戦姫絶唱×シンフォニックライダー   作:コンテンダー。

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3話 プレリュード・サウンド

鮮やかな先制攻撃を仕掛けたファルベはフレイム・アポカリプスの初手に対し、手を宙ぶらん、ゆったりとした構えで迎え撃つ。

 

フレイム・アポカリプスの岩が結合した硬い腕から繰り出される一薙は破壊力には優れている。

 

だが、ファルベにしてみればただの子供騙しの位にしか過ぎない。

 

「フッ!ハッ!」

 

時より息をもらしながら、短いリーチ、長いリーチのそれぞれの攻撃を華麗にかわし、受け流す。そのたびにマントの赤と夕焼けの光橙が揺らめいていた。

 

「くっ、ちょこまかと……」

 

フレイムは一瞬の内に体内で錬成した青い炎を腕に纏わせ、振りかぶる。

 

「………フッ………」

 

だが、ファルベはそれでも自分の舞踏のステップは崩さない。いや、崩れることなど無い。

 

グッと前に繰り出された右を肘打ちで相殺すると、マントが風にたなびく。それは、次なる攻撃の構えであった。

 

ガッ!思いっきり左肩をフレイム・アポカリプスの鳩尾に叩き込むと、その反動を利用した後ろ蹴りで弾き飛ばす。

 

攻撃のリズムは一気に速くなる。落ち着いていた曲が段々と盛り上がっていくように、ステップのリズムは激しくなる。

 

(……まずは…華麗に、速く……)

 

意識しているのか、いないのか。ファルベの脳裏に浮かんで消える譜面。

 

「ハッ!ハッ!タアッ!」

 

バックステップから鮮烈なミドル、ハイの二段蹴り。そのまま前転のように宙を舞い、踵落とし。

 

「ガッ!?な、何なんだ!?予測が……」

 

自由自在に形にとらわれないファルベの攻撃を嵐のようにくらい、フレイム・アポカリプスのリズムは乱れていく。

 

乱れたリズムは断ち切れない。ファルベの攻撃は次々と繰り出される。

 

流れに乗った回し蹴りから、右のストレートに繋ぎ、フレイム・アポカリプスの身体を削ぐ。

 

「グッアアアアアアアアアアッ!」

 

右ストレートを受けたフレイム・アポカリプスはそのまま地面にひれ伏し、転がっていく。

 

「さあ、次の楽章に行ってみようか」

 

あくまで、クールに、パッショナブルに、ファルベは指をフレイム・アポカリプスに突きつける。

 

「だ、黙れ!まだ、俺はこんなモノじゃない!」

 

フレイムの導火線にファルベの言葉が火をつける。

 

「ハアアアアアアアアアアアッ!フン!」

 

フレイム・アポカリプスは気力を高め、身体を炎に包むと、次々と火炎の球を撒き散らす。

 

ダン、ダン、ダン!と炎が辺りを塵に、灰に、変えていく中、ファルベはステップを切り替え、ワイヤーアクションばりの空中バク転やジャンプを見せつける。

 

(しかし、まあ、人体発火の能力で何も無い場所から炎を降らせる辺り、アポカリプスの能力の桁は前より上がっているか)

 

アポカリプスがレベルを重ねていると直感で感じながらも、その強さは仮面ライダーファルベの強さとは天と地の差があった。

 

「お熱いのが好きなら、頭から醒ましてやるよ?季節外れのフリーズタイムだ!」

 

熱を感じながらも、フレイム・アポカリプスの炎からあっという間に距離を取ったファルベは、ベルトからサウンディカルピースを引き抜く。

 

《アインザッツ!》

 

音の出始めと言うオーケストラ専門語をコールするドライバーに合わせ、ファルベはピアノのサウンディカルピースをスロットにセットし、レバーを引いた。

 

《ピース!ノクターン!……サウンド!ノクターン!》

 

ピアノの静かな夜をイメージさせる旋律が響き、ファルベの身体を変えていく。

 

ジャン!最後の旋律と共に、ファルベの姿は青い戦士に変わっていた。

 

プレリュードよりもスマートな出で立ちで、マントの代わりにローブを羽織っていたこの姿、死神にも見えない事もない。そして、赤い複眼と黒いマスク、一本角のハーモニーが奏でるのは、静かなる夜奏。

 

夕焼けが闇に染まるのに、まるで合わせているかのように。

 

「それじゃ、一気に行くとするか」

 

ファルベはそう言いながら、指を鳴らす。

 

すると、ファルベの手の中に『指揮棒』を剣にしたような美しい柄物が飛んでくる。

 

仮面ライダーファルベの専用武器『タクトライザー』である。

 

「フッ!」

 

タクトライザーを巧みに回し、持ち替えるファルベ。彼の指はタクトライザーの柄にあるダイヤルを掴み、双剣の絵柄にセットしていた。

 

《ガッキョク!タガー!》

 

すると一本の剣であったタクトライザーが一瞬で、二本の双剣に分かれたのだ。

 

「なっ!?……うおおおおおっ!」

 

フレイム・アポカリプスは予想だにしない武器のギミックに驚嘆を押し殺せなかったが、直ぐに燃え上がる身体で突っ込んでいく。

 

「燃えるなら、勝手に燃えててくれ……そう言う真っ正面からぶつかってくるのは性に合わないんでな」

 

クールに切り捨てたファルベのステップは前よりもさらにゆったりとしていたが、双剣を回転させるテクニックはポテンシャルを大いに示していた。

 

「フッ!」

 

ローブが風を受け、舞う。それと同時にファルベは炎の弾丸を乱射しながら、向かって来たフレイム・アポカリプスに応じた。

 

ステップの勢いを利用し、フレイム・アポカリプスの衝突をかいくぐったファルベは左の刃を鳩尾に入れる。

 

ザシャッ!その刃は確実にコアまで届いていた。

 

「グッアアアアアアアアアアッ!」

 

たった一撃の刃が、フレイムのピースを徐々に崩し始めたのだ。まさに崩壊へのカウントが始まったと言ってもいいだろう。

 

 

「フッ!」

 

次は右の刃を内角に繰り出し、胸を切り裂くと、そのまま左から斜め下に一閃した。

 

ザシャッ!上がる火花がフレイム・アポカリプスの炎を弱める。

 

「く、クソッ!ま、ま、まだ!」

 

最後の手段とばかりに、遠隔で炎を起こしファルベを燃やそうとするフレイム・アポカリプス。

 

だが、そんな読めない攻撃もタガーであっさりと振り払ったファルベ。

 

「頭、冷えたか?今度は身体を冷やしな!ハアッ!」

 

もう終わらせると言わんばかりにタガーを素早く回し、空気を横に切り裂く軌道で、刃を繰り出したファルベ。

 

「ど、どこを!?」

 

ファルベの一閃からチャンスを掴もうとしたフレイム・アポカリプスだが、異変に気づく。

 

バシャッ!

 

ファルベが薙払ったのは、何と水であった。上がった水しぶきが、刃よりも深くフレイム・アポカリプスを切り刻んだ。

 

「ガアアアアアアアアッ!」

 

そして、切り裂かれた繋ぎ目からフレイムは凍っていった。

 

「月と水のシンフォニア、どうだ?」

 

それはノクターンの能力である、水と冷気のコントロールから成る技であったのだ。

 

ファルベはトドメを刺すため、再びサウンディカルピースをスロットから取り外した。

《アインザッツ!ピース!プレリュード!》

 

再びベルトにプレリュードのサウンディカルピースをセットし、レバーを引くファルベ。

 

 

《サウンド!プレリュード!》

 

ファルベは始まりのプレリュードサウンドに戻ると、ベルトのレバーに手を伸ばす。

 

「さあ、ラストナンバーだ!」

 

キメに入ることを宣言し、レバーを思いっきり引くファルベ。

 

それに合わせて、ベルトが壮大なオーケストラサウンドを響かせる。そして、七色に光る。

 

《スフォルツァンド!プレリュード》

 

「フッ!」

 

 

ファルベは鮮やかなステップを踏みながら、譜面のエフェクトを駆けていく。そして、ロンダードで踏み切り、バク転、そして、鮮やかに飛び上がる。

「ハアアアアアアアアアアアッ!」

 

そして、そのまま急降下してきたのだ。右足にエネルギーを溜め、錐揉み状態で墜ちていく。

 

だが、スピードに乗ったその錐揉みキックは周りに音符のエフェクトを纏う。

 

これこそ、仮面ライダーファルベ・プレリュードサウンドの必殺技『プレストストライク』である。

 

ガアアアアアアアアン!そして、錐揉みの一撃が、凍ったフレイム・アポカリプスにヒットした。

 

「ギャアアアアアアアアアッ!」束縛を衝撃で破られ、フレイム・アポカリプスは一撃を受けた時点で宙に浮かび、地面に向かって吹き飛んだ。

 

そして、力無く地面に叩きつけられると、エネルギーが暴発する。

 

まさに花火であった。

 

「フッ!」

 

対称的にマントを翻し、着地したファルベはくるりと一回転してみせた。

 

(一撃必倒……ステージはおしまいだ)ふとカッコを頭の中でつけたファルベは締めくくりのセリフを吐いた。

 

「アンコールはいらないぜ?」

 

堂々と構えたファルベの後ろで、大爆発が起きた。

 

『ギャアアアアアアアアアッ!』

 

フレイム・アポカリプスは意志を持ったピースごと砕け散った。

 

このラストナンバーで、一応、人体発火の事件は幕を下ろしたのだった……。

 

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