シャトルの打ち上げから数日後の事だ。
シーフ・アポカリプスの言葉の意味、マジシャン崩れの言葉の意味、そして全く姿を見せない教団の動きを全て含め、気が気でない奏貴は一旦記事を書くのを止めていた。
「どうすんだって事だよな……。停滞したまま先には進めないのは分かってはいるが……」
考えても、考えてもたどり着かない謎に頭を抱え、いつもとは違う甘い甘い、真っ白なミルクティーを飲む。
「珍しいじゃない、頭の燃料投下かな?」
「……まあ、そんなところですね。張りつめたままじゃ、おちおち仕事も手につきやしない」
春臣らしからぬ言葉にやや警戒しながらも、ありがたいとばかりに軽口になる奏貴。こういうところがなんやかんや邪険に扱いながらも、付き合いを続けている理由なのだ。
「まあまあ、たまにこう言うのもアリなんじゃないかい?」
確かに一理あるとばかりにうんと首をたてに振った奏貴は湯気をたてるミルクティーを飲み干すと、気まぐれで買った雑誌を取り出した。
そして、ペラペラとめくりながら記事に目を通す。休むとか言っても、悲しいかな。ライターの性分である。
「……………………………」黙って雑誌に集中しながら、察して春臣が出してくれたミルクティーに口をつける。
こんな休日で構わない。奏貴の時間はゆったりと流れていく。
だが、そんな事も言ってられなくなった。
「やった!すいてるよ、こっち、こっち!」
そんな無邪気な声を皮切りに、いつかの女子生徒、恐らくでもなく、私立リディアンの生徒達や高校生が徐々に増えてきたのだ。
「いらっしゃい!」
奏貴に五月蝿くて申し訳ないと言う意味を込めたジェスチャーを向けた春臣はこの流れを一気に捌き始めた。
いた仕方ないか、と周りを見渡した奏貴は立ち上がると、目でサインを送った。
(つけで)
(もう仕方ないなあ……)
奏貴はもう一度頭を下げると、アサンブラーシュを後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「光溜、まだ不貞腐れてるの?」
ロード日本支部の指令室と言うより、事務所では相変わらずつんけんどんな苦い表情を浮かべた光溜がリーサと向かい合っていた。
「フン、舐められたモノだ……。あのアンテナ野郎め……。今度出てきたらぶちのめす」
あのパラボナ・アポカリプスの語尾がおきに召さず、良いところがなく逃げられたのが癪に触ったままのようだ。低い声がより一層低くなっていた。
「色々イラっとくるのは分かるわ。あの口調も確かにカチンときたもの……」
リーサも概ね同意なのは違いないようだ。ただ、光溜がここまで頭に来ているのは他に理由があった。
「アイツ、極めつけに俺の愛車を……。よくもっ!」
「ああ、派手に転んでお釈迦になったからね……」
ライダーのアイデンティティの一つである乗り物(バイク)をスクラップ送りにされた事が一番来ているようだった。
確かにあそこまで派手にコケさせられたら、大分傷つくのは分かる。
そんなカッカしている彼に何者かが声をかけた。
「安心するといいですわ。私の権限で、新型マシンを移すことになりましたの」
扇子を片手に、長い髪を揺らしながら何故かスリットの入った和服とブーツを身に纏った局長 こと久瀬原千華が登場した。
「………それは本当か!?」
「本当ですわ、ワタクシ嘘はそれなりにつかない方針なので」
「……じゃあ、嘘かもしれないんじゃないの……」
千華の前にどうも主導をな握られる光溜はリーサの言葉にガックリとした。
「どっちなんだよ!」
「さあ?」
生殺しを喰らう光溜は完全にもてあそばれるしか無かった。
「それはそうと、お仕事ですわよ」
光満を弄ぶのに飽きたのか、千華はガラリと雰囲気を変え、真面目にやって見せた。
「……仕事……」
真面目な雰囲気にリーサも真剣に話に耳を傾ける。だが、耳を傾けてはいる光溜はまだ不貞腐れていた。
「正式に下りましたわ、パラボナ・アポカリプスの目的を暴き、それを阻止すると言う指令がね」
ロードは一足先に、シャトルの裏に潜む闇に首を突っ込むことになったーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「………事務所に戻って、休むか……」
アサンブラーシュから離れた奏貴は背伸びをし、事務所に向かって歩き出していた。
その折だ。奏貴の電話が鳴ったのは。
「縁さん?」その番号は志野縁からのモノであった。また取材かとため息をつか、重そうに電話に出た奏貴。
『もしもし、奏貴君?実はいつもとは違う取材をお願いしたいんだけど』
「違う取材?今はちょっと……」
乗り気ではなく、断ろうとした奏貴だが、ある名前を聞いた瞬間、コロリと変わることになる。
『今度、ロンドンに渡る歌姫『風鳴 翼』のインタビューよ……。ね』
「………受けますよ、その依頼……」
奏貴がこの取材を受ける気になったのは風鳴
翼の名を聞いたからだった。
『頑張ってね、仮面ライダーさん』
「……ええ、少しでも近づけたら……」
奏貴は知りたかったことに近づけると踏んでいた。
仮面ライダーとシンフォギア、始まりの交錯はすぐそこにーー。