戦姫絶唱×シンフォニックライダー   作:コンテンダー。

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66話 再会の刃と風

翌日、翼とマリアの参加するステージのリハーサルが押し迫る会場。

 

「……………………………」

 

リハーサルを撮らんとするパパラッチの中に姿を隠し、奏貴が佇んでいた。目立つことなく、パパラッチ達に紛れるそのテクは彼のスキルもあるのだろう。

 

「……ん、そろそろ……」

 

奏貴はパパラッチの波に背を向けると、静かにその場から離れていく。その足取りは会場の裏手に回っていた。

 

果たして、彼は何をしようとしているのか。

 

それはーー。

 

「また会いましたね、緒川マネージャーさん。いえ、この場合は……エージェントとでも呼ぶべきでしょうか?」

 

誰にも見つかる恐れが無いであろう、リハーサル中の楽屋に奏貴は侵入していたのだ。そして、相対するのは翼のマネージャーである緒川慎二であった。

 

実に半年以上ぶりの再会が緒川のマネージャーとしてのーーいや、違う。

 

彼が生きていた裏の世界で培ってきた警戒心を擽る。

 

「冴刃奏貴さん、お久し振りです……。やはり、君は」

 

眼鏡を外した緒川の纏う空気が一気に冷えていく。

 

「ええ、俺はしがないフリーライター……という仮面は被れませんね」

 

漸く始めて出会った時に感じた不協が同じ波長になろうとしていた。

 

「……改めて、冴刃奏貴と申します。フリーライターであり、訳あってあなた達に『協力』させてもらっています」

 

真っ先に口を走らせたのは奏貴。軽い牽制を込めた意味深な台詞をぶつけてきた。

 

「……なるほど、それは『S.O.N.G』に協力していると言う事ですね。……何かが起きていると」

 

緒川も、S.O.N.Gの一員としての素顔を見せると、素早い情報処理を見せる。

 

つまり、奏貴がロンドンを訪れた理由も何となく見えていた。

 

「……重要である情報機関『だけ』の通信がジャグミングされているの現象を冴刃さんが探りに来たと言う事ですね」

 

助かるとばかりに奏貴が軽く首を動かす。また同時に彼の察しの良さに舌を巻いていた。

 

S.O.N.Gと言う組織の磐石な体制はこうして出来ているのだと思うと、改めて素晴らしい仲間に出会えたと思うのだ。

 

「「……………………………」」

 

ここで二人はトーンダウンすると、沈黙が流れる。腹の探り合いか、はたまた、どう接していくべきか悩んでいるのか?ぴたりと動きを止めたまま、沈黙だけが楽屋を占拠する。

 

「……緒川さん……」

 

改まった様子で、奏貴が再び口火を切った。ネクタイをギュッと締める。

 

「……翼さんと彼女に会わせて頂けませんか?無論、俺だけでとは言いません。クリスも同行してもらっているので、彼女も一緒で」

 

思い切った提案であった。前に誤魔化した答えをここでハッキリとすべきとでも考えたか。

 

「雪音さんもですか?どういう関係かは気になりますが、本部の件もありますし、断るわけにはいきませんね……」

 

クリスと呼び捨てにした奏貴が彼女とどんな関係かは分からないが、とんでもない事になる恐れがある以上、マネージャーとしてではなく、S.O.N.Gの一員として受けねばならないと感じた緒川は話にのる。

 

「……いえ、その必要はありません、緒川さん……」室内に凛とした声が響いた。

 

閉じた扉の向こうに、長い髪を揺らした影が見えた。どことなく刺があるような、そんな空気が扉の向こうからでも伝わってくる。

 

それは奏貴に対してであるのは間違いないだろう。

 

「……翼さん、戻っていたんですね」

 

緒川の言葉に、楽屋のドアノブが回り、扉が開いた。

 

その向こうには、風鳴翼が立っていた。マリアの姿が無いが、恐らく緒川に何かを確認するために戻ったのだろう。

 

「……冴刃奏貴、また会う事になるとはな……」

 

翼は目を閉じたまま、予想外の客人に挨拶代わりの冷たい声をぶつけた。

 

「また会いましたね、風鳴翼さん。いつかの事も含めて、話に来ました」

 

奏貴が言っているのは、恐らく彼女と最後に会った時に大事なことを隠していた事だろう。

 

「……御託はいい……」

 

腕を組み、目を開いた翼が真っ直ぐ奏貴を捉えた。緊張感が走る中、奏貴は全く動じることない。

 

「思えば初めて取材で出会った際から、人知れぬモノを隠しているのは分かっていた。漸く数珠繋ぎに全てが形を成した……。シンフォギアを知った理由から全て残らず吐いてもらう!」

 

冴刃奏貴と言う自分の存在を揺らがす人物がそこにいる。それがどういう感情から来るかは分からない。

 

翼の面倒な性格が顔を見せたのだ。

 

「……………………………」

 

翼の強い語句を耳にした奏貴は未だに沈黙を保つ。どれから話をすればいいか?整理をつけているようだ。

 

「翼さん、少し落ち着いてください」

 

それを踏んでか、間に緒川が割って入る。見事なフォローで翼を落ち着かせようとしている。だが、翼は激しく奏貴に迫る。

 

「確かに重々承知。ですが、積もり積もった微積を払うためには、冴刃の答えを聞かなければならないのです!」

 

ヒートアップする翼。それを聞いていた奏貴が行動を開始した。

 

「………翼、少しばかり話をさせてもらうか……」

 

「……ッ!?今、呼び捨てに……」

 

まさか、呼び捨てにされるとは思っていなかった翼の歯車が狂う。

 

「……俺はフリーライターじゃない。俺も君と同じように誰かのために戦う戦士だからだ」

 

奏貴は自分が『仮面ライダー』である事、新たな敵が現れた事を簡潔に語ったーー。

 

 

 

 

「……………………………」

 

納得がいかない様子で翼が睨んではいるが、大体の流れは掴めたようであった。

 

「アポカリプス……」

 

緒川は何か引っ掛かりがあるのか、考え込む。ロンドンの今の件を思い出しているのだろうか。

 

「……さてと……」

 

奏貴は必要な事を話したと考え、ゆっくり席を立つ。

 

「……翼さん、緒川さん、今回の件は俺が何とかします。ライブを成功させてください……」

 

そして、それを言い残し奏貴は立ち去ろうとした。

 

「……待て!」

 

再び翼だ。奏貴は前と同じように足を止めた。

 

「……冴刃奏貴、それならばーー」

 

彼女が口にした言葉はーー。

 

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