戦姫絶唱×シンフォニックライダー   作:コンテンダー。

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5話 刃とその記憶

いつもの日常、いつものつまらない日。

 

昼下がりの公園で木漏れ陽の下で、本を読んでいる童顔の少年がいた。

 

「んんッ……」

 

彼は軽く息をもらしながら、背伸びをした。秋の空の絶妙な日の光はあまりにも心地よかった。

 

 

だが、この平穏だった時間はすぐに恐怖に染められる。

 

−キイイイイイン−

 

耳をつんざくような奇怪な音が鼓膜ではなく、脳を振動させる。

 

「ッ!?」大きなリアクションを取る少年。耳を押さえ、奇怪な音の出所を探そうと、周りに目を向ける。

 

『決めた、君の身体に憑かせてもらおうかな』

 

音を奏でていた犯人は緑色に発光するパズルのピースであった。まるで、意志があるように少年を宿主に選んだのだ。

 

「な、な、うあああああああああっ!」

 

本だけでなく眠気も投げ捨て、少年は必死になって逃げようとするが、動転してしまったのか、足をもつれさせてしまった。

 

「ぐうっ……ど、どうして、僕を……」

 

少年はパズルのピースとの対話を試みる。どうにか隙を作りたかったのだ。

 

『簡単さ、君が内に秘めているからだ。自分を邪魔者にする連中に対する歪んだ心を、欲望を。抑制された欲望はいつか違う形で溢れ出す。ね、それじゃ、貸してもらう』

 

パズルのピースは全く少年に口を挟ませずに、彼に襲いかかった。

 

たった一瞬だったが、パズルのピースは風に溶けていった。

 

だが、それは少年に痛みを与えていた。

 

「……嘘だろ……」

 

青年の土手っ腹を、一陣の風が切り刻んだのだ。それは間違いない、パズルのピースがもたらしたものだった。

 

ぼとり、ぼとり、ぼとりと無理くりに手で塞いだ腹の傷痕から真っ赤な液体がとめどなく溢れる。

 

少年は気を失っていた。そこに『悪魔』が入り込んだのも感じずに。

 

そして、パズルが入り込んだ腹の傷はみるみるうちに塞がっていく。

 

それ故に、彼の記憶は消えていた。

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

「………………………」

 

奏貴は赤いネクタイを風に揺らし、日本海の見えるある地にやって来ていた。

 

「………俺は知りたい、この世界が崩壊への道を辿り始めた時、何があったのかを。あの少女達の事を……」

 

奏貴は心から願っていた。あの日、何があったのかを。別名『フロンティア事変』と呼ばれる出来事を。

 

そして……。

 

「……このベルトは手を伸ばすためにある……なら、きっと真実はいつか、一つに」

 

奏貴は再び思考の海を漂う。

 

初めて何かに引かれるようにここに来た時、あった出来事を。

 

 

−これも、我らが為。全て、黙示録の通り。そう、いずれ訪れるであろう万象の黙示さえも、揺るがす本質を−

 

奏貴は目にしていた。フロンティアが崩れた海から離れた隠された遺跡で、白い集団が新たな命を産み出そうとしていたのを。

 

カタチを変えていく、ソイツ等は奏貴に襲いかかった。

 

『調律者だ!』

 

「調律者!?俺が!?」

 

何か分からず、変身した怪物の集団に命を奪われそうになった瞬間に、運命が廻ったのを。

 

《ソイツは聖遺でも何でもない、欠片(パズル)さ。誰かは思った、王座から溢れ出す運命を壊す事が出来るのは、軌跡が織り成す唯一無二は、声と、願いと、パンドラに残った光。少年、お前がこの力と向き合い、運命(パズル)を解こうと言うのなら、君が手を伸ばす光となれ》

 

その時、誰かが奏貴を呼んだ。

 

そして、迷いは無かった。奏貴は声に促されるように落ちていたベルトを腰に巻きつけた。

 

「このベルトで………」

 

奏貴はゆっくりと自分に言い聞かせるように覚悟を並べ始めた。

 

「それが運命なら!いつか、この力で手を伸ばせるなら!」

 

冷静な心は今は燃えたぎる、迷いは、そんなものは既に無かった。彼の頭には過去や、約束が駆け巡っていたからだ。

 

後悔するだけして、もう後には戻らないと決めたから。

 

そして、叫んだ。

 

「変身!」

 

 

その時の事を今でも、思い出す。

 

 

−−−−−−−−−−−−−−

 

 

「…………………………」

 

あの時、自分にベルトを手に取るように言ったのは誰か、そんな事は覚えておけなかった。

 

だが、こうして教団と戦っているのを考えると、やはり運命なのだと思わざろう得ないのだ。

 

風に当てられ、どうも調子が狂うのか無言に首を振る奏貴。

 

と、奏貴の電話が『ピロロッ』と電子音を全開にしてみれば、鳴る。

 

「………はい………」

 

奏貴は面倒そうに電話に出ると、向こうと受け答えを始めた。

 

それは、新たな取材の依頼であった。

 

「……イジメの問題の取材……」

 

どうやら、同年代だからと言う意味で白羽が立ったのは明確だった。

 

「……ええ……」

 

とりあえずどうするか、いや、入ってきた仕事は、文は書かねばと云う強い気持ちで、奏貴は依頼を受けてしまう。

 

それが、新たな事件にぶつかる前振りだとは誰も思うまい……。

 

 

−−−−−−−−−−−−−−

 

 

「『仮面ライダー』ねえ」

 

白いタキシードを纏ったマジシャンは不敵に笑いを浮かべ、週刊誌を見つめる。その姿はまさに不審者そのもの。

 

 

「しかし、噂だねえ。ウワサ。それがウワサだとしても、それはウワサではないのだよ!アッハハハハハハッ!」

 

-何、あの人?-

 

-やばい奴なんじゃねえ-

 

周りの人々の目線など気にしないマジシャンは兎に角、笑っていた。

「……さて、こんなモノでいいだろうかね。僕は、僕とて、しっかりと楽しませてもらうとしよう」

 

何が言いたいのか、さっぱり分からせないマジシャンは再び売り場を離れる。

 

「……誰がが言った、唄の力とは……、忘れてしまったがな。きっと、分かるだろう。乙女のラブソング……」

 

もう壊れたように連呼するその後ろ姿が悲しい……。

 

マジシャンは何者なのか。いや、まだ分からない、いや、分からせない。

 

この男が冴刃奏貴の前に現れる事になるとは誰も予期出来ない……。

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