カマイタチ・アポカリプスの舞う風が吹き抜ける。そのスピードを凌駕するように、ファルベの剣捌きが冴える。
『このっ!僕の一撃を受け流すなんてッ!許されるはずはないッ!』
やっけになって、スピードに身を任せた荒い太刀を繰り出していくカマイタチ・アポカリプス。だが、ファルベは完全に受け流すスタイルを取る。
「……荒いッ!ハッ!」
カマイタチ・アポカリプスが一撃に力を込めたと判断するや、タクトライザーを車輪のように回転させ、鎌を跳ね返すと、右脇腹に前蹴りを叩き込む。
『グウッ!』
バランスを崩したカマイタチ・アポカリプスに追い討ちが襲い掛かる。
「セイッ!」
タクトライザーを真下から胸を構成するパーツに向かって、突き上げたのだ。パーツの繋ぎ目を抉られたカマイタチは思わず、後ずさる。
『こ、こしゃ……』
「まだまだ、こいつはどうだ!」
そして、ファルベはタクトライザーを反転させ、婉曲を描く太刀で、8の字を身体に刻ませた。
『そ、そんな……』
ファルベの鮮やかな連続技を受けたカマイタチは後ずさる。
「そろそろ、終わりか?」
剣先をカマイタチに向け、勝負はついたと言わんばかりのトーンのファルベ。
『アハハハハハハハッ!た、確かに貴様は強いよ、仮面ライダー……だが、まだだ!』
ダメージの蓄積も確かにあるのだろう、カマイタチはゆらゆらと力なさげに立ち上がる。
それでも、身体を分解し、風となるカマイタチ・アポカリプス。
『風になれば、貴様の太刀は届かない!まだ、負けない!』
風の中で宣言したカマイタチ・アポカリプスは縦横無尽に、ファルベの周りを駆け抜ける。
「また、面倒な……」
ファルベは受け身を取る準備をしながら、剣をゆったりと構え直す。
『アハハハハハハハッ!』
風が吹く。自由に、ファルベに襲い掛かる。
「ッ!」
ファルベはその風を読もうと低く構えたが、予想外の起動を描き、背中に吹く。
それと同時に、ファルベの背中から火花が散った。
「……少しは粘るみたいだな……」
たが、ファルベはカマイタチ・アポカリプスがバランスを崩したようにはならず、静かにベルトのスロットからサウンディカルピースを取り外していた。
『アハハハハハハハッ!次だよ!』
次なる狂風が、ファルベに襲いかかろうと、吹き上がる。
「……なら、悪戯なお好きな風にはお仕置きが必要だな」
《アインザッツ!》
ファルベが手にしていたサウンディカルピースはシンセサイザーの形を取っていた。
素早く、ベルトにセットし、レバーを引くファルベ。
《ピース!スケルツォ!サウンド・スケルツォ!》
激しい雷と共に、電子機器の音が一曲を奏でる。
そして、ファルベの姿はあっという間に変化していた。
二本角と仮面ライダーザビーによく似たマスク。
黄色のボディに雷に似た黒いラインが所々に入っており、マントを右側に羽織る稲妻の戦士。
仮面ライダーファルベ・スケルツォサウンドだ。
どっしりとして仁王立ちする姿は重装甲、かつ、只ならぬ威圧感を感じさせる姿だった。
『そんな重い身体で何になる!ただの木偶の坊じゃないか!』
ただ構えもとらず、タクトライザーを地面に刺し、動かないファルベに向かって、再び風が吹いた。次は先程よりも鋭く、そして、暴れる風だ。
ザン!そして、縦横無尽に次々と風が巻き起こす鎌鼬が炸裂する。身体、背、脚、腕……。
攻撃を受ける一方であるのに、ファルベは全く動かない。いや、寧ろ、ダメージが身体まで届いていないようであった。
『な、な、なっ!?そんな事が有り得るか!?』
全く攻撃に動じないファルベにリズムを崩されたのか、カマイタチ・アポカリプスの焦り混じりの声が風の中から響く。
『なら、コイツでどうだ!』
疾風は竜巻となり、ファルベに向かう。
「……待ってたぜ……」
真っ正面から凄まじい勢いで襲い掛かる竜巻に向かって、拳を引くファルベ。
そして、稲妻と竜巻が会合する。その瞬間、竜巻は回転を失い、かき消される。
『うあああああああああああああっ!』カマイタチ・アポカリプスは実体に戻り、数十メートル先まで吹っ飛ばされた。
「………………………」
グッと拳の一撃を繰り出したファルベはだらりんと腕を下げた。
「スケルツォの一撃は確かに遅い……。だが、この一撃は全てを痺れさせる!」
ファルベは地面に刺していたタクトライザーを引き抜くと、ダイヤルを『槍』の柄に合わせた。
《ガッキョク!ランス!》
剣先が収納され、剣からランスに変わったタクトライザーを豪快に回すファルベ。そのたびにマントが派手に揺れる。
『クソッ!ハアアアアアアアアアアアッ!』
最早、風になり攻撃を仕掛けるのは無駄足と踏んだカマイタチ・アポカリプスが鎌を振り上げながら、突撃する。
「…………来いよ……………」
カマイタチ・アポカリプスの決死の突撃を真っ正面から迎え撃つファルベ。
『ハアッ!』
一気に飛びかかり、ファルベを倒そうとするカマイタチだが、ファルベはその攻撃をタクトライザーで受け止める。そして、思いっきり、鎌を弾くと大きく槍先を振るう。
ザン!今までとは比べものにならない、重い音と共に強烈な電流がカマイタチ・アポカリプスに流れた。
『アギャッ!?』
「オラッ!』
ダメージを受け、後ずさるカマイタチ・アポカリプスにファルベの電気を纏った右アッパーが叩き込まれる。
そして、カマイタチ・アポカリプスは身体中に火花を散らしながら、ピースが崩れ始めた。
「さあ、ラストナンバーだ!痺れるロックナンバーでいくか!」
タクトライザーの柄にあるピーススロットにベルトから引き抜いたサウンディカルピースをセットするファルベ。
《フィナーレ!レガート!ランスストライク!》
勢いよく、真上に掲げたタクトライザーを回すファルベ。
すると、空気中のエネルギーと、ファルベから産み出された雷撃、そして、サウンディカルピースの真価の三重奏が、響く。
ジリリッ!凄まじい電気エネルギーを発散しながら。
『ま、まずい……』
あまりのエネルギーに怖じ気ついたのか、背を向けて逃げ出すカマイタチ・アポカリプス。
最早ダメージの蓄積が限界まで喫したのか、風になる事は出来なかった。
「しゃらくせえ……逃がすわけねえだろ!ハアアアアアアアアアアアッ!」
そして、ファルベは力強くタクトライザーを地面に突き刺した。
それに合わせるかのように、強烈な雷撃が地面を駆けていく。それだけではない、雷撃が駆けた跡が地面の抉れでハッキリ分かる。
これこそ、仮面ライダーファルベ・スケルツォサウンドの必殺技の1つ『ジーグバースト』であった。
『くっ、来るな!!!』
あまりのスピードに恐怖を滲ませたカマイタチ・アポカリプスの悲鳴。
が、直後に待っていたのは静けさの中を駆ける雷撃と、カマイタチ・アポカリプスの身体を貫いた音だった。
ジリリリリリリッ!凄まじい音を出しながら、カマイタチ・アポカリプスの身体全体にエネルギーが走る。
『ガアアアアアアアアアッ!』
そして、断末魔を残し、コアごと藻屑となるカマイタチであった。
「……アンコールは無いぜ……」
ファルベの言葉通り、もうカマイタチ・アポカリプスが身体を取り戻す事は無いだろう……。