次々とショートした電線の回路が狂い、炎と叫喚の絵図を映し出す。人は恐怖に包まれ、悲鳴をあげる。
ーうあああああっ!た、助けて!ー
ー熱い、熱い!ー
男女、幼子問わず火が襲い来る。高層ビルにも、マンションにも火の手が迫り、次々と拡大する被害。
4ヶ所同時の惨状にレスキューや消防も追い付くはずも無い。ましてや、多くの人が逃げ惑う今、下手に動くことで被害を増加させる可能性もあるのだ。
「本当に派手なステージを用意してくれたわね、シーフの奴。憎たらしいぐらいに手際のいい奴」
「……流石だな、やはりシーフの才は非常に誇れるものだ……」
ディーヴァとヨハネは、そんな地獄をじっと見つめていた。
「……そろそろ……来るわよ、彼女達」
「……………………………」
二人の真上をヘリが飛んでいった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『既に切歌君、調君にはそれぞれ救援に回ってもらっている』
ヘリの中、響とクリスの前にS.O.N.G総司令である弦十郎からの通信が入っていた。
『北東のエリアの高層ビルには、まだ多数の生体反応が残っている』
響がその弦十郎の言葉に強く反応する。
「逃げ遅れている人がいるって事ですね……」
『その通りだ。だが、気になるのは湾岸エリアだ。最も被害は少なく救急などで手は足りているが、異常なエネルギー反応がある……。これは、新たな敵を示しているのかも知れん』
弦十郎の予感が語られたと同時にエネルギー反応を示す地図が証拠として映される。
「一段落ついたって言うのに、何処のどいつだよ。暴れてる一匹狼君は!」この発言はクリスだ。彼女もなかなかの言い回しをしてくる。
『まだその可能性は分からん。だが、この状況の作り方、錬金術師を思い出させる。果たしてそれが偶然か、意図したものか……』
目をつむり、考え込む弦十郎ではあるが、ここで目を開くと、二人に指示を出した。
『まずは人の命だ。北東のエリアの救助には響君。湾岸エリアの確認はクリス君が当たってくれ』
「はいッ!」「任せてくれッ!」
響とクリスが応じると、先に響がヘリの扉を開ける。
「クリスちゃん、行ってくる!」
「おう、任せたぜ!」
「ガッテンだ!」
先にポイントについた響がペンダントを持ちながら、降下する。
彼女の眼下に広がる炎の海。恐れない、命を守るために。
「♪……Balwisyall Nescell gungnir tron……」
響はペンダントを起動させるために謳う。歌女としての歌を。
ペンダントの起動と共に、響はギアを身に纏う。
アンダースーツから踊り舞うガングニールの破片を鎧としていく。そして、彼女の想いの代名詞である拳を形成する。
最後にヘッドギア、マフラーを纏い、響の変身は完了だ。
「ファアアアアアアッ!ハッ!」
怪鳥音と共に拳法の型を舞い、歌女としての響が炎の中に飛び込んだ。
「♪一点突破の
決意の右手……」
彼女の歌が希望を轟かせる。
「……次は私の番だ……」
クリスは響の歌を耳にしながら、自分の向かう湾岸エリアに目を移した。そこに待つのは……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
同じく、湾岸エリアの混乱を破り、中心に向かう姿があった。
ライドシンフォニーを飛ばし、犯人を追いかける奏貴だ。
(……こりゃ、シンフォギア側も出てくるな……)
ギッ!奏貴は急にブレーキを入れた。ライドシンフォニーを上手くコントロールし、真横にスライドさせながら止まる。
「……ヘリ……」
見上げた空に赤い光。
ー♪Killiter Ichaival tronー
「……クリスッ!」
彼女だとすぐに確信した奏貴はバイクを反転させ、降りた方角に走らせる。
彼女がギアを纏い、降りた方角には強い反応があった。
ライドシンフォニーをコントロールしながら、バックルを腰にセットする奏貴。
《カンタービレ!サウンド……ダ・カーポ!》
クラッチを踏み込み、急ぐ奏貴。
(教団バベル、もうお遊びは終わりってか……。なら、止めてやる!)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……こりゃ、ひでえな……」
クリスはイチイバルの赤いギアを身に纏い、降り立った。
一番被害が少ないとは言え、焼き付くした炎は煙をあげていた。だが、確かに不自然な点も多い。
「……何なんだ、なんでここだけ……」
まるで誰かが来るのを待っていたかのように、ぽっかりと開いた空間。
「最初にお会いしたかったのは、立花響でしたか……あなたでも不足はありませんね、雪音クリス」
そんなクリスの前に現れたのは、シーフであった。
「……何故、私の名前を……。お前がこの騒ぎの元凶か!?答えやがれ!」
イチイバルの銃身を突きつけながら、シーフに答えを求めるクリス。
「元凶?そんな大層なものじゃない……。強いて言うなら、世界を終わらせるための一手とでも……」
「何言ってやがる………」
普通ではない、異様さにクリスは後ずさる。
「アッハハハハッ!エレキ!」
『あいよ!』
「な、何だ……。この怪物!?」
クリスの前に現れたエレキ・アポカリプス。今までの敵とは全く違う、異形に驚きを隠せないクリス。
「エレキ、彼女に贈り物をしてあげなさい。S.O.N.Gの連中にも届くように」
シーフが指を鳴らす。すると、クリスの頭に『不規則』な雑音が轟いた。
頭のなかをかき混ぜて、狂わせる。それがギアを纏っていようと関係ない。
ずんと頭を殴るように、激痛が体を走る。
「な、ぐっ!この音、頭がおかしくなる……うううっ!」
頭を押さえ、膝をついたまま焼き付く傷みに苦しむ。
『……まだだ!コイツを……ぐっ!』
クリスに雷を落とそうとしたエレキ・アポカリプスの声が衝撃で止まる。
「そうはいくか……」
「……来ましたね……」
エレキ・アポカリプスに飛び蹴りを加えた人物がクリスの横に着地した。
「そ、奏貴ッ!?」
傷みの中、現れた奏貴を見上げまた驚くクリスに彼が手を伸ばし、ここからは通さないと言う意思をエレキ・アポカリプスに見せる。
「俺の姫様、やっぱりシンフォギアを纏っていたか……」
「……どこでそれを……って、逃げろよ……私は何とかするから!」
「………いや、逃げるわけないぜ。それに詳しい話は後、今はコイツを倒すのが先決だ……」
クリスに語りながら、サウンディカルピースを取り出す。
「行くぜ、アポカリプス……」
『仮面ライダーかっ!貴様!』
「……大正解……」
《ピース!プレリュード!》
サウンディカルピースをスロットにセットし、右手をゆっくりと真上から下ろす。
「変身!」
クリスの前で、流れるようにトリガーを引いた奏貴の体をメタリックパーツと音符が包んでいく。
《サウンド!プレリュード!》
「はあっ!?一体、全体、何が起きてんだよ!?」
巡りめぐる展開についていけないクリスを尻目に奏貴はファルベになった。
「……さあ、始めるか!アポカリプス」
『チッ!邪魔だ!』
炎の中、ファルベとエレキ・アポカリプスの交戦が幕を開けたーー。