東方妹霧雨   作:低蓮

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今回は椅魔奈出番が全くありません、というわけで今回第2面を突破したところですかね。
展開は早いのに進行は遅いとかなにこれ矛盾……紅魔郷編だけでかなり取りそうな予感が!
さて……此方も不定期になりがちですが、なるべく早めに出していこうと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。
感想を下さってもいいんですよ……?(チラッ


巫女と弾幕と氷の妖精@主人公不在のお知らせ

 時間は少し遡って、一方の霊夢。一面のボス(ルーミアと魔理沙)を倒したあと、勘に従って霧の湖のところまで来ていた。

 

 

「うーん、どうもこの辺りで面倒なことになりそうな気がすると思ったら……」

「残念だったなー! ここを通りたければさいきょーのあたいを倒していけ!」

「チ、チルノちゃん……この人巫女さんだよ、あの妖怪退治専門の……よ、よした方が……」

「つまりこいつを倒せば、あたいがさいきょーだっていう証明になるわけね!」

「チルノちゃん……そのね? 私は倒せそうにないから言ってるのであって、最強の証明とかそういうのは……」

「行くぞ妖怪専門!」

「それじゃ別の意味に聞こえるじゃない……私は妖怪退治専門よ、ついでにあんたのような馬鹿()もね」

 

 

 突然現れた妖精に突然喧嘩を売られたので、取り敢えず買ってみた。と、後に霊夢はこの時のことを語った。

 実際霧の湖上空を飛んでいた霊夢に対し、チルノがなんの前触れもなく喧嘩をふっかけたのだから間違っていない。

 チルノの横では大妖精(大ちゃん)が必死になだめようとしていたが、なんの効果も発揮しなかったそうな。

 結局チルノは、大妖精(大ちゃん)の静止を振りきって霊夢と対峙し、大妖精(大ちゃん)も仕方なくチルノ側についた。

 

 

「で、思ったんだけど結局なんか用なわけ? 最強だかなんだか知らないけど、ごっこ遊びは仲間内だけでやってほしいわ」

「何だとー! あたいは本当に最強なんだぞ、それをこれから証明してやる!」

「はぁ……諦めるのよ大妖精、私程度じゃチルノちゃんを止められないなんて元々わかっていたことでしょ……」

「……なんか、あんたも苦労してそうね」

「あはは……はい……」

 

 

 若干の哀れみのこもった霊夢の視線に苦笑する大妖精(大ちゃん)、しかし否定しないところを見るとやはりそれなりに苦労しているのだろうか。

 霊夢が再度口を開きかけると、チルノが割って入ってきてスペルカードを高々と掲げながら宣言してきた。

 

 

「さぁ、あたいと勝負だ! それともあたいの最強のオーラの前に怖気づい――」

「――へぇ、そう。えぇいいわ、勝負でも何でもやってやろうじゃないのよ。たかが妖精()のくせして調子に乗らないでもらえるかしら」

「……べ、別に怖がってなんかないからな! きょ、今日は少し眠たいだけだ!」 

 

 

 無自覚に煽られて怒った霊夢の、ドスの効いた声に若干涙目になっているチルノである。

 けれど、涙が溢れる前にぐっと堪えると、スペルカードを掲げたまま霊夢に突っ込んでいった。

 

 

「これでも喰らえ! 【アイシクルフォール】!」

 

 

 最初からスペルカードを展開するチルノに、霊夢は僅かに驚いたような表情をする。

 チルノの両脇から弾幕が生成され、それが交差するように飛んでくる。

 妖精(ただの馬鹿) にしてはよく組まれたスペルカードだと。しかし――

 

 

「ふーん……まぁ、難易度Easyくらい(こんなもん)よね」

 

 

 霊夢はさして気にした様子もなく弾幕を回避していくと、チルノの目の前までやってきた。

 

 

「……っひ」

「なってない、全然なってないわ。第一目の前がこんなに無防備なスペルカード作ってるんじゃないわよ。これで最強とか、片腹痛いわ」

「……う、ああああぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 霊夢に馬鹿にされ、涙目だったチルノは一転、霊夢を睨みつける形で距離をとった。

 ひとつ前のスペルカードはすでに途中で放棄しており、チルノの手には新たなスペルカードが掲げられている。

 

 

「馬鹿にするな! あたいは強くなるんだ! さいきょーになれば、もうほかの奴に馬鹿にされなくて済むから! ――あんたを倒して、あたいがさいきょーだって証明するんだああぁぁ!」

「あっそう、やってみれば? 当てられたらの話だけどね」

「――ッ! 【ダイアモンドブリザード】!」

 

 

 チルノがそう叫ぶと、今度はチルノの周囲から無数の氷の弾が湧き出し、不規則な弾道で周囲へばらまかれた。

 弾を生成しているチルノ本体も移動しているため、弾幕がどの方向から飛んで来るかを予測するのは非常に難しい――はずなのだが。

 

 

「んー、これもダメね。難易度Normal(少し鬱陶しい)くらいかしら」

「な……ッ」

 

 

 霊夢はほとんど周囲を見ずに、難なく弾幕を回避していく。

 右へ行ったら左へ、少し上へ行ったと思ったら急降下と、不規則な弾道に合わせて的確に対処しながら、チルノとの距離を詰めていく。

 驚きに目を見開きながらも、チルノは精一杯弾幕を生成し霊夢の進行を阻止しようとするのだが。

 

 

「ほい、スペルブレイク」

「……ッ!」

 

 

 再度霊夢がチルノの目の前に現れたタイミングで、設定されていたスペルの効果時間が切れる。

 つまり、スペルを破られた(弾幕を完全に攻略された)わけである。

 やや呆然としつつも再度霊夢と距離を取り始めるチルノに、霊夢は呆れた声で問いかける。

 

 

「ねぇ、こんな無駄なことまだ続けるわけ? いい加減異変解決にいきたいんだけど」

「……うるさい、あたいはさいきょーなんだ! あんたを倒して、それでその異変っていうのもあたいが解決してや――」

「――いい加減にしてくれない? そろそろ邪魔だわ」

 

 

 チルノのセリフを、しかし霊夢は途中で遮って冷たい声を浴びせる。

 その声音に、チルノは氷の妖精だというのに背筋に寒気を覚えた。

 

 

「あんたがどこで誰に最強を語ろうと知ったことじゃないけど、いい加減迷惑なのよ。まだ続けるって言うなら、容赦しないわ」

「……だけど、あたいはさいきょーで……だから、負けちゃダメで……」

「……あんたに、一つ良いことを教えてやるわ」

「…………?」

「弾幕勝負はお遊びだけど、遊戯じゃないわ、真剣勝負なのよ。スペルカードは己のあり方、その心を弾幕に宿していると言っても過言ではないわ。いかに美しく心を表現し、いかに華麗に相手を圧倒するか、これが弾幕勝負」

「己の……あり方……?」

「だから、あんたのような力でゴリ押す弾幕なんて、見なくても避けられる。心がこもっていない弾幕なんて、降り始めの雨を避けることより簡単なのよ」

「え、それって結構難しいんじゃ……?」

大妖精(あんた)は黙ってなさい」

「あ、はい……」

「話を戻すわよ、確かにあんたは妖精にしては強い力を持ってる。それこそ其処らの妖怪なんかよりは強いくらいには。けれど、幾ら力が強くても最強にはなれないのよ」

「……強くても、さいきょーじゃない?」

「そう、いくら力が強くても、あんたと私じゃ別次元の壁がある。それは心の強さ、最強ってもんは外に押し出すものじゃなくて、己のうちに問いかけるもんよ」

「…………」

「まぁ、何が言いたいかって言うと、うじうじ考える暇があったら弾幕の構成でも考えてなさいってこと……あ゛あ゛、柄にもなく説教なんかしたもんだから、一気に疲れたわ……もう異変なんて放っておいて、神社に帰って寝てようかしら……」

 

 

 真剣な表情から一転、一気にだらけきった表情になった霊夢に、大妖精(大ちゃん)は呆れた様な顔をする。

 けれども、チルノはそんなことお構いなしに、ひたすら霊夢に言われたことを考えていた。

 

 

「(力があってもさいきょーにはなれない……なら、あたいはさいきょーじゃない?)」

「(でも、他の連中には負けたことなかったし……それなのに、さっきはあっさり負けた)」

「(どうしてだろ……さっき迄はあいつに勝ちたいってばっかり思ってたのに、勝たなきゃダメだって思ってたのに……)」

「(今は……なんだろ、この気持ち。どうしようもなく、胸が苦しい……)」

「(……そっか、あたいは悔しいんだ。さいきょーになれなかったことじゃなくて、この勝負に負けるのが、どうしようもなく……)」

 

 

 チルノはキッと顔を上げると、また一枚のスペルカードを霊夢へと掲げた。

 それに、霊夢はうんざりしたような表情で口を開きかけたが、チルノの表情を見て口を閉じた。

 

 

「(何だ、いい表情になったじゃない……ほんと、柄にもないことしたわね。全く、誰の影響なんだか)」

 

 

 霊夢は内心苦笑すると、真剣な表情でチルノと対峙した。

 一方のチルノも、さっきまでの必死な表情は鳴りを潜め、とても真剣な表情になっている。

 

 

「あたいは……馬鹿だから、やっぱりまだ心の強さとかはわからない。でも、一つだけはっきりわかったことがある」

「そう、それで?」

「あたいは弾幕勝負をさいきょーになる手段としてしか見てなかった。でも、初めてあんたに負けそうになって、すっごく悔しいって思った。どうしても負けたくないって」

「……そう」

「だから、さいきょーとか関係なしに、あたいはあんたを倒す! あたいが持ってる、最高の一枚で!」

「……ふん、当てられるものなら、当ててみなさいよ!」

「絶対に当ててやるんだから! 【パーフェクトフリーズ】!」

 

 

 チルノが叫ぶと同時、またも周囲に氷の弾が出現し、不規則に周囲へばらまかれる。ここまでは先程のスペルカードと変わらない、しかし――

 

 

「――へぇ、これは素直に驚くわね」

 

 

 ばら撒かれた弾が空中で完全に静止した(・・・・・・・・・・)。そして、その間隙をぬって規則的な弾幕が霊夢へと飛来する。

 難なく交わす霊夢だが、同時に周囲で止まっていた弾幕がまた動き出すのを見て、微かに口元を釣り上げた。

 不規則な弾丸に気を取られれば、規則的な弾幕に捉えられ、それを回避しようと集中すると、動き始めた弾幕にぶつかる。

 実に効率的で、そして何より綺麗な弾幕。空中で静止する弾幕は、僅かな光を反射し、キラキラと輝いている。

 

 

「どうだ、あたいの弾幕は!」

「そうね……難易度Hard(及第点)ってところかしらね」

「まだまだ……これからだよ!」

 

 

 知らず知らずのうちに、二人の顔には笑みが浮かんでいた。恐らく、本人たちは自覚がないこと。

 けれども、その勝負を端で見ていた大妖精(大ちゃん)はしっかりとその光景を目の当たりにしていた。

 

 

「(チルノちゃんがあんなに楽しそうな顔をするの、見たこと無かったなぁ……ちょっと嫉妬しちゃうかも)」

「(でも……よかった。チルノちゃん、最近ずっと笑ってなかったから……本当に良かった)」

 

 

 目の前では、やはりというべきか、霊夢が弾幕をかわし続けていた。けれども、その動きには余裕があまり感じられない。

 むしろ、霊夢をここまで追い詰めることが出来たチルノのほうが、目覚ましい成長を遂げたということなんだろう。

 やがて楽しい時間は過ぎ(スペルの効果時間が終わり)、無傷の霊夢と肩で息をするチルノの姿がそこにはあった。

 

 

「ふふん、やっぱり大口叩く割にはあたしに一発も当てられなかったわね」

「うぎぎ……次あった時こそは、一発当ててやるんだからなー!」

「ふーん? そう、頑張ってね」

「ムキーッ!」

 

 

 二人は穏やかな表情で会話をしている。詳しくは、霊夢がチルノを誂っているだけなのだが。

 霊夢は満足そうに一つ頷くと、チルノに語りかけた。

 

 

「――大分マシな顔つきになったじゃない。最後の方は、私も少し本気を出さなかったら危なかったわ」

「へっへーん、やっぱりあたいってばさいきょーね!」

「なーに自惚れてんの、そういうのは私を倒せるようになってから言いなさい」

「……倒せるかな? あたいに、霊夢が」

「急にしおらしくなって……大丈夫よ、この世界に不可能なんて無いわ。倒せるようになるとは思えないけど」

「ひどっ?! ……絶対いつか、超えてみせるわ」

「そう、それじゃ私はそろそろあの忌々しい霧を止めに行くから……頑張んなさいよ、チルノ?」

「……ッ! うん!」

 

 

 霊夢はそう言い残すと、霧の湖の中心、紅魔館へと飛び去っていった。

 それを大手を振って見送るチルノと、小さく手を振って見送る大妖精(大ちゃん)の姿があった。

 チルノは暫く霊夢が飛び去った方角を見ていたが、やがて振り返ると大妖精(大ちゃん)の方へ近づいてきた。

 

 

「チルノちゃん……」

「大ちゃん、あたい絶対強くなるよ。力だけじゃなくて、霊夢が言ってた心の強さも」

「ふふ……そうだね、倒せるようになるといいね? 霊夢さんのこと」

「倒せるようになるんじゃなくて、倒すんだ。これはもう確定事項!」

「そっか、それじゃ沢山頑張らないとね?」

「うん! 大ちゃんにも手伝ってもらうから!」

「あはは……お手柔らかに頼みます」

 

 

 二人の妖精は手を取り合うと、お互い微笑み合いながら何処かへ去っていった。

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 それからしばらくして、霧の湖界隈でやたらと弾幕勝負を仕掛けてくる氷の妖精が出没するようになった。

 薄めの水色の髪をセミショートの長さで切り分け、青い大きなリボンを乗っけている上にふわふわのウェーヴがかかっており、瞳も青い。

 服は白シャツの上に青いワンピース、首元には赤いリボンをつけていおり、その背からは氷の結晶のような羽を3対伸ばしている。

 決まって、

 

 

「さいきょーのあたいと勝負しろ!」

 

 

 といって襲い掛かってくる。勝負で此方が負けると、

 

 

「やっぱりあたいってば、さいきょーね!」

 

 

 と会心のドヤ顔で宣ってくるので、うざい事この上ない。

 しかしながら、きちんと実力は付いているようで、かなりの確率でドヤ顔を残して去っているとか。

 最近では、大ちゃんと呼んでいる大妖精と一緒に行動しているのがよく見かけられるとか。

 このことを知ったとある巫女は、盛大に視線を逸らしながら

 

 

「私のせいじゃないわ」

 

 

 と関与を否定(こうてい)したそうである。

 ちなみに、その妖精は週に1度の割合で博麗神社に出没するとかしないとか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッハ?!」

「? どうしたの、椅魔奈」

「あ、えと、どこかで主人公(わたし)がいないのに、物語が進んだ(関係が発展した)ような気がして」

「ふーん……? よくわからないや、椅魔奈の言ってることが」

「……あのー、フランさん? どうしてお手を握られてるんですか」

「殴れば元に戻るかなって」

「吸血鬼の腕力なんかで殴られたら一生戻らなくなっちゃう! お願いだからやめて!」

『キュー!』

「そっかぁ、残念……一発だけは?」

「上目遣いしてもダメなものはダメェ!」




チルノを⑨とルビ打ったことに悪意はない……ごめんなさい許してください。
ほら、なんかアレですよ……うん(言い訳が思いつかなかった
さて、今回は主人公椅魔奈は茶番だけやって去って行きました。もう一話くらい不在かもしれませんが、我慢してね!
では、次回また今月中に上げると思いますので、よろしくお願いします。
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