戦姫絶唱×シンフォニックライダー   作:コンテンダー。

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4話 日常と、序曲と、そして……

「誰かが言ったそうだ。今日も話題は『仮面ライダー』の噂で持ちきりだな」

 

昼と夜の丁度間になる『3』の文字盤を短針が指した頃、場所は古ぼけたいかにも昭和と言うような絶妙な汚れ具合である喫茶店での事だ。

 

「……少しは落ち着かせて書かせて下さいよ、マスター」

 

暇そうなバリスタが一番隅の席で頭をかきながら、パソコンと向かい合う奏貴を持ち上げた。

 

奏貴はいつもの事だと言わんばかりに、軽く受け流すがなかなか集中出来ていないようだ。

 

「まあまあ、記事が出来ないみたいだから盛り立てているんだからいいじゃない」

 

全く悪びれないバリスタは明るく応じて見せた。いや、バリスタと言うべきではないのかもしれない。

 

何故か喫茶店のマスターを微塵も感じさせないアロハシャツを着ている辺り、ちょっとずれているのである。

 

「………………………」

 

最早これ以上のやりとりは不毛と一瞬で斬って捨てた奏貴は再び、人体発火の記事をまとめ始めた。

 

「面白くないな……少しは付き合ってくれよ?」

 

流石に暇なのが分かるマスター、いや、奏貴の兄貴分に近い存在であるこの男、この古くからある喫茶店『アサンブラーシュ』のマスター兼バリスタを1人で勤める下流水春臣は、奏貴の事をよく分かっている理解者である。

 

それ故に、大分面倒臭いやり取りを続けることがある。つまり、ウザいのだ。

 

「…………………………」

 

最早、昔からと諦めている奏貴のキーを叩く乾いた音が響く。

 

「チェッ、からかいがいが無いな、やっぱり人生が乾いてるんだよ、奏貴は」

 

「余計なお世話です。まだ、俺の道は交わってはいないので」

 

人生指南をシようとし出した春臣をピシャリと黙らせると、奏貴は画面から目を外し、渋い入り口ドアを見た。

 

「……マスター、お客様来ますよ?」

 

どことなく雰囲気を感じ取り、奏貴はドアのほうを指差すと、春臣を急かす。

 

「まっさか……」

 

春臣は奏貴の冗談そのものだと断言に笑い飛ばそうとする。

 

が、それは冗談ではなかった。

 

「このお店だよ、このお店!ね、なかなか味があるでしょ!?」

 

「そうね、いい感じ」

 

ブレザーと白黒のチェックのスカートに、白ブラウスと赤いネクタイ。

 

どこから見ても、若子。しかも、華の女学生だった。

 

「い、いらっしゃい」

 

明らかに春臣の態度は奏貴に対するものとガラリと変化していた。

 

(……仕方ないな、この手のひら返し……)

 

女学生のほうに吸い寄せられるように注文をとりに行く春臣の姿を見た奏貴は呆れかえりながら、自分の仕事がこれ以上は進まないと判断する。

 

「……マスター、帰るからな……」

 

奏貴は同年代の素敵な女学生達には全く目もくれず、机に代金だけを置くとそそくさとドアに向かって行った。

 

「……これが一番のオススメでね……」

 

(全く聞く気すらないのか……)

 

声が届いていないかのように、熱心なプレゼンをする春臣を心の一番冷静な部分で睨みながらも、そのまま気づかれることなく、奏貴は店を出ると、仕方無さそうに首を振る。

 

もう、夕時は近付く。少女達は青春を謳歌しているのか。しみじみと思うと、奏貴は自分の居住である事務所に向かって、歩を進める。

 

風は冷たく、心地良く吹いていた。

 

「………………………」

 

誰が為に、1人で戦う少年の背中は手を引く事だけではなく、引いてくれる誰かを待っているようにも見えた。

 

そんな奏貴と擦れ違う『アサンブラーシュ』に入っていった制服と同じモノを着た少女達。

 

「ここ、ここ!今、イチオシの喫茶店!」

 

底抜けに明るい声に思わず足を止めた。

 

(確か、私立リディアン音楽院の制服か……)

 

見覚えのある制服の色合いから、今、すれ違った少女達は『私立リディアン音楽院』の物だと確信するが、振り返らずに再び歩みを始めた奏貴。

 

「もう、落ち着いて」

 

「そうだぞ、何か浮かれてるみたいじゃねえか」

 

「浮かれてるもん、ほら、ほら、速くぅ」

 

少女達のやり取りが耳に届く。

 

(……少しだけ……)

 

その声を聴いて、まるで引っ張られるかのように振り返ってしまった奏貴。

 

奏貴の目には橙の髪のショートヘアの少女が、銀髪の少女に何故かはたかれている様子が映った。

 

それを苦笑で見る黒髪の少女。3人とも、和気藹々とやっているようだ。

 

(……まさか……ね……)

 

だが、奏貴の目は銀髪の少女に釘付けになっていた。

 

だが、何度か否定するように首を振ると奏貴は再び歩き出した。

 

今、序曲が始まったとは知らずに……。

 

 

 

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