「……………………………」
数日後、奏貴の姿は開発センター近くの丘の上にあった。ネクタイを風にたなびかせ佇む姿が日差しを浴びて、影は揺れる。
そんな揺れる影に向かって来る一つの影。
「……まだ終わっていなかったな……」
「……ええ、あなたとの話が……ね」
奏貴と向かい合う影は誰か。長い青い髪の少女。
風鳴翼だ。
翼がここにやって来たのは何故か。まだ話が終わっていなかった。
奏貴が何者であるかと言う事だ。
誰が、この二人を再び引き合わせたのか。
それは、恐らく縁と緒川のやり取りだろう。
だから、こうして再び出会った。
最初の出会いよりも緊迫した空気を漂わせながら二人は口を開いた。
「翼さん、俺が聞きたいのは……」
「……いや、私から聞かせてもらおう!」
奏貴を遮るように翼が前に出る。
「どうぞ、どちらにしろ答えなければいけませんでしたからね……」
翼のその気迫に押されたのか、それとも最初に話すつもりだったのか。奏貴は静かに答えると、翼の問いを待つ。
「お前の真の顔はなんだ!物書きと言う面を被り、何をしようと、何を知ろうと眼前に現れた!それとも、新たな驚異とでも言うのか?」
翼の凛とした雰囲気から飛び出るらしい言葉。この言葉故に、彼女が奏貴を怪しんでいるのはすぐにわかるだろう。
だが、奏貴は翼の言葉を聞いても動ずる事なく、口を開く。
「……俺はただのフリーライターさ。ただ、1つだけ違うなら、俺は仮面ライダー……」
「か、仮面らいだあ?」
奏貴の口にした仮面ライダーと言う単語にぴんとこない翼に対し、奏貴はさらに続けた。
「いつも伝承は口伝いで繋がる。ノイズと戦う歌姫も噂で広まった。同じように、人を泣かせる怪物を影ながら倒す仮面の戦士……いつからか、界隈ではこう語られ始めた。仮面ライダー……とね」
「……その仮面ライダーがお前だと言うのか?」
「……ああ…… 天羽々斬を纏う歌姫『風鳴翼』」
最早これ以上は隠し伊達不要とばかりに、奏貴は翼に彼女の纏うギアの名前を言った。
「どこまで知って……」
翼は最早驚くことしか出来ない。この男はどこまで知っているのか、底が見えなかった。
「……もう俺は君に聞く事はないかな、確信できたし……。翼さん、また会うことになるのは間違いないですね……」
話はここまでと奏貴はその場を後にしようとするが、翼はまだ粘る。
「いや、まだだ!私はまだ合点が……」
「翼さん、俺の事、信じてください。きっと運命は交わります。その時は必ず解ります、俺達は同じ道を歩いているって……そして、俺は……同じ道に交わる……クリスと……」
「クリスだと……雪音の事も!?冴刃、待て!」
最後に翼に向かって語られた言葉が、彼女には引っ掛かるしかなかった。だが、その背中には語るモノがあった。
自分とよく似ていたその背中から感じられる孤独と共に歩み続けている自負が滲み出ていた。
だから、呟いた。
「……その背中、どこまで私を……」
複雑な感情が渦を巻いていた。
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「パラボナ、お前はよくやってくれた」
洋館の一室。天命を尽くし、教団のために散ったパラボナ・アポカリプスをヨハネが弔う。
「辛気くさいわね、パラボナの事はどうでもいいじゃないの」
そんなヨハネをバカにするようにディーヴァが嗤う。
だが、ヨハネはなにも返さずにディーヴァに背を向けた。
「……次の舞台は整わん。人形に任せるとするか……」
「人形ね、私としては是非とも会いたいところですが……」
そんなヨハネに声をかけるもう1つの存在。
モノクルをつけたスーツ姿の男。
「シーフ、貴様……」
それは新たな姿(人間体)を手にしたシーフであった。
「あなた、格上げされたのね」
「……察していただけて幸いです」
教団の三幹部に加わったシーフは満足そうに笑った。
彼らの言う人形とはなんの事か?それは彼女達(奏者)が向かい合う錬金術の集団の事であるが 、それはまた別の話である。
再び教団が動き始めるのはもう暫く後だーー。
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雪音クリスは自分の部屋で写真を見ていた。
「この写真……あったんだ……」
クリスが手に止めた写真には彼女の父と母、そして幼い頃の自分と同い年の少年が写っていた。
ー僕、クリスがどこにいても……また会えるって信じられるから!ー
ーあ、ありがとう……奏貴ー
思い出す別れの日。
「……奏貴……」
どうして、彼の事を思い出してしまったのか。それは分からない。
クリスはカッコいい仏壇に目を向ける。写真の中には微笑む両親。
「アイツとまた会えるの?パパ、ママ……」
ー僕は、僕は、君の事……ー
「……………………………」
その願いは、叶うためにある。
「……クリス……」
「……奏貴……」
同じ空の下、同じ願いをかけるーー。