戦姫絶唱×シンフォニックライダー   作:コンテンダー。

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64話 その距離と、夜に幕は上がれ

「……………………………」

 

夜の路地を縫うように歩く航。次々と向かう足取りはわざと人気のないエリアを選んでいた。

 

「……神城の奴、何を探しているんだ?」

 

その航の後ろを巧みな摺り足でついて歩く奏貴。クリスとは一端別れ、彼はこの男を出汁にしようとしていたわけだ。

 

「……………………………」

 

闇夜にとけるタキシードはどうも見辛く、奏貴もやりにくい感触があるようだ。目を細めて凝視しながらも、どうも落ち着き無く、ネクタイを揺らしていた。

 

すると、一陣の夜風が二人の間を吹き抜けた瞬間だった。こつりと革靴をわざとらしく鳴らした航はその場で背伸びをしながら、口を尖らせた。

 

「ああ、そういう趣味は好きじゃないぜ、冴刃君」

 

間髪入れず、つけている奏貴を度肝を抜くかのように早口で喋った。

 

「……気づいていたのか……」

 

お気楽なリズムのステップとは違う研ぎ澄まされたその勘に観念したかのように奏貴は道の中心に横移動する。

 

「それはそうさ、マジシャンは勘が命だからね。僕もほら、マジシャンだし……ね」

 

何とも歯切れの悪い返事だ。

 

「あ、そうだ。どうして僕のあとをまたつけていたんだい?こんなしがないマジシャンの話を聞いてもつまらないだろ?」

 

本調子から遠くはなれた航に、ますます奏貴は眉を潜めた。

 

聞きたいことは山ほどあるし、最後の確信への片道切符も手に入れたい。

 

彼の正体を引き寄せるために、奏貴は絶対的なワードを叩きつける。

 

それはーー。

 

「レセプター・チルドレン」

 

「……ッ!」

 

明らかに今までの航には考えられないリアクションだった。信じられないとばかりに目を見開き、下をうつむかんとソワソワとするその仕草。

 

奏貴の言葉の牙が、食い込んでいるのだ。

 

「……やはりな。神城、お前はレセプターチルドレンの一人だったってワケか。これで色々と説明がつくな……」

 

「……そうだね、はっきり言おう。僕はレセプター・チルドレンの『ハズレ』だよ」

 

漸く観念した航は自分の事を漸く話始めた。彼が自分をハズレと言ったのには単純明快な答えがあった。

 

「ハズレ?」

 

「そこはおいおい分かるかな……」

 

だが、事実を認めた航はそれ以上の事は口に出さまいと、唇を噛み締めた。

 

「……………………………」

 

奏貴もまた、この事について、それ以上の追求をしようとはしなかった。

 

だが、話す事はまだある。

 

「……神城、お前がこんな目立たない道をふらついているのは……」

 

「囮捜査になればいいね」

 

航はロンドンね闇にうごめく影を捕まえるために、誘い出しにかかっていたのだ。

 

「お前、意外だな……」

 

奏貴は航の行動に正直に驚いて見せた。曲者である彼がこんな囮になるとは思いもしなかったからだ。

 

「悪いね。今回ばかりは僕もなりふり構わないからね。……そうでもしないと……」

 

航はアポカリプスの本丸が何処にあるのか、察しているかのように静かに、強く、答えて見せた。

 

「……………………………」

 

そんな真面目な素顔を見た奏貴は一歩前に踏み出た。

 

「……事情がどうであれ、今回は最後まで付き合ってくれそうだな……。強引だが、お前のその情熱にのってやる……。ま、色々と聞かせてもらうつもりだがな」

 

強引な協力の取り付けである。

 

「いや、間に合っては……いないんだよねえ。仮面ライダーファルべが自分から買って出てくれた機会、逃すわけにはいかないなぁ。でも、お口は閉めてるけどね」

 

利害の一致を見いだした奏貴と航。初めての組み合わせが産まれた瞬間だ。

 

そんな時、航が方向をいきなり変えた。

 

「網に引っ掛かったッ!さあ、行くとしようか!」

 

何も説明しないまま、明後日のほうに走り出した航に困惑する奏貴。

 

「お、おいっ!」

 

彼を追いかけようと歩を踏み出したその時だった。

 

「仮面ライダーファルべ……やはり、ロンドンに来ていましたか?」

 

奏貴の前に音もなく、モノクルが目立つ優男が現れたのだ。

 

「ッ!」

 

その男に感じたことのある音の乱れを察知した奏貴は、その男と向かい合う。

 

「……お前、シーフかッ!?」

 

その感覚を便りに、その男の正体/シーフを看破してみせた奏貴。

 

「ご名答。また、お会いしてしまいましたね……」

 

奏貴の足止めか、はたまた別な用件か。奏貴とシーフがにらみ合う。

 

だが、奏貴は静かにベルトを腰に巻き付ける。

 

「……何故、ここにいるか、何を考えているのか?聞かせてもらおうか?」

 

「お聞かせするほどの事はするつもりは無いですよ?」

 

「……………………………」

 

シーフの不適な笑みが奏貴を誘っていた。だが、奏貴は首を振った。

 

「いや、お前の誘いにはのれないな……」

 

奏貴とシーフの硬直が始まったーー。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『いい月夜だ。我の活動の場に相応しい……』

 

マントを纏い、眼下を見下ろすドラキュラ。

 

『邪魔が入る前に、やれる事をするか……』

 

吸血鬼の名を借りたドラキュラ・アポカリプスが街に向かって、飛び立とうとした時だ。

 

「フッ!」

 

『……グッ、また邪魔しに来たのか!?』

 

マントに姿を隠したドラキュラ・アポカリプスは邪魔者の攻撃を避けた。

 

「ご名答……お急ぎなんだよ」

 

ドラキュラの前に、白い『仮面ライダー』が立っていたーー。

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