シーフ・アポカリプスとの交戦から一夜明けた翌日、いつものように喫茶店アサンブラーシュに奏貴の姿はあった。
「………………………」
思うように筆ではないが、キーボードが走らない奏貴は珍しくコーヒーを何杯も飲んでいた。
「…………ダメだ、どうしても気になって仕方がない………」
やはり、シーフを取り逃した事に教団の企みの予感まで重なっているからだろうか、腕組みをすると人差し指でリズムを刻んでいく。
(このままシーフ・アポカリプスを追うか?それとも、別な可能性を模索するか………。いや、悩んでいる暇は無いか………)
「奏貴君、あの………」
(なら、やるべき事を為すだけ)
「奏貴君、だから……」
奏貴は自分の名前を呼ぶ声に引き戻された。
「………あ、縁さん、すいません………」
奏貴に声をかけていたのは、縁であった。どうやらアサンブラーシュに来たのは、打ち合わせがあったためらしい。
「もう……こう考え始めると夢中になるんですから、ほら、早く打ち合わせしますよ」
縁のぴしゃりとした言葉が奏貴を引っ張る。
「………え、ええ………」
先陣を切られた奏貴はただ受け身で、縁との打ち合わせに臨む。
「実は調べてみて戴きたい件があって……」
縁が持ってきた仕事の依頼はやはり、と言うか、今、奏貴が向かい合っている事案であった。
「まるで催眠にかかったように次々とばらまかれる貴重品……。まさか、幽霊が取り憑いたのかとでも言うような……」
「もう調べてます、被害者の方々にも会ってきました。全員が完全に取り合ってくれませんでしたけどね」
きっぱりと事件を追いかけている事を明言した奏貴。縁はやっぱりと言うような頷きをすると、弱ったような表情を浮かべる。
「そうでしたか……。私も別なライターさんの同席で取材に行かせていただいたんですけど、同じような反応で……」
「……取材に行ったんですか……。どの方も完全に欲の無い状態でしたからね……」
アポカリプスの引き起こした事件と大々的に言うわけにはいかず、何とかごまかそうとする奏貴。
「奏貴君、何か隠し事はありますか?」
「…………いえ………」
核心をつかれた奏貴であったが、持ち前の冷静さを生かし、表情、眉一つ動かさずに縁の問いをねじ伏せにかかる。
「またそのじらしですか?分かってるんですよ、アポカリプスのせいって言うぐらいは」
「………見透かされていましたか………」
志野縁。表は奏貴に仕事を依頼する編集者、だが、それはただのカモフラージュ。裏の顔は仮面ライダーファルベ/冴刃奏貴に情報を提供する『情報屋』であるのだ。
「考えている事ぐらい分かりますよ、奏貴君の仮面ライダーになってからのお付き合いですけど長いですから」
ニコッと応じてみせる縁。つまり、志野縁は大分前から奏貴と知り合いであったのだ。
「はあ、やっぱり縁さんには押されますね……。では、お願いしておきたい事が……」
縁には叶わないと悟った奏貴は縁にシーフ・アポカリプス以外の調べ事を頼む。
「分かりました、ちょっと調べてみますね」
奏貴が彼女にお願いした事は何か。
こうして奏貴も仕事に集中出来ると踏んだのだ。
再び奏貴はシーフ・アポカリプスを追いかける事にし、縁に可笑しな事がないかを調べてもらうのだ。
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「千華の奴め、自分達ばかり厄介事には首を突っ込まないつもりか」
ロードの日本支局にもシーフ・アポカリプスの件が伝わっていないはずも無かった。
今、光溜とリーサは奏貴の後追いをするように調査を開始し始めていた。
「そう難しい顔するんじゃないわよ、全く……」
リーサの視線を受けながら、騒ぎが起きた場所にパズルドロイドを派遣していく光溜。
「………ふん、今頃、冴刃も動いているだろうしな……」
光溜はグチグチ言いながらも、リーサに引っ張られながらキチンと捜査をしていた。
戦い方はムリクリだが、人は付き合うと言うのはまだ出来ているらしい。
そんなこんなでアポカリプスを追うのはお手のものなのはロードと言うべきか。
だが、捜査を始めた2人の前にイレギュラーが現れた。
「ちょっといいかい?」
それは白いタキシードに身を包んだマジシャンであった。
マジシャン/神城航密かに接触してきたのだった。