東方妹霧雨   作:低蓮

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更新遅れてごめんなさい……!
体の調子も仕事関係もだいたい片付いたので、久々の更新になります。

あぁ、更新期間こんなに開けて何言ってんだおまえ、と言われそうでうが、コラボ作品、憧れる響きですねぇ……
人がなかったら、誘ってくださってもいいんですよ……?(チラッ


今回は完全にシリアス回。椅魔奈が漸く本編に登場して激おこになるところです(チガウ

さぁ、この腐った卵のような文章力、とくとご覧ください……


人と魔法と能力覚醒@椅魔奈が本気を出したようです

 四方から襲いかかってくるナイフの群れを、右へ左へ、不規則な動きで避けながら霊夢は咲夜の戦闘スタイルをじっくりと観察していた。

 

 

「(……狙いは正確、私が真直ぐ飛んでいれば一発目で当てられるほど偏差撃ちが得意。それに……)」

 

 

 霊夢は手に持っていた針を咲夜に向かって投げつける。すると気がついた時には、咲夜の姿はそこにはなく思わぬところからナイフが飛んで来る。

 暫くお互いが手の内を探るかのような撃ち合いが続いていたが、二人はまるで打ち合わせたかのように同時に攻撃の手を止めた。

 

 

「……大体あんたの能力がわかってきたわ。最初は瞬間移動かと思ったけど、それにしてはナイフの攻撃にラグがなさすぎる。大片時を止める程度の能力、といったところかしら?」

「あら、必死に避けているだけかと思ったら案外冷静なのね。分かったところでどうにもなるとは思えなけど、あえて黙っておくことにするわ」

「別に、お互い小手調べだったことには気がついていたわよ。それに、私の考えが正しいならあんたに勝つのはそう難しいことではないもの」

「……へぇ、そう。だったら巫女様のお力を拝見と致しましょうか。【ミスディレクション】」

 

 

 咲夜は静かにスペルカードを掲げると同時、周囲に大量のナイフをばらまいた。それだけにとどまらず、次々と瞬間移動をしてこれまた大量のナイフを投擲する。

 四方八方から襲い来るそれを、霊夢は難なく躱しながら咲夜の能力についての考察を行っていた。

 

 

「(やっぱり、瞬間移動して大量のナイフを投げているというよりは、出現と同時にばら撒いている感じね。出現とナイフの投擲に殆どラグがないってことは、やっぱり時を止めてるのかしら)」

 

 

 やがて大量のナイフの雨がやみ、お互い疲労の色さえ見せずに再び対峙する。

 霊夢は冷ややかな、咲夜は上手く読み取れない表情を浮かべ、お互いがお互いを牽制する。

 

 

「あれ、もうスペルブレイク? 簡単すぎね、考え事をしている間に終わってしまったわ」

「ふふ、巫女ともあろう者が今のを本気だとでも思ったのかしら? 」

「余りに必死そうに弾幕を張っていたように見えたから、てっきり本気なのかと思ったわ」

「……その余裕、何時まで持つかしらね?」

 

 

 不敵に笑う霊夢に対し、何の感情も伺わせないまま咲夜はつぶやくと、また新たなスペルカードを取り出して静かに言葉を紡ぐ。

 

 

「【ザ・ワールド】」

 

 

 瞬間、霊夢には何が起こったのか理解できなかった。

 スペルを使ったあと、咲夜には何の動きもなかった。それは断言できる。

 スペルを唱えた場所で同じ姿勢のまま、霊夢に対して感情のこもらない眼差しを向けているのみだ。

 ただ一つ、スペルの前後で決定的に違っているものといえば。

 

 

「……ッく?!」

 

 

 気がついた時には喉元まで(、、、、、、、、、、、、)迫っているナイフのみ(、、、、、、、、、、)

 霊夢は咄嗟に手に持っていた針を飛んで来るナイフに向かって投擲し、体を限界までひねってギリギリのところでナイフをかわす。

 幾つかのナイフが巫女装束を切り裂き、霊夢の肌を浅く傷つける。

 ギリギリで躱しきったところで、霊夢はその場から飛びのき咲夜と距離をとった。

 

 

「ったく、乙女の柔肌になんてことすんのよ。それにこの服だってタダじゃないのよ? これはたっぷりと弁償してもらわないとね」

「あら、困ったわね。負け犬に支払う賠償金なんて、持ち合わせていないのだけれど」

「それなら心配いらないわ、負け犬じゃなくてこの私に支払うんだから」

 

 

 軽口を叩きながらも、霊夢の口元は若干引きつり、額には冷や汗が滲んでいた。

 さっきの攻撃、霊夢は見事に躱してみせたが、偶然の産物でしかなかった。

 偶々針がうまく軌道をずらし、偶々ナイフが一点に収束せずにバラけた。

 さっきの回避をもう一度やれと言われたのなら、霊夢は迷わず言ってきた相手のことを殴り飛ばしていたことだろう。

 それ程までに、先ほどの状況は危ういものだった。

 

 

「(こりゃ不味いわね。まさかここまでの長時間時を止められるなんて……。売り言葉に買い言葉であんな事いっちゃったけど、さて、どうしたもんかしらね)」

 

 

 霊夢は、普段はあまり物事を考えるのに割かない脳の容量を、ほぼすべて解決策を模索することに割く勢いで考え始めた。

 表情には珍しく焦りの色が見え、最低限周囲に注意を配り、あとの意識は完全に考え事に費やしていた。

 

 

 そんな霊夢を、咲夜はただ何もせずに見下ろしている。けれども、そんなことに意識を移す余裕など、今の霊夢には存在しなかった。

 

 

「(時を止める……つまり、一瞬なんて長く感じるほどの短い時間の中で、あいつは自由に動けるってこと。始末の悪いことに、私にはそれが一切知覚できない。ならどうする? どうやればあいつのスペルを破ることが出来る? あいつに向かって弾幕を張ったところで、時を止められて回避されるのが落ちだし、そもそもそんな余裕があるとは思えない。っていうか、私に止まっている時に干渉できる能力がない限り、その時の中を自在に動き回れるあいつに攻撃を当てられるわけないじゃない! ったく、とんだチートよチート)」

 

 

 霊夢が思わず咲夜を睨みつけると、当の本人は涼しげな顔で変わらずに霊夢を見下ろしていた。

 その表情を見て、更に苛立ちが募る霊夢。

 

 

「(あぁ、ったくもう! 何よあの涼しげな顔は! 確かに能力は凄いけど、だからって欠点がないはずはないのに…… あんの時止冷血女(メイド)め……)」

 

 

 苛立ちと思考が入り混じり、霊夢の感情をかき乱していく。

 初めての異変で初めての強敵。

 これといった対抗策が考えつかず、勝ちのイメージも浮かばない。

 圧倒的危機に見舞われた霊夢は、何かの意志に導かれるかのごとく能力を発動させ

 

 

「ったく、面倒臭いわね、全て」

 

 

 その全てを浮かせた(、、、、)

 

 

 彼女、博麗の巫女こと博麗霊夢の能力は、空を飛ぶ程度の能力。

 ただ空を飛ぶだけの能力だと侮る無かれ、この能力の真髄は他にある。

 空を飛ぶ、と一言で言っても飛び方には色々ある。

 何かの推進力で空気の抵抗を利用し、空を飛ぶもの。

 推進力を一切使用せず、ただ風をつかみ空を飛ぶもの(舞うもの)

 あるいは、己の力で風も抵抗も無視し、思うがままに空を飛ぶもの(翔るもの)

 霊夢の能力は、最後のものに分類される。

 そして、この能力の本質は何の助けも借りず、ただ宙に浮く(、、、、)こと。 つまり、空を飛ぶ程度の能力というものは、対象を浮かせる能力と言うことだ。

 

 

 そもそも、程度の能力とは個々が勝手にそう呼んでいるだけであって、統一された識別方法はない。

 相手が冷気を操る程度の能力だといえば、例え炎の攻撃しか行って来なかったとしても、その相手は冷気を操る程度の能力を持っているということになる。

 つまり、霊夢の空を飛ぶ程度の能力とは、霊夢が空を飛ぶ為にしか使うつもりが無かったからそう名付けただけであって、本当は違う、と言う可能性もあるのだ。

 

 

「全く、やってられないわよ。あんたみたいな面倒な相手、お呼びじゃないっての」

「あら、此処は私たちの住まいよ。お呼びじゃないのはあなたの方ではなくて?」

「ふん、私はいいのよ。でもあんたらは駄目ね」

「とんだ横暴だわ、博麗の格が知れるわね」

「元々私の前の代から、格なんて有ってないようなもんよ」

 

 

 先ほどまでの混乱はどこへやら浮かせて、今の霊夢は落ち着いた表情で地面に降り立ち、軽口をたたいていた。

 それだけにとどまらず、咲夜に向かってお札を投げつけ始める。

 狙いは乱雑で動かなくても当たらないようなものもあるが、ただならない雰囲気を察した咲夜は再度時を止め、ゆっくりと霊夢の方に近づいていった。

 

 

「(レミリアお嬢様からは適当に相手をしたら通せと言われたけど、私ですら満足に倒せない相手をお嬢様に会わせるまでもない。帰れと言っても聞かないでしょうし、此処で殺すとまではいかなくても、腕の一本や二本は覚悟してもらうかしらね)」

 

 

 手にナイフを持ちつつ、咲夜が更に数メートル霊夢に近づいた、次の瞬間。

 

 

「やっぱりね、来ると思ってたわ」

「…………は?」

 

 

 止まっていたはずの霊夢が突然動き出し、手に持っていた針を投げつけてくる。

 何が起きているか理解できなくとも、咲夜は長年の習慣に従って再度時を止め回避しようとし

 

 

「――うぐ……?!」

 

 

 止めることができず(、、、、、、、、、)、針を全身に浴びてしまう。

 

 

「く……一体何が……!?」

「残念ながら、私の周囲に結界を張らせてもらったのよ。あんたみたいに能力に頼りきっている、そんな相手のための結界をね」

「私が、能力に……?」

「そうよ、少し優勢になったからといって、能力を過信し、不用意に近づいてきた。違うかしら?」

「…………」

「残念だけど、あんたは妖怪じゃないみたいだし、御札の効果は薄そうなのよね。このまま剣山にされたい?」

 

 

 にっこりと笑みを浮かべる霊夢に、咲夜は一瞬鋭い視線を送った。

 けれども、すぐに苦笑いのようなため息をつきつつ、両手を上げて言うのだった。

 

 

「……わかったわよ、レミリアお嬢様の下に案内するわ」

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

 薄暗くジメジメしている室内を、まばゆい閃光がいくつも遮る。拡散された光の奔流は周囲のものを飲み込み、直後轟音を立てて炸裂した。

 そんな眩いばかりの、幻想的な戦闘を繰り広げているのは、白黒の魔女と動き難し知識の塊だった。

 

 

「さっきまでの威勢はどこに行ったのかしら? 段々弾幕の威力が落ちているように見えるけど」

「ははっ、えげつない防御陣展開しておいてよく言うぜ全く!」

「何を言っているのかしら、私が展開しているのは簡易型だし、そもそもそれを破れない貴女がいけないのよ?」

「全くそのとおりですよ、っと!」

 

 

 魔理沙は直線的な動きで大雑把にパチュリーが張った弾幕を迂回すると、八卦炉を構え魔法を連射する。光の槍のようなレーザーが何本もパチュリーに迫るが、その寸前で障壁のようなものに弾かれ、命中には至らない。

 魔理沙は軽く舌打ちをすると、新たに生成された弾幕を回避するべく、また迂回を始めるのだった。

 

 

 戦闘が始まってからこの方、パチュリーはその場で障壁を展開し、一方の魔理沙は常に移動をしながらパチュリーに向けて魔法を放つ、というサイクルがずっと続いている。

 当然、パチュリーはその場から一切移動していないため、余力も全て弾幕生成と障壁維持に回せるし、魔理沙は常に動かなければならないため消耗が著しかった。

 すでに魔理沙は肩で大きく息をしており、そんな魔理沙をパチュリーは冷ややかな目で見つめていた。

 

 

「(確かに威力はあるけど、それだけ。技も知識もない愚直な弾幕ね。これで倒せるのは精々が下級の妖怪、強敵にはすべての面で劣っている上に、負けず嫌いで感情に流されやすい、と……)」

「あなた、魔法使いに向いていないわ」

「はぁ?! 一体何なんだよ、突然!」

「貴女が魔法使いに向いていないと、そう言っているのよ。大人しく人間に戻って静かに暮らしていたほうが身のためだわ」

「……ッ! どいつもこいつも! 私を舐めるなああぁぁぁぁ!!」

 

 

 魔理沙が怒りに任せて弾幕を乱射するが、その殆どが外れた上に障壁に阻まれてしまう。

 そして、姿勢が不安定になったところに弾幕が襲いかかってき、危ういところでその場を離脱する。

 また大回りをして再度パチュリーを睨みつける魔理沙の顔は、その眼にはギラギラとした光が宿ってはいるが、表情は真っ青で冷や汗が吹き出していた。

 ハッキリとした、魔力不足である。

 

 

「感情が先走りすぎていて、体がついてきていない。魔力が切れたら唯の人以下だというのに、魔力の管理すらまともにできていない。これで、本当に魔法使いに向いているとでも?」

「五月蝿い! ご高説いただかなくても、私には私のやり方があるんだ!」

 

 

 魔理沙がそう叫んだ途端、パチュリーの表情がこれまでにないほど険しくなる。

 滅多に表情を表に出さない彼女だが、今は傍目からもわかるほど怒っていた。

 

 

「……いいわ、言葉でわからないというのなら、身体で解らせてあげる。貴女が言う『私のやり方』というものが、どれだけ無謀でバカバカしいかをね」

「――ッ! やってみろおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 魔理沙は激情に身を任せ、もはや弾幕ルールすら無視する勢いでパチュリーに突っ込んでいった。

 対するパチュリーはそれをじっと見据えながら、1枚のスペルカードを掲げた。

 

 

「【プリンセスウンディネ】」

 

 

 瞬間、パチュリーの周りに無数の水泡が浮かび、彼女を中心として放射状に放たれる。

 全くと言っていいほど隙間がない濃密な弾幕を前に、しかし感情に身を任せる魔理沙は突撃を選んだ。

 

 

「っは! こんなヘナチョコ弾幕に、当たるとでも――ッ?!」

 

 

 僅かな隙間を目ざとく見つけ、そこに身を押し込んで不敵に笑った魔理沙だったが、視線を正面に戻した瞬間に己の過ちに気がつく。

 もはや回避も叶わないほどの距離に、魔理沙めがけて飛んで来るレーザーが(、、、、、、、、、、、、、、、、、)迫っていた。

 咄嗟に防御陣を展開しようとした魔理沙は、不意に体から力が抜けていくのを感じた。

 

 

「な……なん……?」

 

 

 慌てて体に力を入れなおそうとしたが、体は言うことを聞かずに魔理沙は箒から投げ出されてしまった。

 その御蔭で運良くレーザーを回避することはできたが、代わりに魔理沙は地面を激しく転がる。

 激痛に呻きながら、尚も体を起こそうと躍起になっている魔理沙の前に、パチュリーが無言で近づいてきた。

 魔理沙はなんとか首を動かし、精一杯の皮肉を込めた笑みを浮かべながら、パチュリーに問いかけた。

 

 

「は……はは、満足か? だがな、いくら傷めつけられたとしても、私は考え方を変えるつもりは――」

 

 

 しかし、魔理沙の言葉は最後まで紡がれることはなかった。

 魔理沙はパチュリーと視線を合わせ、そして絶句する。

 何故なら、そこには自分の想像とは違い、とても悲しそうに見下ろしてくる(、、、、、、、、、、、、、、、)パチュリーの姿があったからだ。

 そして人の表情に機敏な魔理沙には、その表情が憐れみ等の他者を下に見るようなものなどではなく(、、、、、、)、ただ純粋に相手を思いやっているものであることを理解した。

 そして、理解したが故に解らなくなってしまう。

 何故、初対面の相手にこうも純粋な視線を向けられるのかも。そして、それを行っているのが他ならぬ目の前の大魔法使いであることも。

 

 

「……何のつもりだ? 私にはお前にそんな視線を向けられるような覚えはないぜ」

「さぁ、私にもよくわからないのだけど…… あなたを見ていると、どうにも放っておけないというか、放っておきたくないというか…… そういう気持ちになってしまったのよ」

「はぁ? おいおい、私は知らないうちに魅了の魔法でも使ってたってわけか?」

「それはないわ。あなた程度の魔力で私に魅了を掛けられるとでも?」

「正論なんだろうけど、なんだかムカつくな…… はぁ」

 

 

 魔理沙は完全に毒気を抜かれてしまったように溜め息を吐くと、苦笑しながら地面に力なく体を投げ出した。

 未だにこの大魔法使いが何をしたいのかはさっぱり解らなかったが、取り敢えずもう害意はないと判断して考え事に浸る。

 振り返るのは今さっきまでの自分の行動、そしてパチュリーの動き方である。

 

 

「(さっきまで頭に来ていたとはいえ…… ちょっと無鉄砲過ぎたな。私が散々弾幕を張りながら動き回っていたとき、あいつはその場で動かずに魔力も体力も温存していた…… そして私の魔力が切れた頃合いを見計らって仕掛けてきた。確かに、魔法を使っている以上魔力が切れたら何も出来ない。けど……)」

 

 

 魔理沙が瞼を閉じて物思いに耽る隣に、パチュリーは腰を下ろしながらそんな魔理沙の姿を見つめていた。

 一見何でもないような光景に見えるが、もし紅魔館の誰かがこの光景を見たら真っ先にパチュリーの熱を測りに行っただろう。

 パチュリーの興味は人ではなく、常に魔法研究に関係することだった。

 故に、魔法使いとはいえ自分よりも遥かに格下の相手に、こうも興味を示すこと自体、本来あり得る光景ではないのだ。

 そしてパチュリー自身もまた、今の状況に戸惑っていた。

 

 

「(さっきはああ言ったけれど、これは本気で魅了を掛けられた可能性を考えてみる必要があるわね…… こんなにも他人が心配で仕方がないと思ったことなんて、過去に一度もないわ。それに、私らしくもなく他人に説教なんて…… 本当にどうしたって言うのかしら)」

 

 

 悩んでも答えは出なかった。そしてそも、あまり悩むという行為をしないパチュリーにとって、それは新鮮であり、またどことなく懐かしい気分にさせられるのだった。

 

 

「……よし、決めたぜ」

「あら? 何をかしら?」

「やっぱり、私は考え方を改めるつもりはない。攻めて攻めて、相手が守るって言うならその護りごと攻めきる」

「……けど、それは――」

「――話は最後まで聞くもんだぜ。要は、数を撃つんじゃなく一発にすべての力を込めるんだ。そのための魔法も考えた」

「考えたって……今、この時間でかしら?」

「何か問題でも?」

 

 

 問題、ということはなかった。魔法を短時間で考えることは手数を増やす上で重要な事だし、そのために知識を積んでいると言っても過言ではない。

 強いて問題点を上げるとすれば、それは魔法を構築するまでの時間が(、、、、、、、、、、、、、)とてつもなく短いこと(、、、、、、、、、、)

 魔理沙は常人の、いうなれば普通の魔法使いと比べて、遥かに魔法の構築スピードが早い。

 パチュリーでさえ、たった十数分の間に高火力の魔法を構築するのは難しいだろう。

 

 

「(全く……色々と不思議な奴ね)」

 

 

 パチュリーは表情を表に出し、僅かに苦笑したあと首を振った。

 

 

「いいえ、何も。それで、このあとはどうするつもり? ご希望とあらば家まで送り届けてあげるわよ」

「ははっ、馬鹿言うなよ。まだ勝負はついてないんだ。もちろん続きをやるぜ、と言っても最後の一発勝負だけどな」

「そう、なら止めはしないわ。全力でかかってきなさい」

 

 

 二人はお互いに距離を取ると、向きあって対峙した。

 魔理沙は体の正面に八卦炉を構え、パチュリーは周囲に何重にも防御陣を展開する。

 先ほどたった一枚の防御陣すら突破できなかった魔理沙は、それでも不敵に笑いながらパチュリーに問いかける。

 

 

「本当にそれだけでいのか? 足りなかったって、後で泣き言言っても知らないぜ?」

「お生憎様、コレで十分よ。それよりも早く撃たないと、貴女の体力が続くかどうかのほうが心配だわ」

「言ったな……? それじゃ、とくと味わえッ!」

 

 

 一声叫ぶと、八卦炉に魔力を流し込む。

 大量の、しかし統一された魔力を流し込まれた八卦炉は不気味に振動し、その内部で魔力を増幅していく。

 そしてその均衡が有る点で崩れた時、その技は完成する。

 

 

 魔理沙は名前を考える際、非常に悩んだ。

 高火力技なら【~~カノン】でもいいし、逆に相手にインパクトを与えるような名前も悩ましかった。

 そして、一つの答えにたどり着く。

 その技は全てを上塗りする超重砲。

 そして、星々の輝きのように。

 いや、もはや稲妻の轟のように。

 全てを埋め尽くし、全てを圧倒せんと編み出した技。

 

 

 その名を――

 

 

 

 

 

恋符【マスタースパーク】

 

 

 

 

 

「――はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「……これは」

「弾けろ! マスタァァァ!!スパァァァァァァァァァク!!」

 

 

 魔理沙が叫ぶと同時、八卦炉から魔力の奔流が輝き飛び出す。

 それは真直ぐパチュリーのもとに押し寄せ、一瞬で数枚の防御陣を突き破り、そのまま鬩ぎ合う。

 パチュリーは一瞬呆けたようにその光景を見ていたが、慌てて防御陣に魔力を流し込み、補強を試みた。

 

 

「どうだ、やっぱり弾幕は火力だぜ!」

「――ッ! まさかコレほどまでとは思わなかったわ……」

「ははは、すぐに泣き顔拝んでやる!」

 

 

 尚も八卦炉に魔力を送り込み続けながら、魔理沙は高らかに笑う。

 すでにセリフともども完全に悪役のそれだが、この場にそれを指摘するものなど存在しなかった。

 やがて一枚、また一枚とパチュリーの防御陣が破壊されていき、残すは一枚だけとなる。

 鬩ぎ合うレーザーと防御陣。

 そしてそれを支える魔理沙とパチュリー。

 先に音を上げたのは――

 

 

「――んな?!」

「……ふぅ」

 

 

 魔理沙でもパチュリーでもなく、魔理沙の八卦炉だった(、、、、、、、、、、)

 突然放射していたマスタースパークがいびつに歪んだかと思うと、魔力を全て拡散させて沈黙してしまったのだ。

 

 

「うわ、くそ! こ、壊れたのか?」

「道具の管理もしっかりしなさいよ…… 貴女の魔力増幅器なんでしょう?」

「ぐ、ぐぬぬ」

 

 

 魔理沙は再度魔力を流しこむが、魔力が凝縮されること無く、拡散。

 何度か試した後、魔理沙は諦めたようなため息を付いてパチュリーに向き直った。

 

 

「はぁ、私の負けだぜ…… くそ、あと少しだったんだけどなぁ」

「ええ、そこは素直に驚いたわ。まさかぎりぎりまで追い込まれるとはね」

「……また今度勝負しようぜ。今度は万全の状態で挑みに来る。そんときゃ、絶対に負けないからな」

「えぇ、何時でも来なさい。魔術師としての画を見せてあげるわ――っと」

 

 

 魔理沙が差し出した手をパチュリーが何気なくとった瞬間、魔理沙の全身から力が抜けた。

 使った魔力は限界も限界ギリギリ。最後のマスタースパークも、残りカスを集めてはなったようなものだった。

 力のないパチュリーは魔理沙の体重を支えること叶わず、引き倒されるまま魔理沙に覆いかぶさる形となる。

 慌てて手を放し、地面に手を突っ張って魔理沙とぶつかることは避けたが、傍から見たらパチュリーが魔理沙を押し倒しているようにしか見えなかった。

 

 

「(ま、まず……こんなところレミィにでも見られたら、どれだけ囃し立てられるか……)」

 

 

 なんとか身体を起こそうともがくパチュリーをあざ笑うかのように、図書館入口の扉が勢い良くひらく。

 パチュリーは身体を固まらせて、恐る恐るそちらを伺ったのだが。

 

 

 入ってきた存在は、レミリアよりも数段、たちの悪いものだった。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

 時は十数分遡り、フランと椅魔奈(フランと椅魔奈とツッチー)二人(さんにん)である。

 正面入口から館の中に侵入し、なんとなく感じる魔理沙の気配を頼りに紅魔館内部を突き進む。

 というか、完全に超感覚に目覚め始めていたりする。

 

 

「次は……右! 右行くよ!」

『キュー!』

「っていうか、椅魔奈? 本当に感じるの? 私ですら全然感じ取れないんだけど……」

「感じるよ……お姉ちゃんの気配、手に取るようにわかる……!」

「あ、そう……」

『キュー?』

「うんごめん、なにか聞きたいのかもしれないってのはわかるけど、私椅魔奈じゃないから言葉理解できない」

 

 

 この時、すでに霊夢と咲夜は奥のレミリアのところへ向かっており、不在。

 さらに紅魔館内の戦闘妖精メイド達も魔理沙や霊夢が行きがけにあらかた撃ち落としているので、一切の戦闘を挟まずに椅魔奈達は先を急げた。

 そして、椅魔奈の対魔理沙感知レーダー網(かん)がビンビンに反応する扉の前までやって来る。

 

 

「……ここにお姉ちゃんが!」

「……あれ? ここって私が地下に行く前は確か……」

「今行くからねお姉ちゃん!」

「あ、ちょっと椅魔奈?!」

『キュー!』

 

 

 椅魔奈は一切の躊躇いを見せずに扉に手をかけると、一気に開け放つ。

 そのままの勢いで部屋の中に雪崩れ込むと、すぐに椅魔奈は動きを止めてしまった。

 

 

「い、椅魔奈? 大丈……え、なにこれどういう状況……?」

『キ、キュー―……?』

 

 

 慌てて後を追ったフランが見たのは、魔理沙の上に乗りかかるように覆いかぶさっているパチュリーの姿。

 そして、そんな光景を見て完全に機能を停止している椅魔奈の姿だった。

 

 

「こ、コメントしづらいんだけど……取り敢えず、何事もなか――――ッ」

 

 

 フランは言いかけ、途中で言葉をつまらせた。

 フランをしてそうさせたものの正体は、唯の威圧感。

 いや、威圧感というよりも、それはある種の激情の塊。

 そして何より、フランと馴染みの深いもの(、、、、、、、、、、、、)でもあった。

 

 

「なに……これ……?」

 

 

 そしてフランは絶句する。

 狂気に当てられたからではない。

 狂気を恐れたからでもない。

 なぜなら、狂気を発しているものが。

 

 

 

 

 

 初めての友達、偽りの少女(いまな)であったから。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

 わからない、理解不能(わからない)incomprehensible(わからない)…………

 僕は何だ? 私は何だ? 俺は何だ? 自分は何だ?

 

 

 わからない、わからないけど……一つだけ、わかることがある。

 それは、この脳裏を幾度と無くよぎる光景。その可能性。

 

 

 魔理沙が死んでしまう(、、、、、、、、、、)かもしれないという可能性(、、、、、、、、、、、、)

 

 

 それだけは絶対に許してはいけない、許すべきではない。

 お姉ちゃんを、彼女を失ってしまったら。僕は、私は、自分は……一体、どうやって生きていけばいいの? どんな顔で生きていけばいいの?

 

 

 ダメだ、考えがまとまらない。いや、そもそも考えられない。

 あぁ、もうこのまま、感情に身を委ねてしまおう。そしたらきっと、またいつものように(、、、、、、、)、気がついたらお姉ちゃんとまた会えるから……

 

 

 だから少女は、自ら意識を手放す。物語を押し流し、新たに書きなおすための言葉を、紡ぐ。

 

 

 

 

 

一人を中心に廻る世界(ソリチューディ・ターム)

 

 

 

 

 

「お姉ちゃんだけは……失わせない」




如何でしたか?

今回はいつも最後にある心温まる(?)トークはお休みです。
次回で紅魔郷は終了かな……一気に描き上げるぞ―!
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