」

 

 

本人は男と間違われる事には慣れているのか、気にしていないのか、言われても特に怒ったりしないのである。

和也は間違えなかったのだが、逆にそれで驚かれたりしたと言う話がある。

 

 

「よ、レンに晶、6人居ないと出来ないなら、俺達とペア組むか?」

 

「げっ、七瀬先輩!?」

 

「そ、その申し出はありがたいですが、このタイミング言うのはちょっと…………」

 

「?」

 

『おおっと、之は勇気ある人物が現れたー!! 私が学生の頃には既に名を轟かせていた明心館本部道場の館長、巻島十蔵への挑戦状だー! と言うか護身道部の練習試合の時にはお世話になりましたー!』

 

「おお、何処かで見た嬢ちゃんだと思ったが、7年くらい前か」

 

『あーっと! あまり言われると年齢がばれてしまうのでその辺りでストップです!!』

 

「……………………何だか解らんが、晶。こういう時には、良い言葉がある」

 

 

取りあえず、晶と蓮飛がそれなりの武闘派だと言う事を和也は知って居る。

只柔道着を着たオッサン程度には負けないと言う事も和也は解って居る。

だから明心館、つまり晶と同じ流派で、其処の本部道場をまとめると言われた存在、そして尋常じゃ無く怯えている姿を見た和也は、打開策を晶に告げる。

 

 

「子曰く『見なかった事にしよう』……OK?」

 

「『見られなかった事に……』出来る訳無いですよ!!?」

 

「だろうねえ…………朝倉、晶とレンと合流するぞ?」

 

「かったるい………………了解だ」

 

 

2人を後ろに下げて、代わりに純一が前へと出る。

和也、純一の2人でこのイベントを攻略すると言うつもりなのであろう。

 

 

「……………………朝倉、音夢や美春に無茶させたくない気持ちは解るがな、晶とレンを下げるのは如何な物かと思うぞ」

 

「あん? 怯えてる後輩前に出してどうするんだよ」

 

「あの2人は本格的に武術やってるっての。まあ、格好つけるフリをして、後輩を逃がすって言うのは、実際格好いいぞ、朝倉」

 

「……………………かったるい」

 

「クックック。さて、晶、あのオッサン恭也基準にしてどんなもんだ!」

 

「師匠曰く『化け物』だそうです」

 

「――――――――ようし朝倉、先ずは戦闘開始と同時に土下座の準備だ、良いな?」

 

「情けねえなオイ!?」

 

「馬鹿言え、足斬り離されても戦闘続行の想定訓練をやるような流派の師範代を以てして化け物だぞ、普通にやって敵うかよ!」

 

 

何が行われるか解らないが、取りあえず戦闘開始と同時に土下座すれば命まではとられないだろうと言う和也の解釈なのであった。

純一にも意図は伝わっている様だが、こんなお祭り騒ぎの中で命の取り合いなんて物が起きる訳無いだろうと呆れ気味であった。

 

 

「普通にやって敵わないなら、普通じゃない方法を取るのはどうなんだ?」

 

「普通じゃ無い方法ね…………ルールは何です?」

 

「やっと長い話も終わりか。簡単だ、ホレ、こうやって風船頭(カシラ)に括りつけてあるから、それを割ったら勝ちよ。制限時間は3分な。こっちは流石に手は出さねえが、代わりに全力で避けるからな? じゃあ、スタートだ!」

 

「………………それで和也、何とかできるか?」

 

「やれやれ、結局俺任せかよ…………朝倉はあのオッサンの風船を狙ってろ、それで何とかなる。何とかしてやる」

 

 

そう言いながら、両手を弄り、細々と動かしている。

きっと魔法か何かの下準備であろうと、言われた通りに風船を狙って直線的に走って行く。

 

 

「カーッ、若いってのは、無謀で良いねえ!」

 

「――――――消えた!?」

 

「お前の死角に移動されただけだ! 魔法も使わずに人間に消えられてたまるか!!」

 

 

突っ込んでいく純一を見ているだけなので、位置関係の把握は簡単な様子であった。

それにしても、和也の方からはすり抜けた様に見えていたので、恭也が評価する『化け物』と言うのは間違いではないのだと和也は確信する。

 

 

「後ろか、ならっ――――――ッ!?」

 

「まだまだ元気だな、オラオラ、早くしねえと時間が――――――お?」

 

 

風船が割れる音が響き渡った。

後ろに居ると気づいた朝倉が、方向転換をして、転んだ。

それを気遣ってか、支えようと前に出た巻島の、風船が有るところに朝倉の手が丁度振れたために、この様な事になったのであった。

 

 

『だ、第1組目のチームが見事に巻島館長の風船を割りました! 見て居た限りは偶然なのですが、運も実力の内と言う様に、突破です!!』

 

 

歓声が沸き起こる。

誰もが知る巻島十蔵を、学生と思わしきペアが攻略していったのだ、この番狂わせは後々挑戦するチームへの十分な勇気付けにもなるのであった。

 

 

「クックック。そうそう、運も実力の内ってね」

 

「和也、お前、何かやったのか?」

 

「何、お前の右手と、あの風船の運命が交わる様に結んだだけだ…………ほら、先刻手を動かしていただろう?」

 

「は、はぁ…………?」

 

 

朝倉達には縁結びの魔法については説明していないので全く伝わって居ないのだが、勝利者インタビューみたいなものが行われようとしていたため、他にもイベントは有るのだと、時間を取られない様に他のメンバーを連れて離れていくのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・

「しかし、クジ引き券って買い物をしても貰えるんだな」

 

「そりゃそうですよ。美春達が参加しているのは、あくまでもお祭りの一イベントですから。参加する気が無い人達や、人数から溢れてしまった人達もちゃんと最後のクジ引きくらい出来る様になっていますよ……何せメインイベントですし」

 

「それだ、何でクジがメインイベントに成るんだ。大体、商店街のイベントで、しかも子供の日のイベント何だろう? 所詮オモチャとか、お米券みたいな――――――」

 

「はい、これが目録です」

 

「………………………………あー?」

 

 

米20kg、業務用ヒーター、一泊二日の温泉旅行等が景品として書かれているのだが、その辺りはまだまだ序の口の様であった。

島外で行われる有名グループのコンサートプラチナチケットや、普通に買うのであれば目が飛び出るくらい高級な車などが書かれている。

 

 

「一体、何のツテがあってこんな無茶苦茶なのが用意できるんだ、此処の商店街」

 

「解りません…………が、此処は初音島の商店街ですから」

 

「う、うーむ…………」

 

 

きっと、前に読んだ風見学園の七不思議以上に不思議な所だと、考えないようにする。

そんな事を話しながら歩いていると、翠屋の看板が有るのであった。

 

 

「翠屋? 祭りの書き入れ時なのに、こっちに出してるのか?」

 

「お祭りだからですよ、こっちの商店街からはちょっと遠いですから、参加する事でお客さんを呼ぶって言う話です」

 

「…………にしても、バイト足りるのか? 手伝いに成りそうなの、君ら含めて4人ほど居ない訳だが」

 

「毎年の事ですから、臨時のバイトが入ってます。だから、桃子さんはこっちに来てると思いますよ」

 

「なら、顔を出してみるか」

 

 

此方に出店していると言う事は、きっとクジ引き券も貰えるのであろう。

更にイベントも行われていれば都合も良いと言う事で、翠屋と書かれている看板の所へと入っていく。

 

 

「お邪魔しまーす」

 

「あら、七瀬君。いらっしゃい、ウチのイベント、参加していく?」

 

「翠屋でも、イベントをやってるんですか?」

 

「ええ、男女ペアになって参加するタイプのイベントよ。朝倉君も参加するかしら?」

 

「えっ……と、音夢、どうする?」

 

「ま、先ずはお財布と相談ですね」

 

 

巻島との模擬選みたいな、金がかからないタイプのイベントなら当たって砕ける事も可能なのだが、此方は普通に一店舗が行っているタイプである。

思わぬ出費は避けたい音夢なのであった。

 

 

「美春は大丈夫ですよ!」

 

「うん、俺もだが……なら、取りあえずこのペアで参加を」

 

「は~い。じゃあ、美春ちゃん。ちょっと紙とペンを持って、絵を描いてね~」

 

「は、はい…………!」

 

 

急に渡されたので、戸惑う美春であったが、書かれている文を見たら俄然やる気になって居るのであった。

その間に和也は参加費を払い、桃子との話を続ける。

 

 

「美春は、何の絵を描いているんですか?」

 

「出来てからのお楽しみよ。こっちも準備が居るから、ちょっと時間かかるけどね」

 

「時間…………?」

 

「あ、桃子さん描きあがりました!!」

 

「はーい…………まあ、ちょっと大変そうだけど、男の子だもの。頑張ってね」

 

「はい?」

 

 

結局、完成した絵は見せて貰える事無く別の店員へと手渡しされていくのであった。

桃子もそうだが、受け取った店員も少しばかり苦笑いしているのは、美春の絵がアレだったのか、それとも何か別の要因があるのかと嫌な雰囲気を和也は感じ取る。

 

 

「美春、何の絵を描いてたんだ?」

 

「パフェの絵ですよ。美春だったらどんなのが食べたいかって言う奴でした」

 

「それは――――――」

 

「はーい。美春ちゃんが描いた絵に沿ったパフェが完成したわよー」

 

 

桃子が和也の言葉を遮る様に、パフェを運んでくる。

先ず一言目に感じたのは”でかい”であった。

ファミリーサイズであるらしい、そのファミリーが8人くらいで丁度よいサイズであるならば成程ファミリーサイズであろう。

美春の趣味全開のデザインにより、バナナが散りばめられている、のであれば微笑ましい者であろう、むしろソレはバナナを生クリーム等でコーティングした物である。

兎に角それは、巨大であった

 

 

「これを2人で食べろと言うのか。いや、バナナまみれだから美春に任せれば大体何とかなるな」

 

「ふふふ、そう言うと思ったわ。って言うか、コレにチャレンジするのって大体そう言う反応の子ばかりね……食べるのは七瀬君、貴方だけよ?」

 

「何……だと…………」

 

「み、美春は食べる事が出来ないんですか!!?」

 

「そう言うチャレンジだもの。今まで何人のお客さんが……と言うか、カップルが、彼氏さんの好みを当てれず、量を考えれずこのイベントに挑んで破れていったかが――――」

 

「(嗚呼…………見えるぞ、初めは楽しそうだったのに、気づけば険悪な雰囲気になっていくカップルが見えるぞ……!)」

 

 

何を思ってこんなイベントにしたのかと、目の前の縁切りパフェ(和也命名)を目の前にしながら遠い目に成る和也であった。

 

 

「それで、朝倉君達は、挑戦するかしら?」

 

「「止めておきます」」

 

 

死屍累々になるであろう和也を放置する訳にもいかないと、イベントへの挑戦を諦める2人なのであった。

 

 

 

 

・・・・・・・

「昼と……夜の境…………嗚呼……時は乱れ、果てより彼らが現れる…………バナナ、バナナだ…………世界を超えて…………もう食べられないよォ」

 

「もう、バナナをそんな風に悪く言わないで下さい!」

 

「………………美春、和也は食い切ったんだ。少し、少しだけで良いから休ませてやってやれ」

 

 

朝倉に担がれながら、和也はバナナに向けての呪詛らしきものを吐く。

それに美春が反応して怒って居るのだが、精神に異常をきたすほどバナナを食べ続けた和也の身にもなってやれよと朝倉は思うのであった。

そして、これほどベタな寝言を、これほど苦しそうに言っているのを聞いたのは誰もが初めてであろう。

 

 

「まあ、良いですけどね。美春も食べきれない量を、お兄ちゃんは食べていましたし」

 

「お前が食いきれん量とか次から人に食わせるの禁止な?」

 

「はーい……」

 

「まあ、和也は置いといて、次のイベントどうする。和也がコレだし、俺達だけでやるのが一番だろうが……?」

 

「そうですね。七瀬君を休ませる必要もありますし、何か適当に参加しましょうか」

 

 

そんな感じで話していると、目の前に現れたのは知り合いであった。

 

 

「うげっ、中央委員会……」

 

「ほう、朝倉純一。私に合うなりその物言い、また片割れ(杉並)と何かを企んでいるのか?」

 

「かったるい、最近俺は何もやってねえだろ。大体、未だに俺の事を監視しやがって……変な声も出るっつーの」

 

「いや、兄さん。それが前科って言う物ですから……私たちも、若林君達も、何も間違った事はしていないと思いますよ」

 

「先輩方、言い過ぎとちゃいます……?」

 

 

さり気無く蓮飛がフォローを入れるが効果は無さそうである。

と言うか、蓮飛と茫然自失している和也以外は生徒会、またはそれに類する学園機関の関係者なので、朝倉へのフォローなど出てこないのであった。

 

 

「で、お前らは何時もの面子連れて見回りか?」

 

「いや、流石に其処までやるほど暇ではない。暇そうだった連中を誘って祭に参加しているだけだ。そう言うお前たちは…………6人、成程な、参加者か」

 

「ああ、激戦だったよ」

 

「は、祭に飲まれてコレか。魔法使いと言えども所詮はこの程度か」

 

「少し黙ってろ頼経。お前が想像する以上の地獄を、コイツは一人で耐え抜いたんだ」

 

「(…………美春にとっては天国だったんですけどねぇ)」

 

 

一応、和也を誇っても良い朝倉であったのだが、未だに口からバナナ、バナナと呟き続ける和也に疲れてくるのであった。

 

 

「それで、お前らはどの程度クジ引き券を集めたんだ?」

 

「まだ我々全員が1回ずつ引ける回数は無いが、そんな所だな」

 

「何だ、俺達と似た様な物か。序に聞きたいが、コイツ休ませながら俺達でもクジ引き券をゲットできそうなイベント何か無いか?」

 

「それなら、我々と協力するか?」

 

「――――――若林、軽々しく協力と口に出すのはやめた方が良い。一度協力体制に入れば、俺達はお前らを容赦なく利用することに成る」

 

「そ、そうか」

 

 

雰囲気が完全に勝負師のソレになっている朝倉に、ちょっと引いて協力を諦める。

だが、その判断は間違って居なかった様で、露骨に朝倉の様に勝負師オーラをだしては居ないのだが、音夢達も似た様な雰囲気になっていたので、協力を決定しなくて良かったと思う輝也であった。

 

 

「だったら……水越総合病院のドクターがやってる救護センターだな。怪我人等が其処に担ぎ込まれるし、簡易人間ドックもやって居るし、検査を受ければクジ引き券も貰えるらしい」

 

「それは都合が良いな、案内してくれよ」

 

「解った。まあ、どうせ其処だが」

 

 

口頭で伝えても良いかと思う輝也であったが、どうせなら一緒に行ってクジ引き券を貰うのも悪くないと12人の大所帯になって歩いて行くのであった。

 

 

「ってか、近いのか?」

 

「近いぞ……ほら、入り口にナースが居るだろう」

 

「………………………………居るな」

「げ、あ、ああ、朝倉っ!? ってか音夢も!!」

 

「あら、団体さんが到着みたいですね」

 

 

眞子とその姉である萌が、ナースの服装をしながら立って居るのであった。

だからなのかは解らないが、救護センターの中は心なしか男性が多いような気がする。

 

 

「眞子……何でナース服を…………」

 

「う、煩いわね! お父さんがコレ着ろって言うから仕方なく!」

 

「し、仕方なく着るの?」

 

「あああああ音夢も煩ぁい!? アンタいつか同じ目に合わせるから覚えてなさいよ!」

 

「眞子ちゃん? それより案内をしませんと」

 

 

知り合いに見つかる事、序にからかわれる事を恐れていた眞子であったが、見つかってしまったからにはもう自棄になって朝倉達の案内をしている。

逆に、慣れているのかナース服が恥ずかしくないのか普通に案内をしてくれるのであった。

 

 

「ったく、後輩ちゃん達は兎も角、殺しても死にそうにない程に健康な連中が此処に来るのかしら…………」

 

「いや眞子、一応音夢は病弱だからな? すぐ熱出すから世話が大変だし」

 

「に、兄さん! 余りペラペラと内情を離さないで下さい! と言いますか、私は兄さんに其処まで世話になって居ません! あと一応ってなんですか!?」

 

「あー、解った解った。それより今は和也だな……休ませる所無いか?」

 

 

顔を真っ赤にして反論してくる音夢を適当にあしらい、担いでる和也を見せる。

流石に、何事かと眞子たちも驚くのであった。

 

 

「七瀬!? ちょ、コレ大丈夫なの?」

 

「寝てるだけだ。寝る前に本人が『エネルギー過多になりかねんから適当に発散する、ではお休み』とか言って寝たんだよ。まあ、バナナに関する呪詛みたいなのを吐きまくってるが」

 

「呪詛ってアンタ……まあ、放って置けば起きるのね?」

 

「らしい」

 

「じゃあ、適当にこの辺に転がしておきなさいよ…………アンタ達は、ウチのイベントに参加していくのよね?」

 

「おう。まあ、健康だから大丈夫だろうけどな」

 

「何言ってるのよ、頭……は、ウチじゃちょっと無理か」

 

「何おぅ!?」

 

 

確かに、杉並とつるめる程度には頭の構造がどうかしていると、改めて皆は思うのであった。

 

 

 

 

・・・・・・

「――――――――俺は、二度と、アレは、喰わんぞ!」

 

 

悪夢からの覚醒は、全力で意思表明をする所から始まった。

和也の看病をしていた榊が、何事かと驚いている。

 

 

「あー…………元気そうだね?」

 

「榊先生……? 此処は?」

 

「ああ、説明をしよう」

 

 

食べきってからどうなったか、榊が聞いた話を和也に伝えていく。

成程と納得し、結構寝ていたのだなと礼を言おうとして立ち上がったところで異変に気付く。

所々で悲鳴に近い呻き声が上がっているのだ。

 

 

「…………榊先生、この声は何でしょう。いえ、声の音的には朝倉だと解るのですが」

 

「今、フィリス先生達による、整体を受けているんだ」

 

 

何でも、最近の若い子供達は体が歪んでいると言う事で、人間ドックの結果に関わらずに歪んでいる体は、有志の整体師達が片っ端から正しているそうである。

付け加えるなら、水越総合病院の整形外科も加わって検査をしているのだから、力の入れようが解る。

 

 

「それはご愁傷様と言うかなんというか」

 

「整体が終わった子達は、随時隣の部屋に並べられてるから、知り合いが居るかも知れないよ」

 

 

まるで死体を安置しているかのような言い様である。

確かに、調子が良く成るとは言え全身の歪みを直されるのは少しばかり辛いだろう。

尤も其れほどまでに体が歪む生活をしている方も問題であるが。

取りあえず、榊が言うとおりに誰か転がされていないか隣の部屋を覗いて見るのであった。

 

 

「おおおおおおお………………」

 

「………………八重さん。おいたわしい姿に……なって」

 

 

知り合いは、居た。

七瀬八重が、仰向けに寝転がりながら、何ともいえない表情で呻き続けている。

 

 

「…………ってか、コレ本当に治療が行われたのか? 俺には戦争の後遺症で廃人になった兵士にか見えんのだが」

 

「和やん、言いたい事はよー解る。せやけど、これは治療後の姿や……」

 

「八重ちゃん、初老ボディじゃけぇ」

 

「……………………そうか」

 

 

曰く、プールに入った後の筋肉痛が4~5日程度続く体であるらしい。

最早それは虚弱児であろうと、和也も失礼な事を思うのであった。

 

 

「で、七瀬も整体を受けてきたの?」

 

「いや、俺はちょっと胃と精神に来るバナナ地獄を味わってな。魔力を発散する為にも自動で何か占う様に設定して寝てた」

 

「はー、魔法使いってそんな事も出来るんやねー」

 

「いや、バナナとか訳解らない方に突っ込みなさいよ」

 

 

そう言えば、バナナの事については説明が必要だと、かくかくしかじかと説明を行う。

――――勿論、微妙な顔をされた。

 

 

「で、そろそろ朝倉とかが此処にぶち込まれる筈だから、それを回収して次のイベントに行こうかと思ってるんだ」

 

「ああ、聞こえとるねー。朝倉の悲痛な叫び声が」

 

「…………仕方ないわね、アイツ、どう考えても健康な生活は送って無さそうだし」

 

「潦、言ってやるな。音夢(いもうと)と二人暮らしだぞ、しかも音夢の方は料理が壊滅的と来た…………店屋物の生活しかあるまいて」

 

「――――――あれ、朝倉さんって、料理できなかったんですか?」

 

「八重ちゃんが正気に戻ったで!」

 

「料理…………その発想は無かったわ。私たちもてんで駄目だもの」

 

 

寧ろ、料理の話題程度で起きるものなのかと、不思議に思う和也であった。

 

 

「私のイメージとしては、附属における風紀委員のトップである朝倉さんは、料理も出来ていそうなのですが…………」

 

「ふは、無い無い。大体、アレは猫被ってるだけなのは良く解るだろう。時々朝倉……純一の方に対して、本心を――――――――」

 

「――――――――あら、七瀬君。私が、兄さんに、本心を、なんですか?」

 

「……………………そーだよなー。もうすぐ朝倉とかぶち込まれるって言ったの、俺だよなあー。いやー、参った参ったー」

 

 

その朝倉(純一)が来るなら勿論朝倉(音夢)も来るわけで。

時々純一に見せている通称『裏音夢』モードで和也の前に立っているのであった。

何気に、声色は普通なので、八重たちから見えない様にしていれば、普通の音夢にしか思えないと言う完璧さである。

 

 

「朝倉さん、料理苦手なんですか?」

 

「うっ…………………………実は、得意ではないんです」

 

「(…………何が得意じゃないだ。見た目は普通だけど、殺し屋が我先にって注文しにくるレベルだろアレ)」

 

「――――――――兄さん、今何か言いましたか?」

 

「ッ……言ってねえ!? 流石に何も言ってねえだろ俺!!?」

 

 

心が読めるのか、はたまた表情、雰囲気から読み取ったのか、裏音夢モードで朝倉に接する。

だが、八重の方の質問に答える必要もあるので、あまり純一を脅してはいれない音夢なのであった。

 

 

「――――では、一緒に作りませんか? 一人教えるのも、四人教えるのも、何ら変わりありませんし?」

 

「とても有難いお話ですけど、四人……?」

 

「あー…………」

 

 

急に三人増えて解らない音夢であったが、和也には察しがつくのであった。

何せ、居候2人(真紀子、多汰美)に加え、友人(潦)が思い切り顔を背けて居たのだから。

 

 

「先輩、音夢先輩に料理を教えるのは大変ですよ。時々――――むぐぅ」

 

「美春、黙った居た方が良いぞ…………」

 

 

波風立てる必要は無い。

美春の口をそっと塞ぎ、穏便に済む様にするのであった。

結局、料理下手(仲間)は多くいた方が良いと言う八重に習っている3人の要望もあり、機をみて少しずつやっていくと言う話にまとまった。

 

 

「所で、八重さんは何でこんなグロッキー状態になる事が解って居て、この出張診療所まで来たんだ?」

 

「あ……少し、足が痛くなってしまいまして」

 

「ああ、クックック。成程、はしゃぎ過ぎたと言う訳か。それで疲れて此処に立ち寄ってみれば、整体地獄で体が逆に大変な事になったと」

 

「い、いえ! 私、膝とか弱くて、何時もはこのサポーターが無いと長い事歩けないんですよ」

 

「――――――――――」

 

 

多少スカートをたくし上げて見せられた黒タイツが眩しい。

では無くて、それもあるのだが本当に同い年であるのかと思えるほど体が弱い目の前の少女に絶句する和也なのであった。

 

 

「そ、それは、お大事に」

 

 

そんなこんなを話していると、整体を受けてきた純一も回復してきたので、次のイベントへと向かう事にするのであった。

尚、八重たちは、と言うか八重がもう暫くゴロゴロして居たいとか言っていたので、追い出されるまで此処に居るのだろうなと皆で思うのであった。

 

 

 

 

・・・・・・

「――――――おお、アレ見てみろ、あんなに小さい子がフリースローを決めてるぞ」

 

「本当だな。しかも、外してねえな」

 

 

純一たちより頭一つは小さそうな子供が、イベントの一つであるフリースローに参加していた。

しかもシュートは一本も外して居ない。

何処かの少年団に所属しているかと思っている内に、全て成功させて終わってしまうのであった。

 

 

「みなみちゃん、相変わらずやるう!」

 

「あはは、有難う」

 

「――――――――って、あそこに居るの鷹城先生じゃないか」

 

「知り合いっぽいな。教え子……なのか?」

 

 

中等部教員の鷹城唯子と、バスケの少女が共に話をしていた。

どうやら顔見知りではあるようなのだが、誰も見た事は無いそうだ。

 

 

「せやったら、聞いてみればええんちゃいます?」

 

「そうだな、せんせー!」

 

「晶、それにレンちゃんも…………高町くんは居ないみたいだけど、イベントに参加してるの?」

 

「はいー。ウチらのお守は、朝倉先輩達がやってくれてますー」

 

「……………………朝倉君が?」

 

「鳳、其処は俺じゃなくて音夢とか和也とかって言えば、絶対に訝しまれなくて済む気がするんだが」

 

 

教え子を悪い道に引き込むつもりなら容赦はしないと、かつて風見学園護身道部の主将オーラを垣間見た朝倉であった。

 

 

「朝倉先輩、悪い人じゃないですよ」

 

「…………それまでの、素行が悪すぎるんですよ。兄さんは」

 

「俺は杉並に巻き込まれただけだってのに」

 

「まあ、良いです。風紀委員長さん達も居る事だし、純粋に楽しんでいるんだと思っておきましょう」

 

「クックック。日ごろの行いって大事だねぇ…………所で先生、そっちのちっさい娘とは、知り合いなんですか?」

 

「あう……ちっさい…………」

 

「おれと同じくらいの身長ですから、同級生くらいですかね? それとも、島外の人ですか?」

 

「同級……ううう」

 

「き、君たち。みなみちゃんが言われる度に傷付いてるから…………彼女は私の、風見学園時代の同級生よ」

 

 

主に和也が耳を疑った。

目の前の、身長が150cmくらいしか無い少女が、遙かに年上であるのは信じられ…………無い話でも無い。

これくらいの身長で年齢なら、良くある話だと朝倉達は思っている。

だから、主に和也が耳を疑うだけなのであった。

 

 

「なんでや、魔法使いやてへんんになんで人間は此処まで若い姿を保てるんや!?」

 

「お兄ちゃん、また京都弁になってますよ…………」

 

「なりもするわ!」

 

「わ、若く見られることは、良い事、だよね?」

 

「う、うーん…………子供に見られるのは、流石にどうかと思うけどね。所で、君達も、フリースローには挑戦するの? 小学生以下の男の以外は3ポイント距離からのシュートになるけど」

 

「……………………先刻の、プロじみた先輩の動きの後に、やれと言うんですか?」

 

「社会人バスケ所属よ。大阪親日生命って所のね」

 

「日本有数の女子社会人バスケチームじゃないですかやだー!?」

 

 

取りあえず、純一でも知って居るレベルで凄いチームであるらしい。

殆どプロだと言う呟きもあり、ますますやる気が削がれるのであった。

 

 

「じゃあ、こうしましょうか。風見学園に関係あるものとして……君たちに勝負を挑みます」

 

「――――――ルールは?」

 

 

一瞬にして純一が勝負師の目に変わる。

ほぼプロの後にプレイするのは気が引けていたんじゃないのかと思う和也であった。

 

 

「みなみちゃんが決めたのは10本。君たちは15本を6人で決めればいい……1人最低でも2回はシュートする事。だって、6人のチーム力を試す競技だしね。君たちが勝てば、私達の福引券をあげましょう、負ければ――――――」

 

「――――――良いんですね、先生? 勝負を挑むって意味、ちゃんと解ってますよね?」

 

「勿論。私だって風見っ子だもん」

 

 

教師と生徒の間に訳の分からない火花が散っている。

勝手にチーム全員のクジ引き券を対価に出してしまっているのだが、後ろで見ている友人らしき人物たちは笑っている。

まあつまり、こういった変な勝負事は風見学園では本当に日常なのであろうと、入学一カ月して気づく和也なのであった。

 

 

「じゃあ、この勝負受けるが……良いか?」

 

 

純一以下全員がやる気満々の目をしているので、もう既にチームの意向は決まったも同然であろう。

そうなって来ると、このノリにあまりついて来れそうにない和也がどうだと言う話であるのだが、既に準備運動を始めていた。

勝負事と言われれば、ワザと負ける程和也は性格は易しくなく、序にお祭り好きなのは他の連中と同じな様子であった。

 

 

「朝倉。お前が一番手だ、決めて来い」

 

「って俺かよ!?」

 

「ったりめーだ。勝てるかどうかも解らない勝負を勝手に受けやがって。此処でお前が後の流れを作らなければ、アイアンクローじゃ済まさねえぞ?」

 

「へいへい。かったるい」

 

 

そう言いながらシュートを2本とも外さずに決める。

ミスターかったるいと呼ばれながら、本気になった時は誰もが予想もつかない行動を起こす男の本領発揮であった。

 

 

「はい、終了っと」

 

「………………やるねぇ」

 

 

コイツ絶対に『運』を手にする力を持ってるだろうと、いつもの調子でシュートを決める朝倉に対して思う和也であった。

そして、続くのは蓮飛と晶である。

自由な位置でシュートなら何でもよいと言う女子向けのルールがあるので、難も無く2本とも成功させる。

続いて音夢も1本外し、1本入れると言う中々の結果である。

問題は、美春の時に起きた。

 

 

「あわわわ。どうしましょう、2本とも外してしまいました!」

 

「いや、大丈夫だ。和也が決める」

 

「任せておけ!」

 

 

そう言って和也の第一投である。

綺麗な円を描き、それはバスケットゴールの…………縁に当たり跳ね返るのであった。

 

 

「駄目じゃねえか!?」

 

「待て、慌てるな。まだ試合終了じゃない」

 

「いや、でも七瀬君。残り4本全部入れないと、勝ちには持って行けませんよ……? それどころか、もう1本外すと引き分けにしか持ち込めませんし」

 

 

余りにも自信満々であったので、誰もが和也がバスケ初心者だと言う事を失念していた。

シュートのシの字すら知らなかった者が、一発目で良くゴールの縁に当てる所まで出来たと思う所なのだろうが、諦めムードが漂い始めるのであった。

そんな中でも、和也は自信満々に言い放つ。

 

 

「――――――――朝倉。お前は日本人ならば、失敗は成功の基と言う言葉を知って居るな?」

 

「あ? あ、ああ」

 

「何、知って居るならそれで良い。次は失敗せんよ」

 

「いやお前、今の一本でソレの何を期待しろと…………」

 

「ま、見ていろ」

 

 

次はボールを持ち次第直ぐに投げる。

そして、入るのも確認せずに次々と投げていくのであった。

 

 

「ボールが殆ど……ううん。全く同じ軌道でゴールに!?」

 

「魔法使いが誇るのは成功へ向けての誤差修正の力。一度見る事が出来れば、理解・成功へ向けての計算をやってのける…………ふ、魔法使いに二度目の失敗は、殆どない!」

 

「そこは『無い』って言いきれよ…………だけど、まあ。俺達の、勝利だ!!」

 

 

バスケットをやっているみなみだけが解る異常な起動。

和也が自慢気に説明をしているが、朝倉は呆れるのであった。

そして気を取り直し6人全員でハイタッチをする。

其れを見ていた唯子達は、悔しそうであったが、楽しそうでもあった。

 

 

「あーあ。まさか負けるとはねー」

 

「いやいや、1人の記録に、こっちは6人がかりでギリギリですよ。先生?」

 

「喧嘩(しょうぶ)を吹っかけたのがコッチなら、ルールも決めたのもコッチ。それで文句を言ったんじゃ、風見っ子以前に、大人としてどうかしてるって、転入生君」

 

 

そう言って唯子は和也に引換券を渡す。

何かを賭けて本気で戦う事、それが風見学園伝統の勝負であり、そして勝利を噛みしめる事が出来たと和也は貰ったクジ引き券を見て――――――

 

 

「量少なっ!!?」

 

 

――――――叫ぶのであった。

 

 

「え? だって先刻手に入った奴で全部だし」

 

「朝倉…………もっと、駆け引きしてからこういう勝負受けような?」

 

「スマン」

 

 

純一も、まさか此処までチケット数に差があるとは思っても居なかった様である。

勝っても負けても割に合わない勝負であったのだと、全員が冷や汗を流すのであった。

 

 

『はい、良い勝負でしたー!』

 

「あ、司会の人だ」

 

『いやー、久々に見ましたよ。風見学園のバトル! こう言った競争が見れるのは全国でも数少ないですからねー!』

 

「…………全国にこんなバトルある学校がある事自体驚きだよ」

 

『なーんか冷静にツッコミを入れてきてますが、有るんですよ後輩君。後、先刻巻島先生の時に出来なかったヒーローインタビューも序にやって良いですか?』

 

「先輩だったんですか。面倒臭いんで逃げて良いですか?」

 

 

やっぱり面倒臭そうに逃げようとするが、同じ轍を踏まない様にと後ろに回り込まれているのであった。

 

 

「あれー。朝倉、おかしいな。俺この先輩にすり抜けられた感覚なんだが」

 

「一応、お前の横をすり抜けていくのは見えたぞ。恐ろしく早かったが」

 

「その娘、私の代の一個下の子よ。一年の時、次期エースとか呼ばれてた娘なんだから」

 

「……………………ああ、うん。恭也のご同類か」

 

『井上ななかでっす! 今初音島のテレビ局でディレクター兼マルチタレントをやってまっす! 知らない島外の人とかは、宜しくね!』

 

 

本人曰く、現役は退いていると言う事なのだが、それでも現役時代はどれほど凄まじかったのかが解るのであった。

結局、和也と純一は捕まり、今日一日の行動とかその他諸々のインタビューを受ける事に成るのであった。

 

 

 

 

・・・・・・

「…………時間の許す限り、インタビューされたな」

 

「だな。もう日が傾いてやがる」

 

 

先輩や後輩に会えて嬉しかったのかは知らないが、かなり長い時間話し続けているのであった。

解放されてみればもうイベントも終わりかけであり、仕方が無いのでクジ引きを行いに来ているのであった。

 

 

「それで7回か。中途半端になったなぁ」

 

「1人、余りますけど…………取りあえず全員1回引いてみます?」

 

「だな――――――――」

 

「お、大当たり! 大当たりです!」

 

「あ、何か先出された……って、八重さんだ」

 

 

大当たりとクジ引き担当の人が叫んでいる。

見ると、何故か八重が真っ白に燃え尽きながらクジを回しているのであった。

 

 

「…………なあ美春。八重さんを慰めれば、良いのか?」

 

「さ、さぁ……?」

 

 

何か大当たりだったのは解るのだが、何故燃え尽きているのかは解らない。

大型クーラーとか書かれているが、これから夏に向かうのであれば十分有用なものである筈なのだが…………

 

 

「あ…………七瀬、さん。また……会いましたね………………」

 

「あ、ああ。そ、その。八重さん、おめでとう?」

 

「ふ、ふふ…………有難う、ございます……」

 

「なあ、彼女に一体、何が……?」

 

「せやな、和也は知らんな。八重ちゃんはな、自分の成長を削って、当たりを引く能力を持ってるんや」

 

「あ?」

 

 

虚弱児ときて、何かまだ変な特技でもあるのかと思っていたら、更に変な能力(?)を伝えられるのであった。

 

 

「七瀬は、3回引いたんだけど……1回目にお米5kg、2回目に商店街のタダ券100枚つづりって引いて。そう言えばそろそろクーラーを新しいのに変えた方が良いんじゃないかって話になった途端にそのクーラーをゲットしたのよ」

 

「それで、こんな偶然あったもんじゃ無いと、3回目を引き終わった時に話し合った結果、八重ちゃんは成長を削って当たりを出す能力を持ってる言う話になったけえ」

 

「……………………何かの、呪いじゃ無いかよソレ」

 

 

コッチの世界では、突然変異で運命を自在に操作する能力者が出て来るんだなあとか、本気なのか冗談なのか解らないような事を考えながら、和也はクジ引きへと向かうのであった。

横を通り過ぎた時、身長や胸の事について真っ白に燃え尽きながら嘆いていた八重が居たが、忍なさ過ぎて声がかけれないのであった。

 

 

「さて、俺達の番だが。どうする、俺が100%当たる様に運命の女神にでも祈ろうか?」

 

「も、申し出はありがたいんですが。その、先刻のを見ると七瀬先輩が忍びなくて……」

 

「だろうな。俺も言ってみただけだ。じゃあ、朝倉、頼む」

 

「お、おう!」

 

 

純一が全力でクジが入っている抽選機を回している。

カラカラと言う音と共に飛び出したのは純白に輝く玉であった。

 

 

「で、出ましたー! ティッシュをどうぞー!」

 

「ま、こんなもんだろ……って、ボックスかよ!?」

 

「ええ、一応当たりですから」

 

 

五箱のボックスティッシュが二つ貰えるのであった。

当たりなのか外れなのか今一解らない皆であったが、蓮飛も晶も、続いてどんどん回していく。

 

 

「バナナ3ヶ月分に、飲食店50%OFFチケット50枚綴り…………」

 

「ひぃいいい、バナナだ、悪魔の植物が其処にある!!?」

 

「ちょ、ちょっと和也お兄ちゃん、何て事言うんですか!!?」

 

 

完全にトラウマになっている様である。

尚、このバナナは天枷研究所の要望で仕入れられたらしい。

美春にとっては大当たりなのだろうが、当てたのは残念ながら晶である。

 

 

「美春もバナナが欲しいですー! って、最新型のビデオカメラとかどうすれば良いんですか!!?」

 

「ちょ、ちょっと美春。そんな事言わないの、当たり何だから…………え、ええと、私は期限が次の日曜までの、桜パークチケット……ペア無料!?」

 

「オイアンタ等当てすぎだろう!!?」

 

 

純一を含めれば5人連続での景品が出ている。

景品以上にただのティッシュとかが多く入って居た筈なのにと、クジ引きの係は不思議がっているのであった。

 

 

「で、俺の番と……何か来い! お、おお。業務用オーブンレンジ! スチーム仕様にも、遠赤外線の竈仕様にもなる優れもの! 素晴らしい……って置く場所あるかボケェ!!?」

 

「今引いた6人の中では、一番ニーズに合った物が出た、んですけどね。七瀬先輩って、アパート住まいですから……本当に置く場所が………………」

 

「い、いや。置けん事は無い。これでも魔法使いだ、空間拡張くらい出来る……ただ、個人の部屋に其処までやる必要あるのかってレベルだが」

 

 

店としては大きい部類に入る翠屋に設置しても場所を取る代物である。

性能としては非常に優秀なだけに、使いたい気持ちもある和也であった。

 

 

「ま、まあいい。最後に1回誰が引く。当たりが出なかった奴が引けばいいとは思ったが、全員当てたしな…………やっぱ、ティッシュの朝倉か?」

 

「…………良いのか?」

 

「流石に、ティッシュは外れだろ」

 

「……………………そうだよな」

 

 

全員が全員碌でも無い物を当てた為に、インパクトも何も無いと皆がティッシュを当てた純一に対して最後のクジを引かせるのであった。

一回目も全力なら、二回目も全力で抽選機を回す。

そして出てきたのは再び純白の玉であった。

 

 

「また、ティッシュ……だと!?」

 

「い、いえ。これは…………お米です。ほら、コレ、米って書き込んでありますから」

 

「米か、ま、まあ、こういうイベントでは良くある話だよな。先刻八重も当ててたし」

 

「はい、ではおめでとうございます! 米一俵です!」

 

 

イメージ画像として、実物の写真が渡される。

其処には確かに米俵が写っているのであった。

 

 

「…………米、俵? 米袋じゃなくて、俵?」

 

「はい、確りと米俵です」

 

「お米券での、交換ですよね?」

 

「いいえ、米俵です」

 

「…………和也、米俵って何キロだ?」

 

「一石、つまり60kgじゃないか?」

 

「……………………ウチ、料理滅多にしないのにか?」

 

 

2人家族で60kgならば、まあ一年もつレベルであろう。

それが、朝倉家となってくると、話は別であるが。

兎に角、全員が全員、使い道が殆ど無さそうな物を当てる結果になった。

 

 

「し、品物交換ターイムッ!!」

 

 

取りあえず、場所を移し当てた物を置き、和也が叫ぶのであった。

自分にとって要らない物は、他人にとって必要なものかもしれない。

最後の最後まで、絆が試されるイベントに成るのであった。

 

 

「美春は、美春は! 美春はビデオカメラを出します! お願いです晶さん! 美春にバナナを、バナナを下さい!」

 

「い、いや、俺もビデオカメラは……ちょっと」

 

「蓮飛。米と、その食事券を交換でどうだ?」

 

「おー、ええですねー」

 

 

あっさりと決まる者や、粘り強く交渉する物が居るのであった。

晶としても、バナナは美春に渡したいのだが、流石にビデオカメラは使い道が無いと思ってしまう。

バナナに関しては我関せずを貫こうかと思っていたようだが、流石に可哀想だと思ったのか、和也が助け船をだした。

 

 

「晶、俺のオーブンレンジとバ…………バナナを交換どうだ?」

 

「え゛……七瀬先輩、良いんですか? ああいや、俺としてもそのオーブンは使ってみたい代物ですけど、良く考えれば高町家(ウチ)にも置く場所が…………」

 

「その辺は、神界魔界の工作部隊に俺が頼んで台所の拡張を頼んでおくよ、今日中に完了するようにな…………まあ、美春の為って事で」

 

「で、では、和也お兄ちゃん。美春の、美春のビデオカメラと、バナナを交換して頂けるんですね!?」

 

「それで、美春が喜ぶならな」

 

 

和也が一番要らない物を手にして、交換会は終わろうとしていた。

だが、それに音夢が異議を唱えるのであった。

 

 

「ま、待ってください。今思い出したんですけど、私は今週末の土日は用事があるんです!」

 

「んー? なら、換金でもすれば良いんじゃないか?」

 

「いえ、ですからコレは七瀬君に渡します。明らかに、割に合わない交換でしょうし。換金が必要になったら七瀬君が使っておくべきですよ」

 

「そう、だな。貰っても行く相手の当てがな、売るしかないのは男として何かちょっと悔しいああ、美春。土曜にでも行くか?」

 

「ふぁい? 別に美春は用事も無いので構いませんが………………」

 

「こ、コイツ。急にデートの約束をかましやがった!?」

 

「デートて、遊びに行くだけだろ……美春的には、デートなのか?」

 

「えええ、美春に聞くんですか!!?」

 

 

和也としては、デートのつもりは無さそうであった。

美春にしてみれば、雰囲気等があればデートっぽくも思えるし、誘われた感じであれば只遊びに行くだけと言う感じであった。

その他の人物からしてみれば、何か急にデートに誘ったと感じたのだが、その後にビデオカメラを構えて『一杯写真を撮ろうなー』とか言って居る様は親子か何かを思わせる雰囲気なので頭が痛くなってくるのであった。




用語集!!

初音島商店街祭
今回のイベントの正式名称……かな?
海鳴横断ハイパー・クイズでPONからクイズを抜いた感じ。

風見学園名物のバトル
ほら、リトバスで似た様な事やってただろ、勝負でグラウンド奪い取ったアレだよ!
やってる事は本当コレと同じ、食戟のソーマにおける食戟とも言える。

城島晶
とらハ3のヒロイン。
個人ルートではちゃんと女の子らしくなるよ!
通称おサル。
選択肢次第で猿おとしと言う技を恭也から喰らう。
逆に、別のルートでは恭也の怪我してる方の足を蹴りぬくと言うどっちもどっちな事をやる。


鳳蓮飛
とらハ3のヒロイン。
多分、原作における攻略対象の中では最年少、ってかヤバイ年齢じゃないかな。


巻島十蔵
厄介なオッサン。
恭也への挨拶が殺す気で打ってくる一撃。
この人もまた、化け物であろう。

「見なかった事にしよう」
「見られなかった事にしよう」
デキルワキャネーダロォー!(子安感)
師曰く、の師はまだ本編に出てきていないのです。

予言(?)
半分以上バナナに侵略された謎の予言。

水越萌
D.C.初代のヒロイン。
眠りながら歩く事も、楽器も弾く事も出来る。
風見学園七不思議のひとつとなっている。

初老ボディ
多分、日常ギャグ漫画だから許される表現だよ。
前、毒があるかもしれないと言った理由。

岡本みなみ
とらハ2のヒロイン。
嘗て(2の時代に)150cmのエースと呼ばれて居た少女。
人外揃いのとらハシリーズで、彼女は普通のスポーツ少女では無い。
大人四人がかりで持つピアノを一人で運べる怪力の持ち主。
でも一般人ですよ、ええ。
尚、経歴は作品が出るたびに微妙に変わるとらハシリーズなので。
取りあえず、海鳴大(この作品で言う風見学園大学部)卒業後、大阪親日生命女子バスケットボールで活躍と言う経緯で一つ。

鷹城唯子
とらハ初代の……メインヒロイン?
と言うのも、もう一人野々村小鳥と言うのが居てだな。
初期のコンセプトは三角関係だったらしいのよね、だからタイトルは名残としてとらいあんぐるハートって言う?
メインヒロインなのかなぁ?
取りあえず、続編含めて殆ど出てきてるしね。
今はとらハ3の設定出てきてるから風見学園の教師。
初代では独特過ぎた喋り方もなりを潜めています。
今回のイベントでは、名前こそ出てきていないものの、相川真一郎、野々村小鳥、千堂瞳、御剣いずみ、そして岡本みなみを含めた6人チームで参加中と言う設定。
キャラが解らん? 原作をやれ。
尚、検索してはいけない言葉に『壁に咲く薔薇』と言う物がある。
当時の、リリカルなのはのストーリー担当者の方向性が解るが、まあ自己責任でお願いします。

失敗は成功の基
偶には、和也だってドヤ顔しながら活躍したいよね。

七瀬八重の特殊能力?
この娘本当に解らない能力持っている。






やっと22話かけた。
デートイベントとか起こさないと、何のための小説だよって話になるからねぇ。
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