戦姫絶唱×シンフォニックライダー   作:コンテンダー。

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52話 奏貴のロジック

「奏貴君、色々と動いてるみたいじゃないの。かなり進展があって、晴れ晴れしているわ。っ……て、今はそういう話じゃないわよね」

 

数時間後、奏貴はアサンブラーシュのいつもの決まった席で話をしていた。その相手は、志野縁だ。

 

こう言うときに情報屋とも言える仕事仲間がいるとやりやすいのだろう。真っ先に彼女に奏貴は声をかけたのだった。

 

「まあ、順風満帆と言えはしないでもないですが……。とにかく、そうですね……。俺が知りたいのは、最近このエリアで何かおかしなことが起きていないか?と言うことなんです」

 

入りは無駄だったが、奏貴はタブレットで開いた地図を縁に見せた。2つの点を中心に奏貴のつけた青い丸がびっちりと表示されていた。

 

どうやら、彼が弦十郎との通信を切った後で、あれこれと調べていた成果そのものだ。

 

 

「あら、やっぱり調べたのね。話をして来て数時間できっちり情報を集めてくるのは流石よね、フリーライターをやれるのは伊達じゃないってことね」

 

奏貴の迅速かつ、鮮やかな取材の手腕に縁がうっとりとした様子で答えた。

 

「……やっぱりそうなんですね。この青丸のポイントは……」

 

「ええ、原因不明のポルターガイストが起きて、転落や、事故が起こった場所。最近、心霊だのと騒がれている通りよ」

 

奏貴が求めていた情報。まさにジャストだった。

 

「……やはり、寄生型があそこまで力を持っているのは可笑しかった。アルケミック・カルトの裏で自分の欲望を成長させていた。そして、満を持して、人を取り込んだ……」

 

「しかし、誰を取り込んだのかしら?このままじゃ手立てが見当たらないわ」

 

「……………………………」縁の言葉にただ無言で頷くしかない奏貴。

 

彼女の言う通りだ。何をしようが覆せない問題に頭を悩ませる奏貴。

 

彼はさらに問題点を語った。

 

「まだ問題はあります。一体、マグネ・アポカリプスは何をしようとしているのかがはっきり見えていないんです。ただ暴れているだけでは、この青丸と今回の大掛かりな破壊活動が繋がりませんからね」

 

そこも問題だ。いずれでは遅い、今すぐにでも対策を立てねばどうにもならないのだから。

 

「……実は少し気になる話があるのよ」

 

考えていた奏貴に、縁が今月発行されたある雑誌を見せた。

 

「……いつも寄稿してる雑誌じゃないですか。またオカルトでピンときたんですか?」

 

確かにアポカリプスとオカルトが結び付いた件はハイドや、フレイムと言ったアポカリプス事件の時にあった。

 

どれだけ怪奇な現象も場合によれば、必要とする情報に変わるのだ。

 

「ええ、読者投稿にきた手紙の部分よ」

 

縁が指差したのは、読者が体験した不思議な現象を投稿する一般のコーナーだった。

 

「……………………………」

 

奏貴が黙って目を通す。

 

ー最近、私の会社ではポルターガイスト……みたいな現象が起こっています。一ヶ月前から、書庫のモノが動いたり、突然、食器が落ちたり……ー

 

よくある心霊体験の文章か。それでも奏貴は長い一人語りを読み込む。

 

そこでついに、最後の一文に奏貴の身体は動いていた。

 

ー最近、私の回りでも変な声が聞こえてくるようになったのです。『身体を借りる』みたいに。何も実感は有りませんが、とても怖いです。何も無いといいですがー

 

奏貴の頭の中にある破片がじわりじわりと噛み合っていく。パズルを解くように。

 

「縁さん、この投稿を送ってきたのは誰だか分かりますか?」

 

「……確か、名無しのメールね」

 

「……名無し。それだけではないはずです……。裏付けの取材を誰かがしていますよね。その時の話に気になる点はありましたか?」

 

名前が無いなら、縁の性格から彼女が取材を誰かにおねがいしていると踏み、さらに身を乗り出す。

 

「……あっ!あったわ!それと同じような噂のあるビルなら取材中に聞いたって……」

 

これで一つの破片が形をなしてきた。ここからが奏貴のロジックだ。

 

「……それはやはり、このエリアにありますね?」

 

マップとそのポルターガイストの噂のあるビルの場所を照らし合わせるように聞く奏貴。

 

「間違いないわ。このポイントよ!」

 

そのポイントは首都高と、マグネ・アポカリプスが暴れた地点の中間にあった。

 

これですべて揃った。

 

「……確か、このビルに入っている会社は……」

 

ここから絞り混みに入っていく。ここまで繋がった糸を強引に引っ張りながら、考えを組み立てていく奏貴。端末の情報から、たどり着く。

 

「……メイク・サウンド……」

 

そのビルに唯一事務所を構える会社は、メイク・サウンドと言う音楽関連の会社だった。

 

もはや、この道筋に議論の余地など無い。答えを取材と情報から手繰り寄せたのだ。

 

「……これで繋がった……」

 

奏貴はネクタイを触り、ふうっと強めに息を吐くと立ち上がった。ここからはリズムに乗っていくだけ。

 

「……おろ、奏貴君?打合せ終わりかい?もうちょっと寝かせてくれよ、頼む」

 

急に立ち上がった奏貴を呑気に居眠りしていた春臣が声をかけた。

 

客を放っておく立派とはかけ離れたマスター下水流春臣に対し、致し方ないと言うような表情を浮かべた奏貴。

 

「マスター、その通りです。居眠りはやめて、精一杯仕事を頑張ってくださいな。縁さん、支払い」

 

そう言いながら、アサンブラーシュの扉を蹴破らん勢いで飛び出していった。

 

ただ、彼のその様子を春臣はボーッと見送っていた。

 

「……縁さん、奏貴君、急用かな?」

 

「否定できないほどにね……。ツケは後でたんまりと払ってもらわないと」

 

縁の宣言など知らず、奏貴は駆けるーー。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「最近、分からない出来事が多いよね」

 

「うん、確かにですわね」

 

「まさかまたビッキー達、巻き込まれちゃうんじゃ」

 

夏の時間を謳歌する四人組の少女達。

 

「響、大丈夫かな……」

 

ここに先程まで加わっていた立花響の心配を見え見えでする黒髪の少女。

 

「大丈夫だって!だって、私達の希望だよ!友達として、胸を張っちゃうんだから!噂の仮面ライダーもいるしね!」

 

胸を張った少女は、そうだ。ハイド・アポカリプスに襲われた経験のある少女、板場弓美だ。

 

「また言ってる。憧れすぎだって」

 

「憧れって違うよ!実際に会ったんだから!」

 

弓美の話を冗談半分で流す少女は安藤創世。

 

そんな変わらないやり取りを金髪のお嬢様、寺嶋詩織は引きで微笑んで見ていた。

 

「……でも、今までとは違うような……本当に大丈夫かな?」

 

そして、最後の一人小日向未来は空を見上げた。

 

彼女達が新たな戦いに巻き込まれたのは、未だに知らなかったのだーー。

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