しかしあれですね、呪文って書くと呪いですよね…これからは魔法と言いますです。
ルシフォード…魔王領の都市で、旧魔王ルシファーがいたと言われている冥界の旧首都……らしい。親父からもらった知識を頼っただけなんだけど…因みに町は直ぐに見つかった。黒歌が妖術を使い人の気配を探りそれも頼りにさせてもらった……お礼に頭を撫で抱き締めたら顔を真っ赤にしながらも猫撫で声を出してくれたので良かった。白音もして欲しいと甘えてきたのでしましたよ。
「さて、取り敢えず二人の服でも見ようか。」
「え、けど……」
今着ている服は三人ともボロボロだ。流石に呪文で服は直せなかったので新しく買い直さねければいけないし、妹にボロボロな服装を着させているのは兄としても面目無い。何か言いたげな二人の手を握り目に付いた服屋に入り店員を呼ぶと、俺たちの服装がボロボロなのを見て直ぐに服を見繕ってくれた……優しいお姉さんだったが俺に女物を持って来たのはちょっといただけなかった。その時に選んだ服は黒歌はなんと和服…しかもダボダボだ。なんでそれを選んだんだと聞いたら大きくなっても着れるし俺に似合ってると言われたからだそうだ。確かに似合ってるからね。まあそれだけじゃあれだから黒のTシャツと黒のホットパンツを買ってあげた。白音は白のワンピースと黄色いTシャツに赤のホットパンツだ。まあオシャレするにはまだ二人とも幼いし、もうちょっと大人になったらいいものを買ってあげれる……それまで一緒にいるかはわからないけど。
「で……俺はなんでこんな服を?」
「兄様似合ってる。」
「姉さんができたにゃ。」
く、二人の目が生暖かい……赤のプリッツスカートに青のTシャツ……タイツまで穿かされたよ。あの店員さんの迫力に成すすべなく剥かれて髪もポニーテールだ。……うん、なんか歩いてる人が凄い見てる。女の子に生まれてれば良かったんだけどね、男なんだ俺。まあ普通のジーパン買ったからこれで過ごす事は無い。
「……くそ、家に帰ったら即脱ぐ。」
なんか路地裏とか入りたくないし、しかたない…家に帰るまでは我慢だ……我慢。そんなことを言いながら目的の一つである仕事探しに行こう……うん、どこにでもあるんだね酒場って。この町に来てから5軒は見たよ。
「ハンター募集ってあるにゃ。」
そうだね。看板にデカデカと……あんまり気乗りしないけどしかたないか。見た目女の子の俺と本当に女の子の二人を連れて酒場に入って追い出されないかな?入ってすぐ『ハンターやりたいです!』て言えばいけるかな?
「ハンターやるにゃ!」
「ちょっ!?黒歌!?」
考え事してたら既に黒歌が突入していた。うーんアグレッシブだね。兄さん黒歌がいつか面倒ごと持ってきそうで怖いや。
「おお、嬢ちゃん三人でかい?勇気あるねぇ!」
店員さん…てかマスターって言うんだっけ?その人がなんかいきなり入ってきたのにも関わらず嬉しそうな顔をしてこちらを見ていた。男です。一人男がいるんです。……というか人が居ない。酒場っていうのはわかるけど、マスター一人しか居ない酒場なんて珍しいんじゃないかな、知らないけど。そんな事を考えている間にマスターと黒歌が話を進めておりマスターは一枚の紙を差し出してきた。
「はぐれ悪魔?Fランクって?」
「ん?ああ、危険度だよ。Fが一番下のランクで、一番凶悪なのはSSSランクだ。取り敢えず嬢ちゃんたちでそのはぐれ悪魔を狩ってくる、もしくは捕獲するんだ。捕獲する場合はこの手配書の裏にある魔法陣を使えばいい。相手が身動きできると転送された先がめんどくさい事になるから、気絶とかさせるんだぞ。」
そう言って手渡された手配書の裏を見れば確かに魔法陣が書いてあり、これを地面に置き魔力を流せば魔法陣が展開され転送できるようになるらしく俺と黒歌、そして白音にそれぞれ一枚手渡された。はぐれ悪魔のブリュー。はぐれ悪魔というのがどのようなものか分からない黒歌と白音に親父から授かった知識を披露すれば二人とも少し暗い表情をしてしまった。
だけど、はぐれ悪魔を放置しておけばいつか自分達もそいつの餌食になってしまう可能性があると言えば二人は納得したようで、そうと決まればブリューを探すべく情報通りなら潜伏しているであろう名もない山へと三人で向かった。
「取り敢えず二人がどのくらい戦えるのか見させてくれないか?危なくなったら助けるから。」
木々が生い茂る山の中、二人を後方に下がらせたまま山を登っていれば体にピシッと何かが走る感覚がし、後ろの二人は警戒心を最大まで引き出しているのか普段隠している耳と尻尾がピンと立っていた。つまりこれが殺気という奴なのだろうかと思いながらそんな事を提案すれば、二人は絶望の表情を浮かべ自分を見ていた。ああ、そうか……この子達はまだ命のやり取りをそこまで経験してないかと認識し直し、そして二人を見ていた自分の後ろから来るピリピリとした感触が近くなって来たと分かれば掌を後ろに向けた。この子達の為に少し手を貸してくれ。
「ラリホー。」
ずさぁぁぁぁと自分たちの隣を滑っていく下半身が蛇の男を見て、ラリホーという相手を眠らせる呪文が成功したと分かり、静かに寝息を立てている手配書と同じ姿のブリューを見て黒歌と白音は体を少し震わせながらも近づいていった。
「寝てる……。」
「見たことも聞いたことない魔法……やっぱ兄さんは凄いにゃ!」
二人は目を覚まさないブリューを不思議そうに見ながらもこれで仕事は終わりだねと喜んでいた。だけど俺は違った……このままでは俺がいなくなった時二人は生きていくのが大変だろうと。だからこれは兄からの初めての教育だ。まずは恐怖に耐える。
「ザメハ。」
ゲームでは味方しか使わない呪文だが、対象を狙えば回復の呪文でさえ敵に効くのが分かっていた俺はブリューに眠りを覚ます呪文をかけた。そして目を見開き近くにいた二人を睨むブリューに、黒歌と白音は腰を抜かし涙を流してこちらを見ていた。だが俺だって二人を目の前で殺させる訳が無く、二人に防御力を上げるスカラをかけブリューには攻撃力を下げるヘナトスをかけた。殺気は先程とあまり変わってないが明らかに何かされたのが分かったのか悔しそうな顔をしていた。
「黒歌、白音。二人で協力してそいつを気絶させるんだ。安心してサポートは任せろ。」
殺せなんて事はまだ言わない。この程度の敵を殺しても大して経験値にもならないだろうし、どうせなら修行相手として使ったほうがまだいい。、黒歌達が危なくなったら回復をするだけの役割に取り敢えず落ち着いた俺は安心するようにと二人に笑みを向ければ、二人はやっと今の状況が理解できたのかお互い顔を見合わせ頷いた。レベル1から10まではここで成長できる筈だ……まあゲームに例えるのは失礼だが。
「ん!」
「にゃっ!」
二人は妖力という力を持っているが使い方を知る前に両親と今生の別れ…俺が見るに二人が戦い方を熟知していけばAランクまでのはぐれ悪魔ぐらいに遅れをとらないと思う……まあ自分がどこまでやれているのかわからない為なんの説得力も無いのだが。だからこそ二人に必要な修行でもあり、俺の呪文……魔法がどの程度戦いに影響力をもたらすかの実験でもある。先程からブリューが攻撃、二人がガードという見た目は一方的にやられているように見えるが実は二人の反応速度が上がっておりガードする隙間からブリューに蹴りや殴打が当たっている。後10分もすれば立場が変わるだろうと思い俺はブリューに素早さが上がるピオラという魔法を唱えた。するとまた黒歌と白音は攻撃ができる隙が速さの問題でできなくなる…これの繰り返しで黒歌と白音を成長させている。地が固まれば後は各々長所と短所が現れる…今の所黒歌は妖術を使い援護射撃を与えており、白音は拳と足に強化を施し勇敢に近接戦闘をしている。ここら辺を伸ばせばタッグである程度の敵は倒せるだろうレベルに到達すると分かる。
「さ、そろそろ慣れてきただろう。そいつを気絶させて引き渡して帰ろう。」
「はい!」
「任せて!」
俺の言葉が届いたのか二人はお互いを見て頷いた。姉妹だからこそ繋がってる…二人は連携を取り先程スピードに翻弄されていたのが嘘のようにブリューの攻撃を躱して反撃をしていった。戦いの中で成長できるのならこれからも同じような特訓をさせていけばいいだろうと思っている間に、ブリューの後頭部に白音の全力の蹴りが炸裂しその場に崩れ落ちたブリューを見て、俺は食らいたく無いなと思った。
「よし、後は魔法陣を出して……つっこむっと。」
「うーん、もうちょっと戦いたかったにゃ。」
「けど兄様の補助があったから……」
ブリューを出現させた魔法陣の中へ連れてこれば、それぞれ帝千鶴、黒歌、白音という名を込め魔法陣に魔力と妖力を流せばブリューを転送する。こうすれば転送先にいるお偉いさんが名前を登録し、魔法陣に組み込まれた式を解析するとどこでこの手配書を手に入れたか、管理しているものは誰かを探し出すらしい。するとなんと、マスターにお偉いさんが相応の額を渡し、俺たちに流れてくるらしい。マスター曰く、Sランクを討伐すれば魔王様から勲章を授与されるとか。黒歌が話をちゃんと聞いていたので少しビックリしていたら怒られたが。
「じゃあ次の手配書貰いに行くか。1ヶ月でSランクを倒せるまで特訓だ。」
「「おー!」」
仕組みは分かったため後は実践経験だ。これから1ヶ月ひたすら訓練をしてお金を貯め魔王様に会う…目的ができた為に気合を入れ直しマスターのいる酒場へと戻った……ルーラでね。
次はまた数ヶ月飛ばします。シスコンのあの人登場です。