年を、2040年から2043年にしました。
「気持ち悪ぃーんだよ! さっさと失せやがれ!」
「なぁ、いつまでここ居んの? 退学したんじゃなかったっけ?」
「あ~お前がスペース取ってるせいで教室が狭いんだよな~。 …ねぇ、どっか行ってよ」
うぅ…。 何でなんだよ…。 何で僕ばっかり…。
いつもの教室で、いつも以上に、光馬は罵声を浴びていた。 殴りかかってくる者も居る。
光馬は耐えきれず、そのまま教室から逃げ出した。
廊下ですれ違う先生が、光馬を見て舌打ちする。
くそっ、くそっ! 何でなんだよ! 僕は何もしてないのに!
唇を噛みながら、校庭へと出る。 そして、いつもの飼育小屋へと辿り着いた。 ……無邪気に遊ぶ動物達。 その時光馬は思った。
「…仲間が、欲しい」
信頼できる仲間が。 決して僕を裏切らない仲間が。
もういやだ。 一人は…嫌だ。
『…それが、君の望みか?』
△▼△▼△
「――――ッ!!」
…夢だった。
そう確認出来た瞬間、安堵が光馬を包んだ。
孤独には慣れてはいるが、あんなに暴言を吐かれるのは、やっぱり辛い。
昨日、不思議なゲームをインストールしたあと、真治に絶対にグローバルネットに接続するな、と釘を刺され、そのまま帰宅した。
光馬は、布団から抜けて、朝食を作り始めた。 既に父親は居なかった。 朝から女と遊んでいるんだろうか。 ほんと、お勤めご苦労様です。
光馬は、ちゃちゃっと朝食を作り終え、5分で食べ終えると、支度をして学校へと向かった。 勿論、グローバルネットに接続せずに。
△▼△▼△
業間休み。
前日、真治に再び昨日と同じ場所に来るように言われた光馬は、約束通りその場所へと行った。
既に真治はその場に居て、光馬を見つけると手を振ってくる。
「来たね。 それじゃ、昨日の話の続きをしようか」
光馬が近くまで来ると、真治は手を組んで話し出す。
「…ま、話と言っても話と言える程じゃないけどね。 僕は、君に魔法の呪文を言ってほしいんだ」
「魔法…ですか?」
「うん。 『バースト・リンク』。 この呪文が、僕達を別世界へと連れて言ってくれるのさ。 …じゃ、早速一緒に言ってみよう」
話が早い。 そう思いながらも、光馬は真治に合わせてそう呟いた。
「「バースト・リンク」」
…そして、世界が変わった。
△▼△▼△
色がついていた世界が、耳鳴りと共に、全て青色一色に塗られていく。
光馬が唖然としているのも束の間、すぐに目の前に、<HERE COMES A NEW CHALLENGER!!>の文字が現れ、世界に色がつき始めた。
青だった地面は白に変わり、周りの木にも白い雪が積もっていく。
「え!?」
光馬は、いきなり変わったこの世界に対応出来なかった。
<FIGHT!>
光馬の視界に、この文字がうつる。
…これは……どういう事だ?
「やぁ、
後方から、真治の声が聞こえた。
振り向くと、そこには真治…ではなく、赤く輝くロボット(?)が…。
「…ってえぇ!?」
驚いて飛び退き、尻餅をつく光馬。 降り積もる雪がクッションとなり、さほど痛みは無かったが、光馬は自分の体の異変にも気付いた。
その姿は見慣れた服装ではなく、黒い姿。 見える脚は金属質のブーツを履き、そのブーツの中身も金属質だった。
「えぇ!?」
また驚き、手や胴体を確認する。 手は、両手に金属質の手袋をつけていて、右手には見知らぬ鞭が握られている。 胴体は、胸の部分に緑色の宝石のようなものが埋まっている。「…お~い? ちょっと?」
再び真治の声に呼ばれた。 もう一度声がした方に顔を向けると、さっきと変わらず、そこにはやっぱり赤いロボットが居た。
「あ、あの…」
「待った! 言いたい事は色々あると思うけど、今は待って!」
光馬が喋ろうとすると、ロボットが止める。
「こんにちは! 僕はカッパーレッド・アーチャー。
カッパーレッド・アーチャー。 どうやらあのロボットの名前はそういう名前らしい。
と、ここで視界の上両端に何か書かれていることに気付いた。
片方には、<
そして、名前の上には一本のゲージ。
次に、反対側にももう一つの名があった。
――――<
「お~い、テイマー君?」
またまた、アーチャーに呼ばれてしまう光馬。 いや、テイマー。
「っ、あ! はい、何ですか?」
「全く…確かに驚くのは分かるけど、少しは僕の話を聞いてくれよ…」
アーチャーが、額に掌をつけて、下を向く。
「す、すいません…」
「はぁ…ま、いいか」
アーチャー、顔をあげると口――――正確には口は無いが――――を開いた。
「ささ、時間も限られてるから簡潔に説明するよ。
ここは、君が昨日インストールした<ブレイン・バースト>というゲームの世界。 このゲームのプレイヤー――――バーストリンカー、って言うんだけど、そのバーストリンカーは、この世界を<加速世界>と呼んでいるよ。
詳しい原理は僕には分からないんだけど、何か、バースト・リンクと唱えたとき、思考を千倍化して思考のみを加速状態にしている…んだっけ? とりあえず、現実の何倍もの速さでこの世界は動いてるんだ。 だから、この世界から現実に戻っても、現実での時間はそんなに経っていない」
「へぇ…。 そんな技術が可能なんですね」
「うん。 ほんと、凄いと思うよ、制作者は」
人間の出来る技なのか? テイマーの思考に、一瞬、そんな思いが浮かぶ。
「で、肝心のこのゲームの内容なんだけど…」
「VR型格闘ゲーム…ですか?」
上両端の名前と、ゲージで何となく分かる。 このゲージを削りきった方が勝ちということだろう。
「お、よく分かったね。 その通りだよ。
この世界は今となっては四角がないソーシャルネットワークカメラの情報をもとにこの仮想空間を創り出されているんだ」
「へぇー。 なんか…容量が大きすぎてニューロリンカーがパンクしそうですね」
「そうかな? ゲームとかで容量がギッチギチの人は危ないかもしれないけど、ニューロリンカーはおかしいぐらいに高性能だから、大丈夫だと思うよ」
アーチャーが、片手に持っていた弓を弄びながら、返答する。
「…ま、難しい話は良いよね。 今から君の能力を確認するよ。 せっかくインストールしたのに、すぐアンインストールなんて嫌だよね?」
「…え、アンインストールされちゃうんですか?」
「ん…負け続ければね。 今は表示されてないけど、僕達はバーストポイント、ってのを所有している。 それが0、つまり全損するとアンインストール――――ニューロリンカーからゲームが無くなると共に、このゲームの記憶が全て無くなる」
「え…」
テイマーは、このゲームが只のゲームでない事を悟る。 今はまだ良いが、もし自分がこのゲームを好きになり、勝ち上がっているときに全損でもしたら…。
「まぁ、負ければの話だけどね。 それに、多分君の持ちポイントは今99のはずだから、そう心配することはないさ」
「99…? 何だか中途半端な数字ですね」
「あ、言い忘れてたか。 バーストポイントは、一回この世界に入るごとに1ポイント消費する。 <上>だっら違うんだけど…まぁ、今はいいか」
最後らへんは小さい声で言い、テイマーに聞こえないようにする。 もう、質問されたくないからだ。
「さてと、話が逸れたね。 じゃ、今度こそ技を確認するよ……」
△▼△▼△
「はぁ…」
現実世界に戻った光馬は、教室に入ると溜め息を吐いた。
疲れた――――。 結局あれから、技の確認と、技の名前からアーチャー――――真治が考察した技の内容を、制限時間まで延々と聞かされていたのだ。 精神的に疲れていた。
…とはいっても、光馬の気持ちは高揚もしていた。
今までに出会ったことのない、凄いゲームを手に入れたのだ。 真治の話によると、ブレイン・バーストは1Lv上げるのも大変らしい。 光馬は、最高Lvになってやる、と、密かに決めたのだった――――。
△▼△▼△
昼休み。
光馬はいつもの飼育小屋へは行かず、机に突っ伏すと、小さく呟いた。
「――――バースト・リンク――――」
バシィィィン、という耳鳴りと共に、世界が青に塗られていく。
光馬の体はジェット・テイマーへと変化し、光馬は机から顔を上げた。
真治から教わった通り、マッチングリストを開き、下にスクロールしていく。
初戦なので、誰と戦うかなんて決めていない。 テイマーは、適当に一番下にあった名前を押すと、バトルを開始した。
<FIGHT!>
世界が、青から塗り替えられていく。
突っ伏していた机は赤茶色に染まり、砂岩になる。 床も壁も、全てが砂岩と化し、窓は無くなった。 空を見上げると、薄黄色に染まっている。
光馬は、胸が高鳴るのを確認しながら、学校の校庭へと出た。
「えーと…敵は誰だ?」
早速、対戦相手を確かめるため、テイマーは視界の上部に注目する。
<
スティール…という名から、防御系のアバターなのだろう。 となると、ホーステールという色は緑系か。
「悪いな!」
「うぐっ!?」
突然、腹部に衝撃と激痛が走る。
後ろを振り返ると、そこには円盤型の小さい盾…いや、小手という方が正しい。 それを握ったアバターが立っていた。 気になるのは、身体は緑なのだが、腕、そして小手だけ銀に染まっているのだ。
…というか、油断してた!
テイマーは大きく後退すると、鞭を構えた。
焦るな…相手は大人じゃない。 大きくても中学生のはずだ。
テイマーは、そう考えて深呼吸すると、さっき確かめた技を思い出す。 ――――まず、今持ってるこの鞭。
これは、初期
次に必殺技だが、これは一つだけ。
<アソー・フウェ>。 鞭を真っ直ぐに伸ばして、攻撃する技だ。 建物に撃ってみたら、建物の一部を破壊した。 恐らく、当たれば強い。
で、アビリティはない。
「…よし!」
テイマーは鞭をしならせると、スティールに突撃していく。
「…お」
「<アソー・フウェ>!」
必殺技ゲージはさっきの攻撃で貯まっていたので、早速必殺技を放つ。 鞭は真っ直ぐスティールへと伸びていく。 スティールは避けようともせず、両手を胸の前でクロスし、身体全体を銀色に染めた。
鞭は、両手の小手に当たると、重い音を響かせる。
絶対致命傷だろ、という音だが、スティールは、僅かに後退するだけに止まった。
「…くく、確かに強いけど、やっぱ俺の<
どうやら、身体を銀色に染めるのはアビリティのようだ。 身体の一部を鋼鉄にするアビリティだろうか?
「く…」
テイマーは、かなりの動揺をしていた。
必殺技はあれしかない。 唯一の攻撃技が防がれたとなると、最早うつ術がない。
どうしよう…。
テイマーは、デビュー戦にして早速、敗北の危機に陥ってしまったのであった。
思ったより長くなったので戦闘の途中で一話終了です。
まさか説明にこんな時間がかかるとは…。
あと、漆黒は正確にはジェットではなくジェットブラックです。 個人的に長い名前は嫌いなのでそうさせて貰いました。
カッパーレッドは略すと只の銅になってしまうので略しませんでしたが…。