奏貴が取材に取り組むべく、仕事を開始したのは縁と別れて直ぐであった。
「………さて………」
まずは神隠しが起こったポイントが印された地図を開く奏貴。
「………成る程、距離は大体5キロ圏内……、共通点は音楽を嗜む若人と来たか……」
神隠しのポイントはある地点を中心とした三角形の点上から割り出された5キロ圏内で起きている。
「……デルタポイント……」
三角形。これは俗に言う『トライアングル』なのは、わかりきった事。ただし、トライアングル状になったポイントは『バミューダ』、日本で言う『ドラゴン』……。
そう、共通点は原因不明の行方不明が起きていると言われる地形なのだ。
「……また、オカルトめいて来たか……」
このトライアングルの示す場所に向かう事が、一番始めに打つべき手と認識した奏貴は、ライドシンフォニーに腰をかける。
「……行ってみるか……」
奏貴は印されたポイント目指し、愛車を走らせる。
その奏貴の背中を見送る姿があった。ごそっと柱の影から姿を現し、場違いな白いタキシードを見せつけるようにターンして見せる。
「漸く見つけたぜ、仮面ライダーファルベこと冴刃奏貴。まずは楽しみな事になるな、2人の仮面ライダーのファーストコンタクト。ああ、カメラに収めておきたいッ!」
幾度となく、意味深な言葉をばらまいてきたあのタキシードのマジシャンが奏貴と、光溜を引き合わせようと影で動いていたのだ。
「さて、僕はショータイムを見せてもらおうかな?ねえ、リーサちゃん?いかに2人の音色が重なり合うか、そこにシンフォニーを奏でてくれるカワイコちゃんがいないのが僕としては残念、無念、悲しいねんなんてね」
「…………アンタ、人をイライラさせるのだけは上手いわね。神城航(カミシロ コウ)さん?」
何とマジシャンと同じように姿を反対側の暗がりから見せたのは、光溜の相棒であり、別な仕事に取り組んでいるはずのリーサ・アンダルテだったのだ。
そして、リーサに名前を呼ばれたマジシャン/神城 航はわざとらしくお辞儀をしてみせる。
「ありがとう、ほめ言葉として受け取っておくよ。君がこうして、日本に来たと言う事は巧い具合に、ごまかしを入れてきたね」
「フン、ごまかしなんじゃないわ。ただの手助けよ。こちとら、あの三人に、博士まで始末されたんじゃ困るからね、お偉いさんと協力して、ちょちょっと言い負かして来たのよ」
もう仕事を終えたらしく、リーサは余裕綽々の顔を浮かべ、航に向かって、誇って見せる。
「いやあ、流石だね。僕も、マリアには会っておきたかったんだけどね。そりゃ、お引き取りください状態だったのさ」
どうやら、航も航で何かやっていたようだが、それをリーサには示す事なく、たぶらかす。
「………聴く必要は無いわ……。私はさっさと合流するから……」
「ヒドいね、これぞ、ああ無情って……いないな……」
リーサは航のオーバーな1人喋りには付き合ってられないとばかりに、彼が目を閉じていた一瞬で姿を消した。
「まあ、いいけど……ね……」
1人残された航は不敵に笑いながら、タキシードの胸ポケットから『USB』を取り出すと、宙に投げた。
「こう見えても、僕も……なんだよね」
そして、航はメモリを鳴らした。
《マジシャン!》
彼の持つメモリにはトランプの4つのマークが重なり合い、『M』の文字を刻んでいた。
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同時刻、デルタポイントを赤いレザージャケットの男こと高薙光溜が練り歩く。
「………………………」
辺りは住宅地と、公園、そして、広めの会館からなる普通の造りであった。
「……………レオ、このほうで良いのか?終末音(アポカリプス・サウンド)の残響が残るのは?」
光溜は自分を案内した黄色のパズルドロイドに確認を取る。
ガウッ!と力強く鳴く黄色のライオン型パズルドロイド。
「そうか、ならとっととお出ましもらいたいな」
レオドロイドの返事からここの近くに、アポカリプスのピースが出張っていると確信した光溜は腕を組み、歪みに耳を澄ます。
「………いや、何も無い……」
光溜とは対照的に、レオドロイドは天に向かって吼えていた。
「レオ、感じるのか?」
光溜の問いに、レオドロイドは駆け出す事で応じた。
「日本での初仕事。とっとと終わらせてやるか」
光溜はレオドロイドを追いかける。その先で、何が起きているのかは関係無い。アポカリプスを叩き潰す。その一心で。
『ハハハハハハハハハッ!』
光溜が向かった先ではレオドロイドが感知した通り、アポカリプスが現れていた。
「……来ないで……」
どうやら、私立リディアン音楽院の生徒らしい少女が襲われていた。
『そう言うワケにはいかないんだな、それが……。共犯者だけじゃなく、上にも仕事を押しつけられたんだ。片っ端から、それっぽい奴は連れて行かないと』
ツインテールの少女に向かって、宣言した『赤マント』は地に堕ちると、その姿を怪人体に変える。
のっぺらぼうのマスクに、神父服と言う如何にもな怪しい姿である。
『君はどっちが……ッ!』
アポカリプスが少女に手を伸ばそうとした瞬間、右手にレオドロイドが噛みつく。
「アポカリプスか……」
赤マントのアポカリプスと似たような赤いレザーを身に纏った光溜は、少女に目もくれずアポカリプスに迫る。
「レオ!そのまま逃がすな!」
『お前、邪魔者か!?』
赤マントの叫びに、光溜は答えない。態度で示すだけだ。
「そうだ、お前らの同士は教えてくれなかったのか。哀れだな」
光溜はファルベドライバーに似たベルト『スコアドライバー』を取り出し、腰に巻き付ける。
ベルトが起動する。《セット・オン・ステージ!》
光溜は静かなピアノの旋律に合わせて、ハ音記号のサウンディカルピースをベルトにセットする。
《ピース!トロイメロイ!アンダスタン!》
ゆっくりと、左手を前に突き出し、拳を握る光溜。そして、右手でレバーを押し込む。
「変身!」
《フォルテッシモ!サウンド・トロイメロイ!》
光溜の身体を音符の波が包む。すると、彼は一瞬で群青の仮面ライダーに変身した。
間違いない、ロンドンでアポカリプスを倒した仮面ライダー『スコア』だ。
『な、仮面ライダーだと……。だが、姿が……』
赤マントは話に聞いていない『新手』の仮面ライダーに驚く。
「ごちゃごちゃうるせえッ!ぶっ潰す!」
仮面ライダースコアは、肩に大剣・メトロセイバーを担ぎ上げると、一気に赤マントのアポカリプスに飛びかかる。
『真っ正面から来るか、普通!?』
アポカリプスも、真っ正面から向かって来るスコアの脳筋ぶりに慌てながらも迎え撃つ。
「……これ、夢じゃないよね……」
取り残された少女は目の前で始まった見たこともない戦士と怪人の戦いに目を丸くするしかなかった。
そんな取り残された少女の元に、足音が近づいてくる。
「どうなって……ッ、大丈夫か!?」
少女に気づき、駆け寄って来たのは奏貴だった。
「……えっ?」
突如として現れた3人目に少し驚きを隠せない少女。
「ここだと危ない、こっちへ……(あの姿、仮面ライダーか?俺のほかに?)」
奏貴は少女を安全な場所に誘導しながら、スコアの背中に疑問を抱いた。
「君の名前は?」
だが、疑問は後回しだ。少女に奏貴は名前を聞く。
「弓美です」
「弓美ちゃんか……。ここから早く離れてくれ……。」
弓美と名乗った少女の背中を押し、奏貴は立ち上がる。
「え、でも?」
「早くするんだ!」
弓美を無理矢理逃げさせた奏貴は、すぐにスコアとアポカリプスのほうを向く。
「………あのアポカリプスには聞かなければならない事がある……。誰だろうが、止まってもらうか……」
奏貴はベルトを取り出し、巻き付ける。
《カンタービレ!サウンド・ダ・カーポ!》
素早くスロットにト音記号のサウンディカルピースをセットし、レバーを引く。
《ピース!プレリュード!》
「変身!」
《サウンド・プレリュード!》
奏貴はあっと言う間に、鎧をまとい、ファルベに変身し、駆け出す。
「その勝負、待った!」
ファルベはタクトライザーを構えて、突っ込む。
「………もう1人の、仮面ライダーだと!?」
『ま、まさか、二人目!?』
ファルベの姿に驚くスコアとアポカリプス。三つ巴の戦いが、始まる。