「この状況で……まだ読み通りだと言いたいのですか……魔帝」
「ああ、そうだ……お前が現れるという事は……俺にとっては確かに『予想外』だった…………だが、それはあくまで予想だ。俺が計画していたことに対しては……何の支障もない」
「私が此処に居ようといまいと……貴方の計画に狂いはないと……?」
「お前が来てくれたおかげで、逆にスムーズに事が運んだ。その点で言えば……アルジェントを殺したのは間違いではなかったようだ」
黒と白・悪と正義・聖と魔・絶望と希望……目の前に広がる光景は、まさにそれに近い物。正反対の物が目の前にあると言うだけのこと
だが、それこそとんでもない事だ。悪とは正義だ……だが、自分を悪という颯真は異例……つまり、普通ならばこういう光景は目にする事は出来ない
光の翼を背中から生やし、天輪を背中に付けて、天使の輪っかを持ち、全てを癒すそのオーラを纏う原初の神であるパンテラ
黒炎の翼を噴出させ、白い角を生やし、肌を光沢のある漆黒にさせ、龍のような黒い尻尾を生やしているSSS級の存在、魔帝の颯真
存在感では、どちらも引けを取っていなかった
「間違いではなかった……?」
「説明する気は無い……お前の様な全力で戦えない状態の奴に、このような力を発動させてしまった事に……情けなさを感じる……」
フッ、音もなく目の前から消えた颯真。パンテラは首が取れるイメージがした瞬間、後ろを振り向き光を纏った腕を振るう
そこに黒い一閃が走り、パンテラの腕とぶつかる。それと共に衝撃波が放たれ、そのままパンテラは勢いよく後ろへと吹き飛ばされる
直ぐに体勢を立て直し、ぶつかったものを確認する。そこには、黒い腕を振るった後の姿をした颯真の姿があり、その腕には傷一つ付いていなかった
自分が窮地に追い込まれると言う状況までも把握していた颯真の行動に、流石のパンテラも冷や汗をかく……颯真はその様子を不思議そうに見た
「どうした……先程までの勢いがないぞ……」
「言ってくれますね……先程以上の邪気などを纏われた貴方を警戒する事に、何かおかしい事があると思っているのですか?」
「いいや……自分の手で殺すとか言って置いて……その程度しかないと思うと…な」
原初の神といえども、30%程度の力しか出せないとなると……俺を殺し切る事も出来なくなるか……いや、それは誤解にもほどがあるという物
相手はこの世を創り出した存在……創造された存在である俺に負けるほど、弱い存在でもあるまい……殺す方法はあるが、簡単にはいかなくなった、というのが妥当だ
殺せる手段が減っただけであり、俺を殺せなくなった訳ではない。なら、相手は機会を待つはずだ……俺の首を落とせる瞬間……機会をな
「だとしたら……お前らも無意味な事をする……」
「……どういう意味ですか?」
俺はパンテラの質問には答えない……答えた所で、奴にも俺にも関係はない……関係があるのは、この世界に今もなお生き続けている『異種族』どもと『人間』だけだ
それに………………もう既に、『準備』は完了している……どう足掻こうとも、もう間に合いはしない
「はぁ!!」
「そう焦るな……もう先は見えてる」
パンテラは俺が口を割らないのを見て、そのまま攻撃へと行動を変える。判断としては悪くない……俺が言わないという事は、自分にとっては良くないという事だからだ
だが、たかが憑依している分際で……この俺を殺そうなどと……思い上がりも甚だしい……全力を出せないから負けたと、そう言い訳でもする気か、こいつは……
パンテラの指先からの光のブレード……俺は避けようともせず、そのままそれを受け入れた……肌に触れた瞬間、それは爆散して俺の腕を吹き飛ばした
黒く塗りたくられたような腕からは、その腕から出るには相応の赤黒い色をした血が流れ出ている。正直、はぐれ共をサーゼクスの罠に使ったのは正解だな
黒歌、白音、はぐれ共、そして俺の残りの天使や聖獣も全てサーゼクス達に向かわせてある。悪いが、此処に来るには時間が足りないだろうな
黒歌と白音に言わなくて済んだ……アイツらに説明すれば、こっち側に急いででも来るだろうからな……
糞親父も、あの母親気取りも、全員孤独に一人で死んだ……ならば、俺も一人で死ぬべきだ……本来、生まれるべきではなかった俺とあの塵共
誰かに死を見送られるなどという事は、許されるべきではない……
「どうしました……先程から、何も語っていませんが……」
「語る必要がないだけだ……この程度の攻撃も、避ける必要がないと言うだけの話……」
その言葉を言い終えるとともに、俺の腕から炎が噴き出す。その炎は段々と強くなり、やがて消えて行った……その後には、俺の腕が再生されていた
パンテラは驚きはしない……一つの可能性が、ただ目の前で可能に変わっただけの話だからだ
「やはり、貴方の体はフェニックスの恩恵を持っているのですね……」
「不本意だがな……魔像を取り込みこの姿となった俺には、魔像の使っていた能力、魔像に取り入れた能力全てが使える」
再生させた腕を動かし、問題がないことを確認し終え、俺はまたパンテラを見る。姿がアルジェントであるからなのかは知らないが……
やはり、奴はあの光に包まれている状態が似合う。だからこそ、俺は対極だと思ったのだろう……他にも理由はあるが……
「他にも……こういうのがな」
「っ!!?」
ビュッと、パンテラの顔に向けて撃ち出される黒いレーザー……神威の物か、それとも天照の物か……だが、先程のは赤黒い気がした
そう感じたパンテラは、さらに視線をその放たれた俺の指先に絞る。それを見るなり、少しだけ眉が動いた
「それは……『滅びの魔法』」
「ご名答……本来、俺にとっては必要性のない物だが……魔像には必要だったんでな。だが、これのおかげで……余計な物をすぐに消し飛ばす事が出来る……」
ミリキャスから手に入れた滅びの魔法。そこまでの必要性は俺にはないが、活用できる場面もあるだろう……だが、もうそろそろ……『時間』だ
俺はふと笑みをこぼす……長年の夢が、叶うのだから。俺の笑みを見たパンテラは疑問を持つが、次の瞬間……その笑みの正体が分かった
「これは……っ!!」
「あいつらが上手くやったようだ。この時ばかりは、感謝しよう」
俺の体から光の粒子が溢れ出ていた
元々、俺の使った
体中の細胞が痛み続けるだろうとは、予感していた。継続できて3分……現人神でもない俺には、パンテラを超えるだけの力を、体に宿すには無理があった
修行を続けようとも、それをこなす事は出来ない。それが人間の限界だからだ……だから、俺は、魔像を吸収すると言う手段を使った
結果的には、5分。だが……この後踏んで準備が整った事には感謝するほかない。あの馬鹿共が、俺の命令を聞き届けたという事だ
奥の手を使えば、この世界に俺が存在していられなくなるのは前提……だからこそ、それを利用した方法で、俺は悪魔を……異形種をこの世から消す事を選んだ
本来、この身は既に死んでいる……ならば、今更死のうと代わりはしない
「粒子化か……俺の身はもう、限界の様だな」
「颯真っ!! お前何を……!!」
「騒ぐなよ、赤龍帝…………何、この世が終わるだけの話だ……俺と、お前ら異形種すべての命がな」
「貴方……自分の身を世界に売ってまで、異形種を消そうとしますか……!!」
そう、俺が今から行う事は……今まで目の前に居る兵藤一誠等が行ってきた自己犠牲……次の世代の為に、俺がこの場で死ぬことだ
「愚かな事を……!!」
「救いのない世界に、次世代の人間たちを生かすことなどできない。この身を世界に売ってでも、俺はお前らを抹消しなければならない」
俺がこれから行う事は……俺の身を星核に刻み付ける、いや……この場合は、星核に俺を売るという事だ。そして、最強のこの身の代わりに……
異形種と言われる存在の記憶を……この世から消す
「異形種だけの記憶を星核から消せば……人間が悪魔になる事も、実験台になる事もない」
「お前……!!」
「当然、今悪魔の状態になっている転生悪魔でさえも、この世から消える。俺は既にこの事をあの馬鹿共には知らせてある」
はぐれ共はそれでも、俺と共に歩むと言って聞かなかったがな……
粒子化が大きくなり、俺の体も透き通って来た。目の前では、既に自分達の最後を迎えようとしているにもかかわらず、此方に敵意を向けている
だが、赤龍帝は、最後に自分達は一緒に行こうと言う意志があるのか、全員でその身を囲んでいた
奴らの体も粒子化が出始め、もう最後という段階だ。おそらくだが、曹操達は無事に生きるだろうと踏んでいる。あいつらは、まだ生きる価値がある方だ
俺は体の力も入らなくなり、その場に座り込む。パンテラは無力そうに星核を見つめている
いくら原初の神といえど、星核の情報を書き換えることなどできはしない……何故なら、神程の力が星核に作用すれば、星如きえるかもしれない
ならば、このままにしておいた方がまだ、良い世界になるのだ
大きい力が平和を生むわけじゃない。大きな力の所為で、平和が遠のくんだ
俺の体はもう既にないも同然になって来た……
「最後の最後まで、世界を否定し続けてきたって言うのに……全く、俺も変わった」
最後に……世界に体を売っちまうとはな……
その日より、世界は変わった………………この世から、鳴神颯真という存在も、異形種すべての存在も消えた……戦争は、颯真の勝利だった
だが、これ程虚しい勝利があるのだろうか……勝った者の中には、その戦争の事を知っている者は一人としていない。それが、代償だからだ
世界にとって、一番か価値がある物は『記憶』。それが皆の心には刻まれていない。悪魔という存在に汚された家族も、今では普通の生活を送っている
聖剣計画で被害に遭った者達の死は、事故死や病死などの、日常的に目にすることの出来る事象へと変化。悲しみは、軽減されたのかもしれない
世界的に有名だっただろう颯真が起こした小学校の事件ですらも、既に無かったことになり、一般的な場所になりつつあった
だが……それでも、死んだ者達は変わらない。いくら異形種や颯真が死のうと、この世で起こったことが再生されるわけでは無い
颯真が行ったのは異形種の消去だけであり、異形種が行った事の消去ではない……だから。、誰も帰ってくる人はいないのだ
だが、それもまた必要な事だ……人は、大切な者を失った初めて、傍に会った者の大切さを知る。だからこそ、もうこんな事は起こってはならない
そう思えるようになる。だから、世界は戦争はやめていく傾向にある……もう、あんな悲劇を生まないようにと、双努力するのだ
いずれは、この世界もまた、争いの中に歩居り込まれるのかもしれない。だが、それも必要な事だ。何かを犠牲にしなければ、人は進まない
それは誰もが分かっていることだ。全てを救う事は出来ないと、そんな事は分かりきっている。だから、今までやってこれたんだ
歴史を刻んだ者達のおかげで、この世界は作り上げられた。それは、神でも悪魔でもない……人間の努力の賜物だ
人は言う……宝石は高価で素晴らしい物だと。だが、本当は違うのではないだろうか……? 宝石など、掘れば出てくるだけの地球の一部
だが、歴史や記憶は違う……どれほどの事をしようとも、簡単には手には入らない感動などが詰まっている
砕ければ意味がなくなる宝石よりも、砕こうともそこに存在し続けてくれる記憶の方がどれほど大切なのか、今の人間は知っているだろうか?
知らないはずだ……忘れれば、そこで終わりなのだから。だからこそ……忘れようともできない思い出を作れるものは、凄い人物だと思う
忘れられようとも、自分がどれほど汚れようとも、この世界を変えるために戦った颯真は……その最たるものだ。最後には、その身を消したが……
もしかしたら、彼にもまた、違った道があったのかもしれない……
「……私は間違っていた……この世を見下ろすだけでは、何も解決しないと……」
宇宙から、その地球を見下ろす存在……パンテラ
「彼もまた、世界の負の中でもがいて……そして、歩んだのですね……もう二度と、私も間違えないようにしましょう。それが私にできる……最大の罪滅ぼし……いくらやっても消えない子の罪を……世界を変えた彼の望み通り……少しだけでも、人間が平和な世界に……」
……世界を否定し、世界を恨み、世界を変えようとした男……魔帝・颯真
その名は、星核に……深く刻み込まれていた
最終回、終わりました!!
今まで見ていただいて感謝します
実は、これを他の原作で、続編の様にしようと思っているので、何かいい原作があるのでしたら、意見を下さい
自分はBLEACHか、FATE、青の悪魔祓いなどにしようと思っています
活動報告に乗せておきますので、続編の原作のアンケートのご協力ください
心を閉ざす者をご覧いただき、誠にありがとうございました