皆がジュラのそばに近寄る。
「どうしよう…酷い怪我……。」
「死ぬんじゃねぇぞ、オッサン!」
ナツは手をきつく握り締め、飛び出そうとしてるのを我慢しているようだった。
そんな中、ルーナは今の状況を冷静に考えていた。
仲間だから、心配はしているがこの程度で死ぬほど軟な身体はしていないだろうと踏んでいるのだ。
「やっぱり、ホットアイは騙してたのかな…。」
「…俺にはそうは見えなかったけど。」
ルーナの小さな呟きを聞き取ったのだろうマキナは自分の考えをルーナに言った。
「ホットアイが念話を使えるかもわからないしな…。誰かがホットアイを真似て俺達を騙したのかも知れない。」
ルーナがその考えになるほど、と頷いていると階段の方から声が聞こえてきた。
誰かがいたら気付いたのだろうが、足音などが一切聞こえなかったため、気づくのが遅れた。
「ブレインめ、最後の力を振り絞って、たった一人しか仕留められんとは…。」
ルーナがそちらに振り向くと、そこにはブレインの持っていた趣味の悪いドクロの杖が独りでに浮き、喋ってた。
魔法という概念があるこの世界、そういうことも無くはないのだが、それを見るのは皆初めてで、ハッピーも含め、皆が驚いていた。
猫がしゃべるのもおかしい話なのだが、それに突っ込むのは野暮というものだろう。
皆が驚いている中、ナツがいきなりその杖を掴み、地面に何十と叩きつけた。
「おい、棒切れ!このデケェの止めろ!」
止め方を聞くためか、叩くのを止めると杖がしゃべり始める。
「私は七人目の六魔将軍。きさまらをかたづけるために眠りから覚め」
た。と言う前にナツがまたも地面に叩きつける。
「とーめーろーよー!」
突っ込みどころが多すぎてポカンとしているルーナ達だが、その杖はどうやらナツたちを仕留めるために来たらしく、どうにかナツから抜け出し、次の瞬間、ナツに頭突きを食らわせた。
それに驚いたグレイにも同じように頭で殴りつける。
それを見たマキナは杖に魔法をかけ、地面に押し付ける。
「ぐぼぉ!?」
「杖のくせに強いけど…まぁ、身動き取れなくすれば問題はないだろ。」
そう重力を変えたまま、マキナは遅くなって悪かったとでも言うように申し訳無さそうな顔をしてグレイたちに謝る。
「…ま、まずい…六魔が、全滅!?」
地面に押し潰されたまま、杖は呟いた。
「いかん、いかんぞ!……あの人が来る!」
「あの人?」
マキナは少し気を緩めてしまったのか、魔法が解け身動きできるようになった杖の口から水晶球がポロリと落ちた。
慌てふためいている杖にグレイが話しかけると杖は声を震わせながら説明するように話し始めた。
「ブレインにはもう一つの人格がある。」
「…二重人格…?」
「知識を好み、
杖が言うには、ブレイン自身があまりにも凶悪すぎて生体リンク魔法で封じ込めたのだが、六魔がやられた今、生体リンク魔法が解け、ゼロが復活してしまうらしい。
杖は無い目を見開き、いきなり地面に頭をこすりつけるかのようにお辞儀をした。
「おかえりなさいませ!マスターゼロ!」
杖がお辞儀をした方を向けば、ブレインの影が見える。
だが、ブレインの頃のような面影は無い。ブレインの頃と魔力も変わっているようで、ルーナは思わず眼帯の上に手を置き眼を隠すようにした。
ゼロと呼ばれた男は服を換装のように着替え、ルーナ達に近づいてくる。
思わず後ずさりしてしまうほどだ。
「小僧ども…随分とうちのギルドを喰い散らかしてくれたな。
マスターとして、俺がけじめをとらせてもらうぜ。」
ゼロはルーナとマキナを見据え、ニヤリと笑った。
「そうだな…まずはこの身体を痛めつけてくれた小僧と小娘からだ。」
「っ…。」
ルーナは反射的に後ろに下がろうとする足を前に出し、突撃するように刀を持ち、ゼロを斬りつけようとした。
だが、それはやすやすと躱され、逆に殴られてしまう。
それに間髪入れず、マキナも応戦するが手も足も出ず…。
遂には、ナツやグレイ、ルーシィまでもが地面に転がっている。
「さ、流石ゼロ様!こうもやすやすと倒してしまうとは…お見事!」
杖はそれに怯え、スラスラと褒め称える言葉を並べていくがゼロはそれには反応せず、ただ、笑みを深くした。
「まだ終わってねぇよなぁ…。」
「へ?」
「まだ死んでねぇよなぁ!ガキ共!!
だって、まだ形が残ってんじゃねぇか!」
もう倒れ、動けなくなっていると言うのに、ゼロはただ傷めつけるためだけにルーナたちに攻撃をする。
血飛沫が飛び、服の原型を留められているのが不思議なくらいだ。
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ルーナたちがボロボロになり、倒れている中、ヒビキはエルザたちに念話を送っていた。
ニルヴァーナを止める方法がわかったのだ。
小文書に書いていなければもう終わっていたが、運良く載っていたのだ。
止める方法はニルヴァーナの足、8本を全て同時に壊すこと。
ニルヴァーナの足は大地の魔力を吸収しているパイプの役目を持っていて、それを制御するラクリマ各足の付け根付近にある。
それだけならば同時じゃなくともいいのだが、同時に壊さなければいけない理由があるのだ。
ラクリマが壊された部分のラクリマを修復してしまうのだ。
それをエルザたちに教え、どうにか8人、壊しに行く人を集める。
だが、ヒビキ自信、魔力が持ちそうも無く、タイミングを測るものをニルヴァーナに乗っている人全員にアップロードさせた。
「次のニルヴァーナ装填直前の20分にセットしておいた。君たちならやれるだろう。」
『……ククッ…無駄なことを。』
「っ!?まさか、念話をジャックしたのか!」
その念話をジャックした正体はゼロだ。
まさか、ジャックされるとは思ってもおらず、少し動揺してしまう。
『手始めに仲間5人を破壊した。滅流魔導師に、氷の造形魔導師、精霊魔導師、重力変換魔導師、闇魔法を使う魔導師…それと、猫もか。』
ゼロはラクリマのどれか一つにいる。そう言い念話を切った。
だが、それよりも重大なことがある。
ラクリマをこわす為に8人必要なのだが、5人も足りないのだ。
エルザ、その隣にいる謎の人物、一夜。
今から行くとなれば、ニルヴァーナに乗っている人しか間に合わないだろう。
ルーナたちが行けるのであれば、足りるのだが…。
「…グレイ、立ち上がれ。お前は誇り高きウルの弟子だ。こんな奴らに負けるんじゃない。」
そうリオンが言うも、起き上がらず。
「私、ルーシィなんて大嫌い。ちょっと可愛いからって調子に乗っちゃってさ。…バカでドジで弱っちいくせに……。いつも、いつも一生懸命になっちゃってさ。死んだら嫌いになれませんわ。後味悪いから返事しなさいよ。」
「マキナ…。」
「オスネコ…。」
「ルーナ…。」
「ナツくん…僕たちの声が…。」
ウェンディ、シャルル、エルザ、ヒビキが倒れてる人たちの名前を呼ぶ。
その時、ナツたちが膝を地面につけながらも立った。
みんな、息も絶え絶えだがしっかりと生きている。
「聞こえてる!」
ルーナは壁にもたれ掛かって、軽く笑みを浮かべながら座っているが…。
その笑みは安堵からの笑みだろう。
「6つのラクリマを同時に…壊す。」
「運がいいやつはついでにゼロも殴れる…でしょ?」
「…俺達のギルドは絶対に壊させはしないさ。」
他のみんなも、声しか聞こえないが安堵しているのがわかる。
ヒビキは笑みを浮かべながら、もう保たないことを伝えた。
すると、ニルヴァーナを壊す順番は直ぐに決まった。
ナツが一番、グレイが2番、ルーシィが3番、一夜が4番、エルザが5番、エルザのそばにいる人物が6番、ルーナが7番、マキナが8番。
ヒビキはこれでもう安心だ。そう、心の中で思い、念話を切った。
はい、ということで、ニルヴァーナの足の数を8本に増やさせてもらいました。
まぁ、元々8本でしたしいいですよね。
ルーナだって雷神集ですし、さすがにあれでへばったりはしません。
それをわからせるためのあの描写ですね。
黙ってたのは他のみんなが起きるまで待ってたってだけです。
一人だけ起きたって足りないものは足りないですしね。
いやー、それにしてもやっとこさ終わりますよ!長かった!六魔編!
あと3話くらいでエドラス編です。
オリジナルも考えてみたいんですけどオリジナルは考えるのが大変なので…。
ただ、いつかはやると思いますよ。きっと。多分。