サーゼクスの力あんまり分かってませんがそれとなく……
今回で冥界からおさらばです。
黒歌side
初めてはぐれ悪魔を倒してから1ヶ月ちょっと…私と白音の前には巨大な鰐の姿をした1匹のはぐれ悪魔、Sランクのイリガルだが満身創痍の姿で横たわっている。
私達が使ったのは仙術と妖力そして気で、白音は肉体強化を施しつつ相手の内側を破壊できる気と仙術を組み合わせた近接戦闘、私は中遠距離から妖力と仙術を巧みに使い援護だにゃ。
本当は一緒に来たかったけど、今日は兄さんとは別にSランクのはぐれ悪魔を討伐する為二人で家から遠く離れた森の奥深くに来ていた。
1週間前に遂にSランクのはぐれ悪魔を三人で見つけ修行した成果もあり、今まで普通の猫又だと思っていたが猫魈という仙人の力を持つ妖怪だったと分かった。
それから兄さんにある程度鍛えてもらい仙術の使用が可能になったのにゃ……思い出すだけで背筋が凍るにゃ。あんな修行方法で強くならにゃいならそいつは才能なんてない。
「姉様、捕獲。」
「そうね。あ、兄さんの名前はいらないらしいから私達二人だけでいいみたいにゃ。」
私達二人でSランクを倒せるようにはなったがまだSSランクには兄さんの補助がなければ手も足も出ない……その兄さんは今頃SSランクを倒して家でご飯を作って待ってくれている筈。兄さんの料理は凶悪とも言える絶品……あれを食べたらもう虜になってしまうにゃ。
「姉様、語尾。」
「うっ……癖なんだからしょうがにゃ……しょうがないの。」
ちょっと前に兄さんに語尾のにゃは極力付けないようにと言われた…他の人の目を気にしろとも。大きなお世話と怒りそうになったけど別に自分の前ではいいからと言われたから承諾した。だから取り敢えず白音を練習台にしてるけど慣れはそんな簡単に直らないにゃ。そういえばそろそろ魔王様との謁見が認められるって兄さんが嬉しそうにしてたけど、私達も会えるのかにゃ?
「……姉様帰ろ。お腹空いた。」
「白音は食いしん坊にゃ……んっ!?白音っ!」
「姉様!この殺気は!?」
突如森全体を覆うような巨大な殺気…それも2つ。体は動く…兄さんの修行の成果だ。だからわかる…これは兄さんの殺気。もう一つは分からないけど兄さんと同格ということはSSSランクのはぐれ悪魔……?ううん、そんなこと関係ない。兄さんが危険な身に陥ってるなら私達も応援に行かなくちゃ!
「白音!全速力で行くにゃ!!」
「うん!!」
足にありったけの力を入れ仙術と気を纏う。そして兄さんのいる方角…我が家へと風のような早さで向かっていった。
千鶴side
「SSランクって言ってもやっぱり魔王よりも弱いんだな……まあいい修行になったけど。」
目の前に倒れているSSランクのはぐれ悪魔カイドウ…人間と同じ姿だった為転生悪魔というやつだったんだろう。神器(セイクリッド・ギア)というものを持っていたが特に脅威にはならなかった。聖書の神が作ったシステムで不思議な能力を所持者へ与え、与えられる能力はさまざまだが発現するのに使い手の善悪は関係ないらしい。
先天的に神器を宿すのは人間、もしくは人間の血を引く者のみだが持ち主から奪い自身に移植するなどして後天的に神器を手に入れることも可能な為もしかしたらこのカイドウもその口かもしれないが。
本物には劣るものの様々な属性の武器などを生み出す創造系、個別の意思を持ち所有者から離れて行動できる独立具現型、ドラゴンを始めとする強大な神獣、魔獣を封じた封印系など数多くの系統が存在する。カイドウは創造系で空中に剣を出現させ襲い掛かってきた。初手はカイドウだったが特にスピードも早くなかった為特に気をつける所はなかった。神器使いというのと主を殺した事…後は追っ手を返り討ちにした事でSSランクになったようだが、俺からしたらこの程度のはぐれ悪魔を倒せない追っ手の方がなんなんだと言いたくなった。まあ俺も魔王と同等っていう力があるし試したくなったのもあるか。
「さて捕獲と……ふう、黒歌達はもう少しかかるだろうから昼食でも作るか。」
最近は二手に分かれ仕事をしている為朝昼晩と黒歌達と一緒にいる時間が減ってきたが、ご飯の時間になると帰ってくるのを見ると本当に猫だなぁと思う。
それにしてもあの二人の潜在能力はなかなかのものだ。妖力と気は使えるのが分かっていたが仙術を取り入れたあの二人は冥界でいう上級悪魔を越えるのも近いかもしれない。まあまだ黒歌は6歳だし白音は4歳だ…子供も子供だ。言動は大人びているもののそれはただの背伸びで、体の成長がまだ始まってない二人は俺を頼ってくる…期待に応えなきゃ兄として面目ないだろう。
俺は魔力の制御や調整方法の鍛錬と筋トレを主に行っている。それにSSランクのおかげで威力調整はマスターし、跳躍で約10メートル、魔力で足場を使い上空で戦う事は可能になった。
後は魔力探査…黒歌達のおかげで魔力、気、妖力、仙術に関する術式等は展開した瞬間から持続しているものまでが判別できるようになり、魔力を拳に乗せ思い切り殴ればそれらを壊せる事が分かった。
「今日も魚でいいか……あいつら肉より魚派だからな。」
やはり猫由来…というか猫魈という妖怪だからか魚が好きなんだろうな。食材はルシフォードで買えるようになった為もっと豪華にできるが、豪華さより量の妹達だ…そこで食費が半端ないから豪華さは二の次だ。
だがやはり気になる事がある…家に帰るには無視できないほどの物が。先程から我が家からとてつもない魔力を感じる…カイドウなんて足の小指で捻れるぐらいいやそれ以上かもしれない…そんな巨大な魔力が我が家から放たれている。
「……て言っても初めてこの大きさの魔力を感じただけで俺が本気出す時よりは小さいな。」
俺の魔力量はこの冥界の魔王より少し上…もしかしたら魔王何てことは……無いだろうな。こんな森の中の小さな家に来るわけが無い。取り敢えず話ができる奴なら話で解決したい…だけど隙は見せられない。できないなら…仕方ないが武力行使だ。扉の前までこれば巨大な魔力の持ち主は部屋を歩き回っているのが分かる。何かを探しているのだろうか?物盗りなら容赦はしない…こんなでかい魔力を持ちながらコソ泥に成り下がる奴に容赦していては魔王に合わせる顔など無い。だから家を壊さないよう範囲攻撃をやめて一点集中…拳にバギクロスを纏い直撃した瞬間に解放。直撃した場所に暴風が発生し風を生成…体を斬り刻み捻る幾つかある簡易必殺技の一つだ。最初は風属性最強のバギムーチョを纏おうとしたが元からかかる魔力量が大きく拳に乗せる事が出来なかった。やはり決まった魔力量があるドラゴンクエストの魔法では意のままに操るのは無理だった。だから簡易必殺技。いずれはこの魔法を解読し手中に収め扱うことを決意した。はじめの頃はただ平和に生きていこうと思っていたが、こうやって鍛錬などをしていると楽しいのだ…仕方が無い。
「魔拳バギクロスって感じかな。……また今度考え直そう。」
必殺技ならやっぱ叫びながらだよね。凝縮されたバギクロスが今にも自分の身を切り刻もうとしているのが分かり覚悟を決め、そして空いている手で扉を開いた……角度調整も完璧。そこに立って部屋を物色している赤い長髪になんかカッコいい服を着ている男の腹に一発!
「あ、おじゃま」
「魔拳バギクロスっ!!!」
「ぐっ!?おおおおおおぉぉぉぉ!?な、何がぁぁぁ!?」
何か話しかけてきた男の腹をぶち抜かんばかりに拳を振り抜き、拳が埋まった所で魔力を離す……風属性特有なのか緑の魔力が男の腹に埋もれそして風が巻き起こった。何が起きたかわからない男は手で腹を抑えようにも風の魔力が押し返す…何か小さな魔力を自分の腹に向けるが俺の風の魔力の方が質がいいのかそれも弾き飛ばした。ついに風の魔力から発生した風が男の服を斬り刻み肉体に傷をつけた瞬間…その男から真っ紅な炎?のような魔力を手の平に込め自分の腹部に当てた……どうやら俺の魔力を消し飛ばしたのか風は止み自分の魔力が無くなったのが分かった。
「驚いた……まさか人間の子供が僕に滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクスティンクト)を使わせるなんてね。あれを消さなかったら僕はどうなってたのかな?」
青い顔をして自分の腹部を見るイケメン…どうやら一か八かの勝負だったのか肩で息をしながら聞いてきた。どうなってたなんてその傷跡を見れば分かる。
「ああ、そうだね…その顔は想像通りと書いてある。まさかとは思ったけど……君の力は僕と同等かそれ以上か……参ったね。僕に敵意は無い…だからその構えた拳は下げてくれ。僕もまだ妻に別れの挨拶はしてないんだ。」
自分の腹部を中心に切り刻まれ出血している様子に冷や汗のような物を出す男はそんな事を言って腰を下ろした。……悪い奴でも物盗りでも無さそうだ。その男の目は何かを見据えていて、そして背負っているような瞳だ。
「……魔王か?それともそれぐらいの力を持つナニカって解釈でいいか?」
「いや、魔王で合ってる。君の噂を聞いてね……どんな人物か見たかっただけなんだが……やっぱりグレイフィアを連れてきた方が良かったかな。……すまない今日は帰らせてもらうよ……フェニックスの涙は持ってきていなくてね。」
どうやら魔王のようだ……言いたい事だけ言って帰らせるのも癪だな。魔力も枯渇し体調が悪そうだ。
「……まあこのぐらいなら。ホイミ。」
見た感じはただの切り傷だ……ホイミで十分だろう。手を翳し魔王の腹部に触れれば淡い光を放ち傷がみるみる塞がっていく…この程度でベホイミを使わなくて良かった。
「ははは……何て事だ。君は一体何者なんだい?いや……そんな事は二の次だ。ありがとう。改めて自己紹介させてくれないか?僕は魔王サーゼクス・ルシファーだ。」
「……帝千鶴だ。まあその口ぶりはこっちの事はある程度知ってるんだろ?」
こちらの使う技が不思議なのか身構えているが、もともと魔王との謁見が叶いそうだと言う話をマスターに聞いていたので俺がどんな奴かなどの情報は耳に入っているだろう。
「14歳には見えないね……男と聞いていたけど実物は女の子…ごめんなさい、だからその得体のしれない魔力を込めた拳を下げてほしい。」
やはりそのいらない情報まで耳に入っていたかと、呆れながら拳にメラゾーマを込めていたのを冷や汗をかいた魔王サーゼクスに咎められた。どうやらかなり魔力を消耗したようだ。もう一度あれをやると言ったら土下座でもしてきそうだ。
「それで、急に魔王様はこのような所に来て如何されたんですか?」
「敬語はやめてくれ…プライベートで来ているし、君に敬語を使わせるなんて僕には耐えられない。先ずは対等に接しさせて欲しい。」
どうやら先ほどの魔力を見ては魔王とはいえ態度を改めたようで、正座をしてこちらと見合った姿から威厳は感じず、親しみの湧くような気配を醸し出した。
「分かった。それでサーゼクスは一体何の用でここに?」
「……君の事は調べれるだけ調べた。だが全くもって不可思議なんだ……君の経歴は人間界に確かにある。そこには何も特別な事が書いていないんだ…だからこそ、君が冥界にいて僕と同等の力があるのは全くもって理解が及ばない。君は一体何者だい?」
どうやらサーゼクスは俺が送った魔法陣から調査を始めていったらしい。興味がある事には納得できるまで調べる男なんだろう……やはりいきなりこの世界に現れ経歴を親父に作ってもらったから何処かしら不自然な場所があったんだろう。何者……答えは普通の人間だ。ただ魔王並みの力を持っているというのを除けば。
「兄様!」
「兄さん!」
そんな話をしていると扉が思い切り開き黒歌と白音が青い顔をして俺の胸に飛び込んできた。二人ともまだ体重が軽いからいいけど、もうちょっと成長したら二人一緒に抱きとめるのも無理になりそうだ。
「……千鳥君。その子達は?」
「……妹の黒歌と白音だ。」
サーゼクスは飛び込んできた二人を見て目を細めていた。魔王からしたら妖怪が人間を兄と呼ぶ姿に疑問があるんだろう…だがサーゼクスの目がまた親しみの湧くような瞳に変わった。どうやらこういう事に口出しはするつもりは無いんだろう。
「……実は僕にも妹が一人いてね。リアスというんだがとても可愛いんだ……ああリーアたん…。」
何かいきなり笑みを浮かべてきた……キモいな。いやでも妹というのは可愛いものだ、それは分かる。黒歌と白音の頭を撫でた時の表情を見たら他の事はどうでもよくなる。
「まあ黒歌と白音には勝てないだろうがな。サーゼクスの妹って事は我が強そうだし…どうせ大きくなったら嫌いとか言われるんじゃないか?」
「……へえ、けど君の妹達も大きくなったらそんな抱きついてくる事なんて無くなるんじゃないかな?」
妹討論が始まった……。どのぐらい妹が可愛いか、笑顔の破壊力差、照れた時の表情を見せた時なんて世界創造も片手でできるだろうと妹の可愛さ対決の勃発。本当の妹ではないが聞いている黒歌と白音の顔が真っ赤になり恥ずかしそうにしていたのを見て更に熱くなる。何処からか取り出した妹のアルバムを見せられた時は自分の不甲斐なさに負けを認めそうになったが今ここにいる実物を最大限愛でてその様子を見させた結果は引き分けに終わった。
「確かに写真も良い……だが今この瞬間この可愛さに勝るかと言われたら僕は迷ってしまう。そうか……僕は魔王という事でリーアたんに直接会う時間があまりにもない。それに比べ君はずっと一緒に居られるからそこまでの自信があるんだね……。決めたよ…僕はリーアたんの為に魔王を辞めよう!」
「何言ってんだこの魔王?」
「兄様……」
「兄さん………」
ああそうだね。二人の幸せそうな顔を見れれば魔王が何しようが知った事じゃ無いよね。照れ過ぎて顔が真っ赤のままだ…確かにカメラがあればこの姿をずっと保存できる……。あながちサーゼクスの言っている事も間違いではないかもしれない。
「……いやぁ君とは良い友達になれそうだね。セラフォルーも君の事を気に入りそうだ。」
「そうだな……良い友人関係を築きたいな。そのセラフォルーていうのは確かレヴィアタンだったかな?名前だけは知ってるけど。」
確か魔王は四人いるらしい。サーゼクス・ルシファー、セラフォルー・レヴィアタン、アジュカ・ベルゼブブ、ファルビウム・アスモデウス…超越者と呼ばれる程の実力者。一度全員と手合わせしてみたいな。
「そうかい、じゃあ今度会わせてあげよう。彼女の妹愛は僕と同等なぐらいだからね。」
「……そろそろ本題に入ってくれないか?」
「ああ、そうだったね。千鶴君と話していると楽しくてね……じゃあ単刀直入に。残念だが君ほどの実力を持つ人間を冥界で囲うなど不可能だ。君にその気は無いのかも知れないが、君の微弱で不可解な魔力に怯えこの森から逃げ小さな町に被害も出ている。だから君に選択肢を与えに来た……。一つ目は冥界から去り人間界で過ごしてもらいたい。その際は黒歌ちゃんと白音ちゃんはついていけない…安心してくれちゃんと彼女たちが成人するまでは面倒を見てあげるつもりだ…勿論千鶴君と黒歌ちゃんと白音ちゃんに監視は付くがね。千鶴君を狙う勢力だって現れるかもしれないし……。二つ目はこのまま冥界で過ごしてもらう…ただしこれで僕の眷属になってくれたらだ。勿論眷属になってくれたら領地も与える。そこで妹達と幸せに暮らしていけるしね。ただ僕が出すお願いは聞いてもらうけどね。」
そう言ってサーゼクスが取り出したのはチェスの駒だった。見た所ポーンだが明らかに魔術で作られている…悪魔の駒と呼ばれるものらしい。つまりサーゼクスの下僕になれという事だろう。だがそれは嫌だな…悪魔になっても寿命が伸びる以外は今の俺に必要無いから。けど魅力は確かにある。
「そして三つ目は君達を人間界に送らせてもらう…勿論生活などもできる限り支援しよう。監視はつかないがその代わりたまに僕のお願いを聞いて欲しい…勿論断っても咎めるつもりも無い。君が身の危険を感じるような事があれば助けを向かわせる。そして……僕の友人として協力して欲しい事がある。勿論そちらの要求にもできるだけ応じるつもりだ。四つ目は今ここで勢力を揃え君をSSSランクのはぐれとみなし討伐させてもらう悪魔では無いけどね、それは僕の力でどうにかできる。その腕の中にいる二人も同様に。どうだろうか?この四つの中から選んでくれ。」
選べるとしたら三つ。四つ目は論外だ……たとえこの子達を助ける為とはいえ手を出せば確実に平和には過ごせなくなる。一つ目は確かに俺の魔力を狙い襲ってくるような奴もいるかも知れない。黒歌達も魔王の庇護下に置かれればかなり優遇されるだろう。だが二人は四つ目の選択肢を聞いた瞬間から顔を青くし必死に縋り付いてきている…それに、この男を確実に信頼するには材料が足りていない。だから一つ目の選択肢は選べない。
二つ目はこの『兵士』の駒を使い転生悪魔になれという事…だがそれをしてしまえば黒歌達と一緒に住めるにしても悪魔の仕事というやりたくも無い事を強要させられる。魅力もある…魔王の下僕とはいえそれなりの地位だろう。ただ人間界ではなくこちらで過ごす事になるのはいただけない。これは第二候補だな……。
三つ目が明らかに本命だろう。殆ど誘導されたもんだがサーゼクスは俺と事を構える気も無く、ただ友人として人間界で暮らして欲しいと言った。力を貸して欲しい時に力を貸してくれれば俺の日常はある程度守られるという事だ。協力という事はこちらが不利になる内容では無いだろう、サーゼクスも既に何を選ぶか分かっているようでニコニコと笑みを浮かべていた。
「三つ目だ。ただし俺の願いを許容して欲しい。」
「ふむ、叶えてくれではなく許容できるか…か、いいだろう。言ってみてくれ。」
悪魔は対価を求める。だからこそだ…もし許可を貰えるならそれなりに力は貸す。
「黒歌達が人間界で平和に暮らせるような措置。学校にも行かせたい。いずれ仕事もできるような措置を求める。」
「兄さん!私たちの事はいいから兄さんの」
「そうはいかないよ黒歌。君たちはまだ人間界も知らなければこの世界の事を殆ど知らないだろう?俺は妖怪がどうやって暮らしているかは知らないけど、今黒歌達は俺の妹なんだ…だからそれなりの生活をさせるためにもまずは学校とかに通ったりするのはどうだろう?学校は知識の宝庫だ…俺も初めて学校に行った時世界の広さに驚いた…その感動を知って欲しい。」
「……兄様がそういうなら…私はその学校というものに通ってみたいです。」
白音はいつもより真剣な表情だ…黒歌もそんな白音の姿を見て触発されたのか私も通うと白音に抱きついた…ああ、可愛いな。
「それぐらいなら全然問題無い。実はこれは僕のお願いでもあるんだけど、君達には僕らの家族…ルシファーではなくグレモリーの領地である駒王町へ行って欲しい。そこは僕のような悪魔も通っている学校があってね…後7年したらリーアたんに行かせる高校だ。千鶴君…君はある程度知識はあるようだし私立駒王学園に入学してもらい卒業…そこの教師になって欲しい。そして君がリーアたんを見守り無事卒業させてくれ…勿論給料もそれなりに出そう。僕はそこの理事長だからね。今は僕の妻や母がリーアたんに勉強を教えているし中学卒業の年齢までは冥界の学校に通わせるつもりだ。黒歌ちゃん達の事も安心してくれ駒王町の小学校から黒歌ちゃんと白音ちゃんは入学できるようにさせてもらう。」
リーアたんとか言ってくるので真剣な話なのにイライラしてきてしまった…だがそれが対価だろう。自分の妹が自分の手の届か無いところに行ってしまうから悪い虫がつかないように陰ながら見守れと……まあ自分の将来が教師に確定してしまうが悪くは無い。いずれ黒歌と白音も通わせれる…勉強も見てやれる。なかなか悪くない条件だ。
「ああ、分かった。全力でリーアた……リアスちゃんの面倒を見よう。」
危うく吊られてリーアたんと言いそうになってしまった…。だがこれで人間界での生活も満足にできるだろう…この子達だけは身を挺してでも十分な私生活を送れるようにする。
「ありがとう…これで契約は終了だね。人間界に行く準備ができたらルシフォードに来てくれ。場所は君たちが使っている酒場…そこでまた会おう。君の気配はもう分かったからね…来てくれれば迎えに行く。そうそう、実は人間界に君の名義で家が存在していてね、勝手ながら駒王町へ移動させてもらったよ。それじゃあまた。」
言いたい事だけ行って現れた魔法陣の中へ消えていったサーゼクス…最後にとんでも無い事を言っていたが魔王なら可能だろう。人間界に行く準備か…まあ冥界にはまた来れそうな気がするし、マスターには人間界に行く前に会えるだろう。
「早速だけど明日なんてどうだ?」
「兄様がいいならいいよ。」
「別に冥界に思い入れがあるわけじゃないにゃ。それに兄さんとはこれからもずっと一緒にゃ!」
二人とも俺についてきてくれるようだ…最初はぎこちなかった二人だがこんなに信頼できる関係になれた。神は居ないようだが感謝だな……。
二人の頭を撫でそれじゃあ今日は豪勢にいこうと昼ご飯と夜ご飯はかなりのものになった。そして冥界最後の夜…この家にもかなり助かったし、別荘という事で冥界に置いておけるか明日聞いてみようと思い三人でくっついて寝た。
人間界での生活……とても楽しみであり不安もいっぱいあるが、黒歌達と平和に過ごせる事を祈って一歩一歩歩いて行こうと思う……。
翌朝早速必要な物だけ…まあ食器や家具はまた人間界で集めればいいから置いていくが着替えなどは持っていき、三人分合わせてルシフォードで購入した大き目の鞄へ詰め込んだ。知らない間に黒歌達の服が増えていたのは驚いたが女の子なのだから仕方ない。
朝食は人間界で取ろうと思っているので顔を洗いルシフォードへ向かった……ルーラでね。
「いつ体験しても不思議にゃ…私にも使える、このルーラってやつ?」
「うーん、黒歌達の仙術とか妖力とは違う種類になるからな……どうせなら空間を操れるような魔術みたいな物の方が向いてると思う。」
このルーラもそうだが俺の魔法は別の次元の物だろう。親父に支援してもらい使えるようになった物だし教えようにも仕組みがややこしすぎて説明もできない…黒歌達には悪いが自分たちでできる限界を目指した方がいいだろう。
「兄様、マスターがいる。」
「お、本当だ。」
白音の視力ならあの程度は見えるかな。どうやらサーゼクスが俺の気配に気付き来たんだろう…めちゃくちゃ挙動不審だ。マスターの胃がどうにかなる前に早く行ってあげよう。
「マス」
「ち、千鶴君!?ま、魔王様、魔王様なんだよ!?一体全体どうやったらあのような方に友人だと言われる関係に!?」
どうやらサーゼクスが俺との関係を話したんだろう…俺がマスターに話しかけようとしたら捲し立てるように言葉を放ってきた。いやただの妹自慢から友人になれたなんて情けなくて言えない。
まあマスターの気持ちも分かるので話が合ったという事だけ伝えマスターと一緒に酒場に入った。
「やあ千鶴君。昨日ぶりだね。」
カウンターに座りながらの俺の気配に気付いたのか前を向いたまま声をかけてきた……隣にいる美人は誰だろうか?銀髪にメイド服を着ているが何処となく雰囲気がピリッとしており顔を少し怒っているようだ。
「ああ、紹介しようか…グレイフィア。
「……ご紹介に預かりましたグレイフィア・ルキフグスと申します。こちらにおられるサーゼクス・ルシファーの『女王』をさせていただいています。」
「あ、ちなみに僕の妻でもあるんだ。どうだい、美人だろ?」
奥さんにメイド服を着させる趣味をとやかく言うつもりはない。まあ確かに美人だとは思うけど。
けどさっきから凄いこちらを睨んでる……なんだろうか?
「……サーゼクス様、昨日の話ではこちらの少年があなたと同等かそれ以上の実力を持っているというのは本当なのでしょうか?」
「ああ、本当だよ。君のそれが確認したくて来たんだろう?」
成る程ね、自分の夫…それも魔王がそういう程の実力者がどのようなものか見に来た…だったら早々に話を切り上げてもらえるように久しぶりに本気…は見せる必要が無いからサーゼクスと同じぐらいの魔力を見せてあげればいいだろう。今まで内に隠していても溢れてしまっていた魔力を整え、昨日サーゼクスが魔拳バギクロスを打ち消した時と同じぐらいの魔力でいいだろう…それを纏う。
「っ!?」
「はは、凄いな……僕の魔力量を完全にコピーしているね。どうだいグレイフィア、彼を僕の友人として迎えたいと思うんだけど?」
グレイフィアさんのお眼鏡に叶ったのだろう頭を下げ申し訳なさそうな顔をこちらに向けてきた。サーゼクス、お前わざわざそれを言いたいが為に連れてきたのか?
というかさっきからマスターは白目を向いており、黒歌と白音は俺の腕を掴みグレイフィアを睨んでいる……特に胸の辺りを。心配しなくても二人も成長したらあれぐらいになるさ。
「ご無礼をお許し下さい。帝千鶴様…改めて自己紹介をさせていただきます。魔王サーゼクス・ルシファーの『女王』であり妻のグレイフィア・ルキフグスと申します。サーゼクス様のご友人に失礼な態度を取ってしまい申し訳ございません。」
「いや、そんなかしこまらなくてもいいですよ…俺まだ14なんですから。こちらこそよろしくお願いしますグレイフィアさん。」
力を持っているもの、魔王の友人と呼ばれるからには敬う気持ちがあるんだろうが、さすがに年上の人に敬語を使われるのは歯痒い。
とりあえず千鶴さんと呼ぶ事とお願いをしたら承諾された。
「覚悟は出来てる……て顔だね。人間界にはグレイフィアが用意してくれた魔法陣を使用してくれ。えーと…これを渡そう。これがあれば何時でも冥界にこれるからね。魔法陣の設定場所はこちらで使う場合もあちらで使う場合も君の家になっている。君が人間界に行った後もあの家が壊されたり悪魔が侵入したりしないように措置もしておくよ。」
何もかもお見通しという顔は少しムカついたが悪気はなさそうだ。有り難くサーゼクスの取り出したカードのような物を貰いマスターの方を見た。
少し落ち着いたのか苦笑いを浮かべているがうんうん頷いているのでこれからどうなるかは理解できているようだ。黒歌と白音がお別れを言いに言ったのを見てサーゼクスに向き直る。
「君の家にこれから先必要な物を一式揃えて転移してある。それで、君たちが無事に高校を卒業するまでに必要な物もあるから活用してくれ……僕が言えるのはそれだけだ。リアスが高校に入学する時は連絡を入れるよ。だからせめて…高校を卒業し教師になるまでは自分のやりたいことをしてくれ。」
「ああ、分かった。それまでに俺ができることは全部やるよ。あ、それと入学する前にリアスちゃんの写真か何かをくれ。流石にあのアルバムを見ただけじゃあ成長した姿は思い浮かべないから。」
高校を卒業するまでなんて直ぐだ。けど黒歌達の生活の為ならなんでもするつもりだ……血は繋がってないが肉親のように思っている。出会って1年経っていないけど心を通わせることはできた。
マスターとの話も終わったのかこちらに駆け寄ってきた二人の頭を撫でる。
「マスター、また冥界に来るようなことがあればその時は酒でも一緒に飲みましょう。」
「ああ、待ってるよ。気をつけて行ってくるんだよ……まさか人間とこんなに楽しい一時を過ごせるとは思わなかった。いい思い出だ……行ってらっしゃい、千鶴君、黒歌ちゃん、白音ちゃん。」
マスターは笑顔で送ってくれるようだ。だったら俺も笑顔で返そう…まだ14の俺が偉い顔できるわけじゃない…次会う時はうまい酒が飲めるんだろうな。
「まあ永遠の別れにはならないさ。いざとなったら無理矢理連れてこよう…っ、痛いよグレイフィア。」
「サーゼクス様?何をおっしゃっているのですか?……はあ。千鶴さん、サーゼクスのご友人であるあなたにならリアスも任せられます。どうかまた会う日まで……。」
別れる直前まで少し軽い魔王様だったが、心置きなく人間界に行ける。
準備もできたんだろう…足元に大きな魔法陣が現れ吸い込まれていくように足が落ちていく。黒歌達はビクビクしながら足に捕まっている……今日から人間界での生活だ。頑張ろう。
徐々に景色が下がっていき、最後に見えたのは笑みを浮かべ手を振るマスター、頭を下げ見送っているグレイフィアさん、そして何やら企んでいるのを隠すつもりもないサーゼクスの顔だった。
というわけで次回から人間界。
後1話やったら原作入りします。
書いてある通り、千鶴君は私立駒王学園の教師になります。
オカケン顧問になりますよ〜アザゼル?副顧問ですね。
では感想やら何かあれば下さいね。