戦姫絶唱×シンフォニックライダー   作:コンテンダー。

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61話 マリアとマジシャン

「シーフは何処にいったのかしら?」

 

大切な信者達との集会の前、何処にも姿を見せないシーフをキョロキョロと探すディーヴァ。

 

また、嫌味の1つや2つを言いたかったに相違ない。

 

「……シーフなら、ロンドンですよ?昨日、話したはずですがねえ?」

 

そんなディーヴァに珍しく辛辣な言葉を投げ掛けるパンドラ。

 

「……悪かったわよ。確かにマグネの件では調子にのっていたわ……」

 

そんなかなり痛いところを突かれたディーヴァを嘲笑するヨハネ。

 

「やはり、あなたはいつも爪が甘い……」

 

「ヨハネ、そう言うあなただって最後の最後で引っくり返されるじゃないの!?」

 

そう言う指摘をされたら言い返したくなるのが世の沙汰。ディーヴァが思いっきり食って掛かる。

 

「それもまた酔狂なのだよ。何がはまるかが分からないのが策略と言うもの。お前のマグネを使った計画も、少しは足しにはなったがな。おかげで信者も増えたと報告を受けている。本当に人間が誰しも、正義の味方を望んではいないのだから……」

 

「おや、珍しい。彼女のフォローですか?」

 

ヨハネの意外なフォローにきょとんとするディーヴァ。

 

「一応、仲は良くなくとも働きは評価する。それがルールだからな」

 

それは合理主義のヨハネらしい答えでもあった。だが、余裕の表情は崩していない。どうやら、シーフのロンドン遠征に合わせて、もう一波乱起こそうと言う魂胆のようだ。

 

「……ッ!屈辱的よッ!」

 

漸く自分が見下されたと分かったディーヴァは地団駄を踏む。

 

「さあ、イライラするのもその辺りでよしとしなさい。あなたのステージですよ?思いっきり、その感情をぶつけてきなさい」

 

彼女のコントロール法を分かっているパンドラが、司祭としての指示を出す。

 

「……分かったわよ。唱ってくるわ、requiemを……」

 

彼女の感情を表すような蒼いドレスを揺らしながら、ディーヴァはステージに向かう。

 

「……さて、ヨハネ」

 

二人が舞台裏に残り、主と右腕の密談が始まった。

 

「……聖遺物の歌女を巻き込むのは上手くはいったな。シーフの手柄と言ったところか?」

 

「ですねえ。奏者達に出張ってもらわないとアポカリプスの進化速度が速まりませんからね。黙示の通りに、進化する数も足りません」

 

「……分かった……。変更点はなしで進める」

 

「ええ、構いませんよ」

 

そう言うと、二人の幹部は捧げる歌を歌うディーヴァを覗き込んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「マリアは何処に?」

 

「少し外の空気を吸ってくるそうですよ。翼さんも少し休んでは?」

 

「そうもいかない。復帰の大切なステージですから」

 

一方、ロンドンのあるスタジオでは必死に風鳴翼が稽古に勤しんでいた。

 

「……………………………」

 

そんな彼女に従うように緒川マネージャーもバックアップに余念がない。だから、あの事は伏せていた。

 

(せめて翼さんとマリアさんのステージが終わるまで、通信がジャグミングされている件は……)

 

今の彼はS.O.N.Gのエージェントではなく、風鳴翼のマネージャー。

 

だからこその選択であった。

 

そして、もうひとり。この場にはいない、彼女はーー。

 

ー本当に、いつからか、忘れていたことがあるー

 

ーどれだけ苦しくても、僕達は支え合うー

 

ー私達はそこにいたい。暖かい場所にー

 

ー帰る場所が僕の宝物だー

 

ー私達は貫くための道があるー

 

こんなやり取りを思い出しながら、オープンスペースのカフェの目立たない席に腰を据えていた。

 

「……約束の時間を過ぎているわ……」

 

マリア・カデンツァヴナ・イヴはサングラス越しにある人物を待っていた。それは、相方とも言える翼ではない。

 

彼女が握っているのは、流暢に英語で書かれた手紙。

 

「……まあ、いつもの事よね……」

 

きっぱりと諦めて、マリアが席を立とうとしたその時だった。

 

ロンドンの街中でも奇怪な目線を送られる白いタキシードに、灰色のコートを身につけた青年がじっとマリアに目線を送っていたのだ。

 

「やっと来た……」

 

マリアはその人物に見えるように控えめに手をあげた。

 

「やあ、ゴメン、ゴメン……」

 

そんな気遣いを知ってか知らずか、するするっと向かいの席に座る青年。

 

「本当にロンドンまで会いに来るなんて、どうかしてるわ……でも、半年ぶりね、航」

 

マリアは一瞬だけ不機嫌そうな表情を浮かべた後、直ぐに緩めた。

 

「半年ってさ、文通してるからそんな感じしないんだよね。ま、顔を見れて嬉しいさ」

 

青年、いや、神城航はマリア・カデンツァヴナ・イヴに向かって久々の自然な笑みを浮かべていた。

 

「まずはマリア、夢を追いかけていけるようになった君におめでとうを言いたい。昔から君はそうだった。どんなに辛くても、君らしく、悩んで、悩んで……僕はね、それが誇らしいんだ」

 

いつもの航とは違うマリア達だけに見せる本質。優しく、彼女に笑いかけながら口にしたエールにマリアも気恥ずかしそうにする。

 

「もう、こういう時はいつも真っ直ぐね。ありがとう」

 

航とマリアの姿が、昔に戻ったように見えた。

 

そして、二人は積もる話を続けた。

 

「あら、もう時間。翼が待ってるわ」

 

おもむろに時計を見たマリアが立ち上がる。

 

「もう戻るの?」

 

「ええ、楽しかったわ」

 

航とマリアにはもうそれだけで充分だった。

 

「……コンサート、来てね。私のパートナーを紹介するわ」

 

マリアからの誘いに無論、航はこう応じた。

 

「もちろん!」

 

マリアとの約束をした航は彼女がパートナーの元に向かう背中を見つめていた。

 

「……………………………」

 

マリアの姿が見えなくなった後、静かに立ち上がった航。

 

「………さて、しがないマジシャンの大仕事、始めますか……」

 

まるで、ロンドンを舞台にした仮面ライダーという演目が始まる事を予期したように、航は背筋を伸ばした。

 

空には日本の方角に飛行機雲が線を描いていたーー。

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