あちらの方のシリアス度に耐え切れなくて、ギャグ成分方の物語を執筆したくなりました。後悔はしていません。
今回は色々と説明のようなもので文字数がかさんでしまい、1万を超えてしまったのですが普段は6千~7千くらいの文字数になると思います。
それでは、少女たちが紡ぐ物語をとくとご堪能下さい!
※誤字脱字がありましたら、感想欄でご指摘下さい。
過去や異変や自己紹介@ツチノコ可愛い
とある世界のとある島国、とある結界の中のとある少女たちが紡ぐは、とある一続きの日常的で非常識的な物語。
その紡がれた話の中で注目するのは、とある人間の姉妹二人。
片や物語の主人公となる少女、片や物語には決して出てこないはずの
正しく物語を紡ぐ少女と偽りの物語を紡ぐ少女は、不思議と融和し共鳴しあう。
これは、人であることをやめた少女と、そんな生き方に憧れた少女の物語である……
◇ ◇ ◇ ◇
まだ太陽が完全には顔を出していない時間帯、朝日が差し込み始めた境内の中から普段聞き慣れない音が聞こえてくる。
なにか軽いものが地面に刺さるような音や、何かが爆発するような音。それに加えて、時折少女の気合のこもった声も。
「はぁぁ……!」
「……っふ!」
音の源に目を向ければ、そこには紅白に身を包み頭に大きなリボンをつけた少女と、黒白に身を包み頭に目元までかぶる帽子を乗せた少女とが、互いの肩を掴みながら全体重を掛けて相手を押し倒そうとしている。
二人の周囲には細い針のようなものや御札の切れ端、不自然に焦げた地面や割れた瓶の破片などが散乱している。
二人の力は拮抗しているのか、暫くは両者とも組み合った姿勢のままピクリとも動かなかっが、太陽が僅かにのぼり二人に日が差したのを合図にしたかのように、紅白の少女が動きを見せる。
「でぇ……りゃぁぁーーー!」
「…………?!」
気合一閃、組み合った状態のまま大きく地を蹴り、黒白の少女の肩を軸にして空中で一回転する。その勢いのまま後ろを取ると、背負投の要領で黒白の少女を大きく投げ飛ばした。
投げ飛ばされた黒白の少女は、なんとかバランスを取り戻そうと空中でジタバタと手足を動かすが、努力むなしく背中から勢い良く地面に打ち付けられた。
紅白の少女は袂から御札を取り出すと、それを構えながら起きる暇を与えずに突っ込もうとする。だが、それを見た黒白の少女が慌てた様子でストップを掛ける。
「ちょ、タンマタンマ! わかったぜ霊夢、私の負けだ!」
「……とかなんとか言って、この前は油断した私の事攻撃してきたわよね?」
「あ、あの時はその……だけどその後もうしないって約束したじゃないか!」
「そうね、あのあと私がボコボコにしてあげたからね。だけど、私にあんたとの口約束を信用しろと?」
「約束させた意味?!」
紅白の少女――霊夢と呼ばれた少女の冷たい言葉に、黒白の少女は若干涙目になりながら抗議する。
どうしようもなく自業自得感がするのだが、流石に可哀想に思ったのか霊夢はため息を吐きながら御札をしまう。
その行動に黒白の少女は顔を輝かせるのだが、霊夢はスタスタと歩み寄ると、不思議そうな顔で見上げてくる少女の頭にげんこつを振り下ろした。
「あだ?! ちょ、何するんだ霊夢、もう勝負は決まってるんだぜ?」
「うっさいわね、止めよ止め。こうでもしておかないと、私はまだやられたわけじゃないんだぜ! とか言って襲ってきそうだもの」
「うぐ……そこまで信用ないのか。っていうか、私の口真似妙に上手くないか?」
「そりゃ、毎日聞いてれば上手くもなるわよ」
お互い雑談をしながら仲良く並んで地面に腰掛ける。別に仲が悪いから勝負をしていたわけではなく、この二人にとってこれはほぼ日課と成った修行なのだ。
いや、寧ろ仲が良すぎる節があるかもしれない。並んで座る二人の手はいつの間にか重なっており、お互いがかわす言葉の中には親友という枠以上の何かが見え隠れしている。
二人は暫くの間
「それじゃ霊夢、私は一回家に戻るぜ。ちゃんと境内の掃除をしておけよ?」
「あんたは私の母親か。――言われなくてもわかってるわよ」
「そっかそっか、それじゃ霊夢、また後でだぜ」
「ええ、また後でいらっしゃい、魔理沙」
黒白の少女――魔理沙は、置いておいた箒を手に持って二言三言霊夢と言葉をかわした後、魔女よろしく箒にまたがるとスッと浮き上がってそのまま飛んでいった。
見送った霊夢は、暫く魔理沙が消えた空を眺めていたのだが、やがて振り返ると境内へと目を向けた。
そして大きなため息とともに呟くのだった。
「掃除……魔理沙にも手伝わせてやりたいわ……」
◇ ◇ ◇ ◇
一方魔理沙はひとまず家に戻ろうと、少しずつ高度を落としながら空を飛んでいた。
時折下の方に何かを探すような仕草をしながら、そこそこのスピードで飛んで行く。
何を隠そう今更だが、魔理沙こと霧雨魔理沙は自称普通の魔法使いである。「弾幕は火力」をモットーとしており、扱う魔法は多くが広範囲殲滅型だ。
彼女の魔法は「星」を象っており、その綺麗な見た目とは裏腹に凄まじい火力を秘めている。
さてその魔理沙だが、一応箒に跨ってはいるが、別に無くても飛ぶことはできる。ただし、魔法というものは不安定なもので、その威力や効果は術師のイメージ力に直結する。
つまり、より強固なイメージを持つほどに、魔法は自ずと強化されていくということだ。
魔理沙にとっての魔法使いのイメージとは、その外見がよく表してくれている。
全体的に黒を基調としており、頭には黒い三角帽、服は黒いドレス然としたものの上から白いエプロンを付けている。跨っている箒は言わずもがなだ。
これが、霧雨魔理沙の持つ魔法使いのイメージ、彼女の魔法が十全に機能する服装なのである。
魔理沙は暫く飛んでいたのだが、下の方にあるものを見つけたようで、その高度を一気に落としやがて地面に着地する。
魔理沙の前には、和風の一軒家が一つあるのみ。さらに、これが魔理沙の家かというとそうではない。魔理沙の家は、この家の奥にある森の中にある。
では、何故魔理沙はここに降り立ったのか。その理由はいたって単純である。
「邪魔するぜー」
魔理沙はなんの躊躇いもなく
中は少し薄暗く、更には埃っぽい。ぐるりと中を見回せば、日用品から何に使うか定かではないガラクタまで、所狭しと並べられている。
しかし魔理沙はそれらに見向きもしないで奥へと歩みを進めると、再度奥に向かって呼びかけた。
「おーい、香霖……いないのか?」
呼びかけに応じる声はなく、魔理沙の呼びかけは薄暗い部屋に吸収されていった。
「ちぇ、八卦炉の調子が悪いから見てもらおうと思ったんだが……居ないならしかたがないぜ。出直すか」
魔理沙は身を翻すと、ドアを開け放ちそのまま森へと入っていった。
出て行く際に幾つかの品を帽子の中に突っ込んでいたが、本人曰くこれは窃盗ではなく「ツケ」である。
実はこの一軒家、唯の家ではなく香霖堂と呼ばれる店だったりする。道具屋であるが、道具の販売から買取、更には制作までやっているいわば何でも屋だ。
本来なら店主が居るはずなのだが、今は仕入れで店を空けているのか、誰もいない。
因みに、魔理沙が「ツケ」を支払ったことは一度たりともあるとかないとか。
魔理沙が森へ入っていってから半刻、つまり1時間ほどたってから、香霖堂の店主が帰ってきた。
魔理沙に香霖と呼ばれた
彼の本名は森近霖之助といい、魔理沙が言った香霖というのは店の名称からとったいわば愛称である。
その霖之助だが、現在
「はぁ、出るときは閉めたはずだから、誰かしら来客があったかな。と言っても、来るようなお客さんは限られてるし、何よりこの性格は魔理沙かな……こりゃ、店の物が幾つかなくなっているのを覚悟しておかないと」
森近霖之助、香霖堂の店主にして人と妖怪のハーフである人妖。かなりの実力を持っているはずなのだが、彼が戦闘行動をとっているところを見た者はいない。しかし何より、彼の店にまともな客が入ってきたのを見たことがある者も、殆どいないのである。
森近霖之助、彼は意外と苦労人だったりする。
◇ ◇ ◇ ◇
一方森のなかを進む魔理沙は、歩き続けた末に少し開けた場所にたどり着いた。
その空間の中心には1軒の西洋風の建物があり、何を隠そうこれこそが魔理沙の家兼何でも屋の、霧雨魔法店である。
店、と言っても何か商品を扱っているわけでもなく、更に魔理沙自身があまり帰ってこないため実質店としては機能していなかったりする。
それは置いておいて、魔理沙は家から微妙な距離の位置に立ち、これまた微妙な表情を浮かべていた。
「……なんだかなぁ」
つまりは、とうとう
「……ちょっと今は会いたくないよなぁ。こっちも出なおすとするか……」
魔理沙はまたもや身を翻すと、その場から逃げるように歩を早め――
「あ、お姉ちゃん! おかえりなさい!」
「キュー!」
――後ろから響いてきた声にピタリと足を止めた。
ギギギ という音が聞こえそうな感じで振り返った魔理沙は、満面の笑みを浮かべながら、その実目が完全に笑っていない
「お、おぅ……ただいまだぜ、
椅魔奈と呼ばれた少女が手に抱えている、蛇のような生き物が嬉しそうに鳴いているのは、取り敢えず無視する魔理沙であった。
◇ ◇ ◇ ◇
やぁや読者諸君、おはこんばんちは。初めましての人しか居ないだろうから、突然だけどちょびっと自己紹介をしようかな。
僕こと霧雨椅魔奈は俗にいう「転生者」って奴だ。実際自分がこうなってみるまでは転生なんてものは唯の空想の産物だと思っていたんだけど、中々どうして存在しちゃったみたいだね。
そしてこれもありがちなんだろうけど、僕には転生前、つまり前世の記憶がほとんどない。自分の性別が男だったのか女だったのかすら覚えていないんだ。まぁ、何故か漫画や小説の記憶はあるんだけどね。
けれども、僕が小説の転生主人公達とは違う点が一つある。それは
なぜかって? それは僕が漫画よりも小説のほうが好きだったからだろう。それも二次創作と呼ばれる、原作とは違ったオリジナルの展開を示す類のものが。
だから、僕にはこの世界が「東方Project」と呼ばれる縦スクロール弾幕系シューティングゲームの中であり、博麗霊夢や霧雨魔理沙といった少女たちが「弾幕ごっこ」と称される遊びでワイワイ楽しくやっているということ以外の原作知識は一切ない。いや、もしかしたらこの知識すらすでに間違っているのかもしれないけど。
まぁ、そんなこんなで転生したわけだけども、僕は正直いって原作介入というものはあまりしたくはなかった。だって面倒臭いじゃん、折角転生したんだから平穏な人生を送ってみたいじゃん、
というわけで僕は当初、霧雨魔理沙の妹として生まれ直したから、という理由だけで魔理沙と付き合い、たまに霊夢と顔を合わせる以外の一切の原作キャラたちへの干渉は避けていた。
それはもう、記憶の片隅に当てはまる項目のある人物を見かけたら、たとえ覚えていなかろうとも全力で接触を避けていたほどだ。そのせいで、一度魔理沙に心配されたことがある。
『なぁ椅魔奈、お前ってもしかして人見知りなのか?』
『え、別にそういうわけじゃないけど……突然どうしたの、お姉ちゃん?』
『だってさ、良く慧音とか香霖を遠目に見ただけで逃げ出してるだろ? もしかして霊夢と会うのも辛かったりするのか?』
『……ソンナコトナイヨー。ナニイッテルノ、ヘンナオネエチャンダナー』
『片言?! 嫌なら嫌って言ってもいいんだぜ?』
『ダイジョブダイジョブー』
そんなこんなで、とある切掛がなかったら僕は未だに原作キャラから距離をおき続けていたんだと思う。
それは、僕の年齢が10代に差し掛かろうかという時、その出来事は起こったんだ。
あ、因みに言うけど、僕は魔理沙の一個したなんだ、どうでもいいけどね。
それで、魔理沙は家を追い出されたわけなんだけど、当初
『お姉ちゃんは馬鹿だよ。人間は所詮人間、霊夢さんが異常なだけで、普通の人間は大人しく里で暮らしているべきなんだよ』
『何言ってんだ椅魔奈、普通に生きて普通に死んで、それの何処が面白いんだ? 私は妖怪に怯えている人生なんてまっぴらだぜ』
『……お姉ちゃんはいつもそう、どうしていつも常識に真っ向から喧嘩を売るの? 何がお姉ちゃんをそこまで駆り立てるの……?』
それは僕の本心。この霧雨魔理沙という少女を駆り立てるものは一体何なのか、どうしてそこまで非日常に憧れるのか。その時は全くわからなかった。
だけど、その後の魔理沙の言葉を聞いて、僕の考えは大きく変わることになる。
『なぁ椅魔奈。常識っていうのは守るためにあるんじゃないぜ、破るためにあるんだ。常識を守り続けて老いていく、そんな敷かれたレールの上を走るだけの人生なんて私の性には合わないんだぜ』
もしかしたら、僕はこの時まで大きな勘違いをしていたのかもしれない。
転生した先が知っていた世界だからと、
この世界の住人にだって意思というものはあるのに、僕はそれを見ていなかったんだ。それを、魔理沙の言葉で思い知った。
原作をよく知っている人から見たら、この魔理沙の言葉も今後の展開に沿った原作通りのセリフを表しているだけかもしれない。
けれど、僕にとってそれは心にとても響くものだった。少なくとも、その言葉で僕が魔理沙に惚れてしまうほどには。
いや、魔理沙の生き方に憧れる、のほうが正しいのかな? どっちにしろだけどね。
それで、僕も魔理沙を真似て魔法を学ぼうとしたんだけど、父親に全力で止められた。
曰く、僕まで居なくなってしまったら跡取りが居なくなってしまうとのこと。
まぁ実際、それだけだったら僕は迷わず家を出ていたと思う。それ程までに魔理沙に憧れてたからね。
だけど、滅多に涙なんか見せないあの頑固親父の眼に薄っすらと涙が浮かんでいるのを見て、渋々魔法のことは諦めた。
多分、魔理沙を追い出したこともかなりきてたんじゃないかな。それに加えて僕まで居なくなったら、と思ったからこその涙なのかもしれない。
しばらくして、魔理沙が魔法の森に居を構えたと風のうわさに聞いて、早速会いに行こうとしたんだけど、またも父親に止められてしまった。
魔法の森は化け物茸の胞子が舞っていて、普通の人間だと呼吸をするだけで体調を崩してしまうそうだ。
まぁ、僕としては流石に譲れないところだったから、無理を押し通して勝手に森へ入っていった。
入って数分でばったり倒れちゃったんだけどね。いやぁ、あの時はほんとうにもうダメかと思ったよ。
そのことを心配して見舞いに来た父親に、笑いながら言ったらぶん殴られたけど。女の子には優しくしようよ。
で、それが原因かどうかはわからないんだけど、なんかそれ以来魔法の森の瘴気に触れてもある程度平気な体になってしまった。
だから、完全に平気になるまで森に入って深呼吸をし、限界になったら家に帰ってばったり倒れこむ、という動作を繰り返し続けた。
何度か父親にお小言をもらったんだけど、そのうち諦めてくれたようで店を絶対に継ぐことを条件に見逃してもらえるようになった。
それから1年ほど、僕の身体は森の瘴気に馴れて、いくら深呼吸をしようが寧ろ体調が良くなるまでになった。人間って凄い。
体が馴れたからと、僕が次に目標にしたのは魔理沙の家探しだ。と言っても、実はこっそりと霊夢に場所を教えてもらったりしているので、迷いさえしなければ簡単にたどり着ける。
別に、わざわざ魔理沙の家まで行かなくても、魔理沙とはちょくちょく会っているし、一緒に遊んだりもしている。
なら、何故わざわざ魔理沙の家を尋ねるのか? そんなの決まってる、魔理沙の家を見てみたいからだ。
ぶっちゃけてしまうと、本当にそれ以外の理由はない。強いて挙げるとしたら、魔理沙がまともな生活を送っているのか不安な程度だ。
以前、魔理沙に家に行っていいか聞いたところ、すごい形相で否定された。だから、何か隠しているんじゃないかと気になるのも事実だ。
というわけで今日、ついに魔法の森を抜けて魔理沙の家にたどり着いた。早い時間に来たからてっきり家にいるかと思ったが、どうやらもう神社での修行中らしい。
魔理沙は 霧雨魔法店 というのを経営していると以前漏らしていたけど、見た限りお店って感じじゃない普通の一軒家。
中はどうなっているんだろう、と勝手にお邪魔してみたんだけど
「……うわぁ、なにこれ凄い。何が凄いって汚さがマッハで凄い」
思わず意味不明な一人ごとを漏らしてしまうほどには、魔理沙の家の中は汚かった。以前尋ねたことがある香霖堂も、ここまで汚くなかったと思う。どっこいどっこいだけど。
暫く呆然としていた僕だけど、じっと部屋の中を見ている内に一つの感情が湧き上がってきた。
――掃除して綺麗にしたい。
実は僕、潔癖症というわけではないんだけど、ゴチャゴチャしているのを見るとすっきり収めたくなってしまうんだ。
東方風に言うと、綺麗に収める程度の能力、みたいな? いや、綺麗に収めたくなる程度の能力、かな。どっちにしろ使えないんだけど。
だからと言うか、僕は勝手に魔理沙の家を掃除することに決めた。掃除、と言っても物が多すぎるから、一旦全部出すところからなんだけどね。
地面に打ち捨てられているように散乱しているものの中にはどうやらマジックアイテムのようなものもあるようで、幾つかが干渉しあって結界を張ってた。ホントどうなってるのこれ、ていうか魔理沙よくこの中で生活出来てたよね、素直に感心しちゃうよ。
それで、暫く無心でものを運び出していたんだけど、漸く4割ほど外に出したかな、というくらいになって奥の方から小さな鳴き声が聞こえてきた。
「キュー……」
「キュー? なんの動物だろう、って言うか姿が見えないってことは埋まっちゃってるの? 大丈夫かな……」
ちょっと心配になった僕は、一旦作業の手を止め声の主を発掘することにした。掘り出すのにはそれほど苦労しなかったけど、声の主を見て困惑する。
「蛇……じゃないよね、ツチノコだよねこれ。そういえば魔理沙がツチノコ飼ってるってどっかで見たような気が……」
ツチノコだった、しかも瀕死。弱々しくもつぶらな瞳で僕を見て、「キュー……」ところなんか凄く助けてあげたいって思えてくる。ツチノコだけど、しかも瀕死。
あれ、そういえば今なんとなく流したけど、ツチノコって鳴き声 キュー なの? って言うか鳴くの? 蛇って鳴いたっけ、そもそもツチノコってどの動物の親戚?
だめだ、分からない。取り敢えず弱ってるからには何かしてあげなきゃいけないんだろうけど、生憎どうすればいいのか皆目見当もつかない。
「そういえばさっき薬みたいのを見た気が……あったあった。これ呑ませてあげれば元気になるかな」
僕は適当に薬のような何かを手にとって瓶の中から一粒つまみだすと、ツチノコの目の前に差し出してみた。
ツチノコはじっと僕の瞳を見上げた後、キュー と一声鳴いて粒を飲み込んだ。何この可愛い生物。
「キュー!」
「あ、少し元気になったかな? 良かった、ちょっとお家の外で待っててね」
ツチノコは少し元気を取り戻した様子で、僕を見上げて嬉しそうに鳴いた。
正直可愛すぎて離したくなかったんだけど、さっさと掃除を済ませなきゃいけなかったから外に出してあげて、作業の続きにとりかかった。
「キュー!」
「はいはい、掃除すぐ済ませちゃうからまっててねー」
背後からツチノコの声援を受けながら、尚も作業の手を緩めない。
「キュー! キュー!」
「僕も遊んであげたいけど、先に掃除しなくちゃだから、もう少し我慢してて」
漸く全てを運び出し終えて、積もりに積もった埃を掃き出し始める。
「……ギュー!」
「はいはい……って、え?」
なんだか違和感を感じて外にいるツチノコに目を向けてみた。
向けてみたんだけど――
「――ギュー! ギュー!」
「え、なんで大きくなってるの? それが通常サイズなの?」
「ギュー!」
呆然として聞いてみたらブンブンと頭を振った。っていうかこの子人間の言葉理解できるんだ、頭いいね。
ツチノコは暫く野太い声でギューギュー鳴いていたけど、ふと思い出したかのように何かを咥えて僕の方に放り投げてきた。
よく見ると、さっきツチノコに呑ませてあげた薬。どうやらこれが原因らしい。
「これのせいなんだ……うん、大丈夫。薬のせいなら暫くすれば治ると思うから、大人しくしててね?」
「ギュー? ギュー!」
ツチノコは分かったとばかりに一声鳴くと、その場で丸くなった。髑髏を巻いてるわけじゃないよ、ここ重要ね。尻尾が短いから、飽く迄も丸くなってるだけだから。
僕はツチノコが大人しくなったのを見届けると、また作業に集中した。結局ツチノコが元に戻ったのは、掃除が終わった後だったりする。
◇ ◇ ◇ ◇
「さてお姉ちゃん、僕いろいろ言いたいことがあるんだけど」
「悪かった、本当に悪かった。この通りだぜ」
「ふーん……? じゃあ何が悪かったのか言ってみて?」
「家を掃除しないで置いたことじゃないのか?」
「それもあるよ。あと、危険なものを適当においてたこととか、変な薬をラベルも貼らずに転がしておいたこととか、変な道具どうしが干渉しあって小さな結界を張ってたこととか、色々」
「わ、悪かったんだぜ……」
「でもね、一番言いたいのは、動物を生き埋めにしたうえに長期間放置したことです。何か弁明はありますか?」
「キュー!」
「うぐ、なんで他人行儀……いやホント、心底悪いと思ってます許してください……」
ここは魔理沙の家、椅魔奈の手によって綺麗に整頓されたへやで、椅魔奈とツチノコ、それに魔理沙が向かい合って座っていた。と言うより説教されていた。
椅魔奈も魔理沙もあまり身長が変わらないので、一見すると何方が姉なのかわからない。まあ魔理沙に姉らしさなんて微塵もないのだが……
「はぁ……お説教はこれくらいにしておくね。折角お姉ちゃんのお家に来たのに、説教ばっかりっていうのもあれだしね」
「キュー!」
「その……椅魔奈? なんかやけにツチノコに懐かれてるようだけど……なんかしたのか?」
「お姉ちゃんが生き埋めにしていたところを助けてあげたんです、ねー?」
「キュー?」
まさに意気投合と言った風に、椅魔奈とツチノコが首を傾げ合う。その光景に魔理沙はなんとも言えない表情になった。
そうやって暫く雑談していたのだが、魔理沙はふと気になることを椅魔奈に聞いてみた。
「そういえば……なんで椅魔奈は私の家に来てみたかったんだ? 自慢じゃないが特にこれといったものはないぜ」
「家をゴチャゴチャにしていた人がよく言うね、僕が心配したのはまさにこのことだよ」
「ってことは、私の家を掃除しにわざわざここまで来たのか……?」
「そういうことになるね」
これには魔理沙も苦笑いをするしかなかった。普通の人間が魔法の森に入るのだって一苦労なはずなのに、妹は唯掃除をするためだけにここまで来たというのだ。
苦笑しながらも、魔理沙は椅魔奈に感謝の念を覚えていた。
魔理沙は自称魔法使い、つまり妖怪に分類される存在になっているわけだ。
魔理沙が魔法使いになってから、人里の、特に家族からの当たりはとてもキツくなった。
そんな中で、椅魔奈だけは変わらずに接してくれた。いや、今まで以上に関わってくれるようになった。
いくら霊夢が居たとはいえ、まだ年端もいかない様な年齢の時に家族からきつく当たられるのはかなり来るものがある。
椅魔奈の存在は、魔理沙にとってまさに救いだったのだ。
「なぁ、椅魔奈――」
だから、日頃の感謝をここで言ってしまおう。そう思って魔理沙が椅魔奈を見た時、椅魔奈は魔理沙を見ていなかった。
不審に思った魔理沙が椅魔奈と同じ方に目を向けると、そこにあったのは窓。
――そしてそこからは、紅く染まった風景が覗いていた。
ツチノコ可愛い……書いてて凄い癒やされました。