……いや、本当にお久しぶりでございます。長らく更新を停止してしまい申し訳ありませんでした。
元々書けていないのですから、スランプというのもおかしな話ですが、なかなか執筆に身が入らずこのような間隔があいてしまいました。
これからも更新が不定期かつ長期の間隔があく場合がございますが、生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
……それで、椅魔奈ってこんなキャラでしたっけ?
戻ってきた僕が見た光景は、相変わらず生き物としての原形をとどめていない動きをするレミリアと、それを塵芥のように吹き飛ばす霊夢の姿だった。と言うか何やってるんですかあなた達は。
「レミリア。あんたは本格的に退治した方が良いわね。異変時のあんたも十分に有害だったけど、今のあんたは害そのものよ」
「あら霊夢、ずいぶんな物言いね。私のどこが害悪だというのかしら?」
「みたまんま全部よ」
「レディーの外見をみてそんな事言うの? 霊夢、少し見損なったわよ」
「だったらそのまま見失ってくれないかしら。第一、体と首が分離して動いてるのをみて、レディーもクソもないでしょうが」
「仕方ないわね……」
やれやれと言った具合に首を拾って体にくっつけるレミリア。そこには霊夢の言うとおりレディーのような淑やかさ等みじんもなく、くっつけた際になったゴキュと言う音は、最早人体の出して良い音ではなかった。
「あら、お帰り椅魔奈。少しだけとはいえ外に出たんだし、体が冷えたんじゃないかしら? 温かいスープもあるから、飲んで温まってきなさい」
「あの、咲夜さん……あれ、いいんですか?」
「なにが?」
「なにがって……ほら、レミリアさんが霊夢さんにぞんざいに扱われていることとか」
「レミリアお嬢様がそれで気分を害するようなことがあれば、博麗の巫女には消えてもらうけれど。本人も楽しんでいるみたいだし、問題はないんじゃないかしら?」
「そ、そうなんだ……」
咲夜は事も無げにそう言うと、さっさと姿を消してしまった。また料理を作りにでもいったのだろうか。
取り敢えず霊夢とレミリアの掛け合いは無視することとして、僕は何の気なしに周囲を見回してみた。そして気がついたんだけど、紅魔館の住人ってこんなに少なかったっけ?
この時期にすでにいるのかは分からない小悪魔はおいておいて、他にパチュリーや中華こと美鈴、それとフランもいたはずだ。
「あぁ……でも、パチュリーさんは図書館に引きこもってそうだし、美鈴さんは門番か調理担当なんだろうなぁ。フランは……まだ危険だからって出してもらえてないのかな?」
魔理沙が異変解決に向かってしまった以上、特にここですることもしたいことも無くなってしまった。レミリアと霊夢は楽しそうに(?)戯れ合ってるし、邪魔をするのも野暮だろう。
「ちょっとフランを探してくるね」
どうせ聞こえてないだろうけど、一応レミリアに確認をとった僕は返事も待たずにさっさと部屋を出る。たしか、紅魔館は咲夜の能力だかなんだかで空間が歪められてて、外見の数倍は広いらしい。ま、一種の冒険だと思って歩きまわるのも面白いかもしれない。そう思った僕は、本当に軽い気持ちで館の奥へと足を向けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ま、迷った……」
誰だよ軽い気持ちでこんなところ来た奴。僕だよ。
というわけで、今絶賛迷子中です。誰か助けてくださいなんでもしますから。
なんて念じてみても、誰かが助けに来るはずもなく、僕はまたしぶしぶと探索を再開した。
廊下は長いし、無駄に部屋は多いし、何処まで行っても同じような光景しか目に入らないから、何処を曲がったのかすらわからない。
最初はときおり見かける妖精メイドに道を聞いたりしたんだけど、暫くして同じ場所をぐるぐる回らされてるだけだと気がついてから一切信用しないと心に決めた。変な道を教えてきた妖精メイドをピチュらせた僕は悪く無い。
とにかく、足を止めていても良いことはないから歩き続けてるんだけど、どうしよう、そろそろ足が限界に近い。多分だけど、もう一時間はずっと歩き続けてる気がする。もういっそ、適当な部屋に入って一晩明かそうかな……
「――あれ? 下りの階段……?」
当てなしに歩き続けて、もう無数の部屋のドアと長い廊下を見るのも嫌になってきた時、漸く視界の端に変化が訪れた。目に入ったのは下層へ続くのであろう階段。帰り道じゃないのは確定的に明らかなんだけど、帰り道がわからないならいっそという思いと、フランの部屋が地下にあるという知識を持っていたために、フランに会えれば戻ることができるかも、という考えもあった。
そんなわけで、僕は階段を下ることに決めた。下の方は暗いせいか見通せなかったけど、流石に危険はないと思いたい。
階段を下る僕の足音が反響して響いてくるので、若干怖い。さっさと下ってしまおうと、少しだけ足を速める。
――カツーン、カツーン、カツン、カツン、カツカツカツカツカッカッカッカッカッカッ
「ちょ、階段長くない?!」
もう優に三階分くらいは下ったと思うんだけど、一向に下の階に辿りつけない。途中でループしているのでは、と背後を振り返ってみたけど、降りてきたところは遠くで明かりを漏らしているから、ちゃんと下れてはいるんだと思う。じゃぁ、なんで下の階に辿りつけないんだろうか。登り降りにはすごい不便だと思うんだけど。
階段が長いことは取り敢えず考えないようにして、只管下ることだけを考えて更に数分。結構な深さまで降りてきて、漸く下の階にたどり着くことが出来た。
「漸く着いた──うわぁ、上の階の明かりがあんなに遠い……」
振り返ってみてみると、降りてきたところが拳並みに小さくなっていて、今更ながらどれだけ深くまで降りてきたんだろうと呆れる。何か理由でもあるのかな?
「ま、いいや。えっと、部屋は……一つだけ?」
弱々しい光に照らされた階下には、部屋は一つだけしかなかった。しかも、何故だか重厚な作りの扉で近寄りがたい雰囲気を放っている。出来れば今すぐ引き返したいんだけど、今思い付く限りたった一つの戻れるかも知れない手段をフイには出来ない。
「お、お邪魔します……?」
キギィと言う扉がきしむ音と共に、ゆっくりと扉を押し開け顔をのぞかせる。中は廊下よりもいっそう薄暗く、ぼんやりとしか部屋の様子が分からない。
うーん、家具みたいに見えるものもほとんどないし、もしかして倉庫か何かだったのかな。仕方がない、もう一回階段上がって──
「──だれ? だれか、いるの……?」
扉をそっと閉じようとしたら部屋の奥から声がかけられる。ああ、良かったやっぱり誰かいた。今の声はフランかな? そう思いつつ扉を開けようとして──止まる。
「おっと、ばれちったか」
もう一人の、声が聞こえた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「だれ? だれか、いるの?」
薄暗い部屋の中、宝石を飾り付けたかのような羽を背に持つ少女は虚空へとそう問いかける。その声は薄闇に吸われていくが、少しして部屋に変化が訪れる。
一見すると、ただ薄闇が広がっているだけの部屋の中。しかし、少女の闇夜をすら見通す目は
やがて
「おっと、ばれちったか」
人影は──否、頭部に角のようなものを持つ少女は、笑いながらそう嘯く。突然現れた有角の少女にしかし、有翼の少女は冷めた表情で小首を傾げる。誰だ──言外にそう告げられていると理解した有角の少女は、ニヤリと笑って言葉を発する。
「私らを知らないのか? ま、無理もないかね。私らが地下に潜ってそれなりにたったわけだし」
「地下? 地下にすんでるの?」
「私は最近は帰ってないけど、同族達は地下にすんでるね。閉じこもってるって言うか、閉じこめられてるって言うか……」
「なら、同じだね」
「うん?」
「少し前の、私と同じ」
「……そうかい。ま、同じ“鬼”の名を持つよしみだ。外に出て酒でも一杯引っかけないかい?」
「でも、勝手に出たらお姉様や皆にまた迷惑掛けちゃう……」
「なら、一言断ってでればいいのさ。それに……そうだね、知り合いでもいれば出かけやすいんじゃないかい?」
「知り合い……?」
扉を見つめながらそういう有角の少女の言に、有翼の少女は首をひねった。姉もその友人達も、今は上で宴会を開いているはず……
「入ってきなよ。別に、害そうってわけじゃないさ」
その言葉が掛けられると、侵入者を──いや、通るものすべてを拒むかのような作りの扉が、遠慮がちに開かれていく。そこから顔をのぞかせた見知った顔に、有翼の少女は驚きと喜びと疑念を織り交ぜたような声色で言葉をかけた。
「……椅魔奈?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
少し驚いたような顔でこっちみているフランに軽く手を振ってから、僕は内心ため息を吐いていた。漏れ聞こえてきた会話の中で、聞き逃しがたい言葉があったのだ。
“鬼”幻想郷最強の種族の一つで、その力は単体でも並みの妖怪の何倍にもなる。僕の数少ない知識の中にもその危険性はばっちり入っていて、巫女みこ萃香の破壊力は抜群だ。
え、何かが違う? いや、幼女鬼に巫女服とか最強コンボですよ奥さん。間違いなく幻想郷最強角だよね。
「見たところただの人間なんだけどねぇ……ほら、知り合いなんだろ?」
なんて
「ええと……確かに、フランとは知り合いだけど、どういったご用件でせう……?」
「せう? まぁいいか。どうせ全部聞いていたんだろう。それとも、もう一度言う必要があるかい?」
「あ、うん。やっぱり大丈夫です」
どうあがいても僕が連れ去られる流れになるみたい。どうしてこうなったと声を大にしていいたいよ。ま、まぁ魔理沙も異変解決にいっちゃってるし、特にやることもないから良いのはいいんだけど──
「それじゃ、此奴等は借りていくから。返して欲しかったら、私を楽しませることだね!」
──なんて思っていた時期が、僕にもありました。
え、なんでこの人突然に喧嘩売ってるの? 人って言うか鬼だけど。いや、そうじゃなくて。
オーケー、落ち着こう。とりあえず深呼吸しよう。はい、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー……うん、いろいろと手遅れだけととりあえず落ち着いた。
で、この人は博麗の巫女こと博麗霊夢と、
僕? 肩に担がれてドナドナされてますよ。萃香が地下で僕を担ぐなりすさまじい速度で移動しやがったものだから、体力の限界がきて肩の上で伸びてる。意識はあるんだけど体を動かすのも怠いから、端から見れば無理矢理連れ去られ掛けてるように見えるんだろうなぁ……
「待ちなさいよ。突然出てきて勝手にそいつ等連れ去ろうとして。それを私が許すと思う?」
「さあね。だけど、鬼は人を浚うものだろう?」
「知らないわよ、そんな事。それに、肩のはそうにしても隣にいるのは人じゃなくて吸血鬼でしょう」
「あぁ、こっちに関しては浚おうってわけじゃない。同じ“鬼”のよしみとして、酒を飲み交わそうってだけさ」
「へぇ、肩に担いでいる人間を肴にってわけ?」
やっぱり僕が浚われている件について。それと霊夢さん怖いこと言わないでほんとに。
「あっはっは! それも良いかもねぇ」
ぜんぜん良くないです。
「ま、なんにしてもさ。ちょいと借りていくから、ちゃんとそう断りいれたからね」
「だから、それを私が許すと──」
「じゃあなー!」
「あ、こら待ちなさい!」
霊夢の制止も聞かずに踵を返して逃げ始める萃香。そして風圧によってシェイクされる僕。なにこれひどい、本当にどうしてこうなった。
あぁ、もう……お姉ちゃんぼすけて……
そんな思考を最後に、僕の意識は闇に飲まれた。
萃香が妖々夢に殴り込みを掛けてきた理由ですが、紅魔郷の時点で椅魔奈が発した力の余波に当てられ、高ぶる気持ちの抑えが効かずに取り敢えず皆に宴会をさせて気を紛らわしていました。が、当然それ満足するはずもなく、偶々意識を集めていたフランの部屋で察知され、それを機として椅魔奈と接触を図ったのです。フランと酒を飲むようなことをいってますが、萃香の目的は椅魔奈です。哀れ椅魔奈。
では、次回が何時になるかは未定ですが、頑張って作っていくので乞うご期待ということで!