戦姫絶唱×シンフォニックライダー   作:コンテンダー。

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10話 奏貴の背中

「………………………」

 

最早、風乃宮学園で起きていたイジメの内容を暴く記事を書く意味は無いだろう。数日前、依頼を受けた時から薄々は感じていた。

 

イジメ自体がイレギュラーによって消失した挙げ句、人が死んでいるのだ。実態を明かすことよりも、この問題をひた隠してきた教師達に矛先は向くだろう。

 

奏貴はパソコンを閉じ、濃いめに淹れたインスタントコーヒーの入ったカップをまるで、湯呑みを握るように鷲掴みにしていた。何とも言えない複雑な感情を頭の中で渦巻かせながら。

 

「………………………」

 

複雑な感情の片隅にはアポカリプスに取り憑かれ、人を殺めた瀬尾大貴の顔があった。

 

「……どうなるのかね……」

 

仮面ライダーと言えど、フリーライターと言えども、感情のアフターサービスを出来るワケではない。だが、出来る限りの事はする。

 

「………彼を見に行くとするか……」

 

思い立ったのが、吉日。奏貴は何も持たず、風乃宮まで向かう事にする。彼のその後を見守る、そして、何かあれば声をかける。そんな当たり前の事だ。

 

いつものように青いベストを羽織り、ネクタイを締める。

 

気持ちを入れる呪いでもあるのだ。

 

「………しっ………」

 

彼は向かう、風乃宮学園に。

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

一方、日本のターミナル空港行きの飛行機内での事だ。

 

(ちょっと先に日本に向かってて、光溜。少し唾をつけておきたい事案が起きたからね)

 

相棒に急な任務が入り、先に日本へ向かうこととなった高薙光溜の姿があった。

 

「………フン、どこぞの国連中が文句を言ってきたか……」

 

気にくわないことが多々あるのか、イライラしながらふんぞり返る光溜。

 

「そう言えば、アレをもらっていたな……」

 

気分は乗らないが、出発前にリーサから何か渡されたのを思い出した光溜。

 

彼はガサゴソと乱雑にカバンの中からクリップ止めされた用紙を取り出す。

「……アメリカもなかなかエグい事をやって、ひっくり返されたか……。知恵者には勝るモノはないと言うか……」

 

『ロード』の機密捜査班から得た資料を見て、ざまみろと言いたそうに口を動かした光溜。

 

「………しかし………どこもかしこも、シンフォギアが絡むと必死だな。滑稽なこった……」

 

光溜は力を追い求める世界を嘲り笑うと、再び資料をカバンに閉じ込める。思惑なんて関係ないと言わんばかりに。

 

「………本当に見るべきモノを見誤ると、意味も無いのな……」

 

高薙光溜、その目は世界の闇で蠢く影に移っていた。

 

 

------------------

 

「カマイタチのピースが砕かれた……か……」

 

洋館の大広間。不気味に灯る赤と橙の間の光が、白いフードを纏ったパンドラとディーヴァをさらけ出す。

 

「有望な『集め手』だったのにね、あっさりやられちゃったわ」

 

「人間の欲と言う劇薬は『函』に眠る疫害を呼び覚ますのには必要なピースであるからではありましたが、まだまだ足りないと言った所でしょうか?」

 

パンドラは何がこの世界に終わりをもたらせるのか、まるで過程を楽しむように嗤う。

 

 

「きっと、彼らが自ら示してくれますよ……」

 

パンドラは大広間の暗がりに目を向ける。

 

パンドラの視線の先に浮かび上がった微かな光の向こうには、それが広がっていた。

 

 

-我らはパンドラの元に!-

 

-世界の終焉は我々を救う-

 

 

まるで、教団の共通性を示すように、沢山の人間が白いフードを纏っていた。どうやら、各地から自らの意志でこの闇の洋館に来たかのようだ、

 

「愚かよね、コイツ等も……」

 

ディーヴァは呆れ果てた様子で、きつめの言葉を吐いた。

 

「まあまあ……、人間は微かな希望に満たされなければ、けして生きてはいけない軟弱なモノ。彼らの意志を尊重しましょう。我々と同じ同胞として、ね……」

 

パンドラの言葉に裏打ちされたように、教団バベルに従う彼ら『人間』は深々と頭を下げた。彼ら自身で望んだ事であるが……。

 

そして、パンドラとディーヴァは彼らの姿を、眼に焼き付けた--。

 

終わりを願う同胞として--。

 

 

------------------

 

 

「……これは、これは……」

 

再び風乃宮学園にやって来た奏貴は、校門前が異様に慌ただしくなっているのを見た。

 

押し寄せる人の波、波、波。

 

どうやらマスコミ関係者らしく、教師達に直撃と言う形を取ろうとしているのが目に見えていた。

 

「……やり過ぎだな、やはり俺はこの後に首を突っ込むのは止めておくか……」

 

とりあえずこの雑踏があまりにも鬱陶しいため、奏貴はゆるりとその場を後にし、彼を待つこととした。

 

だが、意外にもあっさり彼の用事は済まされる。

 

「ちょっと」

 

「………瀬尾大貴君、か……」

 

 

奏貴の背中に声をかけてきたのは、瀬尾大貴その人だった。

 

「………………………」

 

「えっと……一昨日の事はありがとうございました」

 

「………それで、大丈夫かい?」

 

素直に頭を下げられ、奏貴はぶっきらぼうに言葉をかけた。同年代とのやり取りがどうも板にはつかないご様子で。

 

「……ええ、自分と向かい合って、みんなと向かい合って……少し前向きにみんなと触れ合えるようにはなりました」

 

「………なら、良かった………」

 

「自分の罪とも向かい合って、真っ正面にやってきます!」

 

「……頑張りな……」

 

この答えを聞けただけでも、満足か。奏貴はゆっくりと歩み出した。

 

「仮面の騎士さん!ありがとうございました!」

 

また頭を下げた瀬尾の言葉に振り返る奏貴。

 

「仮面の騎士じゃない、仮面ライダーだ。内緒で頼む」

 

奏貴は目一杯微笑んで見せた--。

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