翌日。
S.O.N.G本部での一夜を過ごした奏貴は事務所に戻ってきていた。
「……溜まってる仕事でも片付けるとするか……」
愛用の古ぼけたアームチェアに座り、パソコンに目線を動かしたが、どうもやろうとする気が起きなかった。
「……クリスに、響ちゃん、それにS.O.N.Gの皆さん……いつの間にか、一匹狼は頼れる仲間と出会いましたか……。売れない小説並みに、良くできた筋書きじゃないか」
可笑しさを隠しきれず、笑みをこぼす。それほど、彼女(クリス)との再会がターニングとなったのだろう。
「後は……」
頭の中に姿を現したもう一人の仮面ライダー。
奏貴はラインを強化する事が、教団の活発化する動きに対しての対抗策と踏んでいた。その仮面ライダーが所属する組織は『ロード』
つまり、仮面ライダースコアを中心としたメンバーとの接触を取り計らうのが、必要な事である。
『奏貴君、君は今までと変わらずの行動を取ってくれれば構わない!』
S.O.N.G司令からの風鳴弦十郎が整えてくれた舞台、泥を塗るわけにはいかない。
「……なら、俺は俺なりに彼女達を支えることにしますか……」
決意を新たに固めた奏貴は一度目を閉じ、自分に頷いた。
すでに動き出した新たなる道の先を夢想するかのように。
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「しかし、急に忙しくなったね」
「打ち込むわよ、大切なデータしっかり更新しないと」
「はいはい……。徹夜はきついね、はあ」
S.O.N.G本部では大がかりな更新作業が行われていた。
新たな敵、アポカリプスと教団バベルに対抗するため、アポカリプス・サウンドの検知システム、奏貴との通信網などを大幅に更新していた。
中でも、これまで反応を捕まえられなかったアポカリプスに対するシステムは奏貴の助言から一からの作成となった。
そのため、いつものように文句を飛ばす尭藤、なだめるあおいの二人を初めとするオペレーター達は追われているのだ。
「あおいさん、この波形がアポカリプス・サウンドの波形図です」
「キャロルちゃん、ありがとう」
懸命に未知の反応に悪戦苦闘しているオペレーター達の周りを回りながら、キャロルが手伝いをする。
彼女も彼女の仕事があった。その片手間で手伝っているのだ。
「キャロル、ギアに組み込むアレは出来てるの?」
尭藤の問いに、キャロルが答える。
「あ、えっと……奏貴さんがまたいらすそうなので、その時に詳しいシステムの大枠は組み上げます。それまでは解析が中心に……」
「解析だけでも進めておければ、楽になるだろうからな」
「はい!」
キャロルが担当しているシステムとは何か。そんな包み隠さずとも、必須になるものである。
アポカリプス・サウンドに対して、ギアが影響を与えないようにするシステムの事だ。
仮面ライダーファルベのサウンディカルピースに隠されたその力の解析が始まっていたわけだ。
だが、そんな研究を止める事態が起きた。
「……ッ!?異常反応……。これはアポカリプス・サウンド!?それに、緊急連絡!」
突然、画面が代わり、WARNINGの文字が浮かび、同時に要請が入った。
それは急転直下、アポカリプスの登場であったーー。
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『さて、面白い事を始めましょ?』
昨夜まんまとスコアの追走を逃げ切ったアポカリプスピースが、ビルの屋上にいた。
「……ええ、面白い事を……」
そんなアポカリプスピースの言葉に操られているかのように、一人のキャリアウーマン風の女性が頷く。
『小野寺楓さん、あなたの身体、借りるわよ?まずは私が進化しないとね』
「……どうぞ……」
このビルに入っている会社『メイク・サウンド』の社長である小野寺楓を寄生先に選んだピースは彼女の身体を借りた。
「『フフフッ!やっと、私も姿を手に入れたわ!まずは景気つけに始めるとしましょう!』」
パズルが組み上がり、ピースと楓が一体になったそのアポカリプス。
砂鉄をドレスとした漆黒の身体。肩当てにNとSに別れた磁石。そして、機械じみた貴婦人のマスクと言う姿がどうも合わない。
だが、そんな事は構わない。
斥力と重力を操るマグネ・アポカリプスの独壇場が始まったーー。