七つ夜に朔は来る【未改訂ver】   作:六六

20 / 62
七夜編最終話 朔

 始まりがあれば、終わりが来る。

 終わりがあれば、先に何がある?

 

 □□□

 

 ふいに、目が覚めた。

 

 広い屋敷の中は誰もいなくて、痛いほどに静かで、僕は寂しくなって外に出た

 

 離れに向かっても兄はいなかった。皆何処に行ったのか分からない。中には敷かれた布団だけがあった。

 

 静かな夜に何処からか音が聞こえた。遠く耳を澄ませばそれが森の方からだと分かり、誰もいない事が嫌になって森に向かった。森の中は子供だけで行っては駄目だと言われていたけれど、誰もいない屋敷にいるのが怖かった。

 

 森は暗くて、冬の空気がシンと身体に痛い。息は白く、先も見えない暗がりを進んだ。

 

 流れる黒のヴェールに月の光は届かない。森は深く深く、先に何があるのか分からなくて、僕は少しドキドキしながら音の聞こえる所に進んでいた。

 

 ナニカが弾ける様な音、硬く乾いた様な音が、聞こえる。それはどこにだろう。

 

 森を進んでいると、誰もいなかった。人も、動物も、皆いなくなっていた。誰かとすれ違うこともなく、鳥の鳴き声も聞こえない静かな森が横たわり、夜には森の向こうから聞こえる音しかなかった。

 

 ――――――し、き―――。

 

 名前を呼ばれた気がして、そちらに向かう。

 

 ――――――――――わからない。

 

 広い場所に皆いた。

 赤い赤い、赤い地面。赤い水が、広がっていた。

 その中に、皆いる。だけど皆ナニカが欠けてて、バラバラになっていた。

 手がない。足がない。身体がない。頭がない。

 赤い水の中を泳ぐように、皆倒れている。

 

 ――――――――――わからない。

 

 誰かが僕の前に現われた。僕をバラバラにするために、やってきた。

 そして、誰かが僕の目の前に飛び出て、僕の変わりに倒れていった。

 赤い水を浴びる。

 僕の代わりにバラバラになった、お母さんと言う人は、そのまま動かなくなった。

 

 ――――――――――わからない。

 赤い水が目の奥に染みこんでくる。

 それを拭おうとは思わなかった。

 

 ――――――――――わからない。

 

 僕の前に、誰かが来る。僕をバラバラにするために、やってきた。

 ナニカ鋭いものをその手につけて、僕に向かって突き刺す。

 痛いとは、思わなかった。

 だけど力が入らなくて、そのまま地面に座り込んだ。

 この人は僕をどうするのだろう。

 僕を皆みたいにバラバラにするのだろう。

 

 そして―――――。

 

 

「―――――――――――――――――っ」

 

 

 その背中が、見えた。

 

 僕の前で、僕を守るように、その背中があった。

 半身は肌蹴ていて黒ずんだ藍色の着流しは破れていた。

 僕よりも少しだけ大きな背中は引き締まり、だけど細く。

 その左腕は短くなっていて、巻かれた白い布には赤色が滲んでいる。

 

 その背中は、なくならない。

 それに僕は安心して、涙が出そうになった。

 

 力がなくなって、僕はそのまま倒れてしまう。

 

 頭が靄にかかったように曖昧で、自分でも何を考えたいのかよく分からなかった。

 

 倒れて、空が見えた。夜の空に、月が独りぼっちで吊るされている。

 

 そして、思う

 

 ああ、何で気付かなかったのだろう。

 

 見やる空に浮かぶは、満月。

 

 

 

 

 今夜は、こんなにも、つきが――――――きれい―――――――――――だ―――。

 

 □□□

 

 七夜。

 

 その名を聞けば、混血の者は忌み嫌い、そして恐れた。人間の身でありながら混血を打倒する術を長の時をかけて練り上げてきた一族。それは最早本能に刷り込められた退魔衝動によるものもあるだろう。七夜の退魔衝動は何よりも恐ろしい。

 

 だが、それ以上に彼らが恐れたのは、その徹底振りにあった。

 

 暗殺のプロ、と言えば聞こえはいいかもしれない。徹底されたスペシャリスト。依頼達成の為に如何様でも身を振るその賢しさ。一族に伝わる技量もまた然り。その技法、手際のよさ。鬼神と呼ばれた七夜黄理の暗殺は芸術とさえ呼ばれたこともある。

 

 しかし、それ以上に混血が恐れたのは、その執念にあった。

 

 必ず殺すと書いて必殺。それを生き様の如きに体現させる集団。

 

 そのためならば、命を投げ出すほどに。

 

「おや、どこに行かれますかな?」

 

 暗い森の中、前線の掃討を完了し七夜殲滅へと向かった本隊へと合流するため、後方にて待機していた別働隊が森の中を進んでいる時だった。

 

 彼らの頭上、暗い森を構成する木々のひとつ、そびえる樹木の枝に座り込むように、一人の老人がいた。顔に刻まれた皺が枯渇した大地を思い起こさせるような老人である。

 

 その衣服、雰囲気から老人が七夜だと判断した別働隊は有無を言わさず老人へ発砲を仕掛けようとして。

 

「ふむ、数は大よそ五十を下りますか」

 

『!?』

 

 彼らの中心部に、突如として老人が現われた。

 

 先ほどまで腰掛けていた枝には姿は既になく、気付けばその場所にいた。まるで空間を飛んだかのように、音も気配も感じさせず、老人はそこで周囲を見渡していた。私兵隊が銃を構える。

 

「この老いぼれがあ!!」

 

 そのあまりの穏やかさに苛立ちを隠せなくなった混血の一人が、衝動的にその手にある銃火器で老人を射殺しようとする。

 

「いいのですかな?お仲間方にも当たりますが」

 

 老人の立ち位置。森を進む私兵隊の編隊のど真ん中である。老人を取り囲むようにして私兵隊はいるが、逆を返せばそれは好機とは一様に言いがたい場所であった。フレンドリーファイアを考慮するならば、この密集地帯で銃を撃つのは仲間に対して危険が伴う。

 

「っく!」

「ほっほ。それで良いのですよ」

 

 仲間への誤射を考えるのならば、銃の選択はナンセンスだと気付いた混血は舌を噛む。だが依然銃に狙われていることに変わりない。

 

 戦力は歴然である。老人には見たところ武器らしいものはない。黒衣の老人は丸腰に見える。既による殺害も出来なくはないが、それは効率が悪いだろう。其れに対し私兵隊は銃火器をそれぞれ所持し、今も尚老人を狙っている。もし何らかの動きがあるのならば射殺の可能性は充分あるが、しかしたった一人相手にわざわざフレンドリーファイヤの危険性を抱える必要はない、と私兵隊は判断した。

 

 だが、七夜に対し近接戦闘を挑むのもまた不安であった。混血たちは確かに人間以上の力を秘めているが、七夜はその混血に対し暗殺を仕掛ける一族。身体能力は計り知れず、先ほどの移動を見てもそれははっきりとしている。

 

 故に私兵隊は勇んで行動するのが憚られる状況にあった。

 

 それを肌で感じながら、老人、翁は言った。

 

「さて、ここで皆さんに教えておきたいことが御座います」

 

 その口調は朔や志貴に話しかけるのとはまた違った穏やかさ。その中には見逃すことも出来ぬ冷たさがあった。

 

「皆様が現在お立ちのこの場所。実は地雷原でしてな」

 

「「「!?」」」

 

 翁の言葉に驚愕した私兵隊は慌てて地面を見やる。そこで動き出さないのも、彼らの経歴を表している。

 

 しかし。

 

「いや、ここは正規のルートなはずだぞっ?」

 

 兵たちの動揺を抑えるように一人の混血が言う。確かに、今彼らがいる場所は罠なども設置されず、また植物たちの襲撃にも逢わない安全なルートとして教えられている。そのような場所に、地雷原があると聞かされても、其れが果たして真実なのか判別はつかない。

 

「まあ古いものですから、最近は作動しないモノも多く御館様には全品交換を申し立てているのですが、なかなか巧くゆかぬものでして。なので踏んでも別に問題はないのです」

 

 困っているように翁は頭を掻いた。

 

「しかし、このまま放置していても罠として活用できぬ。それで私は考えたのですが、これを地雷としてではなく、ただの爆弾として使ってみればいいのではないかと思ったので御座います」

 

 

「なので、皆様。ここで私と死にましょう」

 

 

 翁の発言にこれから何が起こるか思いついた混血たちは慌てて翁を射殺しようとするが、それは七夜を相手取るにはあまりに遅すぎた。いつの間にか翁の手に握られた起爆の仕掛けらしきスイッチが目に入った。

 

 ―――思えば、随分と遠くまで来たものだ。

 

 七夜として、存分に生きた。老年に差しかかろうとも一所懸命に生きたつもりだ。

 ここ数年では、今まで感じたこともないような穏やかな日々を過ごした。

 暗殺集団として長い間生きた翁には、そのあまり血生臭くない日々がとても楽しかった。

 

 志貴様、朔様。

 懸念は二人。

 二人は未だ幼子。ここで生涯を閉じるか、はたまた先を見出し生き残るか。

 

 そこで翁は思考を振り払った。

 

 いや、自ら死にいこうとする人間が、そんな事考えてはいけない。未来は未来を見るものが考えればいい。

 

 黄理の助けに間に合うことも出来ず、辿り着いた時には全てが終わっていた。そして、燃えさかる草原に黄理の亡骸を見て、翁は七夜の終わりを悟った。

 

 嗚呼、不甲斐なし。黄理の相談役でありながら、死ぬその時に立ち会うことすら出来ず。

 

 なので、翁はここで死ぬ。死んでいく。

 

 ただ、一人のまま死ぬのは御免被る。

 

 やはり、翁は七夜だった。

 

 死ぬ時は、殺して死ぬ。

 

「今、向かいます。御館様」

 

 仕掛けを発動する。

 

 地面からの激しい爆発に翁の思考は一瞬で消えた。

 

 その爆発の向こうに、黄理の姿が見えた。

 

 □□□

 

 其れの登場に、時が止まる。声を上げることが出来た人間は、其処にいなかった。

 

 軋間紅摩。赤い鬼神。

 

 其れの存在に、皆恐怖を抱く。紅摩の肉体から放たれる威圧感。人間サイズの生命でありながら、その規格は人間以上の化物であり、今まで出会った混血共を遥かに凌ぐ事が最早瘴気となって七夜に伝わる。それが、彼らの目の前に現れたのである。

 

 紅摩を見た七夜たちは、経験ではなく直感で、その存在が朔を瀕死に追い込み、梟の言を信じるならば黄理を殺した相手であると知った。

 

 そして、それは立つ事も出来ぬ女の腕の中に朔の姿を見つけると、しばし時を置いて女の下に歩み寄り、そのままゆっくりと腕を振り上げて。

 

 造作もなく、それを、振り下ろした――――。

 

「―――――――――っ!?」

 

 鉄槌めいた腕が放たれる。見掛けからして鋼の如き硬さを持った筋肉によって振り下ろされた一撃は、あっけなく女を磨り潰し、出来の悪い標本のような体を成す―――。

 

 悲鳴が、聞こえた。

 

 だがそれは、女の声ではない。

 

「何をしているのです!早く朔様をつれてお逃げください!」

 

 紅摩の身体に三人の七夜が張り付き、その急所に己の武器を叩き込んでいた。首に、動脈に、心臓に、鋭利な刃物が切りつけられていた。

 

 心臓の辺りに長刀を突き立てた七夜が言う。焦燥を隠すこともなく、鬼気迫る表情を浮かべながら、動くことも忘れ呆けている女に叫ぶ。

 

 七夜の攻撃に対し、紅摩の身体は無傷。かつては現役で活躍し、幾度も暗殺を行ってきた三人の攻撃に紅摩の身体は皮膚さえ傷つけられない。

 

 女はその絶叫に身を一瞬強ばらせ、思い出したかのように力も入らぬ足を無理矢理立たそうとして。

 

 その顔に、肉片がついた。

 

 そして、女は見た。

 

 先ほどまで紅摩に取り付いていた七夜たちが、腕の一振りのみによって、無残に身体が千切れていく様を。ある者は腕を、ある者は首を、ある者は胴がなき別れを果たす。一体どういう膂力を持ってすれば、そんな結果が生み出せるのだろうか。

 

 撒き散らされた肉と血が地面に赤い花を咲かせ、紅摩は返り血に更なる紅みを増す。ただ無造作に振られた腕に秘められた桁違いの力。確かに、其れと同じ結果を生み出せることは可能だろう。だが、それはこのような力技の成せるモノではない。

 

 崩れ落ちる七夜。紅摩の前に彼らはあっけなく死ぬ。

 

 そしてそれらを一瞥することもなく、紅摩は再び歩み始める。

 

「―――――っあ、あ、ああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 女が動けたのは偏に恐怖であった。恐怖に身体がすくみ、生存本能が逃走を促した。ふらつきながらも立ち上がろうとする女は、腕の中にいる朔を決して離すまいと抱きしめた。自身が七夜であるとか、敵前逃亡だとか、そんな事は頭に過ぎることはなかった。ただ、女は紅摩から離れたかった。

 

 恐怖に駆られた身体は反転する暇すら惜しいと、閃走によってその場を離脱し―――。

 

 眼前に突如として、紅摩が出現した。

 

「―――――っ!」

 

 恐怖に竦む肉体と言うのはどうしようもなく反射能力に鈍る。精神が恐慌状態であり、正常な心理状態でない今、女の動きは僅かに遅く、その遅さを紅摩が狙わぬはずがない。今まで朔や黄理に翻弄されていたのは、紅摩の反射能力がその疾さに適応できなかった事に他ならない。しかし、今や紅摩はその二人さえ撃破し、それ以下の使い手である七夜に追いつけぬ道理はない。それを証明するように、紅摩が先ほどいた地面は爆発的な踏み込みに割れていた。

 

 目前に現われた紅摩の姿に恐怖しか抱くことの出来なかった女の判断能力では、紅摩に太刀打ちは出来ない。足が、止まった。

 

 瞬きほどの膠着に動きの止まった女を嘲うかのように、無慈悲な一撃が迫る。それは中国拳法にある崩拳と呼ばれる打突に似ていた。風を突き抜ける轟音を生み出し、拳は女を撃ち殺そうとして。

 

「!!!!!!」

 

 風が、紅摩の動きを止めた。

 

 急激な突風。それは七夜のものだった。回避できぬ女を引っ張りその場を離脱させる。その刹那の中に行われた動きに、紅摩は狙いを外し拳は空を切る。

 

 そして、その場に七夜たちが現われた。突然の攻防、紅摩の異常さに動きを忘れた七夜たちが紅摩を殺そうと動く。

 

「っ駄目だぁっ!!」

 

 それは誰の悲鳴だっただろう。

 

 悲鳴を無視した七夜たちは急激な加速と共に紅摩を撹乱させようとするが、それには反応すら示さない紅摩に一気に攻勢をかける。

 

 そして惨劇が始まった。

 

 紅摩の命を狙った七夜の数七人。

 

 その悉く、あっけなく死んでいく。

 

 ある者は心臓を狙い急襲をかけ、その頭が拳に爆ぜた。

 

 ある者は後方から走り寄り、胴回し回転蹴りに上半身を失った。

 

 ある者は頸部を狙い上空から滑走し、そのまま頭を握られ人外の握力に潰された

 

 死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。

 

 大よそ尋常の死に方ではない。まるで枯れ花のような脆さで、人間が形を変えていく。そして七夜は知った。これに自分たちは太刀打ちできない事を。

 

 立ち向かってきた七夜を破壊した紅摩の姿は正に鬼神の如く。

 

 返り血が月光に照らされ、人間の力の及ばぬ存在の姿をまざまざと映し出す。

 

「待たんか糞餓鬼っ」

 

 走り寄る声の主、刀崎梟は愉悦交じりの嘲笑ではなく、その顔に憤怒を塗りたくり紅摩を睨む。その視線の鋭さは大きな眼と相まって爬虫類を思わせた。

 

「おい軋間。……てめえ今何しようとしてた?」

 

 腹の底を震わす、怨嗟さえ込められた声に紅摩は無反応を示す。その瞳は梟を見ていない。ただひたすらに、女の腕の中にいる朔だけを見つめていた。何を考えているか判断は出来ない瞳だが、その狙いは明確だった。

 

「ふざけんなよ?こいつは、俺のだ。餓鬼はすっこんでやがれっ」

 

 応えなき紅摩に梟は紅摩に歩み寄ろうとした。

 

 だがそこに、七夜の悲鳴が聞こえた。

「遠野を確認っ!来ます!」

 

 其れを聞いた七夜たちは悪化していく状況に舌打ちを漏らす。鬼神軋間紅摩、更に遠野私兵隊。明らかに危険なのは紅摩である。だが、私兵隊も危険であることに変わりはない。

 

 黄理も生存不明。七夜に生還の術はない。

 

 そして。

 

 銃声。

 

 それに合わせ、七夜が動いた。

 

 皆殺しを心に秘め、七夜は動く。

 

 紅摩には敵わない。だが、それでも殺してやると、今誓う。

 

 今現在確認されている遠野私兵隊の損害は全体の約三割。

 

 そして七夜の残存兵力五十二名。状況は圧倒的不利。形勢逆転の策はない。

 

 虐殺が、始まった。

 

 つんざく悲鳴。鳴り止まない銃声。

 

 七夜が死ぬ。七夜が死ぬ。七夜が死ぬ。

 

 銃弾を掻い潜り、混血の懐に潜りこもうとする七夜を別の混血が狙い打つ。

 

 闇夜に紛れ襲撃をかけようとする七夜が十字砲火に粉微塵と化す。

 

 そして接近した七夜には混血としての能力で打倒する。

 

 七夜は暗殺を担う退魔の一族であった。それは正面から混血と対峙することの危険性を充分承知の上での選択であり、それ以外では劣る事の証明であった。人間としては上位の領域に入り込む規格であろうが、それは混ざり者の混血に対しては、あまりに力不足。それゆえの暗殺。

 

 しかし、今この時、七夜の暗殺術は完全に封殺されていた。

 

 暗殺とは気付かれずに果たすものであり、気付かれてでは遅すぎる。

 

「―――――――――っ!!」

 

 また、一人、死んだ。

 

 男も、女も、子供さえも関係なく、混血の暴力に生絶えていく。

 

 死体が積み重なる。血が湖のようにたまっていく。

 

 その光景を、私は加速しながら呆然と眺めていた。

 

 死ぬ、死ぬ。死ぬ。

 

 溢れかえる死のにおいに、硝煙と血が混じる。それは今まで嗅いだこともないような臭いで、私の鼻を詰まらせる。

 

 周囲は混血によって囲まれている。包囲網は徐々に狭まり、この虐殺に終わりを告げるのだろう。七夜の滅亡と共に。

 

 感覚が麻痺している。あれほど恐ろしかった混血が近くにいると言うのに、それが現実感を抱かせない。これは私がおかしくなったのか。混血が可笑しいのか。

 

 しかし、それでも朔だけはやらせはしない。

 

 生き残りはどれほどいるのだろうか。

 

 判断はつかない。七夜と混血が入り混じり、殺し合っているのだから。

 

「――――――っち!」

 

 駆け回る私の肩に、銃弾が掠る。肉が多少持っていかれたがまだ大丈夫。朔には及んでいない。それに、アレと比べれば遥かにマシだ。

 

 背中に悪寒。

 

 

 急激な旋回に膝が悲鳴をあげるが無視する。視界を流れる惨状の光景は加速し、それを判断する暇もなく、足首の力で前方へ回避する。息を吸い込んだ瞬間血煙が肺に入り込む。耳をつんざく轟音。回避した後方を見やると、地面が割れ、砕けていた。そこには地面に拳を突き立てる紅摩の姿。あれを喰らっていたら、などと考えたくもなく、人知を超えた力の一撃が私に向けられてきている。それを回避するのに必死で、その他の混血に対し注意が払えない。

 

 アレに比べれば、銃創はまだ可愛げがある。喰らえば傷どころではなく、ただの肉塊。

 

 軋間紅摩の存在が状況をさらに悪化させていく。朔を狙い続け、朔を抱く私を必要に狙ってくるが、それを刀崎梟が邪魔する。しかし紅摩の蹂躙に、紅摩を狙った七夜は原型を残さず破壊された。

 

 紅摩の発する熱気、圧力。人外の気配に感覚が狂う。

 

 しかし、私にはやるべきことがある。

 

 朔を連れての脱出。

 

「っくそ!」

 

 激情が破裂する。

 

 一族を見捨て、朔を助ける。それが、酷く悲しい。

 

 だが、そんな私の嘆きなどこの地獄を彩る事もない。

 

 炸裂するマズルフラッシュに夜が光る。

 

 銃声の果てにまた誰か死んでいく。

 

 ―――――託された。朔をよろしく頼むと。

 

 里にいる七夜の全てが、朔の事を心配し、生きていく事を願った。

 

 皆、朔の事など、考えていないものだと思った。

 

 朔に関わらぬ者共に憤りと嘆きを抱き、彼らを恨んだ事さえある。そして何故朔はこのような生を強いられているのかと、自らを棚に上げ、悲しんだ事もあった。

 

 しかし、それは私の思い違いで、皆朔の事を大事にしていたのだった。それに気付きもせず、私は何も出来ず。なんて愚かな女。

 

 だから、朔を助ける。それが私に出来るたった一つの事。

 

 何とかして密集する混血たちを出し抜いて、この地獄と化した森を脱出し、朔を医者に連れて行かなくてはならない。

 

 そして私は――――。

 

「―――――――――――――――――あ」

 

 胸に、痛みを感じた。

 

 背中から、ナニカが突き抜けて、肺を食い破った。それは私の心臓すらも打ち抜いて、そして朔に掠りながら飛び出した。

 

 弾丸は、周囲の肉を焦がしながら、私を打ち抜いたと気付くのに少し時間が掛かった。流れ弾。戦線を離脱する私に、偶然にも打たれた弾丸が、私の命を打ち抜いたのだ。

 

「――――っくう!!」

 

 一瞬の間を置いて、苛烈な痛みが襲い掛かる。火傷のような痛み。

 

 しかし、足を止めない。

 

 こんな所で、倒れることは出来ない。

 

 未だ、戦線の中にいる。ここで倒れることは、朔が巻き込まれることにある。

 

 朔を死なせはしない。未だ腕の中に生きているのだ。

 

 足は動く、まだ動く。

 

 喉から血がこみ上げてくるが、朔にはかかって欲しくはないので、それを無理矢理飲み込む。胸が痛い、傷が痛い、心臓が痛い。心臓は人間の急所でしかない。全身へ血の運搬を行うこれが損傷してしまえば、死ぬ。

 

 だが、それでも動く。

 

 心臓は破損部分を無茶に動かし、何とか稼動している。しかしそれがいつまで持つのか分からない。

 

 それでも、動く。

 

 この全身全霊に、身体に熱が生まれる。それは死ぬ直前の前触れ、蝋燭の灯火が消えかかる時、激しく燃え散るように、最後の一片までその存在を示すのと同じ。

 

 だが、今ではない。死ぬにはまだ早い。

 

 足を踏み出す。私は、こんな所で、朔を死なせるわけにはいかない。

 

 しかし、現実は無情だった。

 

 逃げようとする私をせせら笑うかのように、背後に威圧感。

 

 再び、来る―――――!

 

 しかし、その一撃を回避することは、私には、出来なかった。

 

 足を、破壊された。

 

「が、あああぁ!?」

 

 水面蹴り。地をから救い上げるような一撃が、肉体を抉り、骨を破砕した。

 

 たまらず、踏ん張ることも出来ず、地面に倒れた。

 

 後方を見やる。血の流れ。胸の地が、朔を濡らしている。

 

 拭う事も出来ず、胸元の血を止めることも出来ない。

 

「……」

 

 そんな私を、それは見続けていた。

 

 まるで、お前のことなど興味がない、と。そして、朔を見ている。

 

 僅かに上がる口角は、笑み。

 

 死なぬはずと、誓いながら、このざま。

 

 虫けらのように。

 

 腕の中、朔を見つめる。

 

「朔……」

 

 そこには、私の知っている、朔がいた。私の好きな、朔がいた。

 

 意識が、消える。

 

「さ、く」

 

「ごめんな、さい」

 

 □□□

 

 そして、物語は終幕を迎える。

 朔。それは始まりであり、始まりの前に終わりを告げる。

 

 漂う。

 

 揺蕩い、彷徨い、意識は散り散りとなりながらも、この柔らかく温かみのある暗闇をあてもなく漂い続ける。先の見えない暗い闇は真っ黒で光も見えなかった。果ては見えない。いや、果てはあるのだろうか。何となくそのようなものは何処にもないような気がした。

 

 幾程の時の中を揺られ続けた。不快ではない。疑問も浮かばなかった。ただそれを受け入れようとした。居心地のよい無の空間に己と言う存在は何処までも広がっていき、肉の持たぬ意識は固体としての定義を曖昧にさせた。

 

 だが、自分は何故ここにいるのだろう。疑問ではなく、漠然とそう思った。

 

 記憶はない。覚えもない。ただ、気付けばここにいた。

 

 それを不思議とは感じなかった。不安を覚えなかった。しかし。この音も聞こえないこの場所、あるいは世界が、自分の居場所のように思えて仕方がなかった。沈黙にも似た深遠だけがこの場所にはあった。静かですらない、無音。

 

 そこで、ふと思った。自分は死んだのだと。

 

 そう思えばあとは楽だった。曖昧模糊な所在はつまり死んだ自我そのものであり、故に肉を持たないのだ。そして自分は死んだ精神が漂った状態で、果てもなくあてもなき存在でしかなく、精神であるからこうやって思考を重ねることも出来るのだと。それに対し何も思わない。だがそれが自然な事だと思った。

 

 しかし、疑問が生まれた。肉も持たぬ身であるならば、何故温もりを感じるのだろう。漂っていると分かるのだろう。考えを巡らせども、答えらしい答えには辿りつかなかった。

ノイズ交じりの音声の果てに、見えた。

 

 それは誰かだった。誰かの背中だった。

 

 大きく、其れでいてしなやかな造りをした背中であった。自分は、確かいつもそれを、見つめていたような気がする。見るようなものが何もなかった生に、遠くに見えた人の背中だった。周囲に人はいなかった。誰かはいた気がする。だが、それを果たして見ようとも思わなかった。

 

 その人は、その人だけが見えた。誰もいないような空間に、生に、その人だけが現われた。だから次第に自分はその人の背中を目で追っていた。

 

 ―――――――――。

 

 景色は変わる。

 

 自分は立ちながら、誰もいない空間、目の前に現れたその人を観察した。その人は男だった。目つきは鋭く、何を考えているかも分からないような無表情だった。男は御館様と呼ばれていた。だから自分も御館様と呼んだ。

 

 御館様が自分に話しかけてきた。そうだった。御館様が自分に話しかけるとき、自分はいつもそれを真っ直ぐに聞いていた。

 

 ―――――お前が、朔か。

 

 朔。それは確か、自分の名前だったような。そうか、自分は朔と言うのか。

 

 ―――――――――。

 

 景色は変わる。

 

 朔は自分の腕と同じくらいの長さがある刃物を持っていて、それで目前に佇む御館様に斬りかけた。

始めての訓練。自分の一族は訓練を重ねる一族なのだと教えられ、そうなのかと納得した。しかしそれは届くこともなく、朔は刃物の重さに負けて転んでしまった。その時御館様は見ているだけで、朔には手も貸さなかった。転んだ朔が立ち上がるのをじっと待っていた。

 

 その佇む姿を、朔は見つめていた。

 

 ―――――――――。

 

 景色は、変わる。

 

 訓練の途中のことだった。組み手に失敗し、手の骨が折れた時、御館様は黙々と添え木を当てて手当てをしてくれた。その表情は少しだけ柔らかかった。

 

 景色は、変わる。

 

 景色は、変わる。

 

 景色は、変わる。

 

 変わる景色の全てに、御館様がいた。

 

 次第に朔は御館様しか見えないようになっていった。様々な人間がいた気がする。誰かが話しかけたような気がする。だが、誰も側にはいなかった。御館様だけが、見えた。それを自分は何も考えず、ただ見続けていた。その背中を、姿を、追いかけていた。

 

 しかし、それはある時変化があった。

 

 ―――――――――。

 

 突然現われた異物。朔の側に其れはいた。それは子供で朔よりも幼く、其れでいて子供らしかった。そして志貴はそれが御館様の子供であると理解していた。とりつめて関係らしい関係も今まで持っていなかったその子供の提案に、朔は答える術もなく、ただ受け入れた。そうして朔の側にその子供はいつの間にかいるようになった。

 

 子供は気付けばそこにいた。朔が今まで知らなかった知識を誇らしげに話し、父である御館様の事を自慢げに話していた。更に表情をころころと変え、いつも楽しそうにしていたのを覚えている。

 

 時には何もしない日もあった。遊ぶわけでもなく、朔が住んでいた離れの縁側に朔が腰掛け、その隣に子供は寄り添うように座った。交わす言葉は少なく、しかしそれでも子供は側にいた。次第に朔はそれを受け入れていた。

 

 景色は生まれては消え、そして霧散していく。

 

 そしてまた景色は変わる。

 

 ―――――――――。

 

 朔の視線の先に、御館様と子供がいた。

 

 二人は朔の視線の先で話し合っていて、時折子供がじゃれ付く様に御館様の身体に寄りかかっていた。それを御館様は受け入れて、少し笑んでいた。その光景には温かさがあった。穏やかさが、あった。そしてそれは、朔には無い物だった。

 

 それを朔は見続けていた。

 

 二人は朔に気付くわけでもなく、ただ楽しそうにしていた。そして朔にはその光景がよく理解できなかった。二人が親子として戯れていると言う認識は出来た。ただ、それに何の意味があるのかと考察し、朔には答えがなかった。

 

 あんな風に、誰かと戯れた記憶がなかった。だから、理解できないのだと、思った。しかし、そこにある感情、穏やかな笑み、空気、それは朔にはないのものと理解はした。そして二人がどこか遠くにいるような、朔だけが遠くにいるような、そんな感覚を味わった。

 

 それを朔は、見続けた。

 

 ――――――――よく、やった。

 

 暗闇にそれは見えた。

 

 朧気で、今にも霞んで消えてしまいそうな視界に、御館様はいた。いつもの無表情でありながら、御館様は朔に笑んでくれた。その腕は、その身体は温かかった。

 

 何か、聞こえた。

 

 ――――――――戻って来い。

 

 静寂の世界に音が生まれた。

 

 何処からか聞こえてくるそれは、確か誰かの声だったような気がする。いつも傍らにいたような、気がする。だが、身体が何かに包まれた。それは少しだけ朔に温もりを与えてくれた。

 

 ――――――――志貴の事を守ってあげてください。

 

 沈黙の世界に音が生まれた。

 

 何処からか聞こえてくるそれは、確か誰かの声だったような気がする。いつもどこかで聞こえていた声だった。そして、あの子供が志貴であることを思い出した。それを頼まれたのかどうかは定かではない。だがその人の手は穏やかだった。

 

 連続する記憶の断片を掠れた意識のままに朔は見ていた。

 

 それはどこか淀んでいて、今にも消えてしまいそうな映像だった。

 

 そして、それを聞いた。

 

 ――おっちんじまったんだよ。それはつまり、糞餓鬼、黄理も含まれてんのさ。

 

 急速に広がっていた意識は集まり始め次第に質量を伴い、ひとつの集合体と化した。それは朔の意識、朔の自我であった。ただ薄れていくばかりの精神は今この時、再び朔としての意味を見出した。

 

 死。死。死。

 

 御館様が死んだ。

 

 御館様が、死んだ。

 

 御館様、が、死んだ。

 

 おやかたさまがしんだ。

 

 おやかたさまが、しんだ。

 

 おやかたさま、が、しんだ。

 

 記憶の中の黄理を思い出す。圧倒的強さを保持する黄理が、死んだ。死ぬのか。御館様でも死ぬのか。朔よりも強い、御館様でも死ぬのか。

 

 ………………………………………………………………………………………。

 

 ………………………………………それは、如何ほどの化物だろうか。

 

 殺す。肉体が脈動を始めた。

 

 殺す。殺す。だが、精神では動かない。

 

 殺す。殺す。殺す。最早朔の意識は肉体に動かす力を生み出せない。

 

 殺す。殺す。殺す。殺す。だが曖昧な意志はある。

 

 殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺気ではない。

 

 殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺意が精神を塗りつぶし、それに肉体は反応を示す。

 

 殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。

 

 殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」

 

 咆哮。

 

 それは、そうとしか言いようのない、まるで雷鳴のような絶叫だった。

 

 蠢く。それは、子供の姿を借りた悪鬼であった。

 

 跳ね上がる。息絶えた女の拘束を抜け出して、それは宙に飛び立つように跳ね上がった。

 

 起き上がることも出来ぬ肉体にありながら、朔は動いた。地に降り立つ朔の姿は奇妙な出で立ちであった。佇むそれに下を俯き、肩を落とした様は動く死体のよう。その眼光は濁り、意識があるようには見えない。ただ、その瞳の蒼は深く、全てを映し出すかのように深い蒼である。 

 

 そして、それを確認できたものは、ほとんどいなかった。空に響き渡る絶叫に何事かとそちらを見れば、それは既にその場にはいなかったのである。そして、その近くにいた混血の襲撃者はいつの間にやら首を失ったのだ。

 

 首のない死体。引き千切られたように首を無くした混血は血をその頭のなくなった断面から噴出させて倒れていく。鎌鼬のにも似た所業に気付いた混血は警戒心を強める。だが、それも甲斐なく、その全てが首を奪われた。

 

 そして、それは軋間紅摩にも襲い掛かった。

 

 それの存在を見た紅摩はその顔に凄みさえ感じさせる気迫を張り付かせ、不可思議な惨劇に躍り出た。その合間にも首なし死体が生み出されていく。それに向かい、地面を砕きながら紅摩は突進していった。

 

 何処にいるかは正確には分からない。だが、紅摩の目は確かにそれを見ていた。

 

 それを頼りに、紅摩は拳を振りぬき。

 

 ――――その首に、手があった。

 

「―――――――――!!」

 

 僅かな感触を頼りに、その場所に向かって拳を伸ばしたが、それは空を切る。しかし、首にあった圧力は消えうせ。

 

 そして、それを見た。

 

 地上に、朔がいる。

 

 せせら笑うかのように、月の元、その姿を曝け出した。血の赤の川に。

 

 アンバランスな姿。手当てしたばかりの包帯には血が滲んでいる。

 

 蒼い蒼い瞳は輝きを放っているが、それは意識ある者の目ではなかった。

 

 なのに朔は動いている。意識のない身体が、動くと言う事実。

 

 だが、それを考慮することも出来ず、紅摩、そして朔の存在に気付いた混血、あるいは七夜はそれを見た。

 

 頭。

 

 朔の片方の手に、頭が掴れている。

 

 そして、その口にも頭が咥えられている。引き千切られた筋肉繊維に噛み付き、人間の頭部が揺れて

いる。

 

 それは、いっそ恐怖と呼べる感情を混血たちに与えた。それは紅摩もまた然り。そして、七夜もそうだった。

 

 ナニカとんでもない者の生誕を垣間見てしまったような、そんな気配。

 

 そして朔は、宙に駆ける。

 

 その背後には、憎らしげな満月があった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。