「山突き!」
顔面と鳩尾を同時突きにて攻撃する。
しかし和也の両手にそれぞれが受け取られる。
「カウ・ロイ!」
そのまま手を滑らせ和也の首に回し、
と、同時に膝蹴りを顔面へと放つのだが、これも和也の空いている両手が膝を抑え込む。
「う、烏牛擺頭!」
「…………拙いなコレ」
右手が足を持ち上げ、膝の関節を狙いながらも胸部へと頭突きをしてくる。
本来はカウンター技に近いので、自ら足を取りに行った所で其処までの威力を出さないと兼一も理解している。
和也は障壁を胸と膝に展開しながら技を受ける。
しかしそれが間違いであったと気づき呟いた和也に対し、何が拙いのかは解らない兼一であったが、確かに前の二つとは何か感触が違うと思いながら技を最終へと移行させる。
「朽木……倒し!!」
「――――――――ぐふっ」
そして持った足をそのまま持ち上げ、和也を後ろへと倒すのであった。
倒された和也は当然後頭部から道場の床へと叩きつけられるのであった。
「って、七瀬さん、大丈夫ですか!?」
「あー、ビックリした。いや、大丈夫だ、受け身こそしてないが障壁がダメージとかは防いでくれたからな」
「良かった……怪我をさせてしまったかと」
「まあ、即死じゃ無けりゃ何度でも治るから気にするな。それより、面白いな、今の最強コンボって奴」
兼一のオリジナル技である。
梁山泊の師匠達から多くの技を習ってきている兼一だが、その技を組み合わせることによって正に
「え、ええ。師匠達の(地獄の)修行がこの技を…………」
「クックック。それは重畳」
「でも、七瀬さん、何で朽木倒しを喰らったんですか?」
「実際には、朽木倒しからでは無く烏牛擺頭から喰らっていた。それまでの技2つは確りと防いだが――――――」
「その魔法障壁とやら、捕まれる分には殆ど効果を為さないようだね?」
「岬越寺さん…………はい、その通りです」
高町家の方へ挨拶をしていた秋雨が、恭也と共に立って居た。
序にルシアンも付き合っていた美由希の鍛錬から帰って来たようで、タオルで汗を拭っている。
そしてどうやら、皆が兼一との組み手を見ていた様で、和也の改善点を指摘してくるのであった。
「七瀬さん……って言うか、魔法使いの方って結構不思議な強さなんですね。昨日みたいに達人級の方を楽々倒したりするのに、僕の投げをそのまま受けたり」
「クックック、仕方ないだろう。魔法障壁ってのは衝撃を防ぐモノだ、限界まで近づかれてからの攻撃は威力が無いのが基本だからな…………だから、関節技や直接内臓に響くような技とかは辛いみたいだ」
「七瀬君の世界では、武術は其処まで発達しなかったのかね?」
「対人としての武術は全然ですね。主に魔物に向けて行う事が殆どですから…………時々、賊とか犯罪者とか、そう言うのが出ますけど、火力で抑え込めば良いだけですし」
魔物とかが魔法を使ってくることはあっても、関節技を決めて来ることは無いし、内臓を直接破壊してくるような武術的な要素は無い。
つまり、魔法使いは極め技に弱いと言う何とも変な事実が浮かび上がってくる。
「いやあ、人間舐めてましたよ。気も魔法も十分じゃ無いとか聞いてたので、燃やしたり凍らせたりで簡単に障害は排除出来るものだと思ってたんですけどね」
「はっはっは。人間はそう言った面では弱いけど、だから補おうと技を磨いたり、科学を進歩させたりする生物と言う事だね」
「ええ、昨日は良い学習の機会でしたよ…………これは、本格的な修行が必要かね」
「――――――――驚いた。あれほど今のままで良いとか言ってた和也から修行の二文字がでるなんて」
「クックック、言うなルシアン。俺としてもこんなのは不本意だ……だが、どうもこっちの世界はキナ臭い。まったりと平穏に過ごすには、それだけの力が必要になるらしい」
茶を啜って桜見ながら猫をゴロゴロする生活に、其処まで力は要らないだろうとルシアンは思うのであった。
「まあ、その辺りは師匠とか母さん辺りに聞いてみるさ。それで兼一、体は温まったのか?」
「えっとー……はい………………中々に温まりましたけど……?」
「……? 随分と歯切れが悪いな。まあ、岬越寺さんに交代するぞ?」
「はい…………」
折角の休みだと言うのに、休みが休みになっていない兼一であった。
何時もの事だろうと言われれば、黙って頷くしかないのだが。
「兼一君、今日は修行用の道具を持ってきてないから、何時もよりは簡単な修行になるよ」
「そ、そうなんですか!?」
「うんうん。じゃあ、軽く全員と組み手を数回行ってみようか」
「――――――師匠信じた僕が馬鹿でしたぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
この後、(兼一にとって)地獄の修行は結局行われた様である。
そして何より兼一にとって大変であった事は、赤星が遊びに着たり、レンや晶も道場に来た事であろう。
・・・・・・
「あ、七瀬君、お客さんが来てるわよ?」
「…………俺に、ですか?」
「ええ。七瀬君を訪ねて来たって、言ってたわよ」
兼一がそろそろ本気でぶっ倒れたために休憩していた所に、桃子が和也を呼びに来た。
此処は場所も変わらず高町家であると言うのに、何故和也に客が来るのか不思議であった。
そして、実際に会いに行ってみた先には、ちゃんと見知った顔が居たのであった。
「貴方でしたか、バークさん。と言いますか、良く俺が此処に居ると解りましたね」
「ええ。あまり人間界に長居をする暇は有りません。七瀬様の居場所を探る為にも、魔界の工作部隊を投入いたしました」
「………………そうですか」
バークは魔王の屋敷の留守を任されている優秀な執事である。
そんな優秀な執事がなぜこの場に居るかと言うと、当然フォーベシィの命令で人間界へと足を運んでいるのだ。
尤も、最優先は屋敷の留守を守る事らしいのか、ちょっと無茶苦茶な方法で命令遂行を行っている様だ。
「ま、まあ、態々有難う御座います。コレが例の赤羽刀です」
「コレが…………只の鉄の塊では無いですか。こんな物を、坊っちゃんの宝物庫に?」
口には出してはいないが、目と声色で和也を非難している。
明らかに魔術的には全く価値も無さそうな刀を手渡されて、王家の宝物庫へ入れろと言うのは、王家の品格にすら関わってくる。
例えそれが、既に決定された事であるとは言っても、決定された事であるからこそ今一度の考え直しを、ともバークは思っている様だ。
「俺も考えた時は、些か冗談が過ぎるかとかと思ったんですけど。昨日でその考えは改めました。それは、持ち手の技量によっては危険極まりないモノに成るんです」
「………………魔法使いが、七瀬様達が杖を構えた時の様に、ですか?」
「俺が杖を構えると、そんな危険ですかね? まあ、置いといて。想像できますか、斬撃や衝撃が魔法障壁を超えて飛んで来る事が。技術に、質の良い武器が加わればこの上ない威力に成るんですよ」
「それはまた…………成程。解りました、この刀は何方の手にも渡さぬよう、確りと宝物庫に居れ管理をさせて頂きます」
「ええ。お願いします」
そう言って、バークは走って消えていくのであった。
きっと屋敷が心配でならないのだろうと、間接的にとは言え呼び出したことに成る和也も心苦しいのであった。
「………………七瀬さん。先刻の方に、赤羽刀を渡したんですか?」
「ん……白浜か。まあ、知り合い連中の中では、一番権力と金を持ってるからな。俺が、俺達が魔法界へとアレを持っていって封印するより、よっぽど事は楽に運ぶ」
「はは、それが昨日言ってたお偉いさんですか? 一体どんな人なんです」
「魔王殿下だ」
「……………………はい?」
「魔王殿下だと言ったんだ。神王、魔王の両王と言うはた迷惑なオッサン共の片割れだ」
「な、七瀬さん、そんな人と知り合いだったんですか?」
「幸か不幸かな。いや、絶対不幸だな。国外へ関わる事を禁ずる不文律を破られ、在りし日に抱いた希望を………………何でも無い。とにかく、あのオッサン共の所為で、交わる必要のない縁が交わったと言うだけだ」
溜息をつきながら話す和也に、偉い人との付き合いは色々とあるのだろうなと少しばかり間違った方向で解釈している兼一の姿があるのであった。
「所で、修行はどうしたんだお前?」
「あ、七瀬さんを呼びに来たんですよ。もう一度、防御障壁を見せてほしいって岬越寺師匠が言ってまして」
「……………………止めて欲しいねぇ。どうせ、お前との組み手でやるんだろう? 先刻障壁ぶち破られたからなぁ」
「な、七瀬さんちゃんと防いだじゃないですか!」
そんな事を話しながら、再び道場へと戻っていく2人なのであった。
・・・・・・
「何だろうなぁ……白浜の奴、疲れて来るとやけに良い動きするんだよな」
「……………………違和感はそれか」
現在和也が杖を持って兼一に殴りかかっていると言う、傍目からすれば苛めにしか見えないような修行方法が秋雨より提案されて、実際に行われている。
始めは頭を叩かれていた兼一であったが、ルシアンが言った様に疲れ始めた時から避けの制度が上がってきているのであった。
「クックック、面白いなコレ。巻島館長が朝倉をすり抜ける様に動いた時と似ている」
「…………あの人は、一般人相手に何をやっているんだ」
「怒るな怒るな、祭の一興だ。まあ、あのイベント何人がクリアできたかは解らんが」
ほんの数日前に見た動きとよく似ていると言う事で、和也もかなりテンションが高く、そして当てようとしているのであった。
「にしても、当たらんなコレ」
「……………………流水制空圏と言う技です」
「面白い、避ける事に全力を尽くす技なのか?」
「いえ、最終的には相手の動きを思うままにコントロールできるようになる技らしいですが、まだ僕にはちょっと無理です」
「読心術か。成程、相手の動きや、やりたい事が解れば、確かに一手一手をすべて潰して、思うが儘にコントロールさせる事も出来るな」
「そんな風に言われれば、似ていますね……でも、違いますよ、魔法じゃありません。教えてくれた人が言うには、相手を思いやり、相手を知る事で自分が相手ならどの様に動くかを考える事が出来るって言う技らしいですから」
対戦中に相手のことを思いやる、それがどれほど難しい事なのかは、此処に居る皆がやったことが無いので解らない。
だが、それが出来るのであれば、もう相手になる者は居ないのではないかと言う技であった。
「……………………所で七瀬さん」
「うん?」
確かに、人の気持ちが解るならば、強いのであろう。
だが兼一は未熟であった。
この時の和也達は知る由もないが、人の
「一見、飄々としているように見えて、その心の奥底では喪失を恐れているみたいですね。それも何かではなく――――――」
「クッ……クックック。お前、進路相談を行う教師に向いてるんじゃ無いか?」
「痛ぁ!?」
兼一は杖で思い切り薙ぎ払われていた。
どうして技を破られたのかは解らないが、取りあえず杖の素材が木で出来ていて助かったと感じている兼一であった。
「集中が乱れると普通に当たるようになるのか」
「い、いえ、七瀬さんが先に制空圏をぶち抜いたから集中が切れたんです」
「兼一が、俺の考えを読めなかっただけだろ。相手の気持ちに成って考えるなんて、言うは易しの大技だ。どいつもこいつも理解するなんて、無理だろ」
「………………何か釈然としませんね。七瀬さんの考えが、完全に解らなくなった訳ではないのですけど」
「人間、誰しも理解出来なくなることがある。相手の全てを見抜ける力をもってるなら、先ずは相手に動揺しなくなる事が最優先だな……まあ、俺は人間じゃないが」
相手が理解及ばない状態になると、途端に脆く崩れるのは、
「心を無くせって事ですか?」
「Noだ、その心で相手を理解してるのに、心を拒絶してどうする。器をデカく、広く、相手の気持ちが零れない様に受け止めるんだよ」
「……………………成程」
活人拳にしか使う事が出来ない極みの技だと教えられたのは、そう言う意味が込められていたのだと兼一は理解する。
自分で気づくことが一番だったのであろうが、それでも変な道に進むことは無いだろうと兼一はやる気をさらに出すのであった。
「おっ、良いね良いね。その眼、また全員と組み手か?」
「あっ、いえっ、それは!!?」
「は、何てな。冗談だ、俺はこの辺りで止めておくよ」
「ほっ………………では七瀬さんは、終わりですか?」
「ああ。明日の為に体を休めておきたいからな」
「明日の……明日、何かあるんですか?」
「デートだ」
和也の言葉に、道場内に居た人物ほぼ全てが固まる。
ルシアンに至っては、先に恋人を作られたのだと絶望に打ちひしがれてすら居る。
「な、七瀬さん、彼女さん居たんですか!?」
「いや、何か、遊園地のペアチケット貰ってな。明日、美春……幼馴染(?)を誘ってみたらいける事になったんだ。個人的には遊びに行く感覚なんだが」
「――――――デート、ですね!」
「らしいな!」
「ああ。何だ、美春ちゃんとか。彼女作らないのにデートとか、死ねば良いのに」
「煩いぞルシアン!? お前一回『同族との間に子供が作れなくなる呪い』と『寿命が二年程度になる呪い』でもかけてやろうか!!?」
「おい後の呪い何だよ!?」
「呪ってる本人を生きてる間に倒せなくするためだよバーカバーカ!」
「かけられる前に殺す…………!」
魔法有りの取っ組み合いの喧嘩が勃発するのであった。
一応、迷惑が掛からない様に人も物も魔法を遮断する障壁を展開させているあたり、本気で喧嘩している訳では無いのだろう。
「あわわわ、危ないですよお二人とも!? し、師匠! 止めてくださいよ~~~!」
「ふむ。いつの世も、傾国の美女は存在するのだねぇ~」
疲れてじゃれ合うのを止めるまで、秋雨は手を出すことなく笑っているのであった。
用語集
最強コンボ
白浜兼一が誇る必殺技(死なないけど)の一つ。
顔への一撃を囮として腹へと一撃を喰らわせる。
で、頭の方に行ってる手でつかんで首へと膝蹴り。
此処までやると大体バランスが崩れるので足持って胸へと頭突き、もう苦しいってレベルじゃないよね。
止めとばかりに後ろへとひっくり返して後頭部強打の流れとなる…………
これ、兼一の手加減に関わらず大怪我じゃ済まない技な気がする。
バーク
Shuffleシリーズのサブキャラ。
CV勇者王
ホモォ……
流水制空圏
番外編の方で先出しちゃったけど、まあアレは多分別物。
読心術とか和也さん言ってるけど、本当に兼一は感情を読み取ってるから割と外れてないと思うんだよねコレ。
目を見ただけで相手の悩みを看破されたら、本当に恐ろしい技と言うかなんというか。
同族との間に(略)の呪い二つ。
俺の死を 悲しむ暇があるなら 一歩でも 前へ向け (略)
傾国の美女
CV若本、ブルァァァァァァア!!