「……シーフ、お前が引き金か……」
ファルベとクリス、シーフのトライアングルが形成されたこの状況。剣幕を鋭くしたファルベと、全く動じないシーフの間に流れる不穏な空気。
「……コイツ、何者なんだ?あの怪物に指示を出していた辺り、黒幕か?」
「……黒幕じゃない。コイツもあの怪物、アポカリプスと同一の存在だ。ただ、俺が一度倒したんだ」
「ハッハハハッ!些細な事はいいでしょう?さて、聞こえていますかね……。S.O.N.Gの皆さん、これから始まる舞台にご招待といたしましょうか」
シーフの口調はまるで芝居がかっているかのように、わざとらしかった。まさにオンステージだ。
「訳のわかんねえ事、言ってんじゃねえ!お前がなんだか知らねえけど、これ以上好き勝手にやらせるか!」
「……やれやれ、これほど無粋だとどうも好きになれませんね」
「……シーフ、お前がいったい何を企んでいるかは分からないが、無理にでも聞かせてもらう……」
「さあ、どうする?シーフさんとやら!」
ファルベとクリスがシーフに向けて、臨戦態勢に入った。
「……これは、これは……」
シーフはわざとらしく手をあげる。その一足一足がどうも罠のように思える辺り、シーフのキレ具合がよく分かる。
「クリスちゃんッ!……えっ!?」
そこに颯爽と現れたのは、響だった。間に割って入るような形になり、状況が呑み込めていない。
クリスと並んでいる仮面の騎士と、相対する紳士のような人物に互いの得物が向けられる。これも通信妨害の影響か。
「……おい、なにしに来たんだよ!?」
「えっと、クリスちゃんがピンチだって話を聞いてね、駆けつけた訳……。でも、この状況は聞いてない!?」
響の前に調子を狂わされたか、シーフは小さく舌打ちをして、距離を取り始めた。
「……水を差されたか。まあ、いい……」
シーフは響を加えた3人を相手取ろうと、無地のパズルピースを取り出そうとした。
「……まずは踊って……」
シーフがピースをばら蒔こうとしたその時、彼の前に不思議な模様が浮かび上がった。
「……錬金術の術式!?」
『シーフ、独断専行が過ぎる……。いくらパンドラに手品あかしをしろと言われてもこの時間は無駄だろう』
『ライブ感っていうのかしら、私は嫌いじゃないけどね』
一瞬で、シーフの前に姿を現した赤いジャケットの男と、ドレスをまとった女。
「新手か!?アイツの仲間か!?」
突如現れた二人に警戒心を強めるクリス。
「……………………………」
間違いないとばかりに二人に唯ならぬ目線を向けるファルベ。
「ヨハネ、ディーヴァ……遅い到着だな。どうとは言いませんが……」
「ねちねち言うわね、ヨハネみたいじゃない」
「……………………………」
癪に障ったのか、ディーヴァは不機嫌そうに返し、ヨハネは柔らかい笑みを浮かべていた。
ディーヴァ、ざまみろとか思っているのかもしれないが、それでも黙ったままだ。
「……さて、この二人も来たことですし、あなたたちに突きつけてあげましょう、我々からの挑戦をね」
一方、勝手に話を推し進めるシーフ。彼はついに、奏者達やS.O.N.Gに宣戦布告を投げ掛けてきたのだ。
「……我々は世界の救済を心から願う教団『バベル』の一員であり、世界の悲願を成す者であります。この世界によき終わりをもたらすため、邪魔なあなた方と戦う事にしました……。仮面ライダーともどもせいぜい頑張って下さいね!ハッハハハッ!」
捨て台詞とも、宣言ともとれるシーフの一人芝居。
「それは一体どういう!?」
着いてこれていなかった響だが、漸く噛み砕けはじめた。
今、新たな脅威が現れた事を。
「長居は無用だ。我々の事は十分に伝えきれた……。下がるぞ」
「ええっ、またなのかしら……。慎重すぎてつまらないわ……」
ヨハネがここで切り上げる思を口にし、ディーヴァがまた反論するが、どうやらシーフは賛成らしい。派手に立ち回れたのが余程気分良くできたのか、満足そうだった。
「それでは、また!」
シーフは最後の挨拶を残し、3人共々転移した。
その場に残されたファルベ、クリス、響は茫然とするしかなかった。
「……さて、俺からも詳しい話をしますか……」
「ああ、お願いするな」
ファルベとクリスの会話に響が飛び込んできた。
「えっと……よく先が見えないんだけど……クリスちゃん、この仮面さんって……」
「……変身解けよ、手っ取り早いだろ?」
「否定はしないな……」
クリスに促されるまま、ファルベが変身を静かに解いた。
《エンド・ミュージック》
エフェクトと共に、ファルベの変身が崩れた。
そして、変身前に戻った一瞬で響が心底驚くしなかった。
「あああああああっ!?」
「また会ったね、響ちゃん」
「そっ!奏貴さん!?えええええっ!?」
響の叫びが辺り一面に響いたーー。