S.O.N.G本部。次々と起こる事態をしっかりと掴んでいた。
「司令、昨日の微弱な電波パターンと、湾岸エリアで大きくなる反応、合致しています!」
尭藤の素早い情報処理から、まず明らかになったのは敵の存在。敵とはまだ言い切れないが、確実に怪しむべき証拠は揃っている。
さらに、パルスパターンが大きな変局を見せる。その反応がS.O.N.Gの誇るオペレーターの解析を乱していく。乱高下する反応が詳しい分析を分断しているのだ。
だからとて、好き勝手にはさせられない。尭藤の腕がここで光る。
「……よし、エネルギー源の中心地絞り混みました!ッて!何だ、この反応……」
「どうした?」
さらに驚愕がS.O.N.Gに走る。
「音の乱れです!しかも、ノイズと言うか、なんと言うか……。こんな音の反応は感知したことがありません!」
さらに事態は動いた。クリスのイチイバルのバロメーターに大きな異変が起こったのだ。
「司令!イチイバルのフォニックゲインが……かき消されています!このノイズの影響だと思われます!」
「……何が起こっている。ギアの力を奪う音だと……回線繋げるか!」
「不可能です!ノイズが邪魔で繋げません!」
拳を開いた手にぶつける弦十郎。
「……行くしかあるまい!本部を湾岸エリアに!」
「待ってください!」
ここで、S.O.N.Gの司令室に幼い声が響き渡った。この緊迫した事態に声をあげたのは、緑色の髪をした幾ばくもない少女だ。だが、彼女は紛れもないS.O.N.Gの一員だ。
「キャロル君、何かあるのかね?」
少女の名を弦十郎が呼ぶ。
「はい」
少女に司令が質問するというアンバランスな構図ではあるが、それほど彼女がただ者ではないからだ。
キャロル……。何を隠そう、彼女はアルケミック・カルトの首謀者『キャロル・マールス・ディーンハイム』であり、キャロルを止めるために全力を尽くしたもう一人のキャロルであった『エルフナイン』である。
つまり、彼女は二人で一人になった『キャロル』であるわけだ。ややこしいが、とにかくキャロルはS.O.N.Gの一員として、異端などの解析に回っている。
「このノイズ、可笑しな振り幅で変化してます。これ、間違いないです。終末音(アポカリプス・サウンド)です!」
この初めて聞く名前に、誰もが言葉を失った。いや、どう言うべきなのか、迷っているのだ。
「終末音……。世界の終わりに流れる音の事かしら?」
果たしてどこでそんなオカルティックな話を、いや、耳に入ってきてしまうのか、あおいが口を挟んだ。
「はい!でも、実際にそんな音を響かせる存在なんていないはずです……。でも、確実に向かえば影響が出ます!」
どうやら、キャロルを持ってしても深い事までは分からないようだ。確実なのは、終末音(アポカリプス・サウンド)が世界にとって毒なのは間違いない。
この毒を撒き散らす存在は人知を超えし、敵であるのはもはや弁明の余地すらなかった。
全く繋がらないクリスとの通信がさらに焦りを沸き立たせる。
「……ッ!また別の反応……」
ところが、尭藤が同じ湾岸エリアで対照的な反応を掴んで、状況が二転目する。
ノイズとは違い、安定したそれでいて透き通るような音の反応。
「この音、終末音をなだめています!」
尭藤がこの音の信号を解析しようとしたところで、あおいが信号同士がぶつかり合う事実を見つけた。
「調律してる?……この音……」キャロルが言った通りだ。この音の存在が湾岸エリアに現れたと同時に、終末音が微弱に変幻しているのだ。
「……映像、来ました!通信も行けます!」
「いよし!映像をモニターに!クリス君、無事か!」
ついに通信が回復し、モニターにクリスが映る。
『……ああ、何とか……』
そこに写ったのは頭を押さえ、膝をついたままのクリス。
「一体何があったんですか?」
あおいの質問に、クリスは簡潔に答えた。
『あれを見れば分かるッ!こっちのほうが知りたいんだよ!』
「モニター、別に切り替えます!」
クリスの言葉で、パッパッと画面を切り替える尭藤。
「これはッ!?」
「……何が……」
「……あ、この反応、間違いないです!」
画面の中で、真っ白い姿をしたマント姿の人影、いや、様々なパーツを纏った仮面の騎士と異形の怪物が戦っていた。クリスを守るように、彼女のほうを気遣いながら仮面の騎士は舞う。
S.O.N.G本部が呆然とした空気に包まれる中、キャロルは口を開いた。彼女の口から漏れ出たのはーー。
「…………仮面ライダー……」
何故か、覚えていた名前。
ー仮面ライダーとしか言えない。さあ、早く瞼の裏にいる『彼女』に会いにいくんだ!ー
それはダウルダヴラを失って、命だけは助かったキャロルの前に現れた 仮面の騎士が名乗った名前。
「仮面ライダーって、都市伝説のかい!」
ここで尭藤が反応した。どうやら、すぐに都市伝説と結び付いたらしい。
「……………………………」
弦十郎はその戦いをじっと見つめていた。敵か、味方かを理解するために。
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『響さん、先輩が危ないみたいです!』
すぐに救助を進め、山場を越した響に通信が入った。
同じ奏者である月読調からである。
「クリスちゃんが……」
今すぐ行きたいが、自分を待っている人達がいるかもしれない。どちらも助けたい彼女に、別な通信が入った。
『響先輩!大丈夫デス!私に任せるデス!』
「切歌ちゃん!」
暁切歌。調のバディとも言える奏者であり、響達にとっても頼れる仲間だ。
『響さん、私もそちらに回れます。だから、先輩を』
ここで調も切歌と共に協力すると言わんばかりに、通信に入ってくる。
「命、救えたんだね!分かったよ、状況の確認
をお願い!」
『はい!』『分かったデス!』
二人に状況とこのエリアをゆだね、響は湾岸エリアに向かう。
(クリスちゃん、待ってて!)
仮面ライダーとアポカリプスが戦っている場所に響が急ぐ。
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『オラッ!オラッ!オラッ!』
ファルベに向かって、エレキ・アポカリプスご自慢の超電流と腕のコードから電気の砲弾が放たれる。
「……………………………」
クリスを守りながら、戦う仮面ライダーファルベはマントを自在に揺らしながら、その一撃、一撃を巧みにかわしていく。
(……成る程、たんまり電気を戴いていた理由がよく分かる。コイルに貯めれば、貯めるだけ……スタミナがつくってわけか……)
強烈な一撃、一撃を計算しながらファルベが攻撃に移る。
「よっ!」
身体を捻りながら、エレキ・アポカリプスの背面に回ったファルベ。
『後ろ!?ぐ!』振り向こうとしたエレキ・アポカリプスにミドルキックの衝撃が伝わる。
「……雷なら負けないぜ……」
直ぐにベルトからプレリュードのピースを外し、スロットにスケルツォピースをセットしたファルベ。
《アインザッツ!ピース・スケルツォ!》
そして、トリガーを引き、ファルベは姿を変える。
《サウンド!スケルツォ!》
雷と共に、黄色のファルベが参上する。
「……来いよ……」
どっしりと構え、ファルベはタクトライザーを手に、エレキ・アポカリプスを誘う。
『面白い!』
ファルベとエレキ・アポカリプスのぶつかり合いはまだ続くーー。